/ 鑑定理論

総合的勘案事項とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

継続中の宅地の賃貸借等の契約に基づく実際支払賃料を改定する場合に、直近合意時点から価格時点までの期間を中心に総合的に勘案するものとして基準が掲げる九つの事項です。つまり、四つの手法で出した賃料を一つに決めるとき、前回の合意から今までに何が変わったかを確かめる項目の一覧です。

総合的勘案事項とは

20年前に貸した土地の地代を5年前に一度上げ、今また改定の相談を受けたとします。周りの地代は上がったのか、土地の値段や固定資産税はどう動いたのか、前回はどんな経緯でその額に落ち着いたのか。こうした事情を確かめずに計算式の答えだけで新しい地代を決めると、貸主か借主のどちらかが納得しません。基準は、差額配分法・利回り法・スライド法・賃貸事例比較法で求めた四つの賃料を関連づけて改定後の地代を決めるとき、あわせて確かめる事情を九つ挙げています。これが総合的勘案事項です。

総合的勘案事項の図解:四つの手法の賃料を関連づけ、前回の合意から今までの九つの事情を確かめる。

四つの手法の賃料を関連づけ、前回の合意から今までの九つの事情を確かめる。

四つの手法による賃料を関連づけたうえで勘案します

継続中の宅地の賃貸借等の契約に基づく実際支払賃料を改定する場合の鑑定評価額は、差額配分法による賃料、利回り法による賃料、スライド法による賃料及び比準賃料を関連づけて決定します。新規賃料の場面では収益賃料を比較考量にとどめる書き分けがありますが、継続賃料の四つはどれも関連づける側で、扱いに差はありません。四つの賃料は、市場との差額、前回の利回り、経済情勢の変化、周りの継続中の事例と、それぞれ別の角度から改定額を見ます。角度の違う四つの数字を一つに決めるために、九つの事項を総合的に勘案します。

見る期間は直近合意時点から価格時点までが中心です

直近合意時点とは、契約当事者間で現行賃料を合意しそれを適用した時点です。それより前の事情は前回合意した現行賃料にすでに織り込まれているので、九つの事項はこの時点から価格時点までの変化を中心に見ます。六つ目の「直近合意時点及び価格時点における新規賃料と現行賃料の乖離の程度」は、今新しく貸すならいくらかという新規賃料と、現に払っている現行賃料との開きを、前回の合意のときと今の二つの時点で測る項目です。基準は二つの時点を挙げるとだけ定めています。前回の合意のときにも開きがあったなら、その分は当事者が承知のうえで合意したことになるので、今の開きだけを見るのとは意味が変わる、と読めます。八つ目の経過期間も、契約上の経過期間と直近合意時点からの経過期間の両方を見ます。

総合的勘案事項の図解:新規賃料と現行賃料の開きを、前回の合意のときと今の二つの時点で測る。

新規賃料と現行賃料の開きを、前回の合意のときと今の二つの時点で測る。

建物及びその敷地では二つの項目を読み替えます

建物及びその敷地の継続賃料、つまり家賃の改定は、宅地の継続賃料の鑑定評価に準じます。ただし「土地価格の推移」は「土地及び建物価格の推移」に、「底地に対する利回りの推移」は「建物及びその敷地に対する利回り」に読み替えます。地代では貸主が持っているのは土地だけで、建物は借地人のものですから、貸主の元本の値動きは土地価格で見ます。家賃では貸主が建物と敷地の両方を持って貸しているので、元本の値動きも利回りも、建物を含めた一体で見ます。残りの七つの事項は共通です。

総合的勘案事項の図解:地代の元本は土地だけ、家賃の元本は建物と敷地。だから価格と利回りの二項目を読み替える。

地代の元本は土地だけ、家賃の元本は建物と敷地。だから価格と利回りの二項目を読み替える。

限定賃料や条件変更のときの事項とは別の一覧です

各論第2章には「総合的に勘案する」事項の一覧が三つあります。宅地の限定賃料では「隣接宅地の権利の態様」と「当該事例に係る賃貸借等の契約の内容」の二つ、実際支払賃料の改定ではこの九つ、契約上の条件又は使用目的の変更に伴う改定では九つのほかに「特に」三つです。隣接宅地の権利の態様が九つに入っていないのは、隣の土地を併せて使う場面でだけ意味を持つ事情だからだと考えられます。また、賃料の改定が更新や借地権の譲渡を契機とするときに更新料や名義書替料が支払われるなら、その額も総合的に勘案します。

この場合においては、直近合意時点から価格時点までの期間を中心に、次に掲げる事項を総合的に勘案するものとする。

出典: 各論第2章 第1節

実務ではこう使う

地代の改定案件では、前回の改定からの期間を軸に、周辺の地代の動き、公示価格や路線価の推移、固定資産税の推移、現行地代と新規地代の開き、契約書の特約と過去の改定の経緯を一枚の表にまとめます。四つの手法の試算賃料と並べて評価書に載せ、どの事情をどれだけ重く見たかを書きます。当事者が争っている案件では、この表の説得力が結論を左右します。

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