スライド法とは?不動産鑑定の継続賃料評価における変動率の求め方と計算方法
スライド法は直近合意時点の純賃料に変動率を乗じて継続賃料を求める手法です。変動率の査定に使う5つの指標(地価・物価・所得水準等)、原則的方法と直接法の2つの計算例、必要諸経費等の取扱いを基準原文付きで解説します。
スライド法とは
不動産鑑定士試験において、スライド法は継続賃料を求める4つの手法の一つです。直近合意時点における純賃料に変動率を乗じ、価格時点における必要諸経費等を加算して試算賃料を求めます。
スライド法は、直近合意時点における純賃料に変動率を乗じて得た額に価格時点における必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法である。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節
スライド法の特徴
直接法による簡便な方法
基準は、スライド法の簡便な方法として、実際賃料そのものに変動率を乗じて直接求める方法も認めています。
なお、直近合意時点における実際実質賃料又は実際支払賃料に即応する適切な変動率が求められる場合には、当該変動率を乗じて得た額を試算賃料として直接求めることができるものとする。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節
| 方法 | 算定式 |
|---|---|
| 原則的方法 | 直近合意時点の純賃料 × 変動率 + 価格時点の必要諸経費等 |
| 直接法 | 直近合意時点の実際実質賃料(又は実際支払賃料)× 変動率 |
直接法は、実質賃料全体に対して適切な変動率が求められる場合に適用可能であり、純賃料と必要諸経費等を分離する必要がないため計算が簡便です。
他の継続賃料手法との比較
スライド法は、直近合意時点の賃料水準を前提として、その後の経済情勢等の変化を変動率によって反映させる手法です。直近合意時点の賃料が当事者間の合意として確定していることを前提に、その後の変動のみを反映させるという明快な構造を持ちます。
変動率の求め方
変動率はスライド法の核心であり、その査定が試算賃料の精度を左右します。
変動率は、直近合意時点から価格時点までの間における経済情勢等の変化に即応する変動分を表すものであり、継続賃料固有の価格形成要因に留意しつつ、土地及び建物価格の変動、物価変動、所得水準の変動等を示す各種指数や整備された不動産インデックス等を総合的に勘案して求めるものとする。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節
変動率の査定に用いる指標
| 指標 | 内容 |
|---|---|
| 土地価格の変動 | 地価公示、都道府県地価調査等による地価の推移 |
| 建物価格の変動 | 建設費指数等による建築費の推移 |
| 物価変動 | 消費者物価指数、GDPデフレーター等 |
| 所得水準の変動 | 賃金指数、国民所得の推移 |
| 不動産インデックス | 不動産投資収益指数等 |
これらの指標を総合的に勘案して変動率を求めます。一つの指標のみに依存するのではなく、複数の指標を比較検討することが重要です。
継続賃料固有の価格形成要因への留意
変動率の査定に際しては、継続賃料固有の特殊性に留意する必要があります。
スライド法の計算例
原則的方法
前提条件:
直近合意時点の実質賃料:月額40万円
直近合意時点の必要諸経費等:月額10万円
直近合意時点の純賃料:月額30万円(40万円 − 10万円)
変動率:1.05(5%上昇)
価格時点の必要諸経費等:月額11万円
スライド法による試算賃料 = 30万円 × 1.05 + 11万円
= 31.5万円 + 11万円
= 42.5万円/月
直接法
前提条件:
直近合意時点の実際実質賃料:月額40万円
実質賃料に対する変動率:1.06(6%上昇)
スライド法による試算賃料 = 40万円 × 1.06 = 42.4万円/月
必要諸経費等の取扱い
必要諸経費等の求め方は、積算法に準ずるものとする。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節
スライド法の原則的方法では、必要諸経費等は価格時点の実額を用います。変動率は純賃料部分にのみ適用し、必要諸経費等は別途査定するという構造です。これにより、純賃料の変動と必要諸経費等の変動をそれぞれ適切に反映できます。
試験での出題ポイント
短答式試験
- スライド法の算定式:直近合意時点の純賃料 × 変動率 + 必要諸経費等
- 変動率の査定に用いる指標:土地・建物価格、物価、所得水準、不動産インデックス
- 直接法の存在と適用条件
- 必要諸経費等は積算法に準ずる
論文式試験
- スライド法の意義と算定方法:変動率の考え方を中心に
- 変動率の査定方法:各種指標の総合的勘案
- 4つの継続賃料手法の比較:各手法の着目点の違い
暗記のポイント
- スライド法 = 直近合意時点の純賃料 × 変動率 + 価格時点の必要諸経費等
- 変動率は「土地及び建物価格の変動、物価変動、所得水準の変動等を示す各種指数や不動産インデックス等を総合的に勘案」
- 直接法:「実際実質賃料に即応する適切な変動率が求められる場合」に可能
まとめ
スライド法は、直近合意時点の純賃料に変動率を乗じて価格時点の純賃料を求め、必要諸経費等を加算して継続賃料を算定する手法です。変動率は、土地及び建物価格の変動、物価変動、所得水準の変動等を示す各種指数や不動産インデックス等を総合的に勘案して求めます。
差額配分法、利回り法、賃貸事例比較法とともに継続賃料の4手法を構成しており、それぞれの着目点の違いを理解したうえで、継続賃料固有の特殊性も含めて体系的に学習することが試験対策として重要です。積算法による新規賃料との関連も意識してください。