建物の各用途に共通する個別的要因とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説
住宅・事務所・店舗・倉庫といった建物の用途を問わず、その建物の価格に個別に効く要因です。つまり、建物である以上は必ず見る要因で、基準は建築の年次から公法上及び私法上の規制まで9項目を例示しています。
建物の各用途に共通する個別的要因とは
中古の家を見に行くと、いつ建てたか、木造か鉄筋か、雨漏りや外壁のひびは無いか、増築の許可は取ってあるか、を確かめますよね。事務所ビルでも倉庫でも、建物なら同じ項目を確かめます。基準はこれを「建物の各用途に共通する個別的要因」と呼び、建築の年次、面積・高さ・構造・材質、設計、設備等の機能性、施工の質と量、耐震性、耐火性等建物の性能、維持管理の状態、有害な物質の使用の有無及びその状態、建物とその環境との適合の状態、公法上及び私法上の規制、制約等の9項目を例示しています。そのうえで、市場参加者が取引で着目する要因は建物の用途毎に異なる、と念を押しています。

住宅でも事務所でも倉庫でも、建物なら同じ9項目を確かめる。
9項目は、建物そのものの状態から周りとの関係まで並んでいます
前半は建物そのものの成り立ちです。いつ建てたか(年次)、どれだけの大きさで何でできているか(面積、高さ、構造、材質)、使いやすく作られているか(設計、設備等の機能性)、丁寧に作られているか(施工の質と量)、地震や火事に強いか(耐震性、耐火性等の性能)、手入れされているか(維持管理の状態)、アスベストなどが使われていないか(有害な物質)です。後半は周りとの関係で、建物が周りの街並みに合っているか(環境との適合の状態)、法律や契約による縛りは無いか(公法上及び私法上の規制、制約)です。年次は経年の減価の元になるだけでなく、建てた当時どの法令が適用されたかを推し量る手がかりにもなります。
共通の要因でも、着目する要因は建物の用途毎に異なります
同じ鉄筋コンクリート造でも、共同住宅を買う人は間取りや日当たり、水回りを見ますし、事務所ビルを借りる会社は基準階の床面積や天井高、通信設備を見ます。見る項目のリストは共通でも、そのうちどれを重く見るかは、その建物を使う人によって変わります。基準が「市場参加者が取引等に際して着目するであろう個別的要因が、建物の用途毎に異なる」と書くのはこの意味です。だから留意事項は、共通の要因とは別に、住宅・事務所ビル・商業施設・物流施設ごとに特に留意すべき要因を例示しています。

同じ構造でも、住む人と借りる会社では見る項目が違う。
環境との適合の状態は、建物だけを見ても分かりません
建物とその環境との適合の状態は、その建物が建っている地域の特性に合っているか、という要因です。閑静な住宅街に大型の倉庫が建っていれば、建物自体は立派でも街並みと合わず、その土地での価値は下がります。これは建物の劣化や修繕費用を調べる報告書からは読み取れず、周りの地域を見て鑑定士が判断することです。総論第7章は、減価修正で考慮する減価の要因として、物理的要因のほかに、不動産とその付近の環境との不適合などの経済的要因を挙げています。新築直後で物理的な傷みが無くても、環境との適合を欠けば経済的要因による減価が生じるので、鑑定評価額が再調達原価を下回ることがあると読めます。

建物が立派でも、周りの街並みに合っていなければ価値は下がる。
留意事項は、9項目のうち五つの中身を示しています
留意事項が中身まで示すのは、設計、設備等の機能性、建物の性能(耐震性)、維持管理の状態、有害な物質の使用の有無及びその状態、公法上及び私法上の規制、制約等の五つです。このうち規制、制約については、増改築や用途変更が行われている場合に法令の遵守の状況に特に留意する、とあります。建てた後に手を加えた建物は、その手続が建築基準法どおりに行われたかを確かめる必要がある、ということです。
建物の各用途に共通する個別的要因の主なものを例示すれば、次のとおりである。
出典: 総論第3章 第3節
実務ではこう使う
現地調査では、登記事項証明書で建築の年次と構造を、確認済証と検査済証で法令上の手続を、竣工図で面積と設備を押さえ、外壁・屋上・設備の劣化と増改築の跡を自分の目で見ます。同じ建物でも、共同住宅として見るか事務所として見るかで、時間をかける場所が変わります。増築や用途変更があれば役所で確認申請の履歴を調べ、既存不適格や違反の有無を評価書に書きます。
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