権利取得裁決とは?土地収用法での意味を図でわかりやすく解説
収用委員会が行う収用または使用の裁決のうち、収用する土地の区域、土地と土地に関する所有権以外の権利に対する損失の補償、権利取得の時期を定める裁決です。つまり、土地の権利を起業者に移す部分を決める一段目の裁決で、建物の移転や明渡しの期限は二段目の明渡裁決で決めます。
権利取得裁決とは
土地を取得する裁決は、一枚の裁決書で全部決まるのではなく、二段に分かれています。まず「どの範囲の土地を、いくらの補償で、いつ起業者のものにするか」を決めるのが権利取得裁決です(48条)。次に「建物などの物件をいつまでに移し、土地をいつまでに明け渡すか」を決めるのが明渡裁決です(49条)。土地の値段の話は権利取得裁決、引っ越しの話は明渡裁決、と分けると整理しやすいです。起業者は権利取得の時期までに補償金を払い渡し、その時期に土地の所有権を取得します(95条・101条)。

土地の値段の話は権利取得裁決、引っ越しの話は明渡裁決。
土地と土地の権利に対する補償は、権利取得裁決で決めます
権利取得裁決では、収用する土地の区域または使用する土地の区域と使用の方法・期間、土地または土地に関する所有権以外の権利に対する損失の補償、権利取得の時期について裁決します(48条1項)。明渡裁決で決めるのは、それ以外の損失の補償と、土地や物件の引渡しまたは物件の移転の期限です(49条1項)。明渡裁決は、権利取得裁決とあわせて、またはその後に行います(47条の2第4項)。土地所有者や関係人が起業者の所有する特定の土地を指定して替地を要求し、収用委員会がその要求を相当と認め、替地の譲渡が起業者の事業の執行に支障を及ぼさないと認めるときは、権利取得裁決で替地による補償を裁決できます(82条2項)。
権利の存否が確定しないときは、権利が存するものとして裁決します
土地に関する所有権以外の権利について争いがあり、裁決の時期までにその存否が確定しないときは、収用委員会はその権利が存するものとして裁決しなければなりません(48条5項)。あわせて、その権利が無いと確定した場合に土地所有者が受けるべき補償金も裁決します。起業者は、あるものとされた権利に係る補償金等を供託します(95条4項)。権利があるかどうかで裁決を止めてしまうと事業が進まないので、あるものとして先に進め、金銭は供託で預けておく仕組みです。

有無で止めると進まないから、あるものとして裁決し、金は供託で預ける。
補償金は権利取得の時期までに払い、払えないときは供託します
起業者は、権利取得裁決で定められた権利取得の時期までに、補償金、加算金、過怠金の払渡し、替地の譲渡・引渡しなどをしなければなりません(95条1項)。次の場合には、権利取得の時期までに補償金等を供託できます(95条2項)。受けるべき者が受領を拒んだとき、受領できないとき、起業者が過失なくその者を確知できないとき、起業者が裁決された額に不服があるとき、差押えや仮差押えで払渡しを禁じられたときです。額に不服で供託する場合に相手から請求があれば、起業者は自分の見積額を払い渡し、差額を供託します(95条3項)。時期までに払渡しも供託もしないと、権利取得裁決は効力を失います(100条1項)。
権利取得の時期に所有権が移り、その後の滅失は起業者の負担です
土地を収用するときは、権利取得裁決で定められた権利取得の時期に、起業者は土地の所有権を取得し、その土地に関するその他の権利は消滅します(101条1項)。使用のときは、同じ時期に土地を使用する権利を取得し、その他の権利は使用の期間中は行使できません(101条2項)。権利取得裁決または明渡裁決があった後に、収用・使用すべき土地や収用すべき物件が土地所有者や関係人の責めに帰することができない事由で滅失・毀損したときは、その損失は起業者の負担です(103条)。裁決が出た以上、その後の災害などの危険は土地を取る側が負う、という考え方です。

権利取得の時期に補償金を払って所有権が移り、その後の災害の危険は起業者が負う。
権利取得裁決においては、次に掲げる事項について裁決しなければならない。一 収用する土地の区域又は使用する土地の区域並びに使用の方法及び期間 二 土地又は土地に関する所有権以外の権利に対する損失の補償 三 権利を取得し、又は消滅させる時期(以下「権利取得の時期」という。) 四 その他この法律に規定する事項
出典: 土地収用法 48条1項
実務ではこう使う
権利取得裁決の補償金の額は、事業の認定の告示の時の価格に権利取得裁決の時までの修正率を乗じて求めます(71条)。用地評価では価格時点を告示日に置き、鑑定士の評価書が補償金の見積りとして裁決申請書に添付されます。建物の移転料や営業の補償は明渡裁決の側なので、土地の評価書とは別に扱われます。
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