不動産鑑定の類型別評価ポイント - 更地・借地権・底地・区分所有の手法適用
各論第1章の類型別評価で、更地・建付地・借地権・底地・貸家及びその敷地の鑑定評価額はどう決定する?「関連づけて」と「標準とし」の使い分け、賃貸用不動産は収益価格を標準とするパターン、借地権の取引慣行の成熟度による手法の違いまで、試験頻出の決定方法を一覧表で比較整理します。
各論第1章の位置づけ
不動産鑑定士試験において、各論第1章「価格に関する鑑定評価」は、不動産の種別及び類型に応じた具体的な鑑定評価の方法を規定する章であり、試験の重要範囲です。
各論第1章は、総論で学んだ三方式の手法を、具体的な不動産の類型にどのように適用するかを示す「実践編」の位置づけです。総論第7章で学んだ鑑定評価の三方式の知識を前提として、各類型における手法の適用方法と鑑定評価額の決定方法を理解する必要があります。
土地の類型別評価
更地
更地の鑑定評価は、各論第1章の最も基本的な内容です。
| 適用手法 | 位置づけ |
|---|---|
| 比準価格 | 関連づけて決定 |
| 収益価格(土地残余法) | 関連づけて決定 |
| 積算価格 | 再調達原価が把握できる場合に関連づけて決定 |
| 開発法による価格 | 面積が大きい場合等に比較考量 |
更地の鑑定評価額は、「比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定」するのが原則であり、積算価格は再調達原価が把握できる場合に加えて関連づけます。開発法は、面積が標準的な土地より大きい場合等に適用されます。
建付地
建付地は、建物等と結合して有機的に効用を発揮している土地であり、部分鑑定評価として評価されます。
建付地の鑑定評価額は、更地の価格をもとに、更地としての最有効使用との格差や更地化の難易の程度等を考慮して求めた価格を標準とし、配分法に基づく比準価格および土地残余法による収益価格を比較考量して決定します。
借地権
借地権の鑑定評価は、借地権の取引慣行の成熟の程度によって手法が異なります。
| 取引慣行の成熟度 | 適用手法 |
|---|---|
| 成熟度の高い地域 | 比準価格、収益価格、賃料差額還元価格、借地権割合による価格を関連づけて |
| 成熟度の低い地域 | 収益価格、賃料差額還元価格、更地(建付地)価格から底地価格を控除した価格を関連づけて |
底地
底地の鑑定評価額は、実際支払賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格及び比準価格を関連づけて決定します。
区分地上権
区分地上権の鑑定評価は、設定事例等に基づく比準価格、土地残余法に準じた収益価格、区分地上権の立体利用率による価格を関連づけて決定します。
建物及びその敷地の類型別評価
自用の建物及びその敷地
自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定します。3つの試算価格が対等な位置づけで関連づけられる点が特徴です。
ただし、建物の用途変更や構造の改造が最有効使用と認められる場合、または建物を取り壊すことが最有効使用と認められる場合には、それぞれ特別な規定があります。
貸家及びその敷地
貸家及びその敷地の鑑定評価額は、収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定します。収益性が価格形成の中心であるため、収益価格が特に重視されています。
総合的に勘案すべき事項として、以下が規定されています。
- 将来における賃料の改定の実現性とその程度
- 授受された一時金の額及びこれに関する契約条件
- 将来見込まれる一時金の額
- 契約締結の経緯、経過した借家期間及び残存期間
- 取引慣行並びに取引利回り
- 借家権価格
借地権付建物
借地権付建物で、建物を借地権者が使用している場合の鑑定評価額は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定します。建物が賃貸されている場合は、収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定します。
区分所有建物及びその敷地
区分所有建物及びその敷地で、専有部分が自用の場合の鑑定評価額は、積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定します。専有部分が賃貸されている場合は、収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定します。
類型別の決定方法の比較表
| 類型 | 決定方法のキーワード | 中心となる試算価格 |
|---|---|---|
| 更地 | 比準価格及び収益価格を関連づけて | 比準価格・収益価格 |
| 自用の建物及びその敷地 | 3つを関連づけて | 対等 |
| 貸家及びその敷地 | 収益価格を標準とし | 収益価格 |
| 借地権付建物(自用) | 3つを関連づけて | 対等 |
| 借地権付建物(賃貸) | 収益価格を標準とし | 収益価格 |
| 区分所有(自用) | 3つを関連づけて | 対等 |
| 区分所有(賃貸) | 収益価格を標準とし | 収益価格 |
| 底地 | 収益価格及び比準価格を関連づけて | 収益価格・比準価格 |
傾向の整理
- 賃貸に供されている類型は、いずれも「収益価格を標準とし」と規定されている
- 自用の類型は、いずれも「関連づけて」と規定されている
- この整理を理解しておけば、個別に暗記しなくても類推が可能
特定価格を求める場合
各論第1章第4節では、特定価格を求める場合に適用する手法が規定されています。
| 場面 | 適用手法 |
|---|---|
| 証券化対象不動産の投資採算価値 | DCF法を標準とし、直接還元法で検証した収益価格に基づき決定 |
| 民事再生法に基づく早期売却 | 比準価格と収益価格を関連づけ、積算価格で検証 |
| 事業継続を前提とした価格 | 収益価格を標準とし、比準価格を比較考量、積算価格で検証 |
試験での出題ポイント
短答式試験
- 各類型の鑑定評価額の決定方法(「関連づけて」「標準とし」の区別)
- 借地権評価における取引慣行の成熟度による手法の違い
- 建物の取壊しが最有効使用の場合の規定
- 特定価格を求める場合の手法
論文式試験
- 特定の類型について手法の適用方法を論述する問題
- 「関連づけて」と「標準とし」の違いの理由を論述する問題
- 複数の手法の併用の観点から類型別の手法適用を論述する問題
暗記のポイント
- 「賃貸に供されている類型」→「収益価格を標準とし」
- 「自用の類型」→「関連づけて」
- 更地の決定方法(比準価格及び収益価格を関連づけ、積算価格をも関連づけ)
- 借地権は取引慣行の成熟度で手法が異なる
まとめ
各論第1章の不動産類型別評価は、総論で学んだ三方式を具体的な類型に適用する「実践編」です。最も重要な整理のポイントは、賃貸に供されている類型は収益価格を「標準とし」、自用の類型は各試算価格を「関連づけて」決定するというパターンです。
各類型の評価方法を個別に丸暗記するのではなく、不動産の用途・権利関係に応じてなぜそのような決定方法が定められているのかという趣旨を理解することが、試験対策として最も有効です。
関連記事として、鑑定評価の3手法を徹底比較、更地の鑑定評価、借地権の鑑定評価、試算価格の調整、複数の手法の併用を参照してください。