/ 鑑定評価基準・理論解説

不動産鑑定評価基準の「しなければならない」と「できる」の違い - 義務と裁量の読み分け

鑑定評価基準の「しなければならない」「するものとする」「できる」等の語尾表現の違いを5段階で分類・解説。義務規定と裁量規定の読み分け方、短答式試験での出題パターン、具体的な条文例を多数紹介し、基準の正確な読解力を養います。

基準の表現を正確に読み分ける重要性

鑑定評価基準を学習する際、多くの受験生が見落としがちなのが語尾表現の違いです。「しなければならない」と「できる」では、規定の強度がまったく異なります。短答式試験では、この違いを入れ替えた正誤問題が頻繁に出題されます。

本記事では、基準で使用される主要な語尾表現を分類し、具体例とともに正確な読み分け方を解説します。


語尾表現の5段階分類

基準で使用される語尾表現は、おおむね以下の5段階に分類できます。

レベル表現意味強度
1(最強)しなければならない必ず行う義務。例外なし義務
2(強)するものとする原則として行う。限定的な例外あり準義務
3(中)すべきである行うことが望ましい。強い推奨推奨
4(弱)することができる行ってもよいし、行わなくてもよい裁量
5(最弱)留意する必要がある注意を払う必要がある注意

レベル1:「しなければならない」

最も強い義務規定です。鑑定評価において必ず遵守すべき事項に使用されます。

具体例

例1:鑑定評価の基本的事項の確定

鑑定評価に当たっては、まず、鑑定評価の基本的事項を確定しなければならない
不動産鑑定評価基準 総論第8章第1節

基本的事項の確定は、省略や簡略化が認められない必須のプロセスです。

例2:減価修正における分析

減価修正を行うに当たっては、減価の要因に着目して対象不動産を部分的かつ総合的に分析検討し、減価額を求めなければならない
不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

例3:利害関係の明示

関与不動産鑑定士及び関与不動産鑑定業者について、対象不動産に関する利害関係又は対象不動産に関し利害関係を有する者との縁故若しくは特別の利害関係の有無及びその内容を明らかにしなければならない
不動産鑑定評価基準 総論第8章第2節

試験での出題パターン

「しなければならない」を「することができる」に置き換えた選択肢は誤りです。

問題文正誤
鑑定評価に当たっては、基本的事項を確定しなければならない
鑑定評価に当たっては、基本的事項を確定することができる
確認問題

鑑定評価基準において「減価修正を行うに当たっては、減価の要因に着目して対象不動産を部分的かつ総合的に分析検討することができる」と規定されている。


レベル2:「するものとする」

原則的に行うべき事項に使用される表現です。「しなければならない」よりやや柔軟ですが、合理的な理由なく省略することは適切ではありません。

具体例

例1:事例の選択

取引事例は、原則として近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産に係るもののうちから選択するものとする
不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

原則として選択するが、「必要やむを得ない場合」には周辺地域からも選択できるという例外が存在します。

例2:賃料の算定期間

鑑定評価によって求める賃料の算定の期間は、原則として、宅地並びに建物及びその敷地の賃料にあっては1月を単位とするものとする
不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

例3:再調達原価の求め方

再調達原価は、建設請負により、請負者が発注者に対して直ちに使用可能な状態で引き渡す通常の場合を想定し、発注者が請負者に対して支払う標準的な建設費に発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を加算して求めるものとする
不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

レベル3:「すべきである」「する必要がある」

強い推奨を意味する表現です。合理的な根拠があれば異なる対応も許容されますが、基本的には従うことが期待されています。

具体例

例1:収益還元法の適用

この手法は、文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外のものには基本的にすべて適用すべきものである。
不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

収益還元法は原則として全ての不動産に適用すべきですが、「文化財等一般的に市場性を有しない不動産」は例外とされています。

例2:還元利回りの動向への留意

還元利回り及び割引率は、共に比較可能な他の資産の収益性や金融市場における運用利回りと密接な関連があるので、その動向に留意しなければならない。さらに、還元利回り及び割引率は、地方別、用途的地域別、品等別等によって異なる傾向を持つため、対象不動産に係る地域要因及び個別的要因の分析を踏まえつつ適切に求めることが必要である。
不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

レベル4:「することができる」

裁量規定です。その行為を行うかどうかは鑑定評価を行う者の判断に委ねられます。

具体例

例1:土地への原価法の適用

対象不動産が土地のみである場合においても、再調達原価を適切に求めることができるときはこの手法を適用することができる
不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

土地のみの場合の原価法適用は義務ではなく、条件が整えば適用してもよいという意味です。

例2:熟成度の加算

地域要因の変化の程度に応じた増加額を熟成度として加算することができる
不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

熟成度の加算は可能だが、義務ではありません。

例3:支払賃料を求めること

実質賃料とともに、その一部である支払賃料を求めることができる
不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

試験での出題パターン

「できる」を「しなければならない」に置き換えた選択肢は誤りです。

問題文正誤
土地のみの場合に原価法を適用することができる
土地のみの場合に原価法を適用しなければならない
確認問題

鑑定評価基準では、対象不動産が土地のみである場合、再調達原価を適切に求めることができるときは原価法を適用しなければならない。


レベル5:「留意する必要がある」「留意すべきである」

注意喚起の表現です。直接的な行為の義務ではなく、判断に際して考慮すべき事項を示しています。

具体例

例1:純収益の性質への留意

純収益は、永続的なものと非永続的なもの、償却前のものと償却後のもの等、総収益及び総費用の把握の仕方により異なるものであり、それぞれ収益価格を求める方法及び還元利回り又は割引率を求める方法とも密接な関連があることに留意する必要がある
不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

紛らわしい表現の比較一覧

「原則として」が付く場合

「原則として」が付くと、例外が認められることを示しています。

表現例外
原則として〜するものとする合理的理由があれば例外あり
〜しなければならない(原則なし)例外なし

「場合には」「ときは」が付く場合

条件付きの規定であり、条件が満たされた場合にのみ適用されます。

表現意味
〜場合には、〜しなければならない条件を満たしたら義務
〜ときは、〜することができる条件を満たしたら裁量

短答式試験での攻略法

ステップ1:語尾に注目する

選択肢の末尾が「しなければならない」「できる」のどちらになっているかを最初に確認します。

ステップ2:原文の語尾と照合する

記憶している基準の原文と語尾が一致しているかを確認します。語尾が入れ替わっていれば、その選択肢は誤りの可能性が高いです。

ステップ3:文脈から判断する

語尾を正確に記憶していない場合でも、その規定が鑑定評価の根幹に関わるもの(義務的)か、状況に応じた柔軟な対応を許容するもの(裁量的)かを文脈から推測できます。

判断基準義務的(しなければならない)裁量的(できる)
鑑定評価の信頼性を直接左右する基本的事項の確定、利害関係の明示
手法の選択的な適用土地への原価法適用、熟成度の加算
資料・手続きの基本要件事例の選択要件

主要な義務規定と裁量規定の対照表

テーマ義務規定(しなければならない)裁量規定(できる)
基本的事項基本的事項を確定しなければならない
利害関係利害関係を明らかにしなければならない
手法の適用土地のみの場合に原価法を適用できる
減価修正耐用年数法と観察減価法を併用するものとする
再調達原価熟成度を加算することができる
賃料実質賃料を求めることを原則とする支払賃料を求めることができる
事例選択投機的取引の事例は選択してはならない周辺地域の事例を選択できる(やむを得ない場合)

まとめ

鑑定評価基準の語尾表現は、「しなければならない」(義務)、「するものとする」(準義務)、「すべきである」(推奨)、「できる」(裁量)、「留意する必要がある」(注意)の5段階に整理できます。短答式試験では、この語尾の入れ替えが最も典型的な出題パターンの一つであり、正確に読み分ける力が合否を分けます。

基準を暗記する際には、内容だけでなく語尾表現にも注意を払うことが重要です。確実に暗記すべき基準の36の重要箇所鑑定評価基準の頻出論点ランキング鑑定評価基準の一問一答100問もあわせて活用してください。

#任意規定 #基準の読み方 #短答式 #義務規定 #試験対策

アプリで学習

基準ビューワー × 穴埋めドリルで効率的に学ぶ

鑑定評価基準の原文をスマホで閲覧しながら、穴埋めドリルや論証トレーニングで知識を定着。 短答式・論文式どちらの対策にも対応しています。

年額プランなら1日わずか27円

基準ビューワーを見る 無料でアカウント作成
App Storeからダウンロード
穴埋めドリル画面
記事一覧を見る