/ 鑑定評価基準・理論解説

エンジニアリングレポートとは?不動産鑑定の証券化評価におけるER活用方法

エンジニアリングレポート(ER)は証券化対象不動産の鑑定評価で活用が義務づけられた建物調査報告書です。ER提出の基本原則、提出がない場合の対応、調査8項目(土壌汚染・地震リスク・耐震性等)、不動産鑑定士の主体的判断の意義を整理します。

エンジニアリングレポートとは

不動産鑑定士試験において、証券化対象不動産の鑑定評価ではエンジニアリングレポート(ER)の活用が重要な位置を占めています。ERとは、建築物、設備等及び環境に関する専門的知識を有する者が行った証券化対象不動産の状況に関する調査報告書です。

エンジニアリング・レポート(建築物、設備等及び環境に関する専門的知識を有する者が行った証券化対象不動産の状況に関する調査報告書をいう。以下同じ。)

― 不動産鑑定評価基準 各論第3章第3節

ERは、不動産鑑定士が自ら行うことが困難な専門性の高い建物調査の結果を鑑定評価に活用するためのものです。

エンジニアリング・レポートが調べる8項目を、地下まで切り取ったオフィスビルの断面の情景に配置した図。地盤の土壌汚染と地下埋設物、構造の耐震性、地震リスク、建材の有害な物質、屋上の修繕計画、再調達価格、公法上及び私法上の規制・制約を示す。

ERが調べる8つの項目


ERの活用義務

基本原則

証券化対象不動産の鑑定評価に当たっては、不動産鑑定士は、依頼者に対し当該鑑定評価に際し必要なエンジニアリング・レポートの提出を求め、その内容を分析・判断した上で、鑑定評価に活用しなければならない。

― 不動産鑑定評価基準 各論第3章第4節

不動産鑑定士は、依頼者にERの提出を求め、その内容を分析・判断して活用する義務があります。

ERが提出されない場合等の対応

ただし、エンジニアリング・レポートの提出がない場合又はその記載された内容が鑑定評価に活用する資料として不十分であると認められる場合には、エンジニアリング・レポートに代わるものとして不動産鑑定士が調査を行うなど鑑定評価を適切に行うため対応するものとし、対応した内容及びそれが適切であると判断した理由について、鑑定評価報告書に記載しなければならない。

― 不動産鑑定評価基準 各論第3章第4節

ERが提出されない場合や内容が不十分な場合には、不動産鑑定士自身が調査を行う等の対応が必要です。

ERの提出を求めてから鑑定評価報告書までの流れを示す図。依頼者にERの提出を求め、ERがあり十分なら分析・判断して活用し、ERがないか不十分なら不動産鑑定士が調査を行うなどして対応し、その内容と理由を報告書に記載する。

ERがあるときと、ないとき

ERが提出されない場合として想定される例は以下のとおりです。

場合 内容
再評価 既に鑑定評価が行われたことがある証券化対象不動産の再評価
更地 証券化対象不動産が更地である場合
建物取壊し予定 建物を取り壊す予定である場合

ERの調査項目

ERで調査される専門性の高い個別的要因は以下のとおりです。

調査項目 内容
公法上及び私法上の規制・制約 法令遵守状況調査を含む
修繕計画 長期修繕計画の妥当性
再調達価格 建物の再調達原価の把握
有害な物質 アスベスト等に係る建物環境
土壌汚染 土壌汚染の有無と程度
地震リスク PML(予想最大損失率)等
耐震性 耐震診断の結果
地下埋設物 地下埋設物の有無

これらの項目について、ERを活用するか不動産鑑定士の調査を実施するかの別を鑑定評価報告書に記載しなければなりません。


鑑定評価報告書への記載事項

ERの基本的属性

記載事項 内容
作成者の名称等 ERを作成した専門家の情報
調査日・作成日 ERの調査が行われた日及び作成された日

入手経緯と対応方針

記載事項 内容
入手先 氏名及び職業等
入手日 ERを入手した日
作成者からの説明の有無等 ERの作成者から直接説明を受けたか
対応方針 鑑定評価を行う上での対応方針

調査項目ごとの対応

各調査項目について、ERを活用するか不動産鑑定士の調査で対応するかの別と、その判断及び根拠を記載します。


ERの活用における留意事項

不動産鑑定士の主体性

エンジニアリング・レポートの活用に当たっては、不動産鑑定士が主体的に責任を持ってその活用の有無について判断を行うものであることに留意する必要がある。

― 不動産鑑定評価基準に関する実務指針(留意事項) 各論第3章

ERの活用はあくまで不動産鑑定士の主体的な判断に基づくものであり、ERの内容をそのまま採用するのではなく、その妥当性を自ら分析・検証する必要があります。

ERの形式と実質

既存のエンジニアリング・レポートの活用で対応できる場合がある一方、エンジニアリング・レポートが形式的に項目を満たしていても、鑑定評価にとって不十分で不動産鑑定士の調査が必要となる場合もある。

― 不動産鑑定評価基準に関する実務指針(留意事項) 各論第3章

ERが形式的に要件を満たしていても、鑑定評価の観点から実質的に不十分であれば、追加の調査が必要です。

ERの形式と実質の違いを机の上の情景で示す図。左は8項目すべてにチェックの入ったチェックリストで形式はそろっているが、右で虫眼鏡で中身を見ると記述が欠けており、足りなければ現場の追加調査へ進む。活用の有無は鑑定士が主体的に判断する。

項目がそろっていても中身を確かめる

作成者からの説明

できる限り依頼者からエンジニアリング・レポートの全部の提供を受けるとともに、エンジニアリング・レポートの作成者からの説明を直接受ける機会を求めることが必要である。

― 不動産鑑定評価基準に関する実務指針(留意事項) 各論第3章

ERとDCF法の関係

ERの調査結果は、DCF法の適用において以下の場面で活用されます。

DCF法の適用場面 ERの活用
資本的支出の査定 ERの修繕計画に基づく大規模修繕費の予測
再調達原価の査定(原価法で活用) ERの再調達価格の情報
リスク要因の把握 地震リスク、土壌汚染、有害物質等の影響
法令遵守状況 建築基準法等への適合性の確認

試験での出題ポイント

短答式試験

  • ERの定義:「建築物、設備等及び環境に関する専門的知識を有する者が行った調査報告書」
  • ERの活用義務:依頼者にERの提出を求め、分析・判断して活用
  • ERが提出されない場合は不動産鑑定士が調査を行う等の対応が必要
  • 不動産鑑定士の主体性:活用の有無は不動産鑑定士が主体的に判断

論文式試験

  • ERの活用の意義:専門性の高い建物調査の鑑定評価への反映
  • ERが不十分な場合の対応:不動産鑑定士による調査の必要性
  • 鑑定評価報告書への記載事項:ERの基本的属性、対応方針、調査項目ごとの判断

暗記のポイント

  1. ERの定義:「建築物、設備等及び環境に関する専門的知識を有する者が行った調査報告書」
  2. ER活用の基本:「依頼者に提出を求め、内容を分析・判断した上で活用」
  3. 不動産鑑定士の責務:「主体的に責任を持って活用の有無を判断」
  4. 調査項目8項目:法令遵守、修繕計画、再調達価格、有害物質、土壌汚染、地震リスク、耐震性、地下埋設物

確認問題

確認問題


まとめ

エンジニアリングレポート(ER)は、証券化対象不動産の鑑定評価において、専門性の高い建物調査の結果を鑑定評価に活用するための重要な資料です。不動産鑑定士はERの提出を依頼者に求め、その内容を分析・判断して活用する義務がありますが、活用の判断は不動産鑑定士が主体的に行うものです。

ERで調査される項目は、法令遵守状況、修繕計画、再調達価格、有害物質、土壌汚染、地震リスク、耐震性、地下埋設物の8分野にわたります。証券化対象不動産のDCF法適用においてERの調査結果は不可欠な情報であり、鑑定評価書と調査報告書の違いの理解とともに、証券化関連の鑑定評価を体系的に学習してください。鑑定評価の基準の全体像も参照してください。

#エンジニアリングレポート #建物調査 #証券化

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