/ 鑑定評価基準・理論解説

不動産鑑定における造成中の土地の評価方法

宅地造成が進行中の土地の鑑定評価はどう行う?未竣工建物等鑑定評価としての位置づけ、「造成完了後の宅地価格−残工事費用−金利」の計算式、開発法との関係、工事進捗や法令許可など評価の留意点をわかりやすく整理します。

造成中の土地の評価とは

造成中の土地とは、宅地造成や土地区画整理等の工事が進行中であり、まだ完成していない状態の土地のことです。造成中の土地の鑑定評価は、工事の完了を前提とする場合には、未竣工建物等鑑定評価(対象確定条件の一つ)として位置づけられます。


評価のアプローチ

造成完了を前提とした評価

造成中の土地を対象確定条件として工事完了を前提に評価する場合、造成完了後の宅地としての価格を求めます。

現状での評価

造成中の現状のまま評価する場合には、造成完了後の価格から残りの造成費用等を控除する方法が考えられます。

$$\text{造成中の土地の価格} = \text{造成完了後の宅地価格} - \text{残工事費用} - \text{金利等}$$

簡単な計算例

たとえば、造成が7割ほど進んだ土地で、次のような前提を置いたとします(数値は説明用の仮定です)。

  • 造成完了後の宅地価格(販売できる状態の価格):1億円
  • 完成までに必要な残りの造成費用:1,500万円
  • 完成・販売までの期間に対応する金利・付帯費用:300万円

このとき、造成中の現状での価格は

$$1\text{億円} - 1{,}500\text{万円} - 300\text{万円} = 8{,}200\text{万円}$$

と概算できます。ポイントは、「完成後にいくらで売れるか」から「完成までにあといくらかかるか(費用・時間)」を差し引く、という発想です。工事の進捗が進むほど残工事費用が小さくなり、評価額は完成後価格に近づいていきます。

計算例の数値どおりに、造成完了後の宅地価格1億円の横棒を、造成中の土地の価格8,200万円、残りの造成費用1,500万円、金利・付帯費用300万円に分けた図。上に造成が7割ほど進んだ現場の情景を添えている。

完成後の価格から残りの費用と時間を引く


「造成中」をどう扱うかで評価額が変わる

造成中の土地でつまずくのは、計算式そのものよりどの状態を評価するのかの確定です。ここを曖昧にしたまま計算に入ると、何を求めたのか分からない数字が出ます。

まず決めるのは「対象確定条件」

造成中の土地には、大きく2つの評価の仕方があります。どちらを採るかは依頼目的によって決まります。

何を評価するか 対象確定条件 求まる価格 使う場面
現況のまま(造成途中の状態) 現況を所与とする 造成完了後価格 - 残工事費用 - 金利等 担保評価、途中売却、会計上の評価
造成完了を前提(未完成部分を完成したものとみなす) 工事の完了を前提とする(未竣工建物等鑑定評価) 造成完了後の宅地価格 事業採算、完成後の担保設定、分譲計画

後者は現況と異なる状態を前提とするもので、対象確定条件の設定(未竣工建物等鑑定評価)にあたります。したがって、その条件設定が鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないかの観点から妥当かを確認し、さらに法令上必要な許認可等の取得や工事完了の実現性が高いことを確かめる必要があります。詳しくは未竣工建物等の鑑定評価と条件設定、対象確定条件とはを参照してください。

この2つは価格が大きく違います。先ほどの例なら、現況評価は8,200万円、造成完了を前提とすれば1億円です。条件設定を明示しないまま「造成中の土地の価格は?」と問うことに意味がないのはこのためです。

同じ造成地を、造成途中の現況のまま評価すると8,200万円、工事の完了を前提に評価すると1億円になることを、左右2つの現場の情景で対比したアイソメ図。最初にどちらの状態を評価するかを確定する必要があることを示している。

どの状態を評価するかで価格が変わる

なぜ「金利等」を控除するのか

計算式に出てくる「金利等」は、初学者が見落としやすい項目です。

造成が完了して販売できるようになるまでには時間がかかります。その間、投下した資金は回収できません。買主の立場で考えると、いま8,200万円を払って、1年後にようやく1億円で売れるという話です。1年待つ以上、その間の資金コスト(金利)を織り込まなければ、買主にとって合理的な投資になりません。

つまり控除するのは、

  • 残工事費用:完成させるために追加で必要な支出
  • 金利等:完成・販売までの期間に対応する資金コスト、および事業者の危険負担(開発リスク)

の2つです。工期が長いほど、また金利水準が高いほど、控除額は大きくなります。

進捗が進むと価格はどう動くか

造成の進捗 残工事費用 完成までの期間 評価額
素地(未着手) 大きい 長い 最も低い
3割完了 やや大きい やや長い 低い
7割完了 小さい 短い 完成後価格に近い
完了 ゼロ ゼロ 完成後の宅地価格

進捗が進むほど完成後価格に漸近するという関係です。ただし直線的に増えるわけではありません。造成費用は工程によって単価が異なり(造成の後半は仕上げ工事が中心で単価が下がることが多い)、また残工期の短縮は金利控除額の減少としても効いてきます。

造成の進捗を素地、3割完了、7割完了、完了の4段階で横軸にとり、評価額が完成後の宅地価格の線へ向かって曲線を描いて近づいていく様子を示したグラフ。各段階の下に造成現場の小さな情景を添えている。

進捗が進むほど完成後の価格に近づく


開発法との関係

造成中の土地の評価は、開発法の考え方と密接に関連しています。

分割利用をすることが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更地を区画割りして、標準的な宅地とすることを想定し、販売総額から通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格。

― 不動産鑑定評価基準 各論第1章
評価方法 概要
開発法 造成完了後の販売総額 − 造成費 − 付帯費用(現在価値)
取引事例比較法 造成中又は造成完了後の類似土地の取引事例から比準
収益還元法 造成完了後の賃貸・分譲収益に基づく評価

評価の留意点

留意点 内容
造成工事の進捗 工事の進捗状況と残工事の内容
工事費用の見積り 残りの造成費用の正確な把握
工期 造成完了までの期間
法令上の許可 宅地造成及び特定盛土等規制法、都市計画法の許可
最有効使用 造成完了後の土地の最有効使用

試験での出題ポイント

出題パターン 正しい理解
位置づけ 完了を前提とする場合は未竣工建物等鑑定評価(対象確定条件の一つ)
評価の前提 現況か、造成工事の完了を前提とするかを確定
関連する手法 開発法の考え方と密接に関連

まとめ

造成中の土地の鑑定評価は、工事の完了を前提とする場合には未竣工建物等鑑定評価として位置づけられ、造成完了後の宅地価格を基礎に評価します。開発法の考え方が重要であり、残工事費用や工期を適切に把握することが評価の鍵です。

未竣工建物の評価手順、開発法の解説、対象確定条件と併せて理解してください。

押さえるべき5点

  • 位置づけ:完了を前提とする場合は未竣工建物等鑑定評価(対象確定条件の一つ)
  • 最初にやること:現況で評価するか、造成完了を前提とするかの条件設定
  • 完了を前提とする場合:対象確定条件(未竣工建物等鑑定評価)にあたり、利用者の利益を害するおそれがないかの妥当性確認と工事完了の実現性の判断が必要
  • 計算式:造成完了後の宅地価格 - 残工事費用 - 金利等
  • 金利等を控除する理由:完成・販売までの期間に対応する資金コストと開発リスク

関連論点への広がり

造成中の土地は、複数の論点の交差点にあります。周辺とつなげて理解すると出題への対応力が上がります。

つながる論点 記事
条件設定の全体像(想定上の条件・調査範囲等条件) 未竣工建物等の鑑定評価と条件設定
対象確定条件 対象確定条件とは?
開発法の適用 開発法とは?大規模な土地・素地を評価する手法
造成費を含む再調達原価 再調達原価とは?算定の実務
土地の熟成度 再調達原価の算定
造成後の最有効使用 最有効使用の原則
宅地造成の法規制 都市計画法の開発許可制度

演習で定着させる

#宅地造成 #対象確定条件 #未竣工 #造成中の土地 #開発法

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