不動産鑑定における定期借地権の評価ポイント
一般定期借地権(50年以上)・建物譲渡特約付(30年以上)・事業用定期借地権(10年以上50年未満)の3類型を比較表で整理。普通借地権との最大の違い(更新なし)、残存期間に応じた価格の逓減、底地評価の特徴、DCF法的な評価方法を解説。
定期借地権とは
定期借地権とは、借地借家法に規定される、契約の更新がなく期間満了により確定的に終了する借地権の総称です。平成4年(1992年)の借地借家法施行により導入された制度であり、従来の普通借地権とは異なる法的性質を持っています。
不動産鑑定評価においては、定期借地権は普通借地権とは評価方法が異なるため、その法的性質と経済的特性を正確に理解する必要があります。
定期借地権の3つの類型
借地借家法は、以下の3つの類型の定期借地権を定めています。
| 類型 | 根拠条文 | 存続期間 | 利用目的 | 契約方式 |
|---|---|---|---|---|
| 一般定期借地権 | 第22条 | 50年以上 | 制限なし | 書面(公正証書等) |
| 建物譲渡特約付借地権 | 第23条 | 30年以上 | 制限なし | 特約の方式は不問 |
| 事業用定期借地権 | 第23条 | 10年以上50年未満 | 事業用に限る | 公正証書 |
一般定期借地権
一般定期借地権は、存続期間を50年以上として設定される定期借地権です。以下の3つの特約を書面により設定します。
- 契約の更新をしない
- 建物の築造による存続期間の延長をしない
- 建物買取請求権を行使しない
建物譲渡特約付借地権
存続期間30年以上の借地権で、期間満了時に借地権設定者が建物を買い取ることにより借地権が消滅する類型です。建物を買い取った後、借地人は借家人として引き続き利用できる場合があります。
事業用定期借地権
事業用建物の所有を目的とする定期借地権で、存続期間は10年以上50年未満です。居住用建物には利用できないことが特徴で、公正証書により契約しなければなりません。
普通借地権との違い
定期借地権と普通借地権の最も大きな違いは、契約の更新の有無です。
| 比較項目 | 普通借地権 | 定期借地権 |
|---|---|---|
| 更新 | 正当事由がなければ更新される | 更新なし(期間満了で終了) |
| 存続期間 | 最低30年(更新後は10年以上) | 類型により異なる |
| 建物買取請求権 | あり | 一般定期借地権ではなし |
| 借地権価格 | 更新を前提とした価格形成 | 残存期間に応じて逓減 |
| 市場性 | 取引慣行の有無・成熟度による | 残存期間が短いほど市場性は低下 |
定期借地権の鑑定評価
評価の基本的考え方
定期借地権の鑑定評価においては、以下の点を特に考慮する必要があります。
| 考慮事項 | 内容 |
|---|---|
| 残存期間 | 契約の残存期間が価格に大きく影響 |
| 契約条件 | 地代の水準、一時金の授受の状況 |
| 建物の状況 | 借地上の建物の種類・構造・残耐用年数 |
| 契約終了時の取扱い | 原状回復義務、建物取壊し費用の負担 |
| 転貸・譲渡の可否 | 定期借地権の流通性に影響 |
評価手法の適用
定期借地権の評価には、主に以下の方法が用いられます。
1. 経済価値に着目する方法
定期借地権の経済価値は、借地権者が契約期間中に享受する経済的利益の現在価値として把握します。
ここで、正常地代と実際支払地代の差額(賃料差額)がプラスであれば経済的利益があり、これを残存期間にわたってDCF法的に割り引いて現在価値を求めます。
2. 取引事例に着目する方法
同種の定期借地権の取引事例がある場合には、取引事例比較法の考え方を適用して比準価格を求めることができます。ただし、定期借地権の取引事例は限定的であることが多いため、事例の収集が課題となります。
残存期間と価格の関係
定期借地権の価格は、残存期間に応じて逓減します。普通借地権のように更新が見込まれるものとは異なり、期間満了時にはゼロに近づきます。
| 残存期間 | 価格水準のイメージ |
|---|---|
| 設定直後 | 最も高い(借地権割合に近づく場合もある) |
| 中間期 | 徐々に逓減 |
| 満了間近 | 大幅に低下(原状回復費用の控除も) |
| 満了時 | 原則としてゼロ |
定期借地権付建物の評価
定期借地権付建物(定期借地権上の建物及びその敷地利用権)の評価は、以下の考え方に基づきます。
評価の構成
ただし、建物の経済的残存耐用年数が定期借地権の残存期間を超える場合には、建物の経済的な利用可能期間は定期借地権の残存期間に制約されます。
留意事項
| 留意点 | 内容 |
|---|---|
| 建物の耐用年数 | 定期借地権の残存期間との整合性 |
| 原状回復費用 | 契約終了時の建物取壊し費用の控除 |
| 収益価格 | 残存期間中の純収益の現在価値の合計 |
| 市場性 | 残存期間が短い場合の需要の減退 |
定期借地権の底地の評価
定期借地権の底地(定期借地権付き土地の所有権)の評価は、普通借地権の底地とは異なる特徴があります。
普通借地権の底地との違い
| 比較項目 | 普通借地権の底地 | 定期借地権の底地 |
|---|---|---|
| 更地復帰 | 不確定(正当事由が必要) | 確定(期間満了で確実に復帰) |
| 価格水準 | 更地価格を大きく下回ることが多い | 残存期間に応じて更地価格に近づく |
| 収益性 | 地代収入のみ | 地代収入 + 更地復帰の期待 |
定期借地権の底地の価格は、残存期間中の地代収入の現在価値と、期間満了後に更地として復帰する更地価格の現在価値の合計として求められます。
試験での出題ポイント
短答式試験
| 出題パターン | 正しい理解 |
|---|---|
| 定期借地権の3類型 | 一般定期借地権(50年以上)、建物譲渡特約付(30年以上)、事業用定期借地権(10年以上50年未満) |
| 普通借地権との最大の違い | 契約の更新がない |
| 事業用定期借地権の制限 | 居住用建物には利用不可、公正証書で契約 |
| 価格の特徴 | 残存期間に応じて逓減する |
論文式試験
論点1:定期借地権の評価方法。 普通借地権との違いを踏まえた評価の考え方を論述する問題です。
論点2:定期借地権の底地評価。 更地復帰が確定的である底地の評価の特徴を論じる問題です。
まとめ
定期借地権は、契約の更新がなく期間満了で確定的に終了する借地権であり、一般定期借地権・建物譲渡特約付借地権・事業用定期借地権の3類型があります。鑑定評価においては、残存期間に応じた価格の逓減、原状回復費用、建物の耐用年数との整合性など、普通借地権とは異なる考慮事項が多く存在します。