鑑定評価基準の音読暗記法
鑑定評価基準の音読暗記法を解説。二重符号化・注意の強制集中・リズムの記憶など音読が暗記に効果的な理由、通読→構造読み→分節音読→連結音読→全体暗唱の5ステップ実践法、章ごとの音読のコツまで、論文式試験の答案再現力を高める学習法を紹介します。
音読暗記法とは
鑑定評価基準の暗記で多くの受験生が採用している方法が「音読暗記法」です。基準の条文を声に出して読むことで、視覚(目)と聴覚(耳)の二重チャネルで情報をインプットでき、黙読に比べて記憶の定着率が高くなります。
不動産鑑定士試験の論文式試験(鑑定理論)では、基準の文言をベースにした論述が求められるため、基準の重要箇所を「ほぼ一字一句」再現できるレベルの暗記が事実上の前提になります。暗記対象は総論9章・各論3章に及び、定義文・要件列挙・手順規定が入り混じった独特の文体を持つため、漫然と読むだけではなかなか頭に残りません。そこで有効なのが、読む・発声する・聞くという複数の感覚を同時に動員する音読暗記法です。
本記事では、音読暗記法の理論的背景、具体的な実践方法、章ごとの音読のコツ、忘却曲線に基づく復習サイクル、よくある疑問への回答までを網羅的に解説します。鑑定評価基準を1ヶ月で暗記するスケジュールと組み合わせて活用してください。
音読が暗記に効果的な理由
1. 二重符号化
音読は、文字を目で見て、口で発声し、耳で聞くという3つの感覚を同時に使います。複数の感覚チャネルを通じて情報が脳に入ることで、記憶の手がかりが増え、想起しやすくなります。
2. 注意の強制集中
黙読では無意識に読み飛ばしてしまうことがありますが、音読では1文字ずつ声に出す必要があるため、注意力が強制的に維持されます。特に基準のような難解な文章では、この効果が大きく作用します。
3. リズムと韻律の記憶
基準の条文には独特のリズムがあります。「〜するものとする」「〜しなければならない」といった語尾のパターンは、音読を通じて身体感覚として定着します。
4. 論文式試験との親和性
論文式試験では、暗記した条文を書き出す必要があります。音読で条文を「口に馴染ませる」ことは、答案作成時の再現性を高めます。
5. プロダクション効果
認知心理学では、黙読した項目よりも声に出して読んだ項目の方が記憶成績が良くなる現象が「プロダクション効果(production effect)」として知られています。声に出すという行為そのものが、その項目を他の情報から「区別された特別なもの」として符号化するためと説明されており、つぶやき程度の小さな声でも効果が得られるとされます。基準の重要定義だけを声に出し、つなぎの文章は黙読するという「メリハリ音読」は、この効果を意図的に利用した方法です。
音読と黙読・書写・聞き流しの比較
各インプット方法には一長一短があります。音読を軸に、目的に応じて使い分けるのが現実的です。
| 方法 | 定着度 | 速度 | 疲労度 | 場所の制約 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|---|
| 音読 | 高い | 中 | 中〜高 | 声を出せる場所が必要 | 新規暗記・定義文の刷り込み |
| 黙読 | 低〜中 | 速い | 低 | どこでも可 | 通読・復習・構造把握 |
| 書写(書き出し) | 高い | 遅い | 高 | 机が必要 | 仕上げ・答案再現練習 |
| 録音の聞き流し | 低〜中 | 中 | 低 | どこでも可 | スキマ時間の復習・維持 |
ポイントは、定着度と所要時間はトレードオフだということです。すべてを書写でこなすのは時間的に不可能であり、すべてを聞き流しで済ませるのは定着度が不足します。「新規暗記は音読、維持は黙読と聞き流し、仕上げは書き出し」という役割分担が、総量の多い基準暗記では効率的です。
音読暗記法の5ステップ
ステップ1:通読(1回目)
まず、学習対象の章を最初から最後まで通して音読します。この段階では暗記を意識する必要はなく、全体の流れと構造を把握することが目的です。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 速度 | 普通の読書速度で |
| 意識 | 内容の理解に集中 |
| 所要時間 | 1章あたり15〜30分 |
ステップ2:構造読み(2回目)
2回目は、条文の構造を意識しながら音読します。基準は箇条書きや番号付きの構造が多いため、その階層構造を把握しながら読みます。
例:原価法の構成
Ⅱ 原価法
├─ 1. 意義 → 定義文
├─ 2. 適用方法
│ ├─ (1) 再調達原価の意義
│ ├─ (2) 再調達原価を求める方法
│ │ ├─ ① 土地の再調達原価
│ │ ├─ ② 建物及びその敷地の再調達原価
│ │ └─ ③ 直接法と間接法
│ └─ 3. 減価修正
│ ├─ (1) 減価の要因(物理的・機能的・経済的)
│ └─ (2) 減価修正の方法(耐用年数法・観察減価法)
構造読みの段階で「見出しだけを言える」状態を作っておくと、後の分節音読で「自分が今、章のどこを覚えているのか」を見失わずに済みます。論文式試験の答案構成力も、実はこの構造把握の精度に大きく依存します。
ステップ3:分節音読(3〜5回目)
ここからが本格的な暗記フェーズです。条文を1文〜2文ずつ区切って、以下のサイクルを繰り返します。
① 1文を3回音読する
↓
② テキストを閉じて暗唱する
↓
③ 詰まったらテキストを確認
↓
④ もう一度暗唱する
↓
⑤ 次の1文に進む
↓
⑥ 2〜3文たまったら、通して暗唱する
重要: この段階では、1文ずつ完璧に覚えてから次に進むのではなく、「8割程度言えたらOK」として先に進みます。完璧を求めすぎると時間がかかりすぎます。
なお、②の「テキストを閉じて暗唱する」工程は省略しないでください。読むだけの反復(再読)よりも、思い出す行為(想起練習・テスト効果)を挟んだ方が長期記憶に残りやすいことが知られています。音読暗記法の効果の相当部分は、この音読と暗唱の往復によって生まれます。
ステップ4:連結音読(6〜7回目)
分節で暗記した内容を、パラグラフ単位で連結して暗唱します。個別の文は覚えていても、前後のつながりが曖昧なことが多いため、この段階で文脈を意識した暗唱を行います。
連結の際は、「意義 → 適用方法 → 留意点」のような論理の流れを口に出してから暗唱を始めると、文と文の接続詞(「また」「さらに」「ただし」など)を間違えにくくなります。
ステップ5:全体暗唱(8回目以降)
学習対象の章全体を通して暗唱します。テキストは伏せた状態で、詰まった箇所にマーカーを付けて後で重点復習します。
| ステップ | 回数の目安 | 1セクションあたりの時間目安 |
|---|---|---|
| 1. 通読 | 1回 | 15〜30分 |
| 2. 構造読み | 1回 | 20〜30分 |
| 3. 分節音読 | 3回程度 | 40〜60分 |
| 4. 連結音読 | 2回程度 | 30〜40分 |
| 5. 全体暗唱 | 継続的に | 20〜30分 |
合計すると1セクションあたり概ね2〜3時間が目安ですが、総論第7章のような重要章は倍以上かかっても構いません。逆に、出題頻度の低い箇所は通読と構造読みにとどめる判断も必要です。
定義文で実践する分節音読の具体例
音読暗記法が最も威力を発揮するのは、一字一句の正確さが求められる定義文です。ここでは基準の代表的な定義文を素材に、分節の切り方とキーワード強調の実例を示します。
原価法の定義文
原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を積算価格という。)。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
分節音読では、意味のまとまりごとにスラッシュを入れて区切ります。
原価法は、/
価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、/
この再調達原価について減価修正を行って/
対象不動産の試算価格を求める手法である/
(この手法による試算価格を積算価格という。)。
音読時に強く発声すべきキーワードは「価格時点」「再調達原価」「減価修正」「積算価格」の4語です。この4語が答案で抜けたり誤記されたりすると、定義として致命的になります。逆に言えば、この4語を骨格として「再調達原価を求める → 減価修正を行う → 積算価格を得る」という手順の流れを意識すれば、文全体は自然に再構成できます。
取引事例比較法の定義文
三手法の定義の中で最も長く、受験生が最初につまずきやすい文です。
取引事例比較法は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を比準価格という。)。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
この文は、手法の作業手順そのものが文の構造になっています。手順を5段階に分解してから音読すると、丸暗記ではなく「手順を語る」感覚で再現できるようになります。
| 段階 | 文中の対応箇所 | 強調キーワード |
|---|---|---|
| 1. 収集 | 多数の取引事例を収集して | 多数 |
| 2. 選択 | 適切な事例の選択を行い | 適切な事例 |
| 3. 補正・修正 | 事情補正及び時点修正を行い | 事情補正・時点修正 |
| 4. 要因比較 | 地域要因の比較及び個別的要因の比較 | 地域要因・個別的要因 |
| 5. 比較考量 | 求められた価格を比較考量し | 比較考量 |
「収集 → 選択 → 補正・修正 → 要因比較 → 比較考量」という5語を先に唱えてから全文を音読する、という二段構えにすると、本試験の緊張下でも骨格から復元できます。
正常価格の定義文
正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第3節
分節は3つで足ります。
正常価格とは、/
市場性を有する不動産について、/
現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう/
市場価値を表示する適正な価格をいう。
「市場性を有する」「合理的と考えられる条件を満たす市場」「市場価値」「適正な価格」と、「市場」という語が形を変えて繰り返されるのがこの定義の特徴です。音読の際に「市場」を含む語句を意識的に強調すると、限定価格・特定価格・特殊価格との対比(市場性の有無・市場の条件の違い)も同時に整理されます。詳しくは正常価格の解説記事を参照してください。
章ごとの音読のコツ
総論第7章(鑑定評価の方式)
基準の中で最も分量が多く、最も重要な章です。
音読のコツ:
- 三方式の各手法の意義(定義文)は、一字一句正確に暗唱できるまで反復する
- 算式が登場する箇所は、式の意味を言葉で説明しながら読む
- 「しなければならない」と「できる」の語尾の違いを意識して発声する
暗唱テスト例:
「原価法は、( )における対象不動産の( )を求め、この( )について( )を行って対象不動産の( )を求める手法である。」
答え:価格時点、再調達原価、再調達原価、減価修正、試算価格
なお、収益還元法の定義「対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求める」のように、修飾の長い一文は途中で区切らず一息で読む練習をしておくと、本試験で書く際にも語順が崩れません。直接還元法とDCF法の関係など、定義の後に続く適用方法の規定は構造読みを重視しましょう。
総論第5章(鑑定評価の基本的事項)
正常価格をはじめとする価格の定義文が集中する章です。
音読のコツ:
- 4つの価格の定義は、違いを比較しながら交互に音読する
- 最有効使用の原則の条文は、キーワード(「客観的にみて」「良識と通常の使用能力を持つ人」「合理的かつ合法的な最高最善の使用方法」)を特に強調して読む
4つの価格(正常価格・限定価格・特定価格・特殊価格)は、「市場性の有無」と「市場の条件」という2軸の違いを口頭で説明できる状態を先に作り、そのうえで定義文を音読すると混同が激減します。
総論第4章(不動産の価格に関する諸原則)
最有効使用の原則を中心に、11の価格諸原則が並ぶ章です。
この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第4章
音読のコツ:
- 原則名(需要と供給の原則、変動の原則、代替の原則など)をまず一覧として音読し、順番ごと覚える
- 各原則は「原則名 → 内容 → 鑑定評価上の意味」の3点セットで音読する
- 最有効使用の原則は他の原則との関連(基準では諸原則の中枢的な位置付け)を意識して読む
総論第6章(地域分析及び個別分析)
音読のコツ:
- 地域分析と個別分析の定義文を対比させて交互に音読する(「地域分析とは…」「個別分析とは…」)
- 「標準的使用」と「最有効使用」の対応関係を声に出して確認する
- 用途的地域(近隣地域・類似地域)と同一需給圏の関係は、図を描いてから音読すると定着が速い
各論第1章(価格に関する鑑定評価)
各類型の評価方法が並列的に規定されている章です。
音読のコツ:
類型ごとの規定は「定義 → 適用手法の列挙 → 留意点」というパターンが繰り返されるため、1つの類型でパターンを完全に覚えてから他の類型に横展開すると、章全体の暗記時間を大きく短縮できます。
忘却曲線に基づく音読の復習サイクル
なぜ復習間隔の設計が必要か
エビングハウスの忘却曲線によれば、記憶の保持率は時間とともに急速に低下し、おおまかには
($R$:保持率、$t$:経過時間、$S$:記憶の強度)という指数関数で近似されるとされます。重要なのは、復習のたびに $S$(記憶の強度)が大きくなり、忘れにくくなるという点です。したがって、同じ日に10回音読するよりも、間隔を空けて10回に分けて音読する方が、総時間が同じでも長期的な定着は大きく上回ります(間隔反復・分散学習の効果)。
音読の復習スケジュール例
新規にあるセクションを暗記した場合、次のような間隔で「短い復習音読+暗唱テスト」を入れるのが目安です。
| 復習タイミング | 内容 | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 当日の夜 | 1回音読+暗唱 | 10分 |
| 翌日 | 暗唱 → 詰まった箇所のみ音読 | 10分 |
| 3日後 | 暗唱テストのみ | 5〜10分 |
| 1週間後 | 暗唱テスト+穴埋め問題 | 10分 |
| 2週間後 | 暗唱テストのみ | 5分 |
| 1ヶ月後 | 白紙書き出しテスト | 15分 |
復習の回が進むごとに「音読の比率を下げ、暗唱(想起)の比率を上げる」のがポイントです。復習段階でも毎回フルに音読していると時間が足りなくなります。
1日の音読メニュー例
| 時間帯 | メニュー |
|---|---|
| 朝(45分) | 新規セクションの分節音読(ステップ3) |
| 通勤・昼休み | 録音聞き流し or 黙読で前日分の復習 |
| 夜(30分) | 当日分の復習音読+3日前・1週間前の暗唱テスト |
新規暗記と復習を同じ時間帯に詰め込むと、復習が後回しになりがちです。「朝は新規、夜は復習」と時間帯で役割を固定してしまうのが、サイクルを崩さないコツです。
音読の環境づくり
適した場所
| 場所 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 自宅の個室 | 周囲を気にせず声を出せる | 誘惑が多い |
| カラオケボックス | 完全防音で集中しやすい | コストがかかる |
| 公園・河川敷 | 開放的で気分転換になる | 天候に左右される |
| 車内 | 密閉空間で声を出しやすい | 長時間は疲れる |
適した時間帯
| 時間帯 | 適性 |
|---|---|
| 早朝(6〜8時) | 脳が新鮮で記憶に残りやすい |
| 通勤時間 | 音読は困難。黙読で前日の復習向き |
| 昼休み | 短時間の復習に向く |
| 夜(21〜23時) | 新規暗記より復習に適する |
録音とスキマ時間の活用
自分の音読をスマートフォンで録音しておくと、通勤時間や家事の最中に「聞き流し復習」ができます。市販の読み上げ音声より自分の声の方が、音読時の記憶と結びついて想起の手がかりになりやすいという利点があります。
- 録音は章・セクション単位で分割して保存する(頭出しが容易になる)
- 再生速度は1.2〜1.5倍程度に上げると、復習時間を圧縮できる
- 聞き流しだけでは定着しないため、あくまで音読+暗唱の補助と位置付ける
- 録音を聞きながら0.5秒先回りして口ずさむ「シャドーイング」は、受動的な聞き流しより負荷が高く、復習として効果的
音読と他の暗記法の併用
音読 + 書き出し
音読で口に馴染ませた条文を、手で書き出すことでさらに定着を図ります。論文式試験では実際に「書く」必要があるため、書字の練習も兼ねて有効です。
| タイミング | 方法 |
|---|---|
| 音読3回目以降 | 暗唱した内容をノートに書き出す |
| 1章分の音読完了後 | 章全体の要点を白紙に書き出す |
音読で「言える」状態と、答案で「書ける」状態の間には意外なギャップがあります。特に「再調達原価」「事情補正」「比較考量」のような専門用語は、口では言えても漢字で正確に書けないことがあるため、重要定義は最低1回は手書きで再現しておきましょう。
音読 + 穴埋め問題
穴埋め練習問題を使って、音読の成果を確認します。
- 音読で条文を暗記
- 穴埋め問題に挑戦
- 不正解の箇所をマークして再度音読
穴埋めで落とした語句は「音読時に注意が向いていなかった語句」です。次の音読ではその語句を意識的に強調して読むことで、弱点が局所的に修復されます。
音読 + 語呂合わせ
列挙系の条文(減価の3要因、取引事例の4要件など)は、語呂合わせと音読を組み合わせると効果的です。語呂合わせで「項目の数と順番」を固定し、音読で「各項目の正確な文言」を埋める、という役割分担になります。
併用の全体像
| 学習フェーズ | 主役 | 補助 |
|---|---|---|
| 新規暗記期 | 音読(分節・連結) | 語呂合わせ |
| 定着期 | 暗唱テスト | 穴埋め問題・録音聞き流し |
| 仕上げ期 | 白紙書き出し | 一問一答・全体暗唱 |
音読暗記の注意点
1. 声量は小さくてよい
大声で読む必要はありません。つぶやき程度の声量で十分です。重要なのは「口を動かす」「自分の声を聞く」ことです。
2. スピードを上げすぎない
早口で読むと意味の理解が追いつかず、「読んだだけ」になりがちです。意味を噛みしめる速度で読むことが大切です。
3. 連続時間は45分が限界
音読は集中力を大きく消費します。45分音読したら10〜15分の休憩を入れましょう。
4. 喉のケア
長時間の音読は喉に負担をかけます。水分をこまめにとり、喉の痛みを感じたら休止してください。
5. 「音読した時間」を成果と錯覚しない
音読は黙読より達成感が得やすい分、「今日は2時間読んだ」という時間の長さ自体に満足してしまう罠があります。成果はあくまでテキストを閉じて暗唱できるかで測ってください。音読10回より、音読5回+暗唱テスト5回の方が定着します。
6. 理解を伴わない丸暗記は応用問題で崩れる
論文式試験では、基準の文言をそのまま書く問題だけでなく、基準の趣旨を踏まえて論述する応用問題も出題されます。音読の際に「なぜこの要件が必要なのか」「この語句は何を排除しているのか」を一言自分の言葉で添える習慣をつけると、暗記と理解が同時に進みます。
音読暗記の効果測定
1週間ごとに以下のチェックを行い、暗記の進捗を確認します。
セルフチェック方法
- 白紙テスト:テーマ(例:「原価法の意義と適用方法」)を見て、関連する条文を白紙に書き出す
- 暗唱テスト:テキストを閉じて、対象箇所を暗唱する。詰まった箇所をカウントする
- 正誤判断テスト:一問一答で正答率を確認する
目標正答率
| 学習段階 | 目標正答率 |
|---|---|
| 第1週終了時 | 40〜50% |
| 第2週終了時 | 60〜70% |
| 第3週終了時 | 75〜85% |
| 第4週終了時 | 85〜95% |
第1週の正答率が低くても焦る必要はありません。間隔反復の性質上、定着は後半に加速度的に進むのが普通です。逆に、第3週以降も60%台にとどまる場合は、暗唱テストを挟まず音読だけを繰り返していないか、復習間隔が空きすぎていないかを点検してください。
詰まり箇所の記録法
暗唱テストで詰まった箇所は、テキストに日付つきの印(正の字など)を付けて累積記録します。3回以上印が付いた箇所はあなたの「構造的な弱点」であり、その箇所だけを集めた弱点音読リストを作って毎朝5分で回すと、効率よく穴が塞がります。
よくある質問
何回音読すれば覚えられますか
個人差が大きいものの、定義文レベルなら音読と暗唱を合わせて概ね10〜20回の反復で「8〜9割再現」に到達する受験生が多いとされます。ただし重要なのは総回数より配分で、同日に20回繰り返すより、数週間に分散して20回触れる方が長期定着に有利です。「回数を数える」より「暗唱テストに合格したか」を基準にしてください。
基準は全文を一字一句暗記する必要がありますか
基準本文のうち、定義文・要件列挙・重要な手順規定は一字一句レベルの正確さが望ましい一方、すべての文章を完全暗記する必要はないとされます。まずは確実に暗記すべき36の重要箇所のような頻出部分に音読資源を集中投下し、その他は趣旨を自分の言葉で説明できるレベルを目標にする、という濃淡をつけるのが現実的です。
声を出せない環境しかない場合はどうすればよいですか
電車内や図書館などでは、声帯を震わせずに口だけ動かす「口パク音読(マウシング)」が代替になります。プロダクション効果の一部は発声を伴わない口の運動だけでも得られるとされており、黙読よりは定着が期待できます。また、自宅で録音した自分の音読を聞きながら頭の中で同時に唱える方法も有効です。
音読がつらく、続かないのですが
つらさの原因はたいてい「1回のセッションが長すぎる」「成果が見えない」のいずれかです。前者は45分上限と休憩の徹底、後者は暗唱テストと詰まり箇所の記録(数値化)で対処できます。また、毎日同じ章を読むと飽きるため、「朝は第7章、夜は第5章」のように複数章を並行させると気分が切り替わります。
黙読だけで合格レベルに到達できますか
黙読中心で合格する受験生も存在するため不可能ではありませんが、黙読は読み飛ばしが起きやすく、「読んだつもり」で再現できない状態に陥りやすい方法です。少なくとも定義文などの最重要箇所だけは音読+暗唱を併用することを推奨します。学習スタイルの相性もあるため、1〜2週間試して暗唱テストの成績で比較するのが確実です。
基準の暗記はいつから始めるべきですか
論文式試験の答案練習が始まる時期までに主要な定義文が言える状態になっているのが理想とされ、多くの受験生は本試験の半年〜1年前から基準暗記を本格化させています。短期集中で仕上げたい場合は、1ヶ月暗記スケジュールのように期間を区切って音読サイクルを組む方法もあります。
留意事項も音読で暗記すべきですか
基準本文に比べると、留意事項は一字一句の再現を求められる場面が少なく、趣旨・内容を正確に説明できれば足りる箇所が多いとされます。したがって、留意事項は通読と構造読み(ステップ1〜2)を中心にし、本文の理解を補強する解説として読むのが効率的です。ただし、本文とセットで頻出する留意事項(試算価格の調整に関する部分など)は、キーワードレベルでは音読対象に含めておくと安心です。
短答式試験の対策にも音読は有効ですか
有効です。短答式の鑑定理論は基準・留意事項の文言の正誤を問う形式が中心のため、音読で文言が「耳に馴染んで」いると、選択肢の違和感(語尾の入れ替え、主語のすり替え、「直ちに」「必要に応じて」などの副詞の改変)に気づきやすくなります。論文式向けの音読暗記は、そのまま短答式の得点力にも波及するため、両試験の対策を分離する必要はありません。
まとめ
音読暗記法は、視覚・聴覚・運動感覚の複数チャネルを活用した効率的な暗記方法です。5ステップ(通読 → 構造読み → 分節音読 → 連結音読 → 全体暗唱)に沿って進めることで、基準の条文を体系的に記憶できます。
成功の鍵は3つあります。第一に、音読だけで完結させず暗唱テスト(想起練習)を必ず挟むこと。第二に、忘却曲線を踏まえて復習間隔を設計し、当日・翌日・1週間後と分散して反復すること。第三に、定義文のキーワード(価格時点・再調達原価・比較考量など)を強調して読み、骨格から文を再構成できる状態を作ることです。
ただし、音読だけに頼るのではなく、書き出し・穴埋め問題・一問一答と組み合わせることで、より確実な定着が可能になります。鑑定評価基準を1ヶ月で暗記するスケジュールと合わせて実践してください。関連記事として、確実に暗記すべき基準の36の重要箇所、鑑定評価基準の語呂合わせ暗記法もご覧ください。