/ 鑑定評価基準・理論解説

不動産鑑定における既存不適格建築物の評価

建築時は適法なのに現行法に不適合――既存不適格建築物の評価はどうすべきか?違法建築との決定的な違い、容積率超過による建替え制約の減価計算、原価法での経済的減価の反映方法、最有効使用の判定方法まで、3手法での対応を解説します。

既存不適格建築物とは

既存不適格建築物とは、建築時には適法であったが、その後の法令改正により現行の建築基準法等の規定に適合しなくなった建築物のことです。

違法建築との違い

比較項目 既存不適格建築物 違法建築物
建築時 適法 不適法
現在の状態 現行法に不適合 建築時から不適法
存続 そのまま使用可能 是正が求められる
増改築時 現行法への適合が必要な場合あり 是正命令の対象

既存不適格の発生原因

原因 具体例
用途地域の変更 用途地域変更により現在の用途が不適格に
容積率の変更 容積率の引下げにより超過状態に
建ぺい率の変更 建ぺい率の引下げ
高さ制限の変更 日影規制等の新設・強化
耐震基準の変更 旧耐震基準の建物
接道義務 道路後退義務等

鑑定評価への影響

個別的要因としての位置づけ

既存不適格の状態は、個別的要因(建物)の一つとして価格に影響を与えます。

減価の考え方

減価の種類 内容
建替え制約 同規模の建物を建替えできない(容積率超過等)
用途制限 現在の用途での建替えが認められない
融資の制約 金融機関が融資を忌避する場合がある
市場性の低下 既存不適格であることによる需要の減退

容積率超過の場合の評価

容積率超過の既存不適格建物の場合、建替え時には現行の容積率に適合した建物しか建築できません。

$$\text{減価の程度} \propto \frac{\text{現在の延床面積} - \text{適法な最大延床面積}}{\text{現在の延床面積}}$$

評価のアプローチ

原価法の適用

原価法では、減価修正において既存不適格の状態を経済的減価として反映します。

減価の分類 適用
物理的減価 建物の経年劣化
機能的減価 設備の陳腐化等
経済的減価 既存不適格に伴う減価を含む

収益還元法の適用

収益還元法では、建替え制約が将来の収益に影響することを還元利回りやDCF法のキャッシュフローに反映します。

取引事例比較法の適用

既存不適格建物の取引事例がある場合には、比準価格の算定に活用します。ただし、既存不適格の程度が事例ごとに異なるため、個別的要因の比較に留意が必要です。


最有効使用との関係

既存不適格建物の敷地の最有効使用は、現行法に適合した建物の建築を前提として判定します。

場合 最有効使用の判定
既存建物の継続使用が合理的 既存不適格の状態での利用も最有効使用となりうる
建替えが合理的 現行法に適合した建物への建替えが最有効使用

建替えが合理的な場合、既存建物の取壊し費用も考慮する必要があります。


試験での出題ポイント

出題パターン 正しい理解
既存不適格の定義 建築時は適法だが法令改正により現行法に不適合
違法建築との違い 既存不適格は建築時に適法
減価の分類 経済的減価として反映
建替え制約 現行法に適合した建物しか建替えできない

まとめ

既存不適格建築物の鑑定評価では、建替え制約や市場性の低下を経済的減価として適切に反映することが求められます。原価法、収益還元法、取引事例比較法のいずれの手法においても、既存不適格の影響を考慮する必要があります。

建物の鑑定評価の特殊性、減価修正の方法、個別的要因(建物)と併せて理解してください。

#個別的要因 #建物評価 #建築基準法 #既存不適格 #減価要因

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