/ 鑑定評価基準・理論解説

不動産鑑定士試験で確実に暗記すべき鑑定評価基準の36の重要箇所

不動産鑑定評価基準の暗記はここだけ。価格の三要素、正常価格・限定価格・特定価格・特殊価格、最有効使用、三方式の意義など36箇所を原典と逐語照合して掲載。各箇所に答案用の短縮版・落とすと減点されるキーワード・短答の引っかけ方まで付けた覚え方の完全手順です。

はじめに

鑑定評価基準は総論9章+各論3章の膨大な条文から構成されますが、試験で問われる箇所には明確な偏りがあります。本記事では、短答式・論文式の両方で確実に暗記すべき36の重要箇所を厳選し、すべての引用を基準原典と逐語照合したうえで掲載しました。

「鑑定評価基準を全部覚えるのは無理」と感じる受験生は多いものです。しかし実際には、繰り返し問われる「核」となる定義・手順・キーワードは限られています。どこを覚えるか(範囲)を絞り、どのレベルまで覚えるか(精度)を見極めることが、合格に直結する暗記戦略の本質です。本記事はその「覚える範囲」を36箇所に圧縮し、さらに各箇所をどの精度で覚え、どの手順で覚えるかまで示しました。

各箇所には次の4点をセットで付けています。

  • 逐語の引用(原典と一字一句照合済み。出典の章までリンク)
  • 落とすと減点されるキーワード(太字。ここを落とすと論文で点が飛ぶ)
  • 答案に書く短縮版(試験時間内に実際に書ける1〜2文)
  • 短答での問われ方と論文での問われ方(誤り肢がどう作られるか)

暗記の「作業手順」そのものは、音読暗記法・書き取り練習・穴埋め練習問題の各記事で個別に扱っていますが、本記事ではそれら4手法をこの36箇所にどう当てるかという日次の運用手順を最初にまとめました。出題頻度の全体像は鑑定評価基準の頻出論点ランキング、期間配分は1ヶ月の暗記スケジュールと役割を分けています。本記事は「覚える対象そのもののリスト」です。


この36箇所をどう選んだか

36箇所は次の3つの条件のいずれかを満たすものに絞っています。

  1. 短答式で定義の言い換えが正誤問題として作りやすい箇所(キーワードが多く、1語入れ替えるだけで誤り肢になる)
  2. 論文式で設問の柱として定義の記述が要求される箇所(「〜について説明せよ」の直撃を受ける)
  3. 他の論点の理解の土台になる箇所(ここが崩れると連鎖的に他が書けなくなる)

逆に、外したものも明示しておきます。一般的要因の例示(自然的要因5項目、社会的要因8項目など)や地域要因・個別的要因の例示は、量が多い割に「例示」なので一字一句の再現は要求されません。ここに時間を投じるのは非効率です。例示は読んで納得しておけば足り、暗記の対象は定義と手順、という切り分けが本記事の前提です。

なお、章の配列は基準の順序に合わせています。番号(箇所1〜36)は従来のまま維持しているため、最有効使用(箇所11)だけは番号が前後します。これは最有効使用が総論第4章「不動産の価格に関する諸原則」に置かれた原則であり、総論第5章の価格の種類とは別の章に属するためです。この所属章のズレ自体が短答で狙われるので、あえて章順に配置しました。


暗記戦略の全体像:どこを・どこまで覚えるか

具体的な36箇所に入る前に、暗記の「設計図」を共有します。基準暗記でつまずく受験生の多くは、すべてを同じ精度で覚えようとして時間切れになります。次の3層構造を意識してください。

層 覚える精度 該当する典型例 主に効く試験
第1層 価格の種類・基本概念 一字一句 正常価格・限定価格・特定価格・特殊価格、最有効使用 短答式・論文式
第2層 三方式と手順 意義は正確に、算式は完全に 原価法・取引事例比較法・収益還元法の意義、DCF法 論文式(計算・記述)
第3層 各論・周辺論点 キーワードと枠組み 更地・借地権・底地、賃料、証券化 短答式(正誤判断)

短答式では「定義の言い換えが正しいか」を問う正誤問題が中心になるため、キーワードの抜き差しに気づける程度まで覚えれば対応できます。一方、論文式では定義をそのまま記述させる、あるいは定義を踏まえて論証させるため、第1層は一字一句まで精度を上げる必要があります。この温度差を理解せず全箇所を丸暗記しようとすると破綻します。

さらに重要なのが、「認識できる」と「再生できる」は別の能力だという点です。テキストを眺めて「知っている」と感じるのは認識であり、白紙に書き出せるのが再生です。短答式は認識で戦えますが、論文式は再生でしか戦えません。次章の4手法は、この再生能力を作るための工程表です。


覚え方の実務手順:音読・書き取り・穴埋め・想起をどう当てるか

「36箇所を覚えろ」と言われても、覚え方が定まらないと手が止まります。ここでは4つの手法の役割分担と、それを36箇所に当てる日次手順を示します。

4手法の役割分担

手法 やること 鍛えられる力 1箇所あたりの時間
音読 声に出して3〜5回読む 語順・言い回しの定着(入力) 1〜2分
書き取り 見ながら1回、隠して1回書く 漢字・助詞の正確さ(出力の下地) 3〜5分
穴埋め キーワードを伏せて埋める キーワードの弁別(短答直結) 30秒〜1分
想起 見出しだけ見て白紙に再現 再生(論文直結) 2〜3分

順序は必ず音読 → 書き取り → 穴埋め → 想起です。逆順にすると、覚えていない段階で想起を試みることになり、時間だけ溶けて定着しません。逆に音読と書き取りだけで止めると、認識はできるが再生できない状態で本番を迎えます。

1日30分の標準サイクル(1日6箇所)

36箇所を6日で1周する設計です。1日あたり6箇所、30分。

  1. 導入(3分)|前日の6箇所を見出しだけ見て白紙に再現する。書けなかった箇所に印を付ける。ここは採点せず、書けたか書けなかったかだけ記録します。
  2. 音読(8分)|当日の6箇所を、逐語部分だけ声に出して各3回読む。目で追うのではなく、キーワードで一拍置く読み方にします。たとえば正常価格なら「市場性を有する不動産について/現実の社会経済情勢の下で/合理的と考えられる条件を満たす市場で/形成されるであろう市場価値を表示する/適正な価格」と5ブロックに区切って読みます。ブロックの切れ目が、そのまま論文で書くときの語順の切れ目になります。
  3. 書き取り(12分)|6箇所のうち「一字一句暗記」に分類したものだけを、見ながら1回、隠して1回書きます。隠して書いた方を原文と突き合わせ、違った箇所に赤で丸を付ける。この赤丸の位置が、あなたの弱点キーワードです。
  4. 穴埋め(4分)|赤丸を付けたキーワードだけを伏せた穴埋めを自作し、その場で埋める。当日中に2回やります。
  5. 締め(3分)|当日の6箇所を見出しだけ見て想起。書けなかったものは翌日の導入に持ち越します。
1日30分を導入3分・音読8分・書き取り12分・穴埋め4分・締め3分の長さどおりの帯に分け、各工程の道具を線画で添えて、最初と最後の2区間がどちらも見出しだけを見て白紙に再現する想起の時間であることを示した図。

1日30分の暗記サイクル

6日サイクルを4回、24日で仕上げる

周回 日数 やること 到達目標
1周目 6日 音読中心。書き取りは第1層のみ 全36箇所の内容を「認識」できる
2周目 6日 書き取り中心。赤丸キーワードを特定 弱点キーワードが一覧化されている
3周目 6日 穴埋め中心。赤丸だけを繰り返す 短答の1語トラップを見抜ける
4周目 6日 想起中心。白紙再現のみ 第1層12箇所を白紙に再現できる

4周目に入ってもなお書けない箇所は、通常3〜6箇所に絞り込まれています。ここだけを直前期に毎日回せば、投下時間は1日10分未満で維持できます。全部を毎日回そうとしないことが、この設計の要点です。

箇所のタイプ別に手法を切り替える

36箇所は性質が3つに分かれ、当てるべき手法も変わります。

タイプ 該当箇所の例 主に使う手法 使わない手法
定義型(1文の条文) 正常価格、限定価格、再調達原価、実質賃料 音読+書き取り+想起 —
列挙型(要素が並ぶ) 土地の特性、減価の3要因、取引事例の要件 穴埋め+頭文字での想起 全文書き取りは非効率
手順型(流れがある) 取引事例比較法、試算価格の調整、鑑定評価の手順 矢印で流れを図示→想起 音読の反復は効きにくい

列挙型を全文書き取りするのは時間の無駄です。列挙型は「個数」と「頭文字」を先に固定し、そこから中身を展開する形にします。たとえば減価の3要因なら「物・機・経」の3文字を先に固定し、各要因の具体例を1つずつぶら下げます。手順型は矢印記法(「収集→選択→事情補正・時点修正→要因比較→比較考量」)で骨格を先に固め、あとから条文表現に肉付けします。

音読の質を上げる3つのルール

  1. 区切りを固定する|同じ位置で息継ぎする。毎回違う位置で切ると語順が定着しません。
  2. キーワードを強く読む|「相対的稀少性」「合理的かつ合法的」のように、短答で入れ替えられる語を強く読む。強弱が記憶のフックになります。
  3. 速度を変えて2回目を読む|1回目は通常速度、2回目は倍速。倍速で読めない箇所は、実は覚えていない箇所です。

総論第1章:不動産の鑑定評価に関する基本的考察

箇所1:不動産の価格の三要素

不動産の価格は、一般に、(1)その不動産に対してわれわれが認める効用、(2)その不動産の相対的稀少性、(3)その不動産に対する有効需要の三者の相関結合によって生ずる不動産の経済価値を、貨幣額をもって表示したものである。― 不動産鑑定評価基準 総論第1章第1節

落とすと減点されるキーワード: 効用 / 相対的稀少性 / 有効需要 / 相関結合 / 貨幣額

答案に書く短縮版: 不動産の価格は、効用・相対的稀少性・有効需要の三者の相関結合によって生ずる経済価値を貨幣額で表示したものである。

この三要素は基準全体の出発点であり、価格形成要因(箇所5)の定義にもそのまま再登場します。三要素を覚える際は、それぞれが需要側・供給側のどちらに属するかをセットで理解すると、論文の論証に厚みが出ます。

要素 意味 需要・供給
効用 人間の欲望を満たす財の能力 需要側
相対的稀少性 需要に対する供給の相対的な少なさ 供給側
有効需要 購買力に裏づけられた現実の需要 需要側

短答での問われ方: 「絶対的稀少性」への書き換えが最頻出です。基準は相対的稀少性であり、需要との関係で相対的に少ないことを意味します。次に多いのが「三者の総和」への書き換えで、正しくは「相関結合」です。単純な足し算ではありません。さらに「有効需要」を「潜在需要」に替える肢もあります。有効需要は購買力の裏づけを伴う点が核心です。

論文での問われ方: 単独で問われるより、価格形成要因や鑑定評価の意義の冒頭に置く「導入の1文」として使われます。この1文を正確に書けると、以降の論述の土台が安定します。

箇所2:不動産の鑑定評価の定義

不動産の鑑定評価は、その対象である不動産の経済価値を判定し、これを貨幣額をもって表示することである。― 不動産鑑定評価基準 総論第1章第3節

落とすと減点されるキーワード: 経済価値 / 判定 / 貨幣額をもって表示

答案に書く短縮版: 鑑定評価とは、対象不動産の経済価値を判定し、これを貨幣額をもって表示することをいう。

「判定」という言葉が要です。鑑定評価は単なる事実の調査・記録ではなく、専門家が経済価値を判定する主体的な専門行為であるという点が、後の鑑定評価報告書(箇所30)の議論につながります。同じ第3節には「不動産の鑑定評価とは、不動産の価格に関する専門家の判断であり、意見である」という有名な一文もあり、専門家性を論じる際の引用元になります。

短答での問われ方: 「判定」を「調査」「算定」に替える肢。鑑定評価は算定作業ではなく判定行為である、という区別が問われます。

論文での問われ方: 「鑑定評価の社会的公共的意義を論ぜよ」型の設問の書き出しに使います。定義→専門家の判断・意見である旨→価格秩序の中での位置づけ、という3段で書くと安定します。

箇所3:土地の特性

土地は他の一般の諸財と異なって次のような特性を持っている。(1)自然的特性として、地理的位置の固定性、不動性(非移動性)、永続性(不変性)、不増性、個別性(非同質性、非代替性)等を有し、固定的であって硬直的である。(2)人文的特性として、用途の多様性(用途の競合、転換及び併存の可能性)、併合及び分割の可能性、社会的及び経済的位置の可変性等を有し、可変的であって伸縮的である。― 不動産鑑定評価基準 総論第1章第2節

落とすと減点されるキーワード: 固定的であって硬直的 / 可変的であって伸縮的 / 不増性 / 用途の多様性

答案に書く短縮版: 土地は、自然的特性として位置の固定性・不動性・永続性・不増性・個別性を有して固定的・硬直的であり、人文的特性として用途の多様性・併合分割の可能性・社会的経済的位置の可変性を有して可変的・伸縮的である。

自然的特性は「動かない・なくならない・増えない・同じものがない」と束ねると思い出しやすくなります。自然的特性の末尾が「固定的であって硬直的」、人文的特性の末尾が「可変的であって伸縮的」という対比表現は、論文で1行加えるだけで理解度が伝わる部分なので落とさないでください。

区分 特性 評価への影響
自然的特性 地理的位置の固定性・不動性 地域分析の必要性
自然的特性 永続性・不増性 減価しにくい、供給の硬直性
自然的特性 個別性 一物一価が成立しにくい→個別分析
人文的特性 用途の多様性 最有効使用の判定
人文的特性 併合・分割の可能性 限定価格(箇所8)の背景
人文的特性 社会的・経済的位置の可変性 価格形成要因の変動

短答での問われ方: 自然的特性と人文的特性の項目を入れ替える肢が定番です。「併合及び分割の可能性」を自然的特性に含める、「不増性」を人文的特性に置く、といった作り方です。また「永続性」を「不変性」とだけ書いて別物のように見せる肢もありますが、基準は永続性の言い換えとして(不変性)を併記しています。

論文での問われ方: 「不動産の特性が鑑定評価に与える影響」型。個別性→個別分析、地理的位置の固定性→地域分析、不増性→供給の硬直性、と特性と評価手続の対応で論じます。


総論第2章:不動産の種別及び類型

箇所4:種別と類型の定義

不動産の種別とは、不動産の用途に関して区分される不動産の分類をいい、不動産の類型とは、その有形的利用及び権利関係の態様に応じて区分される不動産の分類をいう。― 不動産鑑定評価基準 総論第2章

落とすと減点されるキーワード: 用途 / 有形的利用 / 権利関係の態様

答案に書く短縮版: 種別は用途に関して区分される分類、類型は有形的利用及び権利関係の態様に応じて区分される分類である。

種別と類型は短答式で頻出の混同ポイントです。「宅地・農地・林地」は用途による区分なので種別、「更地・建付地・底地・借地権」は有形的利用と権利関係による区分なので類型です。あわせて、両者を包括する概念が「不動産の種類」である点も押さえます。基準は「不動産の種類とは、不動産の種別及び類型の二面から成る複合的な不動産の概念」と定めています。種別と類型の完全整備も参照してください。

区分軸 名称 具体例
用途 種別 宅地、農地、林地、見込地、移行地
有形的利用+権利関係 類型 更地、建付地、借地権、底地、区分地上権、区分所有建物及びその敷地

短答での問われ方: 定義の「用途」と「有形的利用及び権利関係の態様」を入れ替える肢が最頻出です。次に、具体例を誤った側に置く肢(「更地は種別の一つである」等)。「見込地・移行地は種別、区分地上権は類型」という境界例まで押さえると取りこぼしません。

論文での問われ方: 対象不動産の確定や適用手法の選択と絡めて出ます。「類型が異なれば適用手法が異なる」という接続で使います。


総論第3章:不動産の価格を形成する要因

箇所5:価格形成要因の定義

不動産の価格を形成する要因(以下「価格形成要因」という。)とは、不動産の効用及び相対的稀少性並びに不動産に対する有効需要の三者に影響を与える要因をいう。― 不動産鑑定評価基準 総論第3章

落とすと減点されるキーワード: 効用 / 相対的稀少性 / 有効需要 / 影響を与える要因

答案に書く短縮版: 価格形成要因とは、効用・相対的稀少性・有効需要の三者に影響を与える要因をいう。

箇所1の三要素が定義にそのまま組み込まれている点に注目してください。価格形成要因は「三要素に影響を与えるもの」と定義されることで、箇所1と論理的に連結されています。あわせて、基準が「価格形成要因を市場参加者の観点から明確に把握し」と求めている点も重要です。市場参加者の視点という限定は、地域分析(箇所12)や個別分析にも一貫して現れます。価格形成要因の解説も参照してください。

短答での問われ方: 「三者を構成する要因」「三者から影響を受ける要因」といった因果の向きの反転が定番です。要因が三者に影響を与える、という向きを間違えないこと。

論文での問われ方: 「価格形成要因の分析はなぜ必要か」型。三要素との連結→常に変動する→推移及び動向並びに相互関係の分析が必要、という流れで書きます。

箇所6:一般的要因・地域要因・個別的要因の定義

3つの定義はいずれも短答の直撃を受けます。逐語で確認してください。

一般的要因とは、一般経済社会における不動産のあり方及びその価格の水準に影響を与える要因をいう。それは、自然的要因、社会的要因、経済的要因及び行政的要因に大別される。― 不動産鑑定評価基準 総論第3章第1節

地域要因とは、一般的要因の相関結合によって規模、構成の内容、機能等にわたる各地域の特性を形成し、その地域に属する不動産の価格の形成に全般的な影響を与える要因をいう。― 不動産鑑定評価基準 総論第3章第2節

個別的要因とは、不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因をいう。― 不動産鑑定評価基準 総論第3章第3節

落とすと減点されるキーワード: 一般経済社会 / 一般的要因の相関結合 / 全般的な影響 / 個別性を生じさせ / 個別的に形成する

答案に書く短縮版: 一般的要因は一般経済社会における不動産のあり方及び価格水準に影響を与える要因、地域要因は一般的要因の相関結合により地域の特性を形成し地域の不動産の価格形成に全般的な影響を与える要因、個別的要因は不動産に個別性を生じさせ価格を個別的に形成する要因である。

階層 定義の核心 代表例
一般的要因 一般経済社会における不動産のあり方及び価格水準に影響 人口、物価、金利、税制、土地利用規制
地域要因 一般的要因の相関結合により地域の特性を形成し全般的に影響 街路条件、交通・接近条件、環境条件、行政的条件
個別的要因 個別性を生じさせ、価格を個別的に形成 間口、奥行、地積、形状、角地

一般的要因の4分類は「自社経行(じしゃけいぎょう)=自然・社会・経済・行政」のように頭文字でまとめると順序ごと再現しやすくなります。

短答での問われ方: 地域要因の定義から「一般的要因の相関結合によって」を抜く肢、個別的要因の定義を「地域の特性を形成する」に替える肢が定番です。地域要因は一般的要因が相関結合した結果であるという上下関係が問われます。また、一般的要因の4分類に「文化的要因」「技術的要因」を紛れ込ませる肢もあります。

論文での問われ方: 3階層の関係を説明したうえで、地域分析(地域要因)と個別分析(個別的要因)へ接続させる設問。「一般的要因は各手順で常に考慮され、価格判定の妥当性の検討に活用しなければならない」という総論第7章第1節の規律まで書けると加点されます。


総論第4章:不動産の価格に関する諸原則

箇所11:最有効使用の原則

番号は11のままですが、最有効使用は総論第4章の諸原則の一つです。総論第5章(鑑定評価の基本的事項)に置かれていると誤解しやすいので、所属章ごと覚えてください。

不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(以下「最有効使用」という。)を前提として把握される価格を標準として形成される。この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。― 不動産鑑定評価基準 総論第4章Ⅳ

落とすと減点されるキーワード: 客観的にみて / 良識と通常の使用能力を持つ人 / 合理的かつ合法的 / 最高最善 / 標準として

答案に書く短縮版: 不動産の価格は、その効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(最有効使用)を前提として把握される価格を標準として形成される。最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づく。

最有効使用は鑑定評価の根本原則であり、一字一句暗記の代表格です。「良識と通常の使用能力を持つ人」という主体の限定、「客観的にみて」という客観性の要請、「合理的かつ合法的」という二重の制約を落とさないことが重要です。特殊な能力を持つ人を想定しない/違法な使用を前提としないという2点が論証の柱になります。

あわせて、同じ第4章の但し書きも重要です。基準は「ある不動産についての現実の使用方法は、必ずしも最有効使用に基づいているものではなく、不合理な又は個人的な事情による使用方法のために、当該不動産が十分な効用を発揮していない場合がある」と注意を促しています。現実の使用=最有効使用ではないという一文は、短答でも論文でも使えます。

判定上の留意点(総論第6章第2節Ⅱ2)も併せて押さえます。

留意点 内容
主体 良識と通常の使用能力を持つ人が採用するであろう使用方法であること
持続性 使用収益が将来相当の期間にわたって持続し得ること
時期 効用を十分に発揮し得る時点が予測し得ない将来でないこと
標準的使用との関係 個々の最有効使用は近隣地域の地域の特性の制約下にある
変動 地域要因の変動が客観的に予測される場合はそれを勘案する
建物と更地 建物及びその敷地と更地の最有効使用は必ずしも一致しない

短答での問われ方: 「主観的にみて」への反転、「合理的又は合法的」への接続詞すり替え、「最高最善」を「最も収益性の高い」に替える肢が典型です。また「現実の使用方法は常に最有効使用である」という断定肢も定番の誤りです。「良識と通常の」を「専門的な」に替える肢は自信を持って誤りと判断できるようにしてください。

論文での問われ方: 最有効使用の原則を説明させたうえで、更地の評価や建物及びその敷地の評価への当てはめを論じさせる設問が定番です。定義→留意点(持続性・時期・標準的使用との関係)→当てはめ、の3段構成が書きやすい形です。


総論第5章:鑑定評価の基本的事項

箇所7:正常価格の定義

正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第3節

落とすと減点されるキーワード: 市場性を有する / 現実の社会経済情勢の下で / 合理的と考えられる条件を満たす市場 / 市場価値を表示する / 適正な価格

答案に書く短縮版: 正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。

正常価格は4つの価格の基準点であり、最優先で一字一句暗記すべき箇所です。「合理的と考えられる条件を満たす市場」の中身も基準が明示しています。

条件 内容
(1)市場参加者 自由意思に基づいて市場に参加し、参入、退出が自由であること
(2)取引形態 市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものではないこと
(3)公開期間 対象不動産が相当の期間市場に公開されていること

さらに(1)の市場参加者は、自己の利益を最大化するため慎重かつ賢明に予測し、行動するものとされ、①売り急ぎ・買い進み等をもたらす特別な動機がないこと、②通常の知識や情報を得ていること、③通常必要と認められる労力・費用を費やしていること、④対象不動産の最有効使用を前提とした価値判断を行うこと、⑤買主が通常の資金調達能力を有していること、の5要件を満たすものとされています。④が最有効使用(箇所11)と正常価格を接続する結節点です。

短答での問われ方: 「市場性を有する」を抜く肢、「市場価値」を「取引価格」に替える肢、公開期間を「一定の期間」「十分な期間」に替える肢(正しくは相当の期間)が典型です。市場参加者の要件では「専門的な知識や情報を得ていること」への置換が狙われます。正しくは通常の知識や情報です。

論文での問われ方: 4価格の書き分けの中心。正常価格の定義→3条件→条件が欠ける場合に他の価格概念へ移行する、という関係を説明させる設問が繰り返し出ます。

箇所8:限定価格の定義

限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第3節

落とすと減点されるキーワード: 併合又は分割 / 正常価格と同一の市場概念の下において / 市場価値と乖離 / 市場が相対的に限定される / 取得部分

答案に書く短縮版: 限定価格とは、市場性を有する不動産について、併合又は分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下で形成されるであろう市場価値と乖離することにより市場が相対的に限定される場合における、取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。

基準が挙げる3類型を正確に言えるようにしてください。

  1. 借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合
  2. 隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合
  3. 経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合

短答での問われ方: 「市場が絶対的に限定される」への書き換え(正しくは相対的)、「取得部分」を「対象不動産全体」に替える肢、3類型に「借地権者以外の第三者が底地を取得する場合」を混ぜる肢が典型です。3類型目の「経済合理性に反する分割」という限定を落とすと、通常の分筆売買まで限定価格になってしまいます。

論文での問われ方: 限定価格と特定価格の書き分け。限定価格は当事者の限定(市場限定)、特定価格は評価目的の限定という軸で対比させます。

箇所9:特定価格の定義

特定価格とは、市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする鑑定評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第3節

落とすと減点されるキーワード: 法令等による社会的要請 / 鑑定評価目的の下で / 正常価格の前提となる諸条件を満たさない / 市場価値と乖離することとなる

答案に書く短縮版: 特定価格とは、市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする鑑定評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより正常価格と同一の市場概念の下で形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合における、不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。

特定価格は「市場性はあるが、正常価格の前提条件を満たさない」点で限定価格と区別されます。背景にあるのは法令等による社会的要請です。基準が挙げる3類型は次のとおりです。

類型 求める価格
証券化対象不動産に係る鑑定評価目的 投資家に示すための投資採算価値を表す価格
民事再生法に基づく鑑定評価目的 早期売却を前提とした価格
会社更生法又は民事再生法に基づく鑑定評価目的 事業の継続を前提とした価格

短答での問われ方: 定義の中核である「法令等による社会的要請」を「依頼者の要請」「特別の依頼目的」に替える肢が最頻出です。また、3類型で法律名と前提を入れ替える肢(民事再生法=事業継続、会社更生法=早期売却、と逆に書く)が狙われます。民事再生法は早期売却と事業継続の両方に登場する点を押さえてください。さらに「市場性を有しない不動産について」に替えて特殊価格と混同させる肢もあります。

論文での問われ方: 証券化対象不動産の評価(箇所36)と接続させる設問。特定価格を求めなければならない場合がある旨(総論第5章第3節Ⅰ)まで書けると精度が上がります。

箇所10:特殊価格の定義

特殊価格とは、文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第3節

落とすと減点されるキーワード: 一般的に市場性を有しない / 利用現況等を前提 / 文化財等

答案に書く短縮版: 特殊価格とは、文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提とした経済価値を適正に表示する価格をいう。

特殊価格だけが「市場性を有しない不動産」を対象とする点が決定的な区別軸です。基準が挙げる例は、文化財の指定を受けた建造物、宗教建築物、現況による管理を継続する公共公益施設の用に供されている不動産について、その保存等に主眼をおいた鑑定評価を行う場合です。

正常価格・限定価格・特定価格・特殊価格で4つの価格を詳しく解説しています。

短答での問われ方: 「市場性を有する不動産について」への反転、「利用現況等」を「最有効使用」に替える肢が典型です。特殊価格は現況を前提とするので、最有効使用を前提としません。ここは特に狙われます。

4つの価格の比較表(暗記の最重要ポイント)

短答式・論文式を問わず、この4価格の区別は最頻出論点です。「市場性の有無」と「前提条件」の2軸で覚えると混同しません。

価格 市場性 区別の核心 最有効使用を前提とするか 代表例
正常価格 有 すべての前提条件を満たす する 一般的な売買
限定価格 有 市場が相対的に限定される する(併合・分割後の状態で) 借地権者の底地併合、隣接地併合、経済合理性に反する分割
特定価格 有 法令等の社会的要請で前提条件を満たさない 評価目的により修正される 証券化、民事再生、会社更生
特殊価格 無 一般的に市場性を有しない しない(利用現況等が前提) 文化財、宗教建築物、公共公益施設

二分木で覚える

まず「市場性が有るか無いか」で特殊価格を切り離す。次に市場性のある3つを「正常価格の前提条件を満たすか」で正常価格と他2つに分ける。最後に「市場限定(併合・分割)か、法令等の社会的要請か」で限定価格と特定価格を分ける。この3段の二分木で確実に区別できます。

4つの価格を3段の二分木で分けた図。まず市場性の有無で特殊価格を切り離し、次に正常価格の前提条件を満たすかで正常価格を分け、最後に併合・分割による市場の相対的限定か法令等による社会的要請かで限定価格と特定価格を分ける。

4つの価格を分ける二分木

なお、賃料側にも同じ構造があります。正常賃料・限定賃料・継続賃料の3種類で、限定賃料は限定価格と同一の市場概念の下における新規賃料、継続賃料は賃貸借等の継続に係る特定の当事者間において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料です。価格が4種類・賃料が3種類(特殊賃料は存在しない)という個数の非対称が短答で問われます。


総論第6章:地域分析及び個別分析

箇所12:近隣地域の定義

近隣地域とは、対象不動産の属する用途的地域であって、より大きな規模と内容とを持つ地域である都市あるいは農村等の内部にあって、居住、商業活動、工業生産活動等人の生活と活動とに関して、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域をいい、対象不動産の価格の形成に関して直接に影響を与えるような特性を持つものである。― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第1節

落とすと減点されるキーワード: 用途的地域 / 地域的にまとまりを示している / 直接に影響を与える

答案に書く短縮版: 近隣地域とは、対象不動産の属する用途的地域であって、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域をいい、対象不動産の価格形成に直接影響を与える特性を持つ。

あわせて類似地域の定義も逐語で押さえます。

類似地域とは、近隣地域の地域の特性と類似する特性を有する地域であり、その地域に属する不動産は、特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを持つものである。― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第1節

近隣地域の特性は、通常、その地域に属する不動産の一般的な標準的使用に具体的に現れます。この標準的使用は、その地域に属する不動産それぞれの最有効使用を判定する有力な標準となります。「有力な標準」であって「絶対的な基準」ではない点が要注意です。

短答での問われ方: 「対象不動産の価格の形成に間接的に影響を与える」への書き換え(正しくは直接)、標準的使用を「最有効使用そのもの」とする肢が典型です。また「近隣地域は固定的である」という肢も誤りで、基準は地域要因の推移・動向により変化していくものとしています。

論文での問われ方: 地域分析の意義から標準的使用の判定、そして個別分析の最有効使用へ接続する流れを書かせる設問。近隣地域→標準的使用→最有効使用、という接続を明示できるかが分かれ目です。

箇所13:同一需給圏の定義

同一需給圏とは、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいう。それは、近隣地域を含んでより広域的であり、近隣地域と相関関係にある類似地域等の存する範囲を規定するものである。― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第1節

落とすと減点されるキーワード: 代替関係 / 相互に影響を及ぼす / 圏域 / 近隣地域を含んでより広域的

答案に書く短縮版: 同一需給圏とは、対象不動産と代替関係が成立し、価格形成について相互に影響を及ぼす関係にある他の不動産の存する圏域をいい、近隣地域を含んでより広域的である。

概念 範囲のイメージ 役割
近隣地域 対象不動産が属する用途的地域 標準的使用の判定、地域要因比較の基準
類似地域 近隣地域の地域の特性と類似する特性を有する地域 事例収集の対象
同一需給圏 代替関係が成立する圏域全体 事例選択の外枠

同一需給圏は種類・性格・規模に応じた需要者の選好性によって範囲が変わります。住宅地は通勤可能圏、高度商業地は広域、大工場地は全国的規模、というように種別ごとの傾向が定められている点も短答の頻出材料です。また、近隣地域の外かつ同一需給圏内の類似地域の外に存する不動産であっても、用途・規模・品等等の類似性に基づき代替・競争関係が成立する場合がある(同一需給圏内の代替競争不動産)という規定も重要です。

地図の上に、代替関係が成立する広い圏域としての同一需給圏を描き、その中に対象不動産を含む近隣地域、離れた位置にある類似地域2つ、どちらの地域の外にもある同一需給圏内の代替競争不動産を配置して、包含関係を示した図。

近隣地域と同一需給圏の関係

短答での問われ方: 「同一需給圏は近隣地域の内部にある」という包含関係の反転、「同一需給圏の範囲は不動産の種類にかかわらず一定である」という肢が典型です。また、住宅地と商業地の傾向を入れ替える肢も定番です。

論文での問われ方: 取引事例の選択(箇所18)の前提として問われます。同一需給圏の判定→事例収集範囲の画定、という接続で書きます。


総論第7章第1節:価格を求める鑑定評価の手法

箇所14:原価法の意義

原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を積算価格という。)。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節Ⅱ

落とすと減点されるキーワード: 価格時点における / 再調達原価 / 減価修正 / 積算価格

答案に書く短縮版: 原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、これに減価修正を行って試算価格(積算価格)を求める手法である。

原価法は「再調達原価を求める→減価修正を行う」という2ステップが骨格です。有効性の範囲も基準が定めています。対象不動産が建物又は建物及びその敷地である場合において再調達原価の把握及び減価修正を適切に行えるときに有効であり、土地のみの場合でも再調達原価を適切に求められるときは適用できる、という2段構えです。

手法 価格を求める原理 試算価格の呼称
原価法 費用性(再調達原価−減価) 積算価格
取引事例比較法 市場性(取引事例との比較) 比準価格
収益還元法 収益性(純収益の現在価値) 収益価格

短答での問われ方: 「土地のみの場合には適用できない」という断定肢が最頻出です。基準は再調達原価を適切に求めることができるときは適用できるとしています。また試算価格の呼称を入れ替える肢(原価法→比準価格)も定番です。

論文での問われ方: 三方式の意義と根拠を並べて書かせる設問。費用性・市場性・収益性の対応を最初に示してから各手法の定義を書く形が読みやすい答案になります。

箇所15:再調達原価の定義

再調達原価とは、対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額をいう。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節Ⅱ

落とすと減点されるキーワード: 価格時点において / 再調達することを想定 / 適正な原価の総額

答案に書く短縮版: 再調達原価とは、対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合に必要とされる適正な原価の総額をいう。

構成も押さえます。再調達原価は「発注者が請負者に対して支払う標準的な建設費に、発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を加算」して求めます。標準的な建設費には直接工事費・間接工事費・請負者の適正な利益を含む一般管理費等が入り、通常の付帯費用には建物引渡しまでの資金調達費用や標準的な開発リスク相当額等が含まれる場合があります。

また、建設資材・工法等の変遷により再調達原価を求めることが困難な場合には、同等の有用性を持つものに置き換えて求めた原価(置換原価)を再調達原価とみなします。求める方法には直接法と間接法があり、資料の信頼度に応じていずれかを適用し、必要に応じて併用します。

短答での問われ方: 「請負者の適正な利益は含まない」という肢(誤り。含みます)、「置換原価は再調達原価とは別個の概念であり代用できない」という肢(誤り。みなします)、「直接法と間接法は併用できない」という肢(誤り。必要に応じて併用)が典型です。

論文での問われ方: 原価法の適用過程を書かせる設問の一部として。定義→求める方法(直接法・間接法)→置換原価の例外、の順で書きます。

箇所16:減価の3要因

減価の要因は、物理的要因、機能的要因及び経済的要因に分けられる。これらの要因は、それぞれ独立しているものではなく、相互に関連し、影響を与え合いながら作用していることに留意しなければならない。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節Ⅱ

落とすと減点されるキーワード: 物理的要因 / 機能的要因 / 経済的要因 / 相互に関連し、影響を与え合いながら作用

答案に書く短縮版: 減価の要因は物理的要因・機能的要因・経済的要因に分けられ、これらは独立せず相互に関連し影響を与え合いながら作用する。

基準が挙げる具体例は次のとおりです。この具体例の当てはめが短答の得点源なので、要因と例の対応を正確に覚えてください。

減価要因 基準が挙げる具体例
物理的要因 使用によって生ずる摩滅及び破損、時の経過又は自然的作用によって生ずる老朽化、偶発的な損傷
機能的要因 建物と敷地との不適応、設計の不良、型式の旧式化、設備の不足及びその能率の低下(=機能的陳腐化)
経済的要因 近隣地域の衰退、不動産とその付近の環境との不適合、代替・競争等の関係にある不動産又は付近の不動産との比較における市場性の減退(=経済的不適応)

減価修正の方法は耐用年数に基づく方法と観察減価法の2つで、基準は「これらを併用するものとする」と定めています。耐用年数に基づく方法では、経過年数と経済的残存耐用年数の和として耐用年数を把握し、経済的残存耐用年数が特に重視されます。

短答での問われ方: 具体例を隣の要因に移す肢が最頻出です。「建物と敷地との不適応」は機能的要因、「不動産とその付近の環境との不適合」は経済的要因という、似た表現の2つの取り違えが最大の罠です。前者は建物と敷地の関係、後者は不動産と外部環境の関係、と主語で切り分けてください。また「いずれか一方を選択して適用する」という肢は誤りで、基準は併用を求めています。「耐用年数は経過年数と法定耐用年数の和」という肢も誤りで、正しくは経済的残存耐用年数との和です。

古い建物と敷地と周辺の街区を等角図で描き、建物そのものの物理的要因、建物と敷地の関係である機能的要因、不動産と外部環境の関係である経済的要因を入れ子の枠で示した図。建物と敷地との不適応は機能的要因、付近の環境との不適合は経済的要因と分かる。

減価の3要因の切り分け

論文での問われ方: 減価修正の目的(減価額を再調達原価から控除して価格時点における適正な積算価格を求めること)から書き起こし、3要因→2方法→併用、の順で展開します。

箇所17:取引事例比較法の意義

取引事例比較法は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を比準価格という。)。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節Ⅲ

落とすと減点されるキーワード: 多数の取引事例 / 適切な事例の選択 / 事情補正及び時点修正 / 地域要因の比較及び個別的要因の比較 / 比較考量

答案に書く短縮版: 取引事例比較法は、多数の取引事例を収集して適切な事例を選択し、取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ地域要因及び個別的要因の比較を行って求めた価格を比較考量して試算価格(比準価格)を求める手法である。

処理の流れを一本の線で言えるようにします。

$$\text{収集} \rightarrow \text{選択} \rightarrow \text{事情補正} \cdot \text{時点修正} \rightarrow \text{地域要因} \cdot \text{個別的要因の比較} \rightarrow \text{比較考量}$$

短答での問われ方: 「多数の」を落として「取引事例を収集し」とする肢、事情補正と時点修正の内容を入れ替える肢(事情補正=特殊な事情の補正、時点修正=取引時点と価格時点の価格水準の差の修正)が定番です。事情補正の「特殊な事情」とは、正常価格を求める場合には、正常価格の前提となる現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる諸条件を欠くに至らしめる事情である、という定義まで押さえておくと1問拾えます。

論文での問われ方: 取引事例比較法の適用過程を段階ごとに説明させる設問。各段階に対応する要件(箇所18)を紐づけて書くと構成が締まります。

箇所18:取引事例等の選択要件

ここは要件が「4つ」なのか「3つ」なのかで混乱しやすい箇所です。基準は2か所で規定しており、位置づけが異なります。

総論第7章第1節Ⅰ2(事例の収集及び選択。原価法・取引事例比較法・収益還元法に共通する一般規定)では、取引事例等は次の要件の全部を備えるもののうちから選択するとされています。

# 要件 対応する処理
(1) 同一需給圏内の類似地域等に存する不動産、又は同一需給圏内の代替競争不動産に係るものであること 地域要因の比較の前提
(2) 取引等の事情が正常なものと認められること又は正常なものに補正することができること 事情補正
(3) 時点修正をすることが可能なものであること 時点修正
(4) 地域要因の比較及び個別的要因の比較が可能なものであること 要因比較

一方、取引事例比較法の各論的規定(同節Ⅲ2(1))では、地域の要件は本文で述べられ、箇条書きの要件は①事情が正常又は補正可能、②時点修正が可能、③要因比較が可能の3つとして掲げられています。

落とすと減点されるキーワード: 要件の全部を備える / 同一需給圏内の類似地域等 / 同一需給圏内の代替競争不動産 / 必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域

答案に書く短縮版: 取引事例等は、①同一需給圏内の類似地域等又は同一需給圏内の代替競争不動産に係るものであること、②取引等の事情が正常又は正常なものに補正できること、③時点修正が可能なこと、④地域要因及び個別的要因の比較が可能なことの全部を備えるものから選択する。

短答での問われ方: 「要件のいずれかを備えるもの」への書き換え(正しくは全部)が最頻出です。次に、地域の要件を「近隣地域に存するものに限る」と狭める肢。基準は原則として近隣地域又は同一需給圏内の類似地域とし、必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域から、最有効使用が標準的使用と異なる場合等には同一需給圏内の代替競争不動産から選択できるとしています。また「投機的取引であると認められる事例」を使えるとする肢は明確な誤りです。基準はこれを適正さを欠くものとして排除しています。

論文での問われ方: 事例選択の要件と、要件が各処理工程に対応している理由を書かせる設問。「補正・修正・比較ができるか」という観点で整理すると要件を取りこぼしません。

箇所19:収益還元法の意義

収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を収益価格という。)。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節Ⅳ

落とすと減点されるキーワード: 将来生み出すであろうと期待される / 純収益 / 現在価値の総和 / 収益価格

答案に書く短縮版: 収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めて試算価格(収益価格)を求める手法である。

「将来生み出すであろうと期待される純収益」「現在価値の総和」が核心です。あわせて純収益の定義も押さえます。純収益とは、不動産に帰属する適正な収益をいい、総収益から資本・労働・経営(組織)の貢献度に応じた分配分を控除した残余の部分です(収益配分の原則の具体化)。

短答での問われ方: 「過去に生み出した純収益」への時制の反転が最頻出です。将来期待される純収益である点が核心です。また「総収益の現在価値の総和」への書き換え(正しくは純収益)も定番です。

論文での問われ方: 収益還元法の意義と有効性、そして取引価格に対する験証手段としての機能まで書かせる設問。基準は「市場における不動産の取引価格の上昇が著しいときは、先走りがちな取引価格に対する有力な験証手段として活用されるべき」としており、この一文は加点対象になります。

箇所20:収益還元法の適用範囲

したがって、この手法は、文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外のものには基本的にすべて適用すべきものであり、自用の不動産といえども賃貸を想定することにより適用されるものである。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節Ⅳ

落とすと減点されるキーワード: 基本的にすべて適用すべき / 市場性を有しない不動産以外 / 自用の不動産 / 賃貸を想定することにより

答案に書く短縮版: 収益還元法は、文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外には基本的にすべて適用すべきであり、自用の不動産であっても賃貸を想定することにより適用される。

収益還元法は理論的に最も普遍的な手法であるという基準の立場を示す重要箇所です。一字一句で固めてください。

短答での問われ方: 「自用の不動産には適用できない」という断定肢が最頻出です。次に「賃貸用不動産に限り適用する」とする肢。基準は賃貸用不動産又は賃貸以外の事業の用に供する不動産の価格を求める場合に特に有効としているだけで、適用範囲を限定してはいません。「特に有効」と「基本的にすべて適用すべき」を混同させるのがこの箇所の典型的な作問です。

論文での問われ方: 三方式の併用の必要性を論じさせる設問の中で、収益還元法の普遍性を根拠づける箇所として使います。

箇所21:直接還元法の算式

収益価格を求める方法には、一期間の純収益を還元利回りによって還元する方法(以下「直接還元法」という。)と、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法(Discounted Cash Flow法(以下「DCF法」という。))がある。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節Ⅳ
$$P = \frac{a}{R}$$

$P$:求める不動産の収益価格、$a$:一期間の純収益、$R$:還元利回り。

落とすと減点されるキーワード: 一期間の純収益 / 還元利回りによって還元 / 標準化された純収益

答案に書く短縮版: 直接還元法は、一期間の純収益を還元利回りによって還元して収益価格を求める方法であり、$P=a/R$ で表される。

一期間の純収益が500万円、還元利回りが5%($R=0.05$)であれば、収益価格は $P = 500 \div 0.05 = 10{,}000$ 万円となります。なお、直接還元法における純収益は、対象不動産の初年度の純収益を採用する場合と標準化された純収益を採用する場合があるとされています。どちらか一方に固定されていない点に注意してください。

短答での問われ方: 「直接還元法では常に標準化された純収益を用いる」という断定肢が定番の誤りです。初年度の純収益を採用する場合もあります。

箇所22:DCF法の算式と復帰価格

$$P = \sum_{k=1}^{n} \frac{a_k}{(1+Y)^k} + \frac{P_R}{(1+Y)^n}$$

$a_k$:毎期の純収益、$Y$:割引率、$n$:保有期間(売却を想定しない場合には分析期間)、$P_R$:復帰価格。

復帰価格は基準が明確に定義しています。

復帰価格とは、保有期間の満了時点における対象不動産の価格をいい、基本的には次の式により表される。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節Ⅳ
$$P_R = \frac{a_{n+1}}{R_n}$$

$a_{n+1}$:$n+1$期の純収益、$R_n$:保有期間の満了時点における還元利回り(最終還元利回り)。

落とすと減点されるキーワード: 保有期間の満了時点における対象不動産の価格 / 最終還元利回り / $n+1$期の純収益 / 発生時期に応じて現在価値に割り引き

答案に書く短縮版: DCF法は、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計して収益価格を求める方法である。復帰価格は保有期間の満了時点における対象不動産の価格であり、$n+1$期の純収益を最終還元利回りで還元して求める。

項目 直接還元法 DCF法
純収益 一期間の純収益(初年度又は標準化されたもの) 期ごとの純収益(変動を反映)
割戻し 還元利回りで一括 割引率で各期ごと
復帰価格 算式に明示されない 明示的に計上
説明性 簡便 高い(証券化では適用が義務)
適用の選択 収集可能な資料の範囲、対象不動産の類型及び依頼目的に即して適切に選択する 同左

短答での問われ方: 復帰価格を「保有期間中の各期の純収益の合計」とする肢、最終還元利回りを「割引率」に替える肢が典型です。復帰価格の分子は $n+1$ 期の純収益であり $n$ 期ではない点も狙われます。また「DCF法は直接還元法より常に優れている」という価値判断を含む肢は誤りで、基準は資料の範囲・類型・依頼目的に即した選択を求めています。

論文での問われ方: 直接還元法とDCF法の比較。直接還元法の計算手順、DCF法の計算手順で計算例を確認しておくと、記述に具体性が出ます。

箇所23:還元利回りと割引率の違い

還元利回りは、直接還元法の収益価格及びDCF法の復帰価格の算定において、一期間の純収益から対象不動産の価格を直接求める際に使用される率であり、将来の収益に影響を与える要因の変動予測と予測に伴う不確実性を含むものである。割引率は、DCF法において、ある将来時点の収益を現在時点の価値に割り戻す際に使用される率であり、還元利回りに含まれる変動予測と予測に伴う不確実性のうち、収益見通しにおいて考慮された連続する複数の期間に発生する純収益や復帰価格の変動予測に係るものを除くものである。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節Ⅳ

落とすと減点されるキーワード: 変動予測と予測に伴う不確実性を含む / 収益見通しにおいて考慮された / 除くもの / DCF法の復帰価格の算定においても還元利回りを使用

答案に書く短縮版: 還元利回りは一期間の純収益から価格を直接求める際に使用され、将来の収益に影響を与える要因の変動予測と予測に伴う不確実性を含む。割引率は将来時点の収益を現在価値に割り戻す際に使用され、還元利回りに含まれる変動予測と不確実性のうち、収益見通しで考慮された純収益や復帰価格の変動予測に係るものを除く。

直接還元法では純収益を一期間で捉えるため変動予測を還元利回りに織り込みますが、DCF法では各期の純収益で変動を直接表現するため、その分を割引率から除く、という対応で理解すると暗記が定着します。還元利回りはDCF法の復帰価格の算定でも使う(=DCF法では還元利回りと割引率の両方を使う)という点が、この箇所の最大の落とし穴です。

直接還元法は一期間の純収益を還元利回りで還元し、DCF法は各期の純収益と復帰価格を割引率で価格時点に割り戻す仕組みを上下に並べた図。復帰価格はn+1期の純収益を最終還元利回りで求めるため、DCF法では両方の率を使うことが分かる。

還元利回りと割引率の使われ方

短答での問われ方: 「還元利回りは直接還元法でのみ使用する」という肢(誤り。DCF法の復帰価格算定でも使用)、「割引率は変動予測と不確実性をすべて含む」とする肢(誤り。一部を除く)、両者の説明を丸ごと入れ替える肢が典型です。

論文での問われ方: 両者の異同を説明させたうえで、それぞれの求め方(箇所24)まで展開させる設問。「共に不動産の収益性を表し、収益価格を求めるために用いる」という共通点から書き起こすと、差異が際立ちます。

箇所24:還元利回り・割引率を求める方法

還元利回りを求める方法(4つ)と割引率を求める方法(3つ)は個数も中身も異なるため、セットで覚えます。

還元利回りを求める方法 割引率を求める方法
(ア)類似の不動産の取引事例との比較から求める方法 (ア)類似の不動産の取引事例との比較から求める方法
(イ)借入金と自己資金に係る還元利回りから求める方法 (イ)借入金と自己資金に係る割引率から求める方法
(ウ)土地と建物に係る還元利回りから求める方法 (ウ)金融資産の利回りに不動産の個別性を加味して求める方法
(エ)割引率との関係から求める方法 —

落とすと減点されるキーワード: 土地と建物に係る還元利回り / 割引率との関係から / 金融資産の利回りに不動産の個別性を加味

答案に書く短縮版: 還元利回りは、取引事例との比較、借入金と自己資金に係る還元利回りの加重平均、土地と建物に係る還元利回りの加重平均、割引率との関係の4方法により求める。割引率は、取引事例との比較、借入金と自己資金に係る割引率の加重平均、金融資産の利回りに不動産の個別性を加味する方法の3方法により求める。

短答での問われ方: 還元利回り側に「金融資産の利回りに不動産の個別性を加味して求める方法」を入れる肢、割引率側に「土地と建物に係る割引率から求める方法」を入れる肢が典型です。「土地と建物」は還元利回り側だけ、「金融資産の利回り」は割引率側だけ、と覚えてください。この非対称が唯一の得点ポイントです。


総論第7章第2節:賃料を求める鑑定評価の手法

賃料の手法は、新規賃料(積算法・賃貸事例比較法・収益分析法)と継続賃料(差額配分法・利回り法・スライド法・賃貸事例比較法)に分かれます。まず全体像を固定してください。

区分 手法 求める賃料の呼称
新規賃料 積算法 積算賃料
新規賃料 賃貸事例比較法 比準賃料
新規賃料 収益分析法 収益賃料
継続賃料 差額配分法 (差額配分法による賃料)
継続賃料 利回り法 (利回り法による賃料)
継続賃料 スライド法 (スライド法による賃料)
継続賃料 賃貸事例比較法 比準賃料

重要な非対称: 収益分析法は新規賃料にのみ存在し、継続賃料の手法には含まれません。逆に差額配分法・利回り法・スライド法は継続賃料にのみ存在します。賃貸事例比較法だけが両方に登場します。ここを取り違えると短答で確実に落とします。

新規賃料と継続賃料の2つの円を重ねたベン図。積算法と収益分析法は新規賃料だけ、差額配分法・利回り法・スライド法は継続賃料だけにあり、両方に登場するのは賃貸事例比較法だけであることを示した図。

新規賃料と継続賃料の手法

箇所25:積算法の意義

積算法は、対象不動産について、価格時点における基礎価格を求め、これに期待利回りを乗じて得た額に必要諸経費等を加算して対象不動産の試算賃料を求める手法である(この手法による試算賃料を積算賃料という。)。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節Ⅱ

落とすと減点されるキーワード: 基礎価格 / 期待利回り / 必要諸経費等を加算 / 積算賃料

答案に書く短縮版: 積算法は、価格時点における基礎価格に期待利回りを乗じて得た額に必要諸経費等を加算して試算賃料(積算賃料)を求める手法である。

$$\text{積算賃料} = \text{基礎価格} \times \text{期待利回り} + \text{必要諸経費等}$$

基礎価格は積算賃料を求めるための基礎となる価格で、原価法及び取引事例比較法により求めるとされています。期待利回りは、賃貸借等に供する不動産を取得するために要した資本に相当する額に対して期待される純収益の、その資本相当額に対する割合をいい、求める方法は還元利回りを求める方法に準ずるとされています。必要諸経費等は、減価償却費・維持管理費・公租公課・損害保険料・貸倒れ準備費・空室等による損失相当額の6項目です。

短答での問われ方: 「基礎価格は収益還元法により求める」という肢(誤り。原価法及び取引事例比較法)、「必要諸経費等を控除して」とする肢(誤り。加算)、必要諸経費等に「支払利息」「法人税」を混ぜる肢が典型です。また「償却前の純収益に対応する期待利回りを用いる場合にも減価償却費を計上する」という肢は誤りで、その場合は計上しません。

論文での問われ方: 新規賃料3手法の比較。積算法=費用性(原価法対応)、賃貸事例比較法=市場性(取引事例比較法対応)、収益分析法=収益性(収益還元法対応)という対応で書きます。

箇所26:差額配分法の意義

差額配分法は、対象不動産の経済価値に即応した適正な実質賃料又は支払賃料と実際実質賃料又は実際支払賃料との間に発生している差額について、契約の内容、契約締結の経緯等を総合的に勘案して、当該差額のうち賃貸人等に帰属する部分を適切に判定して得た額を実際実質賃料又は実際支払賃料に加減して試算賃料を求める手法である。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節Ⅲ

落とすと減点されるキーワード: 経済価値に即応した適正な実質賃料 / 実際実質賃料 / 賃貸人等に帰属する部分 / 加減して

答案に書く短縮版: 差額配分法は、対象不動産の経済価値に即応した適正な賃料と実際の賃料との差額のうち、契約の内容・契約締結の経緯等を勘案して賃貸人等に帰属する部分を判定し、これを実際賃料に加減して試算賃料を求める手法である。

「対象不動産の経済価値に即応した適正な実質賃料」は、価格時点において想定される新規賃料であり、積算法・賃貸事例比較法等により求めます。

短答での問われ方: 「賃貸人等に帰属する部分」を「契約当事者に帰属する部分」「賃借人に帰属する部分」に替える肢が最頻出です。基準が配分先として明示しているのは賃貸人等です。次に「加算して」とする肢(正しくは加減。差額がマイナスなら減算します)。さらに「差額の全額を実際賃料に加減する」という肢も誤りで、配分するのは差額のうち賃貸人等に帰属する部分です。

論文での問われ方: 継続賃料4手法の比較の中核。差額配分法は「新規賃料との差額に着目」、利回り法は「利回りに着目」、スライド法は「変動率に着目」、賃貸事例比較法は「事例に着目」という切り口の違いで整理します。

箇所27:利回り法の意義

利回り法は、基礎価格に継続賃料利回りを乗じて得た額に必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法である。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節Ⅲ
$$\text{試算賃料} = \text{基礎価格} \times \text{継続賃料利回り} + \text{必要諸経費等}$$

落とすと減点されるキーワード: 基礎価格 / 継続賃料利回り / 必要諸経費等

答案に書く短縮版: 利回り法は、基礎価格に継続賃料利回りを乗じて得た額に必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法である。

継続賃料利回りは、直近合意時点における基礎価格に対する純賃料の割合を踏まえ、継続賃料固有の価格形成要因に留意しつつ、期待利回り・各賃料改定時の利回り・基礎価格の変動の程度・類似不動産の賃貸借等の事例における利回りを総合的に比較考量して求めます。

短答での問われ方: 「期待利回りを乗じて」とする肢(誤り。継続賃料利回り)、「継続賃料利回りは価格時点における基礎価格に対する純賃料の割合」とする肢(誤り。直近合意時点)が典型です。積算法との違いが「期待利回りか継続賃料利回りか」の1点である点を押さえてください。

箇所28:スライド法の意義

スライド法は、直近合意時点における純賃料に変動率を乗じて得た額に価格時点における必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法である。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節Ⅲ
$$\text{試算賃料} = \text{直近合意時点の純賃料} \times \text{変動率} + \text{価格時点の必要諸経費等}$$

落とすと減点されるキーワード: 直近合意時点における純賃料 / 変動率 / 価格時点における必要諸経費等

答案に書く短縮版: スライド法は、直近合意時点における純賃料に変動率を乗じて得た額に、価格時点における必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法である。

変動率は、直近合意時点から価格時点までの間における経済情勢等の変化に即応する変動分を表すもので、土地及び建物価格の変動、物価変動、所得水準の変動等を示す各種指数や整備された不動産インデックス等を総合的に勘案して求めます。なお、直近合意時点における実際実質賃料又は実際支払賃料に即応する適切な変動率が求められる場合には、当該変動率を乗じて得た額を試算賃料として直接求めることができるという例外規定もあります。

短答での問われ方: 「純賃料」と「必要諸経費等」の時点が異なる点が最大の狙い目です。純賃料は直近合意時点、必要諸経費等は価格時点です。これを揃えて「いずれも直近合意時点」とする肢が定番の誤りです。また「実質賃料に変動率を乗じる」とする肢も誤りで、原則は純賃料です。

時間軸の上に直近合意時点と価格時点を置き、直近合意時点の純賃料に変動率を乗じて価格時点へ運び、価格時点の必要諸経費等を加えて試算賃料を求めるスライド法の流れを示した図。純賃料と必要諸経費等で時点が異なる。

スライド法の2つの時点

新規賃料の4手法、継続賃料の4手法で計算例つきで解説しています。


総論第8章:鑑定評価の手順

箇所29:試算価格又は試算賃料の調整

試算価格又は試算賃料の調整とは、鑑定評価の複数の手法により求められた各試算価格又は試算賃料の再吟味及び各試算価格又は試算賃料が有する説得力に係る判断を行い、鑑定評価における最終判断である鑑定評価額の決定に導く作業をいう。― 不動産鑑定評価基準 総論第8章第8節

落とすと減点されるキーワード: 再吟味 / 説得力に係る判断 / 最終判断である鑑定評価額の決定に導く作業 / 論理的かつ実証的に説明

答案に書く短縮版: 試算価格又は試算賃料の調整とは、複数の手法により求められた各試算価格・試算賃料の再吟味及び説得力に係る判断を行い、鑑定評価額の決定に導く作業をいう。

調整に当たっては、対象不動産の価格形成を論理的かつ実証的に説明できるようにすることが重要とされ、鑑定評価の手順の各段階について客観的、批判的に再吟味し、その結果を踏まえた説得力の違いを適切に反映することにより行います。単純な平均を取る作業ではない点が論文の頻出論点です。

留意事項は次の2系統に分かれます。

系統 項目
再吟味(6項目) ①資料の選択、検討及び活用の適否 ②諸原則の当該案件に即応した活用の適否 ③一般的要因の分析並びに地域分析及び個別分析の適否 ④各種補正、修正等に係る判断の適否 ⑤各手法に共通する価格形成要因に係る判断の整合性 ⑥単価と総額との関連の適否
説得力に係る判断(2項目) ①地域分析及び個別分析の結果と各手法との適合性 ②採用した資料の特性及び限界からくる相対的信頼性

試算価格の調整で詳しく解説しています。

短答での問われ方: 「各試算価格の単純平均により鑑定評価額を決定する」という肢、「調整とは最も信頼性の高い試算価格を一つ選ぶ作業である」という肢が典型的な誤りです。また再吟味6項目に「依頼者の意向との整合性」を混ぜる肢も出ます。

論文での問われ方: 「試算価格の調整の意義と留意点を述べよ」型の直撃設問。定義→論理的かつ実証的な説明の要請→再吟味6項目→説得力2項目、の順で書けば完答に近づきます。


総論第9章:鑑定評価報告書

箇所30:鑑定評価報告書の記載事項

鑑定評価報告書には、少なくともⅠからⅫまでに掲げる事項について、それぞれに定めるところに留意して記載しなければならない。― 不動産鑑定評価基準 総論第9章第2節

記載事項はⅠ〜Ⅻの12項目です。「少なくとも」という限定に注意してください。

# 記載事項
Ⅰ 鑑定評価額及び価格又は賃料の種類
Ⅱ 鑑定評価の条件
Ⅲ 対象不動産の所在、地番、地目、家屋番号、構造、用途、数量等及び対象不動産に係る権利の種類
Ⅳ 対象不動産の確認に関する事項
Ⅴ 鑑定評価の依頼目的及び依頼目的に対応した条件と価格又は賃料の種類との関連
Ⅵ 価格時点及び鑑定評価を行った年月日
Ⅶ 鑑定評価額の決定の理由の要旨
Ⅷ 鑑定評価上の不明事項に係る取扱い及び調査の範囲
Ⅸ 関与不動産鑑定士及び関与不動産鑑定業者に係る利害関係等
Ⅹ 関与不動産鑑定士の氏名
Ⅺ 依頼者及び提出先等の氏名又は名称
Ⅻ 鑑定評価額の公表の有無について確認した内容

落とすと減点されるキーワード: 少なくとも / 鑑定評価額の決定の理由の要旨 / 実地調査を行った年月日 / 公表の有無

答案に書く短縮版: 鑑定評価報告書には、少なくとも鑑定評価額及び価格等の種類、鑑定評価の条件、対象不動産の表示、確認に関する事項、依頼目的との関連、価格時点、鑑定評価額の決定の理由の要旨、不明事項の取扱い及び調査の範囲、利害関係等、関与不動産鑑定士の氏名、依頼者及び提出先等、公表の有無について記載しなければならない。

特に押さえるべきはⅣ 対象不動産の確認に関する事項で、実地調査を行った年月日・実地調査を行った不動産鑑定士の氏名・立会人の氏名及び職業・実地調査を行った範囲(内覧の実施の有無を含む)・実地調査の一部を実施できなかった場合の理由、の5点を記載します。またⅦ 鑑定評価額の決定の理由の要旨には、地域分析・個別分析、最有効使用の判定、手法の適用、試算価格の調整、公示価格との規準、当事者間で事実の主張が異なる事項、その他が含まれます。

短答での問われ方: 「立会人の氏名は記載を要しない」「内覧の実施の有無は記載事項に含まれない」といった、Ⅳの5点を削る肢が定番です。また特定価格を求めた場合には法令等による社会的要請の根拠を、特殊価格を求めた場合には文化財の指定の事実等を明らかにする(Ⅴ)、という対応を入れ替える肢も出ます。

論文での問われ方: 説明責任の観点から報告書の意義を論じさせる設問。「依頼者のみならず第三者に対しても影響を及ぼす」「誤解の生ずる余地を与えないよう留意する」という第1節の作成指針から書き起こすと構成が締まります。


各論第1章:価格に関する鑑定評価

更地・借地権・底地の定義は総論第2章第2節にあり、鑑定評価額の決定方法が各論第1章にあります。定義と手法の所属章が分かれている点が、この3箇所の学習上の要注意ポイントです。

箇所31:更地の定義と鑑定評価

更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう。― 不動産鑑定評価基準 総論第2章第2節

更地の鑑定評価額は、更地並びに配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。― 不動産鑑定評価基準 各論第1章第1節

落とすと減点されるキーワード: 建物等の定着物がなく / 使用収益を制約する権利の付着していない / 比準価格 / 土地残余法による収益価格 / 関連づけて決定

答案に書く短縮版: 更地とは、建物等の定着物がなく、かつ使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう。その鑑定評価額は、比準価格と土地残余法による収益価格を関連づけて決定し、再調達原価が把握できる場合には積算価格をも関連づける。

さらに、当該更地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等には、次の価格を比較考量して決定します(この手法を開発法という)。

開発法の区分 内容
一体利用が合理的な場合 最有効使用の建物が建築されることを想定し、販売総額から通常の建物建築費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格
分割利用が合理的な場合 更地を区画割りして標準的な宅地とすることを想定し、販売総額から通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格

また、配分法及び土地残余法を適用する場合の取引事例及び収益事例は、敷地が最有効使用の状態にあるものを採用すべきとされています。

短答での問われ方: 更地の定義から「使用収益を制約する権利の付着していない」を落として建付地と混同させる肢が典型です。建付地は「建物等の用に供されている敷地で建物等及びその敷地が同一の所有者に属している宅地」であり、定着物の有無で更地と分かれます。また「開発法は常に適用しなければならない」という肢は誤りで、面積が標準的な土地に比べて大きい場合等の比較考量です。「積算価格は常に関連づける」も誤りで、再調達原価が把握できる場合に限られます。

論文での問われ方: 更地の評価における最有効使用の判定と手法の適用。開発法の2区分を書き分けられるかが差になります。

箇所32:借地権の定義

借地権とは、借地借家法(廃止前の借地法を含む。)に基づく借地権(建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権)をいう。― 不動産鑑定評価基準 総論第2章第2節

落とすと減点されるキーワード: 廃止前の借地法を含む / 建物の所有を目的とする / 地上権又は土地の賃借権

答案に書く短縮版: 借地権とは、借地借家法(廃止前の借地法を含む。)に基づく借地権、すなわち建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。

借地権の価格は、借地借家法に基づき土地を使用収益することにより借地権者に帰属する経済的利益(一時金の授受に基づくものを含む)を貨幣額で表示したものです。その中心となるのは、①土地を長期間占有し独占的に使用収益し得る借地権者の安定的利益、②適正な賃料と実際支払賃料との乖離(賃料差額)及びその持続期間を基礎にして成り立つ経済的利益の現在価値のうち慣行的に取引の対象となっている部分、の2つです。

短答での問われ方: 「建物の所有を目的とする」を落として、資材置場等を目的とする土地賃借権まで含める肢が典型です。また「借地権の存在は借地権の価格の存在を意味する」という肢は明確な誤りで、基準は必ずしも意味するものではないとしています。さらに、賃料差額に基づく経済的利益について「その全部が借地権の価格を構成する」とする肢も誤りで、慣行的に取引の対象となっている部分に限られます。

箇所33:底地の定義

底地とは、宅地について借地権の付着している場合における当該宅地の所有権をいう。― 不動産鑑定評価基準 総論第2章第2節

落とすと減点されるキーワード: 借地権の付着している / 当該宅地の所有権

答案に書く短縮版: 底地とは、宅地について借地権の付着している場合における当該宅地の所有権をいう。

借地権と底地は表裏一体の関係にあります。基準も「借地権の価格と底地の価格とは密接に関連し合っているので、諸点を十分に考慮して相互に比較検討すべきである」としています。借地権者が底地を併合取得する場合は限定価格(箇所8)が成立する典型例であり、各論と総論をつなぐ論点として狙われます。

同じ形の宅地を3つ並べ、何もない更地、建物と敷地が同じ所有者の建付地、建物所有を目的とする借地権が付いた宅地を描き、3つ目では借地権と、借地権が付いている宅地の所有権である底地を書類と線で分けて示した図。

更地・建付地・借地権と底地

類型 定義の核心 関連論点
更地 定着物なし+使用収益を制約する権利の付着なし 開発法、土地残余法
建付地 建物等の用に供され、建物等と敷地が同一所有者 部分鑑定評価、複合不動産価格からの配分
借地権 借地借家法に基づく借地権(建物所有目的の地上権又は賃借権) 限定価格、賃料差額
底地 借地権付着宅地の所有権 限定価格、地代の収益性
区分地上権 工作物所有のため地下又は空間に上下の範囲を定めて設定された地上権 立体利用率、区分地上権割合

更地の鑑定評価、借地権の鑑定評価、底地の鑑定評価で詳しく解説しています。

短答での問われ方: 底地を「借地権の付着している宅地そのもの」とする肢(正しくは所有権)、「借地権の価格と底地の価格の合計は常に更地価格に一致する」という肢(誤り)が定番です。


各論第2章:賃料に関する鑑定評価

箇所34:実質賃料と支払賃料

定義は総論第7章第2節Ⅰ1にあります。

実質賃料とは、賃料の種類の如何を問わず賃貸人等に支払われる賃料の算定の期間に対応する適正なすべての経済的対価をいい、純賃料及び不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる諸経費等(以下「必要諸経費等」という。)から成り立つものである。支払賃料とは、各支払時期に支払われる賃料をいい、契約に当たって、権利金、敷金、保証金等の一時金が授受される場合においては、当該一時金の運用益及び償却額と併せて実質賃料を構成するものである。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

落とすと減点されるキーワード: 賃料の種類の如何を問わず / すべての経済的対価 / 純賃料及び必要諸経費等 / 各支払時期に支払われる賃料 / 運用益及び償却額

答案に書く短縮版: 実質賃料とは、賃料の種類の如何を問わず賃貸人等に支払われる、賃料の算定期間に対応する適正なすべての経済的対価をいい、純賃料と必要諸経費等から成る。支払賃料は各支払時期に支払われる賃料であり、一時金の運用益及び償却額と併せて実質賃料を構成する。

$$\text{実質賃料} = \text{支払賃料} + \text{一時金の運用益及び償却額}$$

賃料の鑑定評価は実質賃料を求めることを原則とし、一定の条件が付されて支払賃料を求めることを依頼された場合には、実質賃料とともにその一部である支払賃料を求めることができます。支払賃料は、実質賃料から、賃料の前払的性格を有する一時金の運用益及び償却額と、預り金的性格を有する一時金の運用益を控除して求めます。預り金的性格の一時金は運用益のみ、前払的性格の一時金は運用益及び償却額という違いが要注意です。

短答での問われ方: 「賃料の鑑定評価は支払賃料を求めることを原則とする」という肢(誤り。実質賃料が原則)、預り金的一時金について「運用益及び償却額を控除する」とする肢(誤り。運用益のみ)が典型です。また、共益費や付加使用料について「賃料に含まれることはない」とする肢も誤りで、基準は実質的に賃料に相当する部分が含まれている場合があることに留意を求めています。

論文での問われ方: 実質賃料と支払賃料の関係を説明させたうえで、一時金の取扱いを論じさせる設問。運用利回りの決定に当たり、一時金の性格・契約内容・不動産の種類及び性格等の相違に応じて、期待利回り・取引利回り・長期預金の金利・国債及び公社債利回り・金融機関の貸出金利等を比較考量する、という点まで書けると厚みが出ます。

箇所35:継続賃料固有の考慮事項

継続賃料には、総論第7章第2節Ⅰ4の一般規定と、各論第2章第1節Ⅱ1の固有の価格形成要因の2層があります。両方を押さえてください。

継続賃料の鑑定評価額は、現行賃料を前提として、契約当事者間で現行賃料を合意しそれを適用した時点(以下「直近合意時点」という。)以降において、公租公課、土地及び建物価格、近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における賃料又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃料の変動等のほか、賃貸借等の契約の経緯、賃料改定の経緯及び契約内容を総合的に勘案し、契約当事者間の公平に留意の上決定するものである。― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

落とすと減点されるキーワード: 直近合意時点 / 公租公課 / 総合的に勘案 / 契約当事者間の公平に留意

答案に書く短縮版: 継続賃料の鑑定評価額は、現行賃料を前提とし、直近合意時点以降における公租公課、土地及び建物価格、近隣地域等における賃料の変動等のほか、契約の経緯、賃料改定の経緯及び契約内容を総合的に勘案し、契約当事者間の公平に留意の上決定する。

各論第2章第1節Ⅱ1が挙げる宅地の継続賃料固有の価格形成要因は次の5つです(直近合意時点から価格時点までの期間における要因が中心)。

# 継続賃料固有の価格形成要因
(1) 近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における宅地の賃料又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃料の推移及びその改定の程度
(2) 土地価格の推移
(3) 公租公課の推移
(4) 契約の内容及びそれに関する経緯
(5) 賃貸人等又は賃借人等の近隣地域の発展に対する寄与度

継続中の宅地の実際支払賃料を改定する場合の鑑定評価額は、差額配分法による賃料、利回り法による賃料、スライド法による賃料及び比準賃料を関連づけて決定します。建物及びその敷地の継続賃料は宅地の場合に準じ、「土地価格の推移」を「土地及び建物価格の推移」、「底地に対する利回りの推移」を「建物及びその敷地に対する利回り」と読み替えます。

短答での問われ方: 「直近合意時点」を「契約締結時点」に替える肢が最頻出です。直近合意時点は現行賃料を合意しそれを適用した時点であり、当初の契約締結時点とは限りません。また「継続賃料固有の価格形成要因」に「新規賃料を求める前提となる契約内容」(=新規賃料固有の要因)を混ぜる肢も定番です。さらに、(5)の寄与度を落とす肢もよく出ます。

論文での問われ方: 継続賃料の評価における当事者間の公平の意義。新規賃料が市場性を基礎とするのに対し、継続賃料は既存の契約関係を前提とするため、当事者間の公平という別の規律が働く、という対比で論じます。


各論第3章:証券化対象不動産の価格に関する鑑定評価

箇所36:DCF法の適用義務

証券化対象不動産の鑑定評価における収益価格を求めるに当たっては、DCF法を適用しなければならない。この場合において、併せて直接還元法を適用することにより検証を行うことが適切である。― 不動産鑑定評価基準 各論第3章第5節

落とすと減点されるキーワード: 適用しなければならない / 併せて直接還元法を適用することにより検証 / 収益費用項目 / 連続する複数の期間ごとに区分

答案に書く短縮版: 証券化対象不動産の鑑定評価における収益価格を求めるに当たっては、DCF法を適用しなければならず、併せて直接還元法を適用して検証を行うことが適切である。

「原則として適用する」ではなく義務である点が最重要です。加えて、DCF法の適用に当たっては、①活用する資料を区分してその妥当性や判断の根拠等を鑑定評価報告書に記載する、②最終還元利回り・割引率・収益及び費用の将来予測等について、採用の過程及び理由を経済事情の変動の可能性、具体的に検証した事例及び論理的な整合性等を明確にしつつ記載する、③DCF法で査定した収益価格と原価法・取引事例比較法等で求めた試算価格との関連を明確にして鑑定評価額の決定理由を記載する、という3つの記載義務があります。

さらに、収益又は費用の額について連続する複数の期間ごとに、定められた収益費用項目に区分して鑑定評価報告書に記載しなければならないとされ、項目の定義も基準が定めています。透明性・説明性を制度として担保する仕組みです。

証券化対象不動産は、前述の特定価格(箇所9)が成立する代表的な評価目的でもあり、総論と各論を横断する重要テーマです。また、証券化対象不動産以外であっても、投資用の賃貸大型不動産の鑑定評価等、投資家及び購入者等の保護の観点から必要と認められる場合には、この章の定めに準じて鑑定評価を行うよう努めなければならないという準用規定も押さえてください。

短答での問われ方: 「DCF法の適用は原則であり、直接還元法によることもできる」という肢(誤り。適用義務)、「直接還元法の併用は義務である」という肢(誤り。検証を行うことが適切という表現)が典型です。この義務と推奨の書き分けが最大の狙い目です。また「証券化対象不動産以外には各論第3章の定めは一切適用されない」という肢も誤りで、準用の努力義務があります。

論文での問われ方: 証券化対象不動産の鑑定評価における説明責任。不動産鑑定士の責務(依頼者のみならず広範な投資家等に重大な影響を及ぼす)→DCF法の適用義務→記載事項の詳細化、という因果で書きます。


暗記の優先順位マトリクス

暗記レベル 箇所数 内容
一字一句暗記 12箇所 箇所7〜11, 14, 17, 19, 20, 25, 31, 34
要旨を正確に再現 14箇所 箇所1〜3, 5, 6, 12, 13, 15, 16, 18, 23, 29, 32, 33
キーワードを押さえる 10箇所 箇所4, 21, 22, 24, 26〜28, 30, 35, 36

「覚える範囲」を全箇所均等に広げるのではなく、上記のレベル配分に沿ってメリハリをつけることが、限られた学習時間で得点を最大化する鍵です。直前期は「一字一句暗記」の12箇所に最も時間を割き、「キーワードを押さえる」10箇所は短答の正誤判断ができる程度で割り切るのが現実的です。

投下時間の目安は次のとおりです。

レベル 1箇所あたり総投下時間 12/14/10箇所の合計
一字一句暗記 60〜90分 12〜18時間
要旨を正確に再現 30〜45分 7〜10時間
キーワードを押さえる 10〜15分 2〜3時間

合計21〜31時間です。1日30分なら約2ヶ月、1日1時間なら約1ヶ月で36箇所が仕上がる計算になります。「基準の暗記に何ヶ月もかかる」という感覚は、範囲を絞れていないことから来ています。


混同しやすい論点の整理

暗記が進んでも、似た概念どうしの取り違えで失点する受験生は少なくありません。短答式で狙われやすい「混同ペア」を、区別の軸と誤り肢の作られ方まで含めて確認しておきます。

混同ペア 区別の軸 典型的な誤り肢の作り方
種別 と 類型 用途による区分か/有形的利用・権利関係による区分か 定義の後半を入れ替える
相対的稀少性 と 絶対的稀少性 基準は「相対的」のみ 「絶対的」に置換
一般的要因 と 地域要因 一般経済社会全体か/一般的要因の相関結合による地域の特性か 地域要因から「一般的要因の相関結合によって」を削除
近隣地域 と 類似地域 対象不動産が属するか/近隣地域と特性が類似するか 事例収集の対象を近隣地域に限定
近隣地域 と 同一需給圏 用途的地域か/代替関係が成立する圏域か 包含関係を反転
標準的使用 と 最有効使用 地域の一般的使用か/個別の不動産の使用か 「標準的使用=最有効使用」と断定
限定価格 と 特定価格 市場の相対的限定(併合・分割)か/法令等の社会的要請か 特定価格の背景を「依頼者の要請」に置換
正常価格 と 特殊価格 市場性が有か/無か、最有効使用前提か/利用現況等前提か 特殊価格に最有効使用を前提とさせる
限定賃料 と 継続賃料 限定価格と同一の市場概念の新規賃料か/継続に係る特定当事者間の賃料か 限定賃料を継続賃料の一種とする
機能的要因 と 経済的要因 建物と敷地の関係か/不動産と外部環境の関係か 「建物と敷地との不適応」を経済的要因に移す
耐用年数に基づく方法 と 観察減価法 年数からの機械的把握か/実態調査からの直接把握か 「いずれか一方を選択」と断定(正しくは併用)
還元利回り と 割引率 変動予測・不確実性を含むか/一部を除くか 還元利回りを「直接還元法専用」と断定
期待利回り と 継続賃料利回り 積算法(新規賃料)か/利回り法(継続賃料)か 利回り法に期待利回りを使わせる
実質賃料 と 支払賃料 すべての経済的対価か/各支払時期の賃料か 鑑定評価の原則を支払賃料とする
前払的性格の一時金 と 預り金的性格の一時金 運用益+償却額か/運用益のみか 預り金に償却額を計上させる
収益分析法 と 差額配分法 新規賃料の手法か/継続賃料の手法か 収益分析法を継続賃料の手法に含める
積算価格・比準価格・収益価格 原価法・取引事例比較法・収益還元法の試算価格の呼称 呼称を1つずつずらす
積算賃料・比準賃料・収益賃料 積算法・賃貸事例比較法・収益分析法の試算賃料の呼称 呼称を1つずつずらす
直近合意時点 と 契約締結時点 現行賃料を合意し適用した時点か/当初契約時点か 両者を同一視
更地 と 建付地 定着物なし・権利付着なしか/建物等の用に供され同一所有者か 「使用収益を制約する権利の付着していない」を削除

これらのペアは「キーワードを1語だけ入れ替えた正誤問題」として出題されやすいため、片方の定義を覚えたら必ずもう片方とセットで確認する習慣をつけてください。表の右列(誤り肢の作り方)を先に覚えてしまうのが、短答対策としては最短です。


出題傾向と暗記の活かし方

短答式では、定義の一部を別の語に置き換えた選択肢の正誤を判断させる問題が中心です。本記事の「落とすと減点されるキーワード」で太字にした語が、まさに置き換えの標的になります。置き換えのパターンは次の6種類に類型化できます。

類型 具体例
語の置換 相対的稀少性→絶対的稀少性、通常の知識→専門的な知識
接続詞のすり替え 合理的かつ合法的→合理的又は合法的、要件の全部→要件のいずれか
時点のズレ 直近合意時点→契約締結時点、価格時点→鑑定評価を行った時点
因果の反転 三者に影響を与える要因→三者から影響を受ける要因
義務と推奨の混同 適用しなければならない→原則として適用する、併用する→いずれかを選択する
要素の欠落・追加 「使用収益を制約する権利の付着していない」を削除、4分類に「文化的要因」を追加

この6類型を意識して肢を読むだけで、正答率は目に見えて上がります。 肢を読むときに「どの類型で崩されているか」を探しにいく読み方に切り替えてください。

一方、論文式では定義をそのまま記述させたうえで、その定義を踏まえた論証を求める問題が出ます。たとえば「最有効使用の原則を説明したうえで、更地の評価における適用を論じよ」といった形です。

したがって暗記の到達目標は次のように設定すると効率的です。

  • 第1層(一字一句):白紙に定義を再現できる
  • 第2層(要旨):キーワードを落とさず自分の言葉で書ける
  • 第3層(キーワード):選択肢の正誤を判断できる

鑑定評価基準の頻出論点ランキングで出題頻度の高い順を確認し、本記事の36箇所と突き合わせて優先順位を微調整するとよいでしょう。同ランキングが「どの論点が何番目に出るか」を扱うのに対し、本記事は「その論点の何を何文字で覚えるか」を扱っています。役割が異なるので、両方を並べて使うのが最も効率的です。


暗記チェックリスト

以下のチェックリストを使って、暗記状況を定期的に確認してください。チェックは「見て思い出す」ではなく「白紙に書き出す」方式で行うと、論文式の記述力まで同時に鍛えられます。

# 箇所 レベル 1回目 2回目 3回目
1 価格の三要素 要旨 ☐ ☐ ☐
2 鑑定評価の定義 要旨 ☐ ☐ ☐
3 土地の特性 要旨 ☐ ☐ ☐
4 種別と類型 キーワード ☐ ☐ ☐
5 価格形成要因の定義 要旨 ☐ ☐ ☐
6 一般的・地域・個別的要因の定義 要旨 ☐ ☐ ☐
7 正常価格 一字一句 ☐ ☐ ☐
8 限定価格 一字一句 ☐ ☐ ☐
9 特定価格 一字一句 ☐ ☐ ☐
10 特殊価格 一字一句 ☐ ☐ ☐
11 最有効使用の原則 一字一句 ☐ ☐ ☐
12 近隣地域・類似地域 要旨 ☐ ☐ ☐
13 同一需給圏 要旨 ☐ ☐ ☐
14 原価法の意義 一字一句 ☐ ☐ ☐
15 再調達原価 要旨 ☐ ☐ ☐
16 減価の3要因 要旨 ☐ ☐ ☐
17 取引事例比較法の意義 一字一句 ☐ ☐ ☐
18 取引事例等の選択要件 要旨 ☐ ☐ ☐
19 収益還元法の意義 一字一句 ☐ ☐ ☐
20 収益還元法の適用範囲 一字一句 ☐ ☐ ☐
21 直接還元法の算式 キーワード ☐ ☐ ☐
22 DCF法の算式と復帰価格 キーワード ☐ ☐ ☐
23 還元利回りと割引率 要旨 ☐ ☐ ☐
24 還元利回り・割引率の求め方 キーワード ☐ ☐ ☐
25 積算法の意義 一字一句 ☐ ☐ ☐
26 差額配分法 キーワード ☐ ☐ ☐
27 利回り法 キーワード ☐ ☐ ☐
28 スライド法 キーワード ☐ ☐ ☐
29 試算価格又は試算賃料の調整 要旨 ☐ ☐ ☐
30 鑑定評価報告書の記載事項 キーワード ☐ ☐ ☐
31 更地の定義と鑑定評価 一字一句 ☐ ☐ ☐
32 借地権の定義 要旨 ☐ ☐ ☐
33 底地の定義 要旨 ☐ ☐ ☐
34 実質賃料と支払賃料 一字一句 ☐ ☐ ☐
35 継続賃料固有の考慮事項 キーワード ☐ ☐ ☐
36 証券化とDCF法の適用義務 キーワード ☐ ☐ ☐

3回のチェックで全てマークできれば、基準の暗記は十分な水準に達しています。2回目で落ちた箇所と3回目で落ちた箇所は性質が違います。2回目で落ちるのは覚え方の問題(音読・書き取りが足りない)、3回目で落ちるのは干渉の問題(似た箇所と混ざっている)です。後者は混同ペアの表に戻って、対になる箇所とセットで確認してください。


今日から演習で仕上げる

暗記は「入れる」だけでは終わりません。伏せて出す・選んで当てるという出力を挟むことで初めて本番で使える状態になります。鑑定士試験ブートラボでは、基準の穴埋めドリル、基準ビューア、短答式の肢別演習、分野別の正答率にもとづく弱点の可視化を提供しています。本記事の36箇所は、次の順で回すのが最短です。

  1. 基準ビューアで該当章を通読し、本記事の逐語と突き合わせる
  2. 穴埋めドリルでキーワードだけを伏せて埋める(短答の1語トラップ対策)
  3. 肢別演習で実際の誤り肢に当たり、6類型のどれで崩されているかを見抜く

よくある質問(FAQ)

Q1. 基準は全部覚える必要がありますか。

いいえ。出題には明確な偏りがあるため、本記事の36箇所を中心に、暗記レベルを3段階に分けて押さえるのが現実的です。特に「一字一句暗記」の12箇所を優先してください。一般的要因や地域要因の例示は暗記対象から外して構いません。

Q2. 短答式と論文式で覚え方を変えるべきですか。

はい。短答式はキーワードの抜き差しに気づける程度で足りますが、論文式は定義を白紙に再現できる精度が必要です。覚える範囲は共通でも、到達すべき精度が異なります。具体的には、短答式は穴埋め中心、論文式は白紙想起中心に手法を切り替えます。

Q3. どの順番で覚えるのが効率的ですか。

総論第5章の価格の種類(箇所7〜10)と最有効使用(箇所11)、三方式の意義(箇所14・17・19)から着手するのが定石です。これらは出題頻度が高く、他の箇所の理解の土台にもなります。期間配分は1ヶ月の暗記スケジュールを参照してください。

Q4. 覚えたつもりでも本番で出てこない場合は。

「見て思い出す」だけでは記述に耐える定着になりません。認識と再生は別の能力です。音読暗記法での反復と、書き取り練習・穴埋め練習問題・白紙再現を組み合わせ、出力の練習の比率を全体の6割以上に上げてください。

Q5. 1日どれくらい時間をかければいいですか。

1日30分・6日で1周のサイクルを4周(24日)が標準です。総投下時間は21〜31時間が目安になります。まとまった時間が取れない場合は、音読だけを通勤時間に、書き取りを週末にまとめる分割も有効です。ただし想起(白紙再現)だけは毎日短時間でも入れてください。ここを抜くと定着が止まります。

Q6. 一字一句とはどのレベルですか。助詞まで正確に必要ですか。

論文式では、助詞や接続詞のズレで直ちに減点されることは通常ありません。ただし「かつ」と「又は」、「全部」と「いずれか」のような論理を変える語は、間違えると意味が変わるため減点対象になります。名詞のキーワードと論理接続詞は正確に、それ以外の言い回しは近ければ可、という基準で練習してください。

Q7. 語呂合わせは使ってよいですか。

列挙型の箇所には有効です。一般的要因の4分類(自然・社会・経済・行政)、減価の3要因(物理・機能・経済)、取引事例等の4要件などは、頭文字で順序ごと固定すると想起が速くなります。一方、定義型の箇所に語呂を作るのは逆効果です。定義は意味のブロックで区切って音読する方が定着します。

Q8. 短答は通ったのに論文で基準が書けません。何が違いますか。

短答は「与えられた文が正しいか」を判断する認識課題、論文は「白紙から文を作る」再生課題です。短答合格レベルの人が論文で詰まるのは、ほぼ例外なく出力の練習量が不足しているためです。本記事の「答案に書く短縮版」を、原文を見ずに書けるかどうかから始めてください。短縮版が書ければ、そこに条文の言い回しを戻していく方が、いきなり全文暗記に挑むより速く仕上がります。

Q9. 定義の所属章まで覚える必要がありますか。

短答では直接問われることは多くありませんが、覚え違いの温床になるので押さえる価値があります。特に注意すべきは、最有効使用が総論第4章(諸原則)であること、更地・借地権・底地の定義が総論第2章にあり鑑定評価額の決定方法が各論第1章にあること、実質賃料・支払賃料と継続賃料の一般規定が総論第7章第2節にあること、の3点です。所属章がわかると、周辺の規定を芋づる式に思い出せます。

Q10. 基準の条文と実務上の運用がずれている箇所はありますか。

本記事が扱う36箇所は定義と手法の骨格であり、実務上の運用がずれる余地はほとんどありません。ただし、細部の判断基準(減価修正における経済的残存耐用年数の査定、還元利回りの水準感など)は「運用上の留意事項」や実務指針で補われています。試験対策としては、まず基準本文を正確に押さえ、留意事項は基準を覚えたあとに読むのが順序として正しい進め方です。

Q11. 直前期に絞るならどの箇所ですか。

4価格(箇所7〜10)、最有効使用(箇所11)、三方式の意義(箇所14・17・19)、収益還元法の適用範囲(箇所20)の9箇所です。この9箇所は短答・論文の双方で出題確率が高く、かつ他の箇所の記述の中でも引用されるため、投下時間あたりの回収が最大になります。試験前日はこの9箇所の白紙再現だけを回してください。

Q12. 36箇所を覚えたら基準対策は完了ですか。

短答式の鑑定理論と論文式の定義記述については、合格ラインに届く水準になります。ただし論文式では、定義を書いたうえで当てはめと論証が必要です。定義の暗記が終わったら、頻出論点ランキングで出題形式を確認し、実際に答案構成を作る練習へ移行してください。暗記はゴールではなく、論証のためのスタート地点です。


まとめ

本記事で厳選した36箇所は、鑑定評価基準の頻出論点を踏まえた「最低限これだけは暗記すべき」リストです。基準全体を丸暗記するのは現実的ではありませんが、この36箇所を確実に暗記することで、短答式の正誤判断と論文式の定義の記述に自信を持って臨めるようになります。

重要なのは次の4点です。

  1. 覚える範囲を絞る|例示は捨て、定義と手順に集中する
  2. 箇所ごとに覚える精度を変える|一字一句12箇所/要旨14箇所/キーワード10箇所
  3. 音読→書き取り→穴埋め→想起の順で回す|認識ではなく再生を作る
  4. 混同ペアはセットで確認する|1語トラップの6類型を先に覚える

暗記の方法としては、音読暗記法による反復と書き取り練習が効果的です。1ヶ月の暗記スケジュールに沿って計画的に進め、穴埋め練習問題や一問一答で成果を確認してください。より一般的な暗記技術の考え方は鑑定士試験のための暗記術にまとめています。

#暗記必須 #短答式 #論文対策 #重要箇所 #鑑定理論

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