/ 鑑定理論

鑑定評価上の不明事項とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

対象不動産の確認、資料の検討、価格形成要因の分析など鑑定評価の手順の各段階で、資料収集の限界や資料の不備等によって明らかにすることができない事項です。つまり、調べ尽くしても分からなかったことで、報告書にはその評価上の取扱いと、鑑定士自身と他の専門家それぞれの調査の範囲及び内容を記載します。

鑑定評価上の不明事項とは

中古住宅を内覧しても、床下や壁の中までは見えません。鑑定評価でも、土壌汚染の有無、埋蔵文化財の存否、建物の耐震性などは、鑑定士の通常の調査では確かめきれないことがあります。分からないことを黙ったまま額を出すと、読み手は「調べた上での額だ」と誤解します。だから基準は、明らかにできない事項があるときは、それをどう扱って評価したかを報告書に書くよう求め、その際に鑑定士が自分で調べた範囲と内容、他の専門家に頼った範囲と内容をはっきりさせるよう定めています。

鑑定評価上の不明事項の図解:見えるところは鑑定士が調べ、地下は専門家に頼み、分からなかったことは取扱いを書く。

見えるところは鑑定士が調べ、地下は専門家に頼み、分からなかったことは取扱いを書く。

不明事項の記載は、鑑定評価の妥当する範囲を示す線引きです

記載するのは、「何が明らかにできなかったか」と「それを評価上どう取り扱ったか」です。汚染は無いものとして評価した、専門家の調査結果を前提にした、価格に一定の減額を織り込んだ、といった取扱いです。基準はここまでしか書いていませんが、総論第5章が条件設定について「鑑定評価の妥当する範囲及び責任の範囲を示す」意義があると述べているのと同じで、不明事項の記載は、この額がどこまでの前提で妥当するのかを読み手に示す線引きだと考えられます。

調査範囲等条件を設定した場合も、取扱いを書きます

調査範囲等条件は、通常の調査では事実の確認が困難な特定の価格形成要因について、調査の範囲を明確にする条件です。条件で調査を絞ったなら、その要因は明らかにしていないので、基準は不明事項に「調査範囲等条件を設定した場合を含む」と定めています。基準に理由は書かれていませんが、条件を付けたからといって、読み手の側で不明が消えるわけではないからだと考えられます。むしろ条件を付けて調べていない要因こそ、何を調べていないか、それをどう扱ったかを書く必要があります。

鑑定士と他の専門家、それぞれの調査の範囲と内容を書きます

鑑定士が自ら行った調査の範囲及び内容を明確にするとともに、他の専門家の調査結果等を活用したときは、その専門家が調査した範囲及び内容も明確にします。読み手は、どこまでが鑑定士の責任で、どこからが専門家の責任かが分かって初めて、結果をどこまで信頼してよいかを判断できます。「専門家の調査結果を活用した」とだけ書いても、その専門家が敷地のどの範囲を、どの深さまで、何の項目について調べたのかは伝わりません。

鑑定評価上の不明事項の図解:鑑定士が調べた範囲と、専門家が調べた範囲を、分けて書く。

鑑定士が調べた範囲と、専門家が調べた範囲を、分けて書く。

対象不動産の確認、資料の検討及び価格形成要因の分析等、鑑定評価の手順の各段階において、鑑定評価における資料収集の限界、資料の不備等によって明らかにすることができない事項が存する場合(調査範囲等条件を設定した場合を含む。)の評価上の取扱いを記載しなければならない。

出典: 総論第9章 第2節

実務ではこう使う

工場跡地の評価で、鑑定士は自分でできる範囲として登記や役所の規制の確認と現地の目視を行い、土壌の状態は専門機関の調査報告書に頼ります。評価書には、自分が調べた範囲と内容、専門機関が調べた範囲と内容、そして汚染の可能性を価格にどう反映したかを分けて書きます。調査範囲等条件で土壌調査を省いたときも、その旨と取扱いを不明事項として明記します。

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