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純賃料・支払賃料・実質賃料の違い - 不動産鑑定における賃料概念の体系を解説

不動産鑑定における純賃料・支払賃料・実質賃料の違いを体系的に解説。3つの賃料概念の包含関係(実質賃料=純賃料+必要諸経費等=支払賃料+一時金の運用益・償却額)を整理し、各概念の定義・意義を鑑定評価基準に基づき網羅します。

賃料の種類と体系

不動産鑑定士試験において、賃料に関する鑑定評価を理解するには、純賃料支払賃料実質賃料という3つの賃料概念の関係を正確に把握することが不可欠です。これらは不動産の賃貸借における経済的対価を異なる視点から捉えたものであり、鑑定評価基準の全体像の中で賃料評価の基礎を構成しています。

実質賃料とは、賃料の種類の如何を問わず賃貸人等に支払われる賃料の算定の期間に対応する適正なすべての経済的対価をいい、純賃料及び不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる諸経費等(以下「必要諸経費等」という。)から成り立つものである。

― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

3つの賃料概念の関係

構成図

3つの賃料概念は、以下のような包含関係にあります。

実質賃料 = 純賃料 + 必要諸経費等

実質賃料 = 支払賃料 + 一時金の運用益及び償却額

つまり、実質賃料を分解する方法が2つあります。

分解方法構成要素
経済的対価としての分解純賃料 + 必要諸経費等
支払形態としての分解支払賃料 + 一時金の運用益及び償却額

各賃料の定義

賃料の種類定義性格
純賃料実質賃料から必要諸経費等を控除した部分。賃貸人の純収益に相当不動産の使用収益の対価
必要諸経費等不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる経費不動産の維持管理コスト
支払賃料各支払時期に支払われる賃料毎月(毎年)の支払額
実質賃料賃貸人に支払われる賃料の算定期間に対応する適正なすべての経済的対価経済的対価の総体

純賃料の内容

純賃料は、実質賃料から必要諸経費等を差し引いた賃貸人の純収益に相当する部分です。積算法における期待利回りを基礎価格に乗じて求められる部分が純賃料に対応します。

$$純賃料 = 基礎価格 × 期待利回り$$

純賃料は、賃貸人が不動産に投下した資本に対する期待収益として捉えることができます。収益還元法における純収益の考え方と対応する概念です。


必要諸経費等の内容

必要諸経費等は、不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる費用です。基準は具体的な項目を列挙しています。

不動産の賃貸借等に当たってその賃料に含まれる必要諸経費等としては、次のものがあげられる。

― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節
必要諸経費等の項目内容
減価償却費建物等の経年劣化に対する費用計上(償却前の純収益に対応する期待利回りを用いる場合には計上しない)
維持管理費維持費、管理費、修繕費等
公租公課固定資産税、都市計画税等
損害保険料火災、機械、ボイラー等の各種保険
貸倒れ準備費賃料の未回収リスクに備える費用
空室等による損失相当額空室発生による賃料収入の減少分

減価償却費の取扱い

減価償却費については、償却前の純収益に対応する期待利回りを用いる場合には計上しないという留意事項があります。これは、収益還元法において償却前と償却後の純収益でそれぞれ対応する利回りが異なるのと同様の考え方です。


支払賃料と一時金の関係

支払賃料の定義

支払賃料とは、各支払時期に支払われる賃料をいい、契約に当たって、権利金、敷金、保証金等の一時金が授受される場合においては、当該一時金の運用益及び償却額と併せて実質賃料を構成するものである。

― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

支払賃料は、毎月(又は毎年)実際に支払われる賃料であり、日常的な「家賃」や「地代」に相当します。一時金が授受されない場合には、支払賃料と実質賃料は一致します。

一時金の種類と取扱い

一時金が授受される場合、実質賃料と支払賃料の関係は以下のようになります。

一時金の性格実質賃料への反映
賃料の前払的性格(権利金等)運用益 + 償却額
預り金的性格(保証金等)運用益のみ

支払賃料の算定式

契約に当たって一時金が授受される場合における支払賃料は、実質賃料から、当該一時金について賃料の前払的性格を有する一時金の運用益及び償却額並びに預り金的性格を有する一時金の運用益を控除して求めるものとする。

― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節
支払賃料 = 実質賃料 − 前払的一時金の運用益及び償却額 − 預り金的一時金の運用益

付加使用料・共益費等の取扱い

慣行上、建物及びその敷地の一部の賃貸借に当たって、水道光熱費、清掃・衛生費、冷暖房費等がいわゆる付加使用料、共益費等の名目で支払われる場合もあるが、これらのうちには実質的に賃料に相当する部分が含まれている場合があることに留意する必要がある。

― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

共益費等の中には、名目上は賃料とは別に支払われていても、実質的に賃料の一部として機能している部分が含まれることがあります。賃料の鑑定評価においては、このような実質的な賃料相当部分の存在に留意が必要です。


鑑定評価の原則

実質賃料を求めることが原則

賃料の鑑定評価は、対象不動産について、賃料の算定の期間に対応して、実質賃料を求めることを原則とし、賃料の算定の期間及び支払いの時期に係る条件並びに権利金、敷金、保証金等の一時金の授受に関する条件が付されて支払賃料を求めることを依頼された場合には、実質賃料とともに、その一部である支払賃料を求めることができるものとする。

― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

賃料の鑑定評価は実質賃料を求めることが原則であり、支払賃料を求める場合であっても実質賃料とともに求めるものとされています。

賃料の算定の期間

鑑定評価によって求める賃料の算定の期間は、原則として、宅地並びに建物及びその敷地の賃料にあっては1月を単位とし、その他の土地にあっては1年を単位とするものとする。

― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

試験での出題ポイント

短答式試験

  • 実質賃料の構成:純賃料 + 必要諸経費等
  • 支払賃料と実質賃料の関係:一時金の運用益及び償却額の取扱い
  • 必要諸経費等の6項目の正確な暗記
  • 賃料の算定の期間:宅地・建物は1月、その他の土地は1年

論文式試験

  • 3つの賃料概念の関係:実質賃料、支払賃料、純賃料の定義と相互関係を正確に論述する問題
  • 一時金の性格と賃料構成:前払的性格と預り金的性格の違い、支払賃料の算定方法
  • 共益費等の取扱い:名目上の区分と実質的な賃料相当部分の関係

暗記のポイント

  1. 実質賃料 = 純賃料必要諸経費等
  2. 実質賃料 = 支払賃料一時金の運用益及び償却額
  3. 必要諸経費等の6項目:減価償却費、維持管理費、公租公課、損害保険料、貸倒れ準備費、空室等損失相当額
  4. 賃料の鑑定評価は実質賃料を求めることが原則

確認問題

確認問題

確認問題


まとめ

純賃料・支払賃料・実質賃料の3つの賃料概念は、不動産の賃貸借における経済的対価を異なる視点から捉えたものです。実質賃料は純賃料と必要諸経費等の合計であり、同時に支払賃料と一時金の運用益及び償却額の合計でもあります。

賃料の鑑定評価は実質賃料を求めることが原則であり、支払賃料を求める場合にも実質賃料とともに求めるものとされています。必要諸経費等の6項目(減価償却費、維持管理費、公租公課、損害保険料、貸倒れ準備費、空室等損失相当額)は正確に暗記しておく必要があります。

積算法による新規賃料賃貸事例比較法継続賃料の各手法の理解にあたっては、これら3つの賃料概念の関係を前提知識として確実に身につけておくことが重要です。新規賃料の求め方及び継続賃料の求め方も併せて参照してください。

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