/ 鑑定理論

専門性の高い個別的要因とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

証券化対象不動産の鑑定評価で調査が必要となる個別的要因のうち、基準が表に掲げる八つの項目です。つまり、公法上及び私法上の規制等、修繕計画、再調達価格、有害物質、土壌汚染、地震リスク、耐震性、地下埋設物という、建物や土地の専門家でなければ確かめにくい事柄です。

専門性の高い個別的要因とは

中古の一棟ビルを買うとき、外から眺めても分からないことがいくつもあります。壁の中にアスベストが使われていないか、大地震で壊れないか、地面の下に汚れた土や古い基礎が埋まっていないか、そもそも今の法律に合った建物か。証券化対象不動産は大勢の投資家のお金で持たれるので、こうした事柄を専門家の調査で確かめてから値段を付ける必要があります。基準は、そのうち八つを表に掲げ、項目ごとに誰の調査で確かめたかを鑑定評価報告書に書かせています。この八つが専門性の高い個別的要因です。

専門性の高い個別的要因の図解:外から見えない八つの事柄を、建物と土地の断面に書き込む。

外から見えない八つの事柄を、建物と土地の断面に書き込む。

八つの項目は、建物と土地の見えない状態を確かめるものです

表に掲げられているのは、公法上及び私法上の規制、制約等(法令遵守状況調査を含む)、修繕計画、再調達価格、有害な物質(アスベスト等)に係る建物環境、土壌汚染、地震リスク、耐震性、地下埋設物の八つです。法令に合っているか、これから修繕にいくらかかるか、いま建て直すといくらか、という建物の側の事柄と、汚染や埋設物という土地の側の事柄、そして地震にどこまで耐えるかという事柄が並んでいます。いずれも将来の収益や費用に直接ひびく個別的要因でありながら、鑑定士が現地を歩いて目で見ただけでは分からず、建築や環境の専門知識が要る点で共通しています。基準はこれらを「専門性の高い」と呼び、鑑定評価に必要となる調査として一括りにしました。

項目ごとに、レポートを使うか鑑定士が調べるかを決めます

証券化対象不動産では、鑑定士は依頼者にエンジニアリング・レポートの提出を求め、その内容を分析・判断した上で鑑定評価に活用します。八つの項目それぞれについて、エンジニアリング・レポートを活用するか、不動産鑑定士の調査を実施するかの別を鑑定評価報告書に記載し、活用したなら記載内容をどう使ったか、自ら調査したならその内容と根拠も書きます。鑑定士の調査には、鑑定士が他の専門家へ調査を依頼する場合も含まれます。レポートが出てこない場合や、記載が鑑定評価に使う資料として不十分な場合には、鑑定士が調査を行うなどして対応し、対応した内容とそれが適切だと判断した理由を報告書に記載します。留意事項は、レポートを活用するかどうかは鑑定士が主体的に責任を持って判断するものだと念を押しています。

専門性の高い個別的要因の図解:八項目の表に、レポートを活用した項目と鑑定士が調べた項目を書き分ける。

八項目の表に、レポートを活用した項目と鑑定士が調べた項目を書き分ける。

表の八項目は最小限で、必要に応じて項目を追加します

留意事項は、この表や別表1に掲げる内容は必要最小限度のものを定めたものであり、必要に応じて項目・内容を追加して確認しなければならないとしています。八つを埋めれば足りるという意味ではなく、物件によっては表にない事柄も同じ重さで確かめることになります。基準に理由は書かれていませんが、証券化対象不動産は用途も立地も様々で、あらかじめ決めた項目だけでは重要な危険を取り落とすおそれがあるためと考えられます。八項目は、調査の下限を共通にそろえるための一覧です。

専門性の高い個別的要因の図解:八つの項目は下限で、川沿いの物件なら水害の項目を書き足す。

八つの項目は下限で、川沿いの物件なら水害の項目を書き足す。

内覧の省略には、八項目にも重要な変化がないことが要ります

同じ証券化対象不動産を再評価する場合、物的確認のための内覧は、直近の鑑定評価の価格時点と比較して重要な変化がないと認められれば、全部又は一部を省略できます。留意事項は、そのときはこの表の八項目についても重要な変化がないと認められることが必要だとし、変化がないと判断した理由を、実地調査の記載事項に加えて報告書に記載するよう求めています。建物の中を見なくても済むのは、見た目だけでなく、耐震性や土壌汚染のような専門的な状態も前回から動いていないと言えるときだけです。前回の調査結果を流用するなら、その前提が崩れていないことを鑑定士が確かめる必要があります。

次に掲げる専門性の高い個別的要因に関する調査について、エンジニアリング・レポートを活用するか又は不動産鑑定士の調査を実施(不動産鑑定士が他の専門家へ調査を依頼する場合を含む。)するかの別

出典: 各論第3章 第4節

実務ではこう使う

評価書の別表1に八項目を縦に並べ、「建物状況調査報告書を活用」「役所調査と登記で鑑定士が確認」「専門会社に簡易調査を依頼」のように項目ごとの対応を書き分けます。レポートの修繕計画は運営費用の修繕費と資本的支出に振り分けて使い、再調達価格は設計・工事監理費等が含まれていないことがあるので、原価法の再調達原価と同じものとは扱いません。地震リスクの簡易分析でPML値が高く出ても、詳細分析を求めるか地震保険料を費用に織り込むかは物件ごとに判断します。

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