配分法とは?不動産鑑定における控除方式と構成割合方式をわかりやすく解説
不動産鑑定における配分法を解説。複合不動産の取引事例から土地や建物の価格を取り出す手法として、控除方式と構成割合方式の2つの方式を整理。算定式・計算例・適用場面を基準原文に基づき解説し、取引事例比較法の適用範囲を広げる実務的手法を網羅します。
配分法とは
不動産鑑定士試験において、取引事例比較法の適用にあたっては、対象不動産と同じ類型の取引事例を収集することが基本です。しかし、例えば更地の鑑定評価を行う際に、更地そのものの取引事例が少なく、建物及びその敷地の取引事例しか得られない場合があります。このような場合に、複合不動産の取引事例から土地部分の価格を取り出す手法が配分法です。
取引事例が対象不動産と同類型の不動産の部分を内包して複合的に構成されている異類型の不動産に係る場合においては、当該取引事例の取引価格から対象不動産と同類型の不動産以外の部分の価格が取引価格等により判明しているときは、その価格を控除し、又は当該取引事例について各構成部分の価格の割合が取引価格、新規投資等により判明しているときは、当該事例の取引価格に対象不動産と同類型の不動産の部分に係る構成割合を乗じて、対象不動産の類型に係る事例資料を求めるものとする(この方法を配分法という。)。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
配分法は、取引事例比較法における事例資料の範囲を広げるための技法であり、鑑定評価の3手法のうち取引事例比較法の適用可能性を高める実務的に重要な手法です。
配分法の2つの方式
基準は、配分法として2つの方式を規定しています。
控除方式
対象不動産と同類型の不動産以外の部分の価格が判明しているときに、取引価格からその価格を控除して対象不動産の類型に係る価格を求める方式です。
対象不動産の類型の価格 = 取引事例の取引価格 − 対象不動産と異なる類型の部分の価格
具体例:更地の価格を求める場合
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 建物及びその敷地の取引価格 | 8,000万円 |
| 建物部分の価格(原価法等で把握) | 3,000万円 |
| 土地部分の価格(控除方式) | 5,000万円 |
控除方式は、控除する部分の価格を独立して把握できる場合に適用されます。例えば、建物の価格は原価法によって比較的正確に把握できるため、建物及びその敷地の取引事例から土地部分の価格を求める場合に有効です。
構成割合方式
各構成部分の価格の割合が判明しているときに、取引価格に対象不動産の類型に係る構成割合を乗じて求める方式です。
具体例:土地の構成割合で求める場合
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建物及びその敷地の取引価格 | 8,000万円 |
| 土地と建物の構成割合 | 土地60%:建物40% |
| 土地部分の価格(構成割合方式) | 4,800万円 |
構成割合方式は、各構成部分の価格そのものは判明しなくても、構成割合が取引価格や新規投資等から把握できる場合に適用されます。
配分法が適用される場面
更地の鑑定評価
更地の鑑定評価は、更地の取引事例に加えて「配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例」に基づく比準価格を用いることが基準に規定されています。
更地の鑑定評価額は、更地並びに配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとする。
― 不動産鑑定評価基準 各論第1章第1節
このように、更地の鑑定評価において配分法は重要な役割を果たしています。市街地では更地の取引事例よりも建物及びその敷地の取引事例の方が豊富に存在することが多いため、配分法によって事例資料の範囲を広げることの実務的意義は大きいといえます。
建物のみの鑑定評価
建物のみの鑑定評価においても、配分法に基づく比準価格が活用されます。建物及びその敷地が一体として市場性を有する場合における建物のみの鑑定評価額は、「積算価格を標準とし、配分法に基づく比準価格及び建物残余法による収益価格を比較考量して決定する」とされています。
建付地の鑑定評価
建付地の鑑定評価においても、「配分法に基づく比準価格及び土地残余法による収益価格を比較考量して決定する」とされており、配分法の適用場面は多岐にわたります。
配分法の留意点
敷地の最有効使用の状態
配分法を適用する際には、事例に係る敷地の利用状態に注意が必要です。
なお、配分法及び土地残余法を適用する場合における取引事例及び収益事例は、敷地が最有効使用の状態にあるものを採用すべきである。
― 不動産鑑定評価基準 各論第1章第1節
敷地が最有効使用の状態にない場合、建物及びその敷地の取引価格から配分法によって求められる土地部分の価格が、更地としての正常な価格水準を適切に反映しない可能性があります。たとえば、高度利用が可能な商業地に低層の建物が建っている場合、その土地部分の取引価格には最有効使用との乖離が反映されるため、配分法による土地価格の信頼性が低下します。
控除する価格の精度
控除方式を適用する場合、控除する部分の価格の精度が配分法全体の精度に直接影響します。
| 控除する価格の把握方法 | 精度への影響 |
|---|---|
| 原価法による建物価格 | 再調達原価と減価修正の精度に依存。新しい建物ほど精度が高い |
| 類似建物の取引事例 | 比較可能な事例の存在と質に依存 |
| 推計値 | 概算の場合は精度が低下する |
構成割合の把握方法
構成割合方式を適用する場合、構成割合をどのように把握するかが重要です。基準は、構成割合の把握方法として「取引価格、新規投資等」を挙げています。
| 把握方法 | 内容 |
|---|---|
| 取引価格から | 類似の複合不動産の取引事例において、土地と建物の内訳が判明している場合 |
| 新規投資から | 建物の建設費と土地の取得費から構成割合を推計する場合 |
| 収益配分から | 土地と建物に帰属する収益の割合から推計する場合 |
配分法と建付地の評価における配分
配分法と類似する概念として、建付地の鑑定評価における「複合不動産価格をもとに敷地に帰属する額を配分して求める方法」があります。この方法には割合法と控除法の2つがあります。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 割合法 | 複合不動産価格に占める敷地の構成割合を求め、これを乗じて敷地の価格を求める |
| 控除法 | 複合不動産価格から建物等の価格を控除して敷地の価格を求める |
これらは取引事例比較法における配分法と考え方は共通していますが、適用される場面が異なります。配分法は取引事例に対して適用するのに対し、建付地の評価における配分は対象不動産自体の複合不動産価格に対して適用します。
試験での出題ポイント
短答式試験
- 配分法の2つの方式(控除方式と構成割合方式)の区別
- 更地の鑑定評価における配分法の位置づけ
- 敷地が最有効使用の状態にあるものを採用すべきという留意事項
- 配分法と建付地の評価における割合法・控除法の区別
論文式試験
- 配分法の意義と方法:事例資料の範囲を広げる技法としての位置づけ
- 適用上の留意点:最有効使用の条件、控除する価格の精度
- 配分法が必要となる背景:不動産市場における事例資料の制約
暗記のポイント
- 配分法は取引事例比較法における事例資料の加工方法
- 控除方式:「対象不動産と同類型の不動産以外の部分の価格が判明しているとき」
- 構成割合方式:「各構成部分の価格の割合が判明しているとき」
- 更地の評価:「配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例」に基づく
まとめ
配分法は、取引事例比較法において、対象不動産と異なる類型の取引事例から対象不動産の類型に係る事例資料を取り出すための技法です。控除方式と構成割合方式の2つの方式があり、控除する価格や構成割合の把握可能性に応じて使い分けます。
更地の鑑定評価では配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例も活用できるとされており、市街地での鑑定評価において実務的に重要な手法です。適用に際しては、敷地が最有効使用の状態にある事例を採用すべきこと、控除する価格の精度に留意すべきことが重要なポイントです。
配分法の理解は、建付地の鑑定評価における割合法・控除法の理解にもつながります。また、土地残余法や建物残余法も複合不動産の価値を各構成要素に帰属させる考え方である点で配分法と共通する発想を持っています。