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継続賃料とは?不動産鑑定評価における固有の特殊性と直近合意時点を解説

継続賃料は既存契約を前提に改定される賃料であり、新規賃料とは本質的に異なります。直近合意時点の定義、継続賃料固有の価格形成要因5項目、4つの手法(差額配分法・利回り法・スライド法・賃貸事例比較法)の体系を基準原文付きで解説します。

継続賃料とは

不動産鑑定士試験において、継続賃料は新規賃料とは異なる独自の概念と手法体系を持つ重要な論点です。継続賃料とは、既に成立している賃貸借契約に基づき、既存の契約関係を前提として改定される賃料をいいます。

継続賃料の鑑定評価額は、現行賃料を前提として、契約当事者間で現行賃料を合意しそれを適用した時点(以下「直近合意時点」という。)以降において、公租公課、土地及び建物価格、近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における賃料又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃料の変動等のほか、賃貸借等の契約の経緯、賃料改定の経緯及び契約内容を総合的に勘案し、契約当事者間の公平に留意の上決定するものである。

― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

この規定は、継続賃料の本質を端的に示しています。現行賃料を前提とし、直近合意時点以降の変動を反映し、当事者間の公平に留意するという3つの要素が核心です。


直近合意時点の概念

定義

直近合意時点とは、「契約当事者間で現行賃料を合意しそれを適用した時点」をいいます。

これは必ずしも当初の契約締結時点ではなく、直近の賃料改定によって現行賃料が合意された時点を指します。例えば、5年前に契約を締結し、3年前に賃料改定を行った場合、直近合意時点は3年前の賃料改定時点となります。

直近合意時点の重要性

継続賃料の鑑定評価において、直近合意時点は以下の点で重要な意味を持ちます。

重要性内容
分析の起点直近合意時点から価格時点までの変動を分析する起点
差額配分法適正賃料と実際賃料の差額を把握する前提
利回り法直近合意時点の利回りが継続賃料利回りの出発点
スライド法直近合意時点の純賃料に変動率を乗じる

継続賃料固有の価格形成要因

宅地の継続賃料の場合

各論第2章第1節は、宅地の継続賃料固有の価格形成要因を例示しています。

要因内容
近隣地域の賃料の推移と改定の程度近隣地域等における類似不動産の賃料又は代替競争不動産の賃料の推移とその改定の程度
土地価格の推移対象不動産の土地価格の推移
公租公課の推移固定資産税、都市計画税等の推移
契約の内容及び経緯賃貸借契約の内容とそれに関する経緯
賃貸人等の寄与度賃貸人等又は賃借人等の近隣地域の発展に対する寄与度

継続賃料の改定の場合の総合勘案事項

継続中の宅地の賃貸借等の契約に基づく実際支払賃料を改定する場合には、差額配分法利回り法スライド法及び賃貸事例比較法の4手法を適用し、以下の事項を総合的に勘案します。

勘案事項内容
近隣の賃料動向近隣地域等の賃料、改定の程度及び推移
土地価格の推移直近合意時点から価格時点までの土地価格の変動
純賃料の推移賃料に占める純賃料の推移
底地利回りの推移底地に対する利回りの推移
公租公課の推移固定資産税等の推移
新規賃料との乖離直近合意時点及び価格時点における新規賃料と現行賃料の乖離の程度
契約の内容と経緯契約の内容とそれに関する経緯
経過期間契約上の経過期間及び直近合意時点から価格時点までの経過期間
賃料改定の経緯過去の賃料改定の経緯

契約当事者間の公平

公平の概念

継続賃料の鑑定評価において最も重要な原則の一つが、契約当事者間の公平です。新規賃料が市場の需給関係から客観的に決まるのに対し、継続賃料は既存の契約関係を前提とするため、賃貸人と賃借人の双方にとって公平な水準を導き出す必要があります。

新規賃料との関係

継続賃料は、新規賃料とは異なる水準となることが一般的です。

場合継続賃料と新規賃料の関係
地価上昇局面継続賃料 < 新規賃料(賃料の遅行性による)
地価下落局面継続賃料 > 新規賃料(同上)
安定的な市場比較的近接する水準

この乖離は、賃料の遅行性粘着性に起因するものであり、継続賃料の本質的な特性です。


更新料・名義書替料の取扱い

なお、賃料の改定が契約期間の満了に伴う更新又は借地権の第三者への譲渡を契機とする場合において、更新料又は名義書替料が支払われるときは、これらの額を総合的に勘案して求めるものとする。

― 不動産鑑定評価基準 各論第2章第1節

賃料改定が更新や借地権の譲渡を契機とする場合には、更新料や名義書替料の授受も継続賃料の鑑定評価において考慮すべき要素となります。


建物及びその敷地の継続賃料

建物及びその敷地の継続賃料を求める場合の鑑定評価は、宅地の継続賃料を求める場合の鑑定評価に準ずるものとする。

― 不動産鑑定評価基準 各論第2章第2節

建物及びその敷地(家賃)の継続賃料も基本的に宅地の継続賃料(地代)に準じますが、「土地価格の推移」は「土地及び建物価格の推移」と、「底地に対する利回りの推移」は「建物及びその敷地に対する利回り」と読み替えます。


試験での出題ポイント

短答式試験

  • 直近合意時点の定義:「契約当事者間で現行賃料を合意しそれを適用した時点」
  • 継続賃料固有の価格形成要因(5項目)
  • 継続賃料改定の勘案事項(9項目)の重要なもの
  • 契約当事者間の公平の原則

論文式試験

  • 継続賃料の意義と特殊性:新規賃料との違い、直近合意時点の概念、当事者間の公平
  • 4手法の体系的な論述:差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法の特徴と関係
  • 継続賃料固有の価格形成要因の分析方法

暗記のポイント

  1. 直近合意時点:「契約当事者間で現行賃料を合意しそれを適用した時点
  2. 継続賃料は「現行賃料を前提」として「契約当事者間の公平に留意」して決定
  3. 固有の価格形成要因5項目:賃料の推移、土地価格の推移、公租公課の推移、契約の内容と経緯、寄与度
  4. 4手法:差額配分法利回り法スライド法賃貸事例比較法

確認問題

確認問題

確認問題


まとめ

継続賃料は、既存の賃貸借契約を前提として改定される賃料であり、新規賃料とは本質的に異なる概念です。直近合意時点を起点として、その後の経済情勢等の変動を反映しつつ、契約当事者間の公平に留意して決定されます。

継続賃料の鑑定評価には、差額配分法(新規賃料との差額を配分)、利回り法(継続賃料利回りを適用)、スライド法(変動率を適用)、賃貸事例比較法(賃貸借事例との比較)の4手法を関連づけて用います。

継続賃料固有の価格形成要因の理解は、借地権の評価底地の評価とも密接に関連するため、新規賃料の手法との違いを意識しながら体系的に学習してください。

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