鑑定評価基準 第7章の要点整理 - 鑑定評価の方式
不動産鑑定評価基準・総論第7章を要点整理。原価法・取引事例比較法・収益還元法の定義・手順・適用上の留意点を比較表で整理し、三方式の併用原則と試算価格の調整の考え方を解説。試験対策の暗記ポイントも紹介します。
はじめに ― 総論第7章は基準の中核
不動産鑑定評価基準(以下「基準」といいます)の総論第7章は「鑑定評価の方式」を扱う章です。不動産の価格を求めるための具体的な評価手法として、原価法・取引事例比較法・収益還元法の三方式を規定しており、基準の中核をなす章と位置づけられています。
第7章が重要な理由は明確です。鑑定評価の目的は不動産の経済価値を判定し貨幣額で表示することであり、その経済価値を具体的に算出するための手法がまさにこの章に規定されているからです。第5章で確定した基本的事項、第6章で行った地域分析・個別分析の結果を踏まえ、三方式を適用して試算価格を求める――これが鑑定評価の実質的な作業の核心です。
不動産鑑定士試験においても、第7章は短答式・論文式ともに最も出題頻度が高いテーマです。各手法の定義、手順、適用上の留意点に加え、三方式の併用原則や試算価格の調整の考え方まで、幅広い論点が問われます。
本記事では、総論第7章の要点を体系的に整理し、試験対策に直結する形で解説します。
不動産の価格を求める鑑定評価の手法は、不動産の再調達に要する原価に着目する原価法、不動産の取引事例に着目する取引事例比較法及び不動産から生み出される収益に着目する収益還元法に大別される。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
総論第7章の全体構成
総論第7章は、大きく以下の内容で構成されています。
| テーマ | 内容の概要 |
|---|---|
| 三方式の意義と併用原則 | 三方式の分類基準、各手法の着目点、併用の必要性 |
| 原価法 | 定義、再調達原価の意義・求め方、減価修正の方法 |
| 取引事例比較法 | 定義、取引事例の収集・選択、事情補正・時点修正・要因比較 |
| 収益還元法 | 定義、直接還元法・DCF法の意義と手順、適用上の留意点 |
| 試算価格の調整 | 各手法の試算価格の再吟味、説得力の判断、鑑定評価額の決定 |
三方式の一覧比較
三方式の全体像を比較表で整理します。この表は各手法の本質を理解するための基礎となります。
| 比較項目 | 原価法 | 取引事例比較法 | 収益還元法 |
|---|---|---|---|
| 着目する性格 | 費用性 | 市場性 | 収益性 |
| 基本的な考え方 | 再び造るのにいくらかかるか | 類似の不動産がいくらで取引されたか | 将来どれだけの収益を生み出すか |
| 求められる試算価格 | 積算価格 | 比準価格 | 収益価格 |
| 視点の主体 | 供給者(造る側) | 市場参加者(売買する側) | 投資家・利用者(使う側) |
| 基本式 | 再調達原価 - 減価額 | 取引価格 x 各種補正・修正 | 純収益 / 還元利回り(直接還元法) |
| 特に有効な場面 | 建物、造成地、建物及びその敷地 | 更地、住宅地(事例が豊富な場合) | 賃貸用不動産、事業用不動産 |
三方式の詳細な比較については鑑定評価の3手法を徹底比較および鑑定評価の三方式とは?もあわせてご覧ください。
原価法
定義と手順
原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
原価法の基本式は以下のとおりです。
積算価格 = 再調達原価 - 減価額
原価法の手順を整理すると、以下のようになります。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 再調達原価の把握 | 対象不動産を価格時点において再調達する場合に必要とされる原価を求める |
| 2. 減価修正 | 再調達原価について、物理的・機能的・経済的減価の3つの要因による減価額を求める |
| 3. 積算価格の算定 | 再調達原価から減価額を差し引いて積算価格を求める |
再調達原価
再調達原価とは、対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額をいう。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
再調達原価の求め方には2つの方法があります。
| 方法 | 内容 | 適用場面 |
|---|---|---|
| 直接法 | 対象不動産について直接的に再調達原価を求める方法 | 対象不動産の建設費等の資料が入手できる場合 |
| 間接法 | 類似の不動産について直接法で求めた再調達原価を基礎として、対象不動産の再調達原価を間接的に求める方法 | 対象不動産の資料が直接入手できない場合 |
建物の再調達原価には、建設費(直接工事費、間接工事費、一般管理費等)に加えて、通常の付帯費用(設計監理料、開発リスク相当額等)が含まれます。
土地の再調達原価は、造成地や埋立地のように開発・造成の経緯がある場合に求めることができます。素地の価格に造成費を加算して求めるのが一般的です。既成市街地の更地のように造成の経緯が不明な土地では、再調達原価の把握が困難であり、原価法の適用が制約されます。
減価修正
減価修正では、以下の3つの減価要因を考慮します。
| 減価要因 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 物理的減価 | 経年劣化、使用による損耗等 | 外壁の劣化、設備の老朽化、構造部材の損傷 |
| 機能的減価 | 設計・設備等の陳腐化、機能不足 | 間取りの旧式化、設備仕様の陳腐化、エレベーターの未設置 |
| 経済的減価 | 外部環境の変化に伴う価値の減少 | 近隣地域の衰退、需要の減退、法的規制の変化 |
減価修正の方法としては、耐用年数に基づく方法と観察減価法があり、基準ではこの2つを併用することが求められています。
減価修正の方法としては、耐用年数に基づく方法または観察減価法のいずれか一方を用いればよい。
| 減価修正の方法 | 内容 |
|---|---|
| 耐用年数に基づく方法 | 対象不動産の経過年数と耐用年数から減価率を算出する方法。定額法や定率法がある |
| 観察減価法 | 対象不動産の実態を直接観察し、各部分の損耗の度合いを判断して減価額を求める方法 |
原価法について、さらに詳しくは原価法とは?積算価格の求め方をご覧ください。
取引事例比較法
定義と手順
取引事例比較法は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法である。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
取引事例比較法の手順は以下のとおりです。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 取引事例の収集 | 近隣地域または同一需給圏内の類似地域等から多数の取引事例を収集する |
| 2. 取引事例の選択 | 収集した事例の中から適切な事例を選択する |
| 3. 事情補正 | 取引事例に特殊な事情がある場合、その影響を排除する |
| 4. 時点修正 | 取引時点と価格時点の間の市場変動を反映する |
| 5. 地域要因の比較 | 取引事例の属する地域と対象不動産の属する近隣地域の地域要因を比較する |
| 6. 個別的要因の比較 | 取引事例の個別的要因と対象不動産の個別的要因を比較する |
| 7. 比準価格の算定 | 上記の補正・修正・比較を経て求められた価格を比較考量し、比準価格を求める |
取引事例の選択要件
取引事例の選択にあたっては、以下の4つの要件が求められます。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 1. 地域的要件 | 近隣地域または同一需給圏内の類似地域等に存する不動産に係るものであること |
| 2. 事情の正常性 | 取引事情が正常なもの、または正常なものに補正できるものであること |
| 3. 時点修正の可能性 | 時点修正をすることが可能なものであること |
| 4. 地域要因・個別的要因の比較可能性 | 地域要因の比較および個別的要因の比較が可能なものであること |
事情補正と時点修正
| 補正・修正の種類 | 目的 | 具体例 |
|---|---|---|
| 事情補正 | 取引事例に含まれる特殊な事情の影響を排除する | 売り急ぎ、買い進み、親族間取引、隣接地の併合目的の取引等 |
| 時点修正 | 取引時点から価格時点までの市場変動を反映する | 地価変動率、不動産価格指数等を活用 |
事情補正は「特殊な事情がある場合に必要に応じて」行うものであるのに対し、時点修正は取引時点と価格時点が異なる限り「常に必要」となります。
原価法は費用性に着目する手法であり、求められる試算価格は「比準価格」である。
取引事例比較法について、さらに詳しくは取引事例比較法とは?比準価格の求め方をご覧ください。
収益還元法
定義と意義
収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法である。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
基準では、収益還元法について特に重要な位置づけを与えています。
収益還元法は、賃貸用不動産又は賃貸以外の事業の用に供する不動産の価格を求める場合に特に有効である。また、不動産の価格は、一般に当該不動産の収益性を反映して形成されるものであり、収益は、不動産の経済価値の本質を形成するものである。したがって、この手法は、文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外のものにはすべて適用すべきものであり、自用の不動産といえども賃貸を想定することにより適用されるものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
この規定は、収益還元法が市場性を有するすべての不動産に適用すべき手法であることを明示しています。自用の不動産(所有者が自ら使用している不動産)であっても、賃貸を想定することにより適用できるとされています。2002年の基準改正で収益還元法の重要性が強調されたことは、試験でも頻出する論点です。
収益還元法は、賃貸用不動産にのみ適用される手法であり、自用の不動産には適用できない。
直接還元法
直接還元法は、一期間の純収益を還元利回りによって還元する方法である。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
直接還元法の基本式は以下のとおりです。
収益価格 = 一期間の純収益 / 還元利回り
| 構成要素 | 内容 |
|---|---|
| 純収益 | 総収益から総費用を控除して得られる対象不動産に帰属する収益 |
| 還元利回り(キャップレート) | 一期間の純収益から対象不動産の価格を直接求める際に使用する利回り |
直接還元法は、計算が比較的シンプルであり、安定的な収益が見込まれる不動産の評価に有効です。還元利回りの査定が結果に大きく影響するため、利回りの根拠を明確に示すことが重要です。
DCF法(Discounted Cash Flow法)
DCF法は、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法である。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
DCF法の基本的な構造は以下のとおりです。
| 構成要素 | 内容 |
|---|---|
| 各期間の純収益 | 保有期間中の各年(各期間)の純収益を個別に見積もる |
| 復帰価格 | 保有期間終了時に対象不動産を売却すると想定した場合の価格 |
| 割引率 | 各期間の純収益および復帰価格を現在価値に割り引く際に使用する利率 |
DCF法は、収益の変動が予測される不動産の評価に特に有効です。直接還元法が1期間の純収益を一定と仮定するのに対し、DCF法は複数期間の収益変動を明示的に反映できます。証券化対象不動産の評価では、DCF法の適用が原則として求められます。
直接還元法とDCF法の比較
| 比較項目 | 直接還元法 | DCF法 |
|---|---|---|
| 収益の把握方法 | 一期間の純収益を一定と仮定 | 複数期間の純収益を個別に見積もる |
| 使用する利回り | 還元利回り | 割引率 |
| 復帰価格 | 考慮しない | 保有期間終了時の売却価格を明示的に考慮 |
| 計算の複雑さ | 比較的シンプル | 複雑(複数期間の予測が必要) |
| 有効な場面 | 安定的な収益が見込まれる不動産 | 収益変動が予測される不動産、証券化対象不動産 |
| 証券化対象不動産 | 併用 | 原則として適用が必要 |
収益還元法について、さらに詳しくは収益還元法とは?収益価格の求め方をご覧ください。
三方式の併用原則
併用が求められる理由
基準では、鑑定評価にあたって原則として三方式を併用することが求められています。
鑑定評価の手法の適用に当たっては、鑑定評価の手法を当該案件に即して適切に適用すべきである。この場合、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべきであり、対象不動産の種類、所在地の実情、資料の信頼性等により三手法の併用が困難な場合においても、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
併用が求められる理由は、三方式がそれぞれ不動産の異なる側面(費用性・市場性・収益性)に着目しているため、一つの手法だけでは不動産の価値を多面的に捉えられないからです。複数の手法を適用し、異なる角度から求めた試算価格を総合的に検討することで、より信頼性の高い鑑定評価額を導くことができます。
併用が困難な場合の対応
三方式の併用が困難な場合であっても、基準では「その考え方をできるだけ参酌するように努めるべき」としています。つまり、ある手法が適用できない場合でも、その手法の背景にある考え方(費用性、市場性、収益性の視点)を評価のプロセスに取り入れるべきとされています。
| 併用が困難な場面 | 理由 | 対応方法 |
|---|---|---|
| 既成市街地の更地の原価法 | 再調達原価の把握が困難 | 費用性の考え方を参酌 |
| 取引事例が極端に少ない地域の取引事例比較法 | 適切な取引事例が確保できない | 市場性の考え方を参酌 |
| 自用の戸建住宅の収益還元法 | 賃貸市場のデータが限定的 | 賃貸を想定した収益性の考え方を参酌 |
試算価格の調整
調整の意義
三方式を適用すると、各手法から異なる試算価格(積算価格、比準価格、収益価格)が得られます。これらの試算価格を統合して最終的な鑑定評価額を決定するプロセスが試算価格の調整です。
試算価格の調整は、単に試算価格の平均を取ることではありません。各試算価格の持つ説得力の違いを検討し、どの試算価格がどの程度信頼できるかを判断したうえで、鑑定評価額を決定するプロセスです。
調整の手順
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 各試算価格の再吟味 | 各手法の適用における資料の信頼性、手法適用の妥当性を再検討する |
| 2. 各試算価格の説得力の判断 | 対象不動産の類型、市場の特性等を踏まえ、各試算価格の相対的な説得力を判断する |
| 3. 鑑定評価額の決定 | 各試算価格の説得力の違いを考慮して、鑑定評価額を決定する |
説得力の判断における考慮事項
| 考慮事項 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 資料の信頼性 | 各手法の適用に使用した資料(取引事例、建設費、賃料等)がどの程度信頼できるか |
| 手法の適合性 | 対象不動産の類型や市場の特性に照らして、各手法がどの程度適合しているか |
| 手法適用の精度 | 各手法の適用過程に恣意性がなく、適切に行われているか |
| 各試算価格間の整合性 | 試算価格間の開差が合理的に説明できるか |
例えば、賃貸マンションの評価においては、収益還元法による収益価格の説得力が相対的に高くなります。一方、新築の戸建住宅の評価では、原価法による積算価格と取引事例比較法による比準価格の説得力が相対的に高くなる傾向があります。
賃料を求める手法
総論第7章は価格を求める三方式だけでなく、賃料を求める手法についても規定しています。
新規賃料を求める手法
| 手法 | 着目点 | 試算賃料 |
|---|---|---|
| 積算法 | 基礎価格に期待利回りを乗じて得た純賃料に必要諸経費等を加算 | 積算賃料 |
| 賃貸事例比較法 | 類似の賃貸事例における賃料を比較 | 比準賃料 |
| 収益分析法 | 対象不動産を一定の事業に供することにより得られる収益を分析 | 収益賃料 |
継続賃料を求める手法
| 手法 | 着目点 | 試算賃料 |
|---|---|---|
| 差額配分法 | 実際実質賃料と正常実質賃料の差額を配分 | ― |
| 利回り法 | 基礎価格に継続賃料利回りを乗じる | ― |
| スライド法 | 現行賃料に変動率を乗じる | ― |
| 賃貸事例比較法 | 類似の賃貸事例を比較 | ― |
継続賃料の評価は、既存の契約関係を前提とするため新規賃料の評価とは異なる視点が求められます。実務においても特に難しい分野とされ、試験でも出題されることがあります。
試験での出題ポイント
短答式試験
| 出題テーマ | 出題パターン |
|---|---|
| 三方式の定義 | 各手法の定義文のキーワードを改変した正誤問題 |
| 着目する性格と試算価格名 | 「原価法は収益性に着目する」等の誤りを見抜けるか |
| 再調達原価の求め方 | 直接法と間接法の内容を正確に区別できるか |
| 減価修正の方法 | 耐用年数に基づく方法と観察減価法の「併用」が求められること |
| 取引事例の選択要件 | 4つの要件を正確に記憶しているか |
| 収益還元法の位置づけ | 市場性を有するすべての不動産に適用すべきという規定の正確な理解 |
| 直接還元法とDCF法の違い | 両者の違いを正確に区別できるか |
| 三方式の併用原則 | 「困難な場合でも考え方を参酌」という規定の理解 |
特に注意すべき引っかけパターン
- 「原価法は市場性に着目する手法である」(正しくは費用性)
- 「減価修正の方法としては、耐用年数に基づく方法または観察減価法のいずれかを用いればよい」(正しくは「併用」)
- 「収益還元法は賃貸用不動産にのみ適用される」(正しくは市場性を有するすべての不動産に適用すべき)
- 「三方式の併用が困難な場合は、適用可能な手法のみで評価すればよい」(正しくは「考え方をできるだけ参酌」)
論文式試験
- 三方式の意義と特徴の比較: 各手法の着目点、長所・短所を述べ、不動産の類型に応じた適用の適否を論じる
- 収益還元法の位置づけ: なぜ基準が収益還元法を市場性を有するすべての不動産に適用すべきとしているのか、その趣旨を論じる
- 試算価格の調整の意義と方法: なぜ調整が必要なのか、調整において何を考慮すべきかを論じる
- 三方式の併用原則: 併用が求められる理由、困難な場合の対応を論じる
暗記のポイント
ポイント1: 三方式の着目点と試算価格名を正確に対応させる
| 手法 | 着目する性格 | 試算価格 |
|---|---|---|
| 原価法 | 費用性 | 積算価格 |
| 取引事例比較法 | 市場性 | 比準価格 |
| 収益還元法 | 収益性 | 収益価格 |
この対応関係は絶対に間違えてはなりません。「原価法 = 費用性 = 積算価格」「取引事例比較法 = 市場性 = 比準価格」「収益還元法 = 収益性 = 収益価格」と3つのセットで暗記してください。
ポイント2: 各手法の定義を完全暗記する
3つの定義は、基準の条文を一字一句正確に再現できるレベルの暗記が必要です。特に以下のキーワードを押さえてください。
- 原価法: 「再調達原価」「減価修正」
- 取引事例比較法: 「多数の取引事例を収集して適切な事例の選択」「事情補正及び時点修正」「地域要因の比較及び個別的要因の比較」「比較考量」
- 収益還元法: 「将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和」
ポイント3: 取引事例の選択要件は4つセットで覚える
「地域・事情・時点・比較」の4つを漏れなく暗記します。
- 地域的要件(近隣地域または同一需給圏内の類似地域等)
- 事情の正常性(正常なもの、または補正できるもの)
- 時点修正の可能性
- 要因比較の可能性
ポイント4: 収益還元法の特別な位置づけを意識する
収益還元法は「市場性を有しない不動産以外のものにはすべて適用すべき」という特別な位置づけにあることを明確に記憶してください。自用の不動産にも賃貸を想定して適用すべきとされている点は、試験で問われる定番の論点です。
ポイント5: 減価修正の3要因と2方法を体系的に整理する
- 3つの減価要因: 物理的減価、機能的減価、経済的減価
- 2つの減価修正の方法: 耐用年数に基づく方法、観察減価法(この2つは「併用」)
まとめ
本記事では、不動産鑑定評価基準・総論第7章「鑑定評価の方式」の要点を整理しました。
- 原価法は費用性に着目し、再調達原価から減価額を差し引いて積算価格を求める手法です。建物評価に特に有効です
- 取引事例比較法は市場性に着目し、取引事例の価格に事情補正・時点修正・要因比較を行って比準価格を求める手法です。取引事例が豊富な場合に有効です
- 収益還元法は収益性に着目し、将来の純収益の現在価値の総和として収益価格を求める手法です。市場性を有するすべての不動産に適用すべきとされ、直接還元法とDCF法の2つの方法があります
- 基準では三方式の併用が原則として求められています。困難な場合でも、その考え方をできるだけ参酌すべきとされています
- 各手法で求められた試算価格は調整のプロセスを経て、鑑定評価額が決定されます。調整は平均ではなく、各試算価格の説得力を判断して行います
三方式の詳細な比較は鑑定評価の3手法を徹底比較を、各手法の個別解説は原価法とは?、取引事例比較法とは?、収益還元法とは?をあわせてご覧ください。