/ 鑑定理論

鑑定評価の引受けの制限とは?不動産鑑定評価基準での意味を図でわかりやすく解説

自己の能力の限度を超えていると思われる鑑定評価を引き受け、又は縁故若しくは特別の利害関係を有する場合等、公平な鑑定評価を害するおそれのあるときは、原則として引き受けてはならない、という遵守事項です。つまり、できない仕事と身内の仕事は、入口で原則として受けません。

鑑定評価の引受けの制限とは

町の工務店が、経験のない高層ビルの工事を「やってみます」と引き受けたら、施主も工務店も困ります。鑑定評価も同じで、経験のない証券化対象不動産や特殊な工場の依頼、あるいは取引先や自社が入居するビルの依頼は、引き受けた後にいくら気をつけても、見落としや偏りが評価額に残るおそれがあります。だから基準は、公平な鑑定評価を害するおそれのあるときは、原則として引き受けてはならない、と定め、五つの遵守事項の最後に置きました。評価の途中で態度を保つ三つ目に対し、五つ目は依頼の入口で公平を守ります。

鑑定評価の引受けの制限の図解:公平を害するおそれのある依頼は、入口で仕分けて原則として受けない。

公平を害するおそれのある依頼は、入口で仕分けて原則として受けない。

場面は、能力の限度と、縁故・特別の利害関係です

一つ目は、自己の能力の限度を超えていると思われる鑑定評価です。経験のない種類の不動産を手がければ、見るべきものが見えず、評価額の根拠が崩れます。二つ目は、縁故若しくは特別の利害関係を有する場合で、親族や取引先、自社が入居するビルの依頼では、公平妥当な態度を保とうとしても評価が寄ったと疑われます。どちらも「公平な鑑定評価を害するおそれのあるとき」に当たるので、一つの遵守事項にまとめられています。「等」とあるとおり二つは例示で、同じおそれがあれば他の場合も含みます。

鑑定評価の引受けの制限の図解:経験のない類型は能力の限度、自社が入居するビルは特別の利害関係。

経験のない類型は能力の限度、自社が入居するビルは特別の利害関係。

「原則として」なので、例外があります

基準は「いかなる場合も」ではなく「原則として引き受けてはならない」と書くだけで、例外の中身は書いていません。「原則として」とある以上、公平を害するおそれが小さいと判断できる場合まで一律に断ることは求めていない、と読めます。基準から分かっているのは、引き受けるなら総論第8章第2節で利害関係の有無と内容を明らかにし、第9章で評価書に記載する、ということです。公平が外から確かめられるようにして、初めて例外が成り立ちます。

鑑定評価の引受けの制限の図解:例外として引き受けるなら、評価書に利害関係の有無と内容を記載する。

例外として引き受けるなら、評価書に利害関係の有無と内容を記載する。

専門家の地位があるからこそ、限度を超える依頼は受けません

基準は、鑑定士は十分に能力のある専門家としての地位を法律によって付与される、と書きます。地位を与えられているのは、社会一般の信頼と期待に報いるためであって、できない仕事まで引き受けてよいという免状ではありません。限度を超える依頼を受けて誤った評価額を出せば、鑑定士一人ではなく制度への信頼が傷つきます。専門職業家としての注意と同じ根から出た遵守事項です。

自己の能力の限度を超えていると思われる不動産の鑑定評価を引き受け、又は縁故若しくは特別の利害関係を有する場合等、公平な鑑定評価を害する恐れのあるときは、原則として不動産の鑑定評価を引き受けてはならないこと。

出典: 総論第1章 第4節

実務ではこう使う

証券化対象不動産や特殊な工場のように経験のない類型の依頼が来たら、自分の能力で対応できるかを最初に判断し、必要なら他の鑑定士との共同や辞退を選びます。親族の物件や、自社が入居しているビルの依頼は、公平を害するおそれの程度を見て引き受けるかどうかを決め、引き受けるなら利害関係の有無と内容を評価書に記載します。評価書の利害関係の記載は、この判断の記録でもあります。

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