不動産鑑定の対象確定条件とは?3つの類型を解説
鑑定評価の対象を確定する「対象確定条件」の5つの類型を解説。現状所与・独立鑑定評価・部分鑑定評価・併合分割鑑定評価・未竣工建物等鑑定評価の違いを比較表で整理。特に混同しやすい独立鑑定評価と部分鑑定評価の区別を詳しく解説。
対象確定条件とは
不動産鑑定評価における対象確定条件とは、対象不動産の確定に当たって必要となる鑑定評価の条件です。鑑定評価の対象とする不動産の所在・範囲等の物的事項及び所有権・賃借権等の権利の態様に関する事項を確定するために必要な条件であり、依頼目的に応じて設定されます。
対象確定条件は、鑑定評価の対象とする不動産の所在、範囲等の物的事項及び所有権、賃借権等の対象不動産の権利の態様に関する事項を確定するために必要な条件であり、依頼目的に応じて次のような条件がある。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
鑑定評価の条件の体系
鑑定評価の条件は、以下の3つに大別されます。
対象確定条件は、「何を」評価するかを決める最も基本的な条件です。
対象確定条件の5つの類型
類型1:現状所与
不動産が土地のみの場合又は土地及び建物等の結合により構成されている場合において、その状態を所与として鑑定評価の対象とすることです。
| 例 | 説明 |
|---|---|
| 更地をそのまま評価 | 土地のみの現状を前提 |
| 建物付きの土地をそのまま評価 | 建物及びその敷地として評価 |
類型2:独立鑑定評価
不動産が土地及び建物等の結合により構成されている場合において、その土地のみを建物等が存しない独立のもの(更地)として鑑定評価の対象とすることです。
不動産が土地及び建物等の結合により構成されている場合において、その土地のみを建物等が存しない独立のもの(更地)として鑑定評価の対象とすること(この場合の鑑定評価を独立鑑定評価という。)。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
| 実際の状態 | 評価の対象 | 利用場面 |
|---|---|---|
| 建物が存在する | 更地として評価 | 建替え検討、担保評価等 |
類型3:部分鑑定評価
不動産が土地及び建物等の結合により構成されている場合において、その状態を所与として、その不動産の構成部分を鑑定評価の対象とすることです。
不動産が土地及び建物等の結合により構成されている場合において、その状態を所与として、その不動産の構成部分を鑑定評価の対象とすること(この場合の鑑定評価を部分鑑定評価という。)。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
| 実際の状態 | 評価の対象 | 利用場面 |
|---|---|---|
| 建物及びその敷地 | 建物のみ、又は敷地のみ | 財務報告、保険評価等 |
類型4:併合鑑定評価・分割鑑定評価
不動産の併合又は分割を前提として、併合後又は分割後の不動産を単独のものとして鑑定評価の対象とすることです。
| 評価の種類 | 内容 | 利用場面 |
|---|---|---|
| 併合鑑定評価 | 隣接地等の併合後の不動産を評価 | 限定価格の算定等 |
| 分割鑑定評価 | 分割後の不動産を評価 | 相続、分筆等 |
類型5:未竣工建物等鑑定評価
造成工事が完了していない土地又は建築工事が完了していない建物について、当該工事の完了を前提として鑑定評価の対象とすることです。
| 実際の状態 | 評価の対象 | 利用場面 |
|---|---|---|
| 建築中のマンション | 完成後の状態として評価 | 担保評価、証券化等 |
| 造成中の宅地 | 造成完了後として評価 | 開発融資等 |
独立鑑定評価と部分鑑定評価の違い
この2つは混同されやすいため、整理します。
条件設定の妥当性
対象確定条件を設定する際には、以下の観点から妥当性を確認する必要があります。
対象確定条件を設定するに当たっては、対象不動産に係る諸事項についての調査及び確認を行った上で、依頼目的に照らして、鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点から当該条件設定の妥当性を確認しなければならない。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
利用者の利益を害するおそれがある場合
鑑定評価の対象とする不動産の現実の利用状況と異なる対象確定条件を設定した場合に、現実の利用状況との相違が対象不動産の価格に与える影響の程度等について、鑑定評価書の利用者が自ら判断することが困難であると判断される場合です。
未竣工建物等鑑定評価の追加要件
未竣工建物等鑑定評価を行う場合は、通常の妥当性検討に加え、以下の要件を満たす必要があります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 設計図書等の収集 | 物的確認に必要な設計図書等を収集 |
| 請負契約書等の収集 | 権利の態様の確認に必要な書類を収集 |
| 法令上の許認可 | 必要な許認可等が取得されていること |
| 工事完了の実現性 | 発注者の資金調達能力等から工事完了の実現性が高いこと |
証券化対象不動産等における条件設定の制限
証券化対象不動産の鑑定評価や会社法上の現物出資の目的となる不動産の鑑定評価等、鑑定評価書の利用者の利益に重大な影響を及ぼす可能性がある場合には、原則として現実の利用状況と異なる対象確定条件の設定はできません。
ただし、証券化対象不動産で所定の要件を満たす場合には、未竣工建物等鑑定評価を行うことができます。
独立鑑定評価とは、建物が存在する状態で土地のみを更地として評価することをいう。
対象確定条件は、不動産鑑定士が自由に設定できる。
部分鑑定評価では、建物の存在を前提とせずに土地のみを評価する。
まとめ
対象確定条件は、「何を」評価するかを確定するための基本的な条件であり、現状所与・独立鑑定評価・部分鑑定評価・併合分割鑑定評価・未竣工建物等鑑定評価の5つの類型があります。特に独立鑑定評価と部分鑑定評価の違いは鑑定士試験でも頻出のテーマです。条件設定にあたっては、利用者の利益を害するおそれがないかの観点からの妥当性確認が不可欠です。
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