賃料評価と価格評価の違いとは?不動産鑑定における手法と考え方の比較
価格は交換の対価、賃料は用益の対価。不動産鑑定評価における価格評価と賃料評価の本質的な違いを解説。新規賃料3手法(積算法・賃貸事例比較法・収益分析法)と継続賃料4手法(差額配分法・利回り法・スライド法等)の区分、実質賃料と支払賃料の関係式、賃料の遅行性まで網羅します。
賃料評価と価格評価の基本的な違い
不動産鑑定士試験において、不動産の価格と賃料は、いずれも不動産の経済価値を表すものですが、その性質は本質的に異なります。価格は交換の対価であり、賃料は用益の対価です。
不動産の経済価値は、一般に、交換の対価である価格として表示されるとともに、その用益の対価である賃料として表示される。そして、この価格と賃料との間には、いわゆる元本と果実との間に認められる相関関係を認めることができる。
― 不動産鑑定評価基準 総論第1章第2節
価格が元本であり、賃料が果実です。この関係が、収益還元法において価格と賃料を結びつける理論的根拠となっています。
価格を求める手法と賃料を求める手法
手法の分類
基準は、鑑定評価の手法を価格を求める手法と賃料を求める手法に分類しています。
新規賃料の手法
新規賃料を求める手法は以下の3つです。
| 手法 | 意義 | 試算賃料 |
|---|---|---|
| 積算法 | 基礎価格に期待利回りを乗じ、必要諸経費等を加算 | 積算賃料 |
| 賃貸事例比較法 | 賃貸事例から比準して求める | 比準賃料 |
| 収益分析法 | 企業経営に基づく純収益を分析して求める | 収益賃料 |
継続賃料の手法
継続賃料を求める手法は以下の4つです。
| 手法 | 意義 |
|---|---|
| 差額配分法 | 適正賃料と実際賃料の差額を配分 |
| 利回り法 | 基礎価格に継続賃料利回りを乗じて求める |
| スライド法 | 直近合意時点の純賃料に変動率を乗じて求める |
| 賃貸事例比較法 | 賃貸事例から比準して求める |
実質賃料と支払賃料
2つの賃料概念
賃料評価に固有の概念として、実質賃料と支払賃料があります。
実質賃料とは、賃料の種類の如何を問わず賃貸人等に支払われる賃料の算定の期間に対応する適正なすべての経済的対価をいい、純賃料及び不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる諸経費等から成り立つものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節
支払賃料とは、各支払時期に支払われる賃料をいい、契約に当たって、権利金、敷金、保証金等の一時金が授受される場合においては、当該一時金の運用益及び償却額と併せて実質賃料を構成するものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節
実質賃料 = 支払賃料 + 一時金の運用益及び償却額
価格評価にはない概念
実質賃料と支払賃料の区別は、賃料評価に固有の概念です。価格評価には一時金の運用益・償却額といった概念はありません。これは賃料が継続的な経済的対価であり、一時金と期間賃料が補完関係にあるためです。
賃料固有の価格形成要因
賃料の遅行性
賃料は価格と比べて変動の遅行性を持つという特徴があります。地価が上昇しても賃料はすぐには上昇せず、逆に地価が下落しても賃料はすぐには下落しません。
この遅行性は、賃貸借契約の存在により、市場の変動が直ちに賃料に反映されないことに起因します。
継続賃料固有の価格形成要因
継続賃料を求める場合には、新規賃料にはない継続賃料固有の価格形成要因が存在します。
継続賃料固有の価格形成要因は、直近合意時点から価格時点までの期間における要因が中心となる
― 不動産鑑定評価基準 各論第2章第1節
| 継続賃料固有の要因 | 内容 |
|---|---|
| 賃料または代替不動産の賃料の推移 | 近隣地域等における賃料の変動 |
| 土地価格の推移 | 基礎価格の変動 |
| 公租公課の推移 | 固定資産税等の変動 |
| 契約の内容及びそれに関する経緯 | 契約の特殊性 |
| 賃貸人等又は賃借人等の寄与度 | 地域の発展への寄与 |
地域分析・個別分析における違い
賃料の地域と価格の地域
賃料を求める場合の地域分析は、価格を求める場合と異なる側面があります。
賃料を求める場合の地域要因の比較に当たっては、賃料固有の価格形成要因が存すること等により、価格を求める場合の地域と賃料を求める場合の地域とでは、それぞれの地域の範囲及び地域の格差を異にすることに留意することが必要である。
― 不動産鑑定評価基準に関する実務指針(留意事項) 総論第7章
賃料水準は価格水準と必ずしも連動しないため、近隣地域の範囲や地域間の格差が異なる場合があります。
価格の種類と賃料の種類の対応
対応関係
継続賃料は価格には対応するものがなく、賃料に固有の種類です。継続賃料は、特定の当事者間での賃貸借の継続に係る経済価値を表すものであり、市場全体の概念ではありません。
試験での出題ポイント
短答式試験
- 新規賃料の3つの手法と継続賃料の4つの手法の区別
- 実質賃料と支払賃料の定義と関係
- 継続賃料固有の価格形成要因
- 賃料の地域と価格の地域の違い
論文式試験
- 価格評価と賃料評価の本質的な違いの論述
- 新規賃料と継続賃料の手法の違いとその理由の論述
- 継続賃料固有の価格形成要因の意義の論述
暗記のポイント
- 実質賃料 = 支払賃料 + 一時金の運用益及び償却額
- 新規賃料の手法3つ(積算法・賃貸事例比較法・収益分析法)
- 継続賃料の手法4つ(差額配分法・利回り法・スライド法・賃貸事例比較法)
- 継続賃料固有の価格形成要因の列挙
まとめ
賃料評価と価格評価は、不動産の経済価値を表すという点では共通しますが、価格が「交換の対価」であるのに対し賃料は「用益の対価」であり、適用する手法、用いる概念、考慮すべき価格形成要因が異なります。
特に、実質賃料と支払賃料の区別、継続賃料固有の価格形成要因、賃料の遅行性は賃料評価に固有の重要な概念です。価格評価との違いを正確に理解することが、鑑定理論の体系的な把握につながります。
関連記事として、新規賃料の求め方、継続賃料の求め方、鑑定評価の3手法を徹底比較、各論第1章の類型別評価ポイントを参照してください。