不動産鑑定における権利の価格とは?体系的に整理
借地権・底地・借家権・区分地上権など、不動産に付着する各種権利の価格を体系的に整理。権利の価格の成立要件(法的保護・経済的利益・取引可能性)、更地価格を基準とした各権利の関係式、「借地権の存在≠借地権価格の存在」の意味を解説。
権利の価格とは
不動産鑑定評価における権利の価格とは、不動産に付着する所有権以外の各種権利の経済的価値を金銭的に表示したものです。鑑定評価基準は、不動産の価格を「所有権の価格」と「所有権以外の権利の価格」に大別して体系化しています。
不動産の鑑定評価を行うに当たっては、まず、鑑定評価の対象となる土地又は建物等を物的に確定することのみならず、鑑定評価の対象となる所有権及び所有権以外の権利を確定する必要がある。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
権利の価格の成立要件
権利の価格が成立する条件
全ての権利に必ず価格が存在するわけではありません。権利の価格が成立するためには、以下の条件が必要です。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 法的保護 | 当該権利が法的に保護されていること |
| 経済的利益 | 当該権利を有することにより経済的利益が生じること |
| 取引可能性 | 当該権利が取引の対象となりうること(市場性) |
借地権の価格の有無
基準は、借地権について以下のように注意を促しています。
借地権の存在は、必ずしも借地権の価格の存在を意味するものではない。
― 不動産鑑定評価基準 各論第1章
借地権取引の慣行がない地域では、借地権は存在しても借地権の価格が形成されないことがあります。
権利の価格の体系
土地に関する権利
| 権利の種類 | 内容 | 基準の評価規定 |
|---|---|---|
| 更地 | 建物等が存しない宅地(所有権) | 各論第1章第1節 |
| 建付地 | 建物等の敷地(所有権) | 各論第1章第1節 |
| 借地権 | 借地借家法に基づく土地の賃借権又は地上権 | 各論第1章第1節 |
| 底地 | 借地権が設定された宅地の所有権 | 各論第1章第1節 |
| 区分地上権 | 地下又は空間の上下の範囲を定めた地上権 | 各論第1章第1節 |
| 地役権 | 他人の土地を自己の便益のために利用する権利 | ― |
建物に関する権利
| 権利の種類 | 内容 | 基準の評価規定 |
|---|---|---|
| 自用の建物及びその敷地 | 所有者が自ら使用する建物と敷地 | 各論第1章第1節 |
| 貸家及びその敷地 | 賃貸に供されている建物と敷地 | 各論第1章第1節 |
| 借家権 | 建物の賃借人の権利 | 各論第1章第1節 |
| 区分所有建物及びその敷地 | マンション等の専有部分と敷地利用権 | 各論第1章第1節 |
各権利の評価方法の概要
借地権の評価
借地権の鑑定評価は、借地権取引の慣行の有無と成熟度によって評価方法が異なります。
| 取引慣行 | 評価方法 |
|---|---|
| 取引慣行がある | 取引事例に基づく比準価格、土地残余法による収益価格を中心に決定 |
| 取引慣行がない | 当事者間の個別的事情を考慮して求める |
借地権割合は取引慣行や地域の特性によって異なります。
底地の評価
ただし、この控除法のみならず、底地の取引事例に基づく比準価格や、地代収入に基づく収益価格も参考とします。
借家権の評価
借家権の鑑定評価は、当事者間の個別的事情を考慮して求めます。
借家権の鑑定評価額は、当事者間の個別的事情を考慮して求めるものとする。
― 不動産鑑定評価基準 各論第1章
借家権取引の慣行がある場合は取引事例に基づく比準価格を標準とし、自用の建物及びその敷地の価格から貸家及びその敷地の価格を控除する方法も比較考量します。
区分地上権の評価
区分地上権の評価は、更地価格を基礎として土地利用制限率を考慮して求めます。
所有権の価格と権利の価格の関係
更地価格を基準とした関係
土地に関する権利の価格は、更地価格(完全所有権の価格)を基準として相互に関連しています。
| 関係式 | 内容 |
|---|---|
| 更地価格 = 借地権価格 + 底地価格(理論的) | 権利の配分関係 |
| 更地価格 ≧ 借地権価格 + 底地価格(実務的) | 市場では合計が更地価格を下回ることが多い |
| 自用建物敷地の価格 = 建付地価格 + 建物価格 | 複合不動産の構成 |
| 自用価格 − 貸家価格 ≒ 借家権価格(控除法) | 借家権の把握方法 |
併合による増分価値
限定価格の一つである隣接地の併合の場合、借地権者が底地を取得する(あるいは地主が借地権を取得する)ことにより増分価値が生じます。
権利の価格と鑑定評価の類型
種別・類型との関係
権利の態様によって、鑑定評価の類型が定まります。
| 不動産の類型 | 権利の態様 |
|---|---|
| 更地 | 完全所有権(建物なし) |
| 建付地 | 所有権(建物あり) |
| 借地権 | 借地権(借地借家法上の権利) |
| 底地 | 所有権(借地権の負担あり) |
| 自用の建物及びその敷地 | 所有権 |
| 貸家及びその敷地 | 所有権(借家権の負担あり) |
試験での出題ポイント
短答式試験
| 出題パターン | 正しい理解 |
|---|---|
| 権利の価格の成立要件 | 法的保護、経済的利益、取引可能性 |
| 借地権の価格の有無 | 借地権の存在は必ずしも価格の存在を意味しない |
| 更地価格と借地権・底地 | 理論的には更地価格 = 借地権価格 + 底地価格 |
| 借家権価格の求め方 | 当事者間の個別的事情を考慮して求める |
論文式試験
論点1:権利の価格の体系。 各種権利の評価方法を体系的に整理し、相互の関連性を論述する問題です。
論点2:借地権の価格の成立条件。 借地権取引の慣行と価格の関係を論じる問題です。
まとめ
不動産鑑定評価における権利の価格は、法的保護・経済的利益・取引可能性を前提として成立します。借地権、底地、借家権、区分地上権など各種権利の評価方法を体系的に理解し、更地価格を基準とした相互の関連性を把握することが重要です。