/ 鑑定理論

特殊な事情とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

正常価格を求める場合に、正常価格の前提となる現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる諸条件を欠くに至らしめる事情です。つまり、売り急ぎや買い進みのように、普通の売り手と買い手が普通に取引したという前提を崩してしまう事情のことです。

特殊な事情とは

家を売るとき、ふつうは何か月か買い手を待ち、何人かの申し出を比べて値段を決めます。ところが、相続税の納期が迫っていて今月中に現金が要る、買い手が相場を知らずに言い値で買った、という事情が入ると、成立した値段は普通なら付いたはずの値段から外れます。このように、正常価格の前提となる合理的な条件を欠くに至らせた事情が特殊な事情です。基準は、現実の取引には不動産市場の特性、当事者双方の能力の多様性と特別の動機からこうした事情が存在する場合もあるとして、取引がどのような条件の下で成立したかを資料の分析で十分に調査するよう求めています。

特殊な事情の図解:普通に買い手を待てない事情が入ると、値段は普通の水準から外れる。

普通に買い手を待てない事情が入ると、値段は普通の水準から外れる。

定義は正常価格の前提と対になっています

正常価格は、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表す価格です。売り手も買い手も相場を知り、急がず、自由に取引できる市場が前提です。特殊な事情は、その条件を欠くに至らせるものなので、定義は正常価格の裏返しになっています。基準は「正常価格を求める場合には」と断っているだけで理由は書いていませんが、限定価格や特定価格を求めるときは前提となる条件が違うためと読めます。

事情は、市場の特性と当事者の能力や動機から生まれます

基準は、特殊な事情が生まれる元として、不動産市場の特性、取引等における当事者双方の能力の多様性と特別の動機を挙げ、売り急ぎ、買い進み等を例にしています。相場を知らない売り手、転勤で急ぐ売り手、系列会社に利益を残したい業者、恩恵的に安く譲る親族など、留意事項の例示の多くは当事者の側の事情で、極端な供給不足のような特異な市場条件の下の取引も挙げられています。事情があること自体は珍しくないので、資料の分析に当たり、取引がどのような条件の下で成立したかを十分に調べることが仕事になります。

特殊な事情の図解:取引の当事者に聞き取り、どんな条件で成立した取引かを調べる。

取引の当事者に聞き取り、どんな条件で成立した取引かを調べる。

特殊な事情があっても、補正できれば事例に使えます

事例を選ぶときの要件は、取引等の事情が正常なものと認められること、又は正常なものに補正することができること、です。特殊な事情があるから即不採用ではなく、補正で正常な水準に戻せるかどうかで決まります。事情が価格等に影響していれば事情補正を行い、影響していなければそのまま使います。投機的取引のように適正さを欠く事例は、補正して使うのではなく、収集と選択の段階で外します。

特殊な事情とは、正常価格を求める場合には、正常価格の前提となる現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる諸条件を欠くに至らしめる事情のことである。

出典: 総論第7章 第1節

実務ではこう使う

取引当事者への聞き取りや登記の履歴から、相続に伴う換金の急ぎ、系列会社間の転売、競売落札などの事情を拾い出します。評価書では事例ごとに、特殊な事情なし、あるいは売り急ぎにつき増額補正、のように判定結果を記載します。

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