不動産鑑定における個別的要因とは?土地と建物の違い
個別的要因は個々の不動産の価格を個別的に左右する要因。土地は面積・形状・接道状況・間口奥行比、建物は構造・築年数・設備・耐震性等が該当します。住宅地・商業地・工業地の用途別要因の違い、個別分析による最有効使用の判定、取引事例比較法での近隣地域内・類似地域の比較手順も解説します。
個別的要因とは
不動産鑑定評価における個別的要因とは、価格形成要因のうち、個々の不動産の個性を形成し、その不動産の価格を個別的に左右する要因です。
同じ近隣地域に属する不動産であっても、それぞれの面積、形状、接道状況などが異なるため、価格は一様ではありません。この個々の不動産の個性の差異を生み出しているのが個別的要因です。
個別分析との関係
個別的要因は、個別分析において中心的に分析される対象です。
個別分析とは、対象不動産の個別的要因が対象不動産の利用形態と価格形成についてどのような影響力を持っているかを分析してその最有効使用を判定することをいう。
― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第2節
個別分析では、対象不動産に係る典型的な需要者がどのような個別的要因に着目し、代替・競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度をどのように評価しているかを的確に把握することが重要です。
土地の個別的要因
宅地の個別的要因
宅地の個別的要因は、住宅地・商業地・工業地に共通するものと、用途別に特有のものがあります。
共通的な要因
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 地積(面積) | 土地の面積の大小 |
| 地形・地勢 | 整形・不整形、平坦・傾斜等 |
| 接道状況 | 接道の方位、幅員、角地かどうか |
| 間口・奥行 | 間口の広さ、奥行の長さ、間口奥行比 |
| 高低差 | 道路面との高低差の程度 |
| 地質・地盤 | 地耐力、液状化リスク等 |
| 上下水道・ガス等 | 各種供給処理施設の整備状況 |
住宅地に特有の要因
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 日照・通風 | 日照時間、採光条件、通風の良否 |
| 眺望・景観 | 眺望の良否、景観の質 |
| 隣接不動産 | 隣接する不動産の利用状況 |
| 境界の明確性 | 隣地との境界が明確であるか |
商業地に特有の要因
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 顧客の流動性 | 前面道路の通行量、人の流れ |
| 容積率の消化度 | 指定容積率をどの程度活用できるか |
| 画地の規模 | 商業利用に適した規模かどうか |
工業地に特有の要因
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 敷地の規模 | 工場建設に必要な規模の確保 |
| 地耐力 | 重量のある機械設備への耐性 |
| 排水等の条件 | 工場排水の処理の容易さ |
建物の個別的要因
建物の個別的要因は、建物そのものの物理的・法的な特性に関する要因です。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 建築年次 | 築年数、新築・既存の別 |
| 構造 | 木造、鉄骨造、RC造、SRC造等 |
| 規模 | 延床面積、階数 |
| 用途 | 事務所、店舗、住宅、工場等 |
| 設計・設備 | 間取り、設備の内容・状態 |
| 施工の質 | 建築の品質、仕上げの程度 |
| 維持管理の状態 | 修繕の状況、管理の良否 |
| 耐震性 | 新耐震基準適合、耐震補強の有無 |
| 法的適合性 | 建築基準法適合、既存不適格の有無 |
| 有害物質 | アスベスト使用の有無、PCB等 |
建物及びその敷地の個別的要因
建物及びその敷地(複合不動産)としての個別的要因は、土地と建物の結合状態に関する要因です。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 建物と敷地の適応状態 | 建物が敷地を有効に利用しているか |
| 修繕計画・管理の状態 | 長期修繕計画の有無、管理体制 |
| 賃貸借の状況 | テナント構成、賃料水準、契約内容 |
| 建物の配置 | 日照、通風、プライバシーへの影響 |
取引事例比較法における個別的要因の比較
取引事例比較法では、事情補正・時点修正・地域要因の比較を行った後に、個別的要因の比較を行います。
個別的要因の比較は、対象不動産と取引事例に係る不動産との間で、上記の各要因について優劣を判定し、価格への影響を数量化する作業です。
| 取引事例の所在 | 必要な比較 |
|---|---|
| 近隣地域内 | 個別的要因の比較のみ |
| 同一需給圏内の類似地域等 | 地域要因の比較 + 個別的要因の比較 |
個別的要因と最有効使用
個別的要因は、対象不動産の最有効使用を判定する際の基礎となります。
例えば、土地の面積が大きく、交通利便性に優れ、容積率が高い場合には、マンション開発が最有効使用と判定される可能性があります。一方、面積が小さく閑静な住宅地にある場合には、戸建住宅用地としての利用が最有効使用となるかもしれません。
個別的要因の分析結果は、鑑定評価手法の適用、試算価格の調整等における各種の判断においても反映すべきとされています。
試験での出題ポイント
短答式試験
- 個別的要因の定義と位置づけ(3要因の中での役割)
- 土地の個別的要因と建物の個別的要因の具体例
- 個別分析の定義(個別的要因 → 最有効使用の判定)
- 取引事例比較法における個別的要因の比較の手順
取引事例が近隣地域に存する場合には、地域要因の比較は不要であるが、個別的要因の比較は必要である。
個別分析とは、対象不動産の地域要因と個別的要因を分析して最有効使用を判定することをいう。
論文式試験
- 個別的要因の意義と個別分析の関係
- 用途別の個別的要因の内容
- 個別的要因と最有効使用判定の関係
- 取引事例比較法における要因比較の手順
まとめ
個別的要因は、個々の不動産の価格を個別的に左右する価格形成要因であり、土地では面積・形状・接道状況、建物では構造・規模・設備の状態等が該当します。個別分析において対象不動産の最有効使用を判定する基礎となります。
取引事例比較法では、地域要因の比較とあわせて個別的要因の比較を行い、対象不動産と事例不動産の個性の差を価格に反映させます。一般的要因、地域要因、個別的要因の3つの要因を体系的に理解することが、鑑定評価の基礎です。