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鑑定理論(演習)の計算20型|総合問題を手順に分解して解き切る

不動産鑑定士試験の演習(鑑定理論)を「計算の型」20個に分解した教材記事。原価法・取引事例比較法・収益還元法・開発法・賃料各手法について、式・手順・検算済みの数値例・よくあるミスを型ごとに整理し、総合問題を最後まで解き切る力をつけます。

不動産鑑定士論文式試験の「鑑定理論(演習)」は、2時間で1問という長丁場の総合計算問題です。受験生の答案を眺めていると、落ちる原因は「知らない手法が出た」ことではありません。知っている手法を、決まった順序で、電卓ミスなく回し切れなかったことです。実際、演習で出題される計算の中身は毎年ほぼ同じ部品の組み合わせであり、初見の手法が突然出てくることは稀です。

だとすれば、対策は明快です。部品ごとに「型」を作り、型のストックを増やし、それを組み合わせて総合問題を解く。これが演習で安定して点を取る唯一の道です。ここでいう型とは、「どういう設問で出るか/使う式/番号のついた手順/数値を入れた計算例/検算の勘所/よくあるミス」を1セットにしたもののことです。頭の中に型が20個入っていれば、総合問題は「型の呼び出しと接続」に還元されます。

本記事は、その型を20個ストックするための教材です。すべての計算例は数値を実際に検算したうえで載せています。読むだけでなく、電卓を手元に置き、各型の数値例を自分の手で再現しながら進めてください。再現できた型が、本番で使える型です。

本記事の位置づけと他記事との役割分担

演習まわりの記事はいくつかありますが、役割が違います。混ぜて読むと消化不良を起こすので、最初に整理しておきます。

記事 役割 読むタイミング
演習の攻略法 科目全体の攻略戦略・学習計画・答案構成 演習の学習を始めるとき
頻出計算パターン 7つの大分類で「どんな計算が出るか」を俯瞰する地図 全体像をつかむとき
計算スピード 電卓操作・段取り・読解の速度そのものを上げる訓練法 型は分かるが時間が足りないとき
演習問題と詳細解説10選 一問一答形式で理解を確認する 知識のヌケを探すとき
本記事(計算20型) 各計算を数値入りの手順書に落として、手を動かして解き切る 型を暗記し、精度を上げるとき

まず科目全体の見取り図が欲しい人は鑑定理論(演習)の攻略法から、どんな計算ジャンルが出るのかをざっと俯瞰したい人は演習でよく出る頻出計算パターンから入ってください。本記事はその俯瞰図の各マスを、数値入りで最後まで解き切れる手順書に展開したものです。そして、型は入っているのに時間内に終わらないという段階に来たら演習の計算スピードを上げる方法へ、理解のヌケを探すなら演習問題と詳細解説10選へ進んでください。

なお、各型の「理論的な中身」(なぜその手法を使うのか、適用要件は何か)は、本記事では要点にとどめます。手法ごとの理論解説記事へ都度リンクを張るので、型を回していて根拠が曖昧になった箇所はそちらで補ってください。

総合問題を解き切る6ステップの骨格

型を並べる前に、総合問題全体の骨格を確認します。演習の問題は、どんなに長くても次の6ステップに分解できます。この骨格を答案の見出しにそのまま使えるようにしておくと、書き出しで迷いません。

ステップ1: 対象不動産の確定

問題文から、所在・地積・延床面積・構造・築年・接面道路・用途地域・容積率、そして価格時点を抜き出します。ここで拾い落とすと後段が全部ずれるので、問題用紙の余白に「対象不動産カード」を作って転記します。

ステップ2: 類型の判定

更地か、建付地か、建物及びその敷地か、借地権か、底地か。類型が決まると適用すべき手法が自動的に決まります。たとえば更地なら、各論第1章が手法の組合せを指定しています。

更地の鑑定評価額は、更地並びに配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。当該更地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等においては、さらに次に掲げる価格を比較考量して決定するものとする(この手法を開発法という。)。 ― 不動産鑑定評価基準 各論第1章第1節

つまり「更地・大規模」と読めた瞬間に、比準価格+土地残余法+(開発法)という手法の並びが確定します。類型判定は単なる形式論ではなく、手法選択の司令塔です。

ステップ3: 適用する手法の選択

ステップ2で決まった手法のうち、問題文が資料を与えているものだけを実際に適用します。資料が与えられている=出題者が計算させたい、というサインです。逆に、資料がないのに「本来は適用すべきだが資料がないため適用しない」と一行書けるかどうかで、理論部分の点が動きます。

ステップ4: 各手法の計算

ここが本記事の20型の出番です。各型を独立に回します。この段階では丸めないのがコツです(後述)。

ステップ5: 試算価格の調整

複数の試算価格を並べ、再吟味と説得力の判断を行います。

試算価格又は試算賃料の調整とは、鑑定評価の複数の手法により求められた各試算価格又は試算賃料の再吟味及び各試算価格又は試算賃料が有する説得力に係る判断を行い、鑑定評価における最終判断である鑑定評価額の決定に導く作業をいう。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第8章第8節

ステップ6: 鑑定評価額の決定

最後に一度だけ丸め、単価と総額の両方を書きます。

答案用紙の書き方 ― 単位・端数処理・単価と総額

計算そのものより先に、書き方の約束を固めます。ここが崩れると、正しく計算していても採点者に伝わりません。

単位は最初に宣言する

演習の答案では、冒頭に「以下、金額は円単位、単価は円/㎡、率は小数第4位を四捨五入する」といった処理方針を一行で宣言しておきます。これを書いておけば、途中の丸めが多少違っても方針の一貫性で評価されます。宣言なしにバラバラに丸めるのが最悪です。

対象 推奨する書き方 備考
土地単価 円/㎡(有効数字3桁) 402,000円/㎡ のように
建物単価 円/㎡(延床面積あたり) 232,848円/㎡
賃料 円/月 または 円/月・㎡ 宅地・建物及びその敷地は月単位が原則
総額 円(有効数字3〜4桁) 103,000,000円
各種格差率 100分率(100/105 の形で残す) 途中で小数化しない

賃料の期間単位については基準に明文があります。

鑑定評価によって求める賃料の算定の期間は、原則として、宅地並びに建物及びその敷地の賃料にあっては1月を単位とし、その他の土地にあっては1年を単位とするものとする。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

年額で計算した積算賃料をそのまま答えにすると、単位の指定違反で失点します。最後に12で割るのを型に組み込んでください。

端数処理は「最後に一度」

もっとも失点が多いのが端数処理のタイミングです。原則は次の3つです。

  1. 途中計算では丸めない。格差率は $\frac{100}{105}$ の分数のまま電卓に流し込む。
  2. 手法ごとの試算価格を出す時点で一度だけ丸める(有効数字3桁が目安)。
  3. 鑑定評価額の決定時にもう一度だけ丸める。

途中で丸めると誤差が累積します。たとえば $\frac{100}{105}$ を 0.95 と丸めて2回掛けると、正しい 0.907029 に対して 0.9025 となり、0.5%のずれが出ます。1億円の物件なら50万円のずれです。分数のまま掛けるを徹底してください。

単価と総額は必ずセットで書く

基準は、試算価格の再吟味の項目として「単価と総額との関連の適否」を掲げています。答案でも、単価を出し、地積または延床面積を掛けて総額を出し、両方を明示するのが作法です。総額だけ書くと、単価水準の妥当性を検討した形跡が残りません。

原価法の型 ― 型1〜型5

原価法の意義は基準の次の一文に集約されます。ここは暗記していないと答案の理論部分が書けません。

原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を積算価格という。)。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

手法そのものの理論的な位置づけは原価法の仕組みと積算価格の求め方で確認できます。以下では計算の型に絞ります。

型1 再調達原価を直接法で積み上げる

出題のされ方: 「対象建物の直接工事費は㎡あたり◯円、間接工事費は直接工事費の◯%、一般管理費等は◯%、付帯費用は標準的建設費の◯%」という形で単価と率が並べて与えられます。

式:

$$\text{再調達原価} = \underbrace{(\text{直接工事費} + \text{間接工事費} + \text{一般管理費等})}_{\text{標準的建設費}} + \text{付帯費用}$$

基準は直接法の中身を具体的に定めています。

直接法は、対象不動産について、使用資材の種別、品等及び数量並びに所要労働の種別、時間等を調査し、対象不動産の存する地域の価格時点における単価を基礎とした直接工事費を積算し、これに間接工事費及び請負者の適正な利益を含む一般管理費等を加えて標準的な建設費を求め、さらに発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を加算して再調達原価を求めるものとする。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

手順:

  1. 直接工事費 = 単価 × 延床面積
  2. 間接工事費 = 直接工事費 × 所定率
  3. 一般管理費等 = (直接工事費+間接工事費) × 所定率
  4. 標準的建設費 = 1+2+3
  5. 付帯費用 = 標準的建設費 × 所定率
  6. 再調達原価 = 4+5、単価も出す

計算例(延床面積1,200㎡、直接工事費180,000円/㎡、間接工事費12%、一般管理費等10%、付帯費用5%):

項目 計算 金額(円)
直接工事費 180,000 × 1,200 216,000,000
間接工事費 216,000,000 × 12% 25,920,000
一般管理費等 (216,000,000+25,920,000) × 10% 24,192,000
標準的建設費 小計 266,112,000
付帯費用 266,112,000 × 5% 13,305,600
再調達原価 279,417,600

単価は $279{,}417{,}600 \div 1{,}200 = 232{,}848$ 円/㎡ です。

検算の勘所: 再調達原価 ÷ 直接工事費 = 279,417,600 ÷ 216,000,000 = 1.2936。直接工事費に対する倍率が 1.25〜1.35 程度に収まっていれば、率の掛け違いはまず起きていません。この「倍率チェック」は1秒で終わるので必ずやってください。

よくあるミス:

  • 一般管理費等を直接工事費だけに掛けてしまう(正しくは直接+間接)。
  • 付帯費用を直接工事費に掛けてしまう(正しくは標準的建設費)。
  • 付帯費用に何が含まれるかを答案に書き忘れる。基準は「建物引渡しまでに発注者が負担する通常の資金調達費用や標準的な開発リスク相当額等が含まれる場合がある」としています。

型2 再調達原価を間接法で求める

出題のされ方: 「類似の建設事例(延床◯㎡、建設費総額◯円、建設時点◯年◯月)」が与えられ、時点修正率と個別的要因の格差が示されます。

式:

$$\text{再調達原価} = \frac{\text{事例の建設費}}{\text{事例の延床面積}} \times \text{時点修正率} \times \text{地域格差} \times \text{個別格差} \times \text{対象の延床面積}$$

手順:

  1. 事例の建設費を延床面積で割り、㎡単価に直す
  2. 建築費指数等で時点修正
  3. 地域要因・個別的要因(品等、構造、設備水準)の格差を掛ける
  4. 対象の延床面積を掛ける

計算例(事例: 延床2,000㎡・建設費総額480,000,000円、時点修正率105/100、個別的要因 対象96/事例100、対象延床1,200㎡):

段階 計算 結果
事例単価 480,000,000 ÷ 2,000 240,000円/㎡
時点修正後 240,000 × 1.05 252,000円/㎡
個別格差後 252,000 × 96/100 241,920円/㎡
再調達原価 241,920 × 1,200 290,304,000円

検算の勘所: 型1の直接法(279,417,600円)と比べると、$\frac{290{,}304{,}000 - 279{,}417{,}600}{279{,}417{,}600} = 3.9\%$ の差です。基準は「収集した建設事例等の資料としての信頼度に応じていずれかを適用するものとし、また、必要に応じて併用するものとする」としています。両方を求めさせる問題では、差が5%以内なら「両者はおおむね一致しており、資料の信頼度の高い直接法による額を採用する」と一行書けば足ります。差が10%を超えたら、どちらかの計算を間違えている可能性が高いので見直してください。

よくあるミス: 事例の「建設費総額」が標準的建設費だけなのか付帯費用込みなのかを読み違える。問題文の定義を必ず確認します。

型3 減価修正を耐用年数に基づく方法(定額法)で行う

出題のされ方: 「経過年数◯年、経済的残存耐用年数◯年、残価率0(または10%)、定額法による」。

式(残価率0の場合):

$$\text{減価額} = \text{再調達原価} \times \frac{\text{経過年数}}{\text{経過年数} + \text{経済的残存耐用年数}}$$

基準は耐用年数の把握の仕方を明示しています。

耐用年数に基づく方法は、対象不動産の価格時点における経過年数及び経済的残存耐用年数の和として把握される耐用年数を基礎として減価額を把握する方法である。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

手順:

  1. 耐用年数 = 経過年数 + 経済的残存耐用年数(法定耐用年数ではない)
  2. 減価の対象額 = 再調達原価 ×(1 − 残価率)
  3. 減価額 = 減価の対象額 × 経過年数 ÷ 耐用年数
  4. 積算価格 = 再調達原価 − 減価額

計算例(再調達原価300,000,000円、経過10年、経済的残存耐用年数30年):

  • 耐用年数 = 10 + 30 = 40年
  • 減価率 = 10 ÷ 40 = 0.25
  • 減価額 = 300,000,000 × 0.25 = 75,000,000円
  • 積算価格(建物)= 225,000,000円

残価率10%(耐用年数満了時に再調達原価の10%が残る)とする場合は、減価の対象額が 300,000,000 × 0.9 = 270,000,000円 となり、

  • 減価額 = 270,000,000 × 10 ÷ 40 = 67,500,000円
  • 積算価格 = 300,000,000 − 67,500,000 = 232,500,000円

検算の勘所: 残存率で直接検算します。残価率0なら残存率は $\frac{30}{40} = 0.75$、$300{,}000{,}000 \times 0.75 = 225{,}000{,}000$ 円。減価額から引いた答えと一致すれば正解です。「引き算ルート」と「掛け算ルート」の2通りで出すのが定額法の検算の定石です。

よくあるミス:

  • 法定耐用年数(RC47年など)を使ってしまう。基準がいうのは経済的残存耐用年数です。
  • 残価率の扱いを逆にする(残価率10%を「減価額の10%」と誤解する)。
  • 経過年数を「築年数」ではなく「価格時点までの年数」で数え損ねる。

型4 減価修正を定率法・観察減価法で行う

出題のされ方: 「定率法(年減価率◯%)による」「さらに設備の陳腐化により◯円の減価を観察減価法により認める」。

式:

$$\text{残存価格} = \text{再調達原価} \times (1 - d)^{n}$$

$d$:年減価率、$n$:経過年数。

手順:

  1. $(1-d)^n$ を電卓の定数乗算(× を2回押してから = を連打)で求める
  2. 再調達原価に掛けて残存価格を出す
  3. 観察減価法による追加減価があれば差し引く

計算例(再調達原価300,000,000円、年減価率5%、経過10年、観察減価による追加減価8,000,000円):

  • $(1 - 0.05)^{10} = 0.95^{10} = 0.598737$
  • 残存価格 = 300,000,000 × 0.598737 = 179,621,082円
  • 耐用年数に基づく減価額 = 300,000,000 − 179,621,082 = 120,378,918円
  • 観察減価8,000,000円を控除 → 積算価格 = 171,621,082円 ≒ 171,621,000円

同じ経過年数でも定額法(225,000,000円)と定率法(179,621,082円)でこれだけ差が出ます。基準は「これらのうちいずれの方法を用いるかは、対象不動産の用途や利用状況に即して決定すべきである」としており、理由を一行書かせるのが定番の出題です。

検算の勘所: $0.95^{40} = 0.128512$。定率法は耐用年数が満了しても価格がゼロにならないという性質を持ちます。答案でこれに触れられると理解が伝わります。また電卓で $0.95^{10}$ を出したら、$0.95^5 = 0.773781$ を2乗して同じ値になるかで検算できます。

よくあるミス:

  • 定率法の年減価率を「毎年、再調達原価の5%」と誤解する(正しくは毎年の残存価格の5%)。
  • 観察減価法と耐用年数に基づく方法を併用する際に、同じ減価要因を二重に控除する。基準は減価額を求めるには「二つの方法があり、これらを併用するものとする」としつつ、留意事項が重複控除を戒めています。
対象不動産が建物及びその敷地である場合において、土地及び建物の再調達原価についてそれぞれ減価修正を行った上で、さらにそれらを加算した額について減価修正を行う場合があるが、それらの減価修正の過程を通じて同一の減価の要因について重複して考慮することのないよう留意するべきである。 ― 不動産鑑定評価基準運用上の留意事項 総論第7章

型5 建物及びその敷地の積算価格と一体としての減価

出題のされ方: 「土地の価格は◯円、建物の積算価格は◯円。ただし建物と敷地の適応の状態が最有効使用に及ばないため、一体としての減価を◯%認める」。

式:

$$\text{積算価格} = (\text{土地の価格} + \text{建物の減価修正後の価格}) \times (1 - \text{一体減価率})$$

手順:

  1. 土地の価格を確定(比準価格・収益価格から。再調達原価が把握できるなら土地の積算価格も)
  2. 建物の再調達原価に減価修正(型3・型4)
  3. 単純合計を出す
  4. 建物と敷地の適応状態に基づく減価を、合計額に対して掛ける

計算例(土地400,000,000円、建物の減価修正後225,000,000円、一体としての減価5%):

  • 単純合計 = 400,000,000 + 225,000,000 = 625,000,000円
  • 一体減価 = 625,000,000 × 5% = 31,250,000円
  • 積算価格 = 593,750,000円

検算の勘所: 一体減価率を掛けた後の金額 ÷ 単純合計 = 0.95 になるか確認。また、土地価格の構成比が $400{,}000{,}000 \div 625{,}000{,}000 = 64\%$ と、近隣の土地建物価格比と大きく乖離していないかを一言添えられると加点されます。

よくあるミス: 一体減価を建物にだけ掛けてしまう。建物と敷地の不適応による減価なので、原則は一体(合計額)に対して認識します。ただし問題文が「建物についてのみ」と明示していればそれに従います。問題文の指示が基準より優先されるのが演習の鉄則です。

取引事例比較法の型 ― 型6〜型8

取引事例比較法は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を比準価格という。)。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

事例の選択要件など理論面は取引事例比較法と比準価格の求め方に譲り、ここでは格差率の掛け方に集中します。

型6 比準価格の基本4段階

出題のされ方: 事例が2〜4件、表形式で「取引価格・地積・取引時点・取引事情・地域要因・個別的要因」が並びます。

式(掛け算の順序が固定されているのが最大のポイント):

$$\text{比準単価} = \text{事例単価} \times \underbrace{\frac{100}{100 \pm \alpha}}_{\text{事情補正}} \times \underbrace{\frac{100 \pm \beta}{100}}_{\text{時点修正}} \times \underbrace{\frac{\text{近隣}}{\text{事例地域}}}_{\text{地域要因}} \times \underbrace{\frac{\text{対象}}{\text{事例}}}_{\text{個別的要因}}$$

手順:

  1. 取引総額 ÷ 事例地積 = 事例単価(総額のまま補正しない)
  2. 事情補正(買い進み・売り急ぎを正常な水準に戻す)
  3. 時点修正(取引時点 → 価格時点)
  4. 地域要因の比較(近隣地域 ÷ 事例地域)
  5. 個別的要因の比較(対象不動産 ÷ 事例不動産)
  6. 最後に一度だけ丸める

計算例(事例A: 取引総額100,800,000円、地積240㎡、買い進みにより正常な価格より5%高い、価格時点まで1年で地価変動+2.5%、地域要因は近隣100/事例地域105、個別的要因は対象103/事例100):

段階 計算 結果(円/㎡)
事例単価 100,800,000 ÷ 240 420,000
事情補正 × 100/105 400,000
時点修正 × 102.5/100 410,000
地域要因 × 100/105 390,476.19
個別的要因 × 103/100 402,190.48
比準単価 有効数字3桁 402,000

対象地積250㎡なら、比準価格 = 402,000 × 250 = 100,500,000円。

検算の勘所: 合成格差率をまとめて確認します。$\frac{100}{105} \times 1.025 \times \frac{100}{105} \times \frac{103}{100} = 0.957596$。事例単価420,000円/㎡ に 0.957596 を掛けると 402,190.5円/㎡ で一致します。個別の段階を追う計算と、合成率を一発で掛ける計算の2通りで出すのが取引事例比較法の検算です。

もう一つ、方向性チェックが有効です。この事例では「買い進み(下げる)+地価上昇(上げる)+近隣が劣る(下げる)+対象が優る(上げる)」なので、上げ2つ・下げ2つでほぼ拮抗し、結果が事例単価420,000円から少し下がった402,000円になるのは自然です。符号の方向が直感と合わない結果が出たら、必ず分母分子を疑う。

よくあるミス:

  • 事情補正の分母分子を逆にする。「事例が5%高い」なら事例が105、正常が100なので $\frac{100}{105}$ です。$\frac{105}{100}$ と書くと逆に高くしてしまいます。
  • 地域要因を「事例 ÷ 近隣」で掛ける。求めたいのは近隣の水準なので、近隣が分子です。
  • 事例が近隣地域内に存する場合にまで地域要因の比較を行う。基準は、事例が近隣地域に存するときは個別的要因の比較のみを行うとしています。
  • 総額のまま補正して最後に地積で割る(誤りではないが、途中の桁が大きくなりミスを誘発する)。必ず単価に直してから補正。

型7 配分法で複合不動産の事例から土地を取り出す

出題のされ方: 「事例Bは建物及びその敷地の取引である。建物の価格は◯円と判明している」「土地と建物の価格構成割合は◯:◯である」。

取引事例が対象不動産と同類型の不動産の部分を内包して複合的に構成されている異類型の不動産に係る場合においては、当該取引事例の取引価格から対象不動産と同類型の不動産以外の部分の価格が取引価格等により判明しているときは、その価格を控除し、又は当該取引事例について各構成部分の価格の割合が取引価格、新規投資等により判明しているときは、当該事例の取引価格に対象不動産と同類型の不動産の部分に係る構成割合を乗じて、対象不動産の類型に係る事例資料を求めるものとする(この方法を配分法という。)。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

式(2通りある):

$$\text{土地部分} = \text{取引価格} - \text{建物価格} \qquad \text{または} \qquad \text{土地部分} = \text{取引価格} \times \text{土地の構成割合}$$

手順:

  1. 配分法で事例の土地部分の価格を取り出す
  2. 事例地積で割って土地単価に直す
  3. 以後は型6と同じ(事情補正 → 時点修正 → 地域要因 → 個別的要因)

計算例(事例B: 取引総額150,000,000円、建物価格60,000,000円、土地の構成割合60%、事例地積200㎡、時点修正 −2%、地域要因は等価、個別的要因は対象98/事例100):

段階 計算 結果
控除法 150,000,000 − 60,000,000 90,000,000円
割合法 150,000,000 × 60% 90,000,000円
土地単価 90,000,000 ÷ 200 450,000円/㎡
時点修正 × 98/100 441,000円/㎡
個別的要因 × 98/100 432,180円/㎡
比準単価 有効数字3桁 432,000円/㎡

検算の勘所: 控除法と割合法の両方が使える問題では、両方を計算して一致を確認する(本例はどちらも90,000,000円)。一致しない場合、問題文が「建物価格は新規投資額であり取引価格を前提とした額ではない」といった前提を置いていることが多いので、読み直します。また、基準は「配分法及び土地残余法を適用する場合における取引事例及び収益事例は、敷地が最有効使用の状態にあるものを採用すべきである」としているので、最有効使用でない事例が混ぜてあれば除外する判断を答案に書きます。

よくあるミス: 配分法を適用した後、建物込みの地積(延床面積)で割ってしまう。土地単価を出すのだから、割るのは土地の地積です。

型8 複数事例を比較考量して比準価格を決定する

出題のされ方: 型6・型7で求めた各事例の比準単価を並べ、「これらを比較考量して比準価格を決定せよ」。

手順:

  1. 各事例の比準単価を並べる(丸める前の値で並べる)
  2. 事例ごとの信頼度を評価する(近隣地域内か/規模・形状の類似度/事情補正の大きさ/時点修正幅)
  3. 信頼度に応じたウェイトを置いて加重平均する
  4. 有効数字3桁で丸め、地積を掛けて総額を出す

計算例(事例A 402,190円/㎡、事例B 432,180円/㎡、事例C 415,405円/㎡。事例Aは近隣地域内・規模が近く信頼度が高いためウェイト0.5、事例Bは配分法を経ているため0.2、事例Cは類似地域内で0.3):

$$402{,}190 \times 0.5 + 432{,}180 \times 0.2 + 415{,}405 \times 0.3 = 412{,}153$$

内訳は 201,095 + 86,436 + 124,622 = 412,153円/㎡。有効数字3桁で 412,000円/㎡、対象地積250㎡を掛けて 比準価格 103,000,000円。

検算の勘所: 加重平均の結果が最小値と最大値の間に入っているか(402,190 ≦ 412,153 ≦ 432,180)。範囲外なら計算ミスかウェイトの合計が1になっていません。ウェイトの合計=1.0 の確認も必須です。

よくあるミス:

  • 何も考えず単純平均する。基準は「比較考量」を求めており、ウェイトの根拠を一行書くだけで差がつきます。
  • 事情補正率が大きい事例(±20%超など)を高いウェイトで採用する。事情補正が大きい=正常性への信頼度が低い、と評価して落とすべきです。

収益還元法の型 ― 型9〜型14

収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を収益価格という。)。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

理論面は収益還元法の考え方と収益価格にまとめてあります。ここでは、演習でもっとも配点が大きい純収益の算定から入ります。

型9 総収益・総費用から純収益を求める

出題のされ方: 収支項目が10〜15行の表で与えられ、「純収益(償却前)を求めよ」。演習で最も配点が大きく、ここを落とすと後段が全滅する型です。

式:

$$\text{純収益} = \text{総収益} - \text{総費用}$$

基準は総費用の中身を列挙しています。

賃貸用不動産(ア(イ)の複合不動産を想定する場合を含む。)の総費用は、減価償却費(償却前の純収益を求める場合には、計上しない。)、維持管理費(維持費、管理費、修繕費等)、公租公課(固定資産税、都市計画税等)、損害保険料等の諸経費等を加算して求めるものとする。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

手順:

  1. 貸室賃料収入・共益費収入・駐車場収入等を年額に換算して合計
  2. 預り金的性格を有する一時金の運用益を加算
  3. 空室等損失・貸倒れ損失を控除 → 総収益(運営収益)
  4. 維持管理費・水道光熱費・修繕費・PMフィー・テナント募集費用等・公租公課・損害保険料・その他費用を合計 → 総費用(運営費用)
  5. 総収益 − 総費用 = 運営純収益
  6. (純収益をNCFベースで求める指示があれば)資本的支出を控除

計算例(事務所ビル。賃貸可能面積1,000㎡、月額賃料5,000円/㎡、共益費1,000円/㎡、駐車場20台×25,000円/月、保証金60,000,000円・運用利回り2%、空室率5%、資本的支出2,500,000円):

区分 項目 計算 金額(円)
収益 貸室賃料収入 5,000 × 1,000 × 12 60,000,000
収益 共益費収入 1,000 × 1,000 × 12 12,000,000
収益 駐車場収入 25,000 × 20 × 12 6,000,000
収益 保証金運用益 60,000,000 × 2% 1,200,000
収益 小計 79,200,000
控除 空室等損失 78,000,000 × 5% △3,900,000
総収益 75,300,000
費用 維持管理費 8,000,000
費用 水道光熱費 4,500,000
費用 修繕費 3,000,000
費用 PMフィー 2,300,000
費用 テナント募集費用等 1,200,000
費用 公租公課 9,000,000
費用 損害保険料 500,000
費用 その他費用 300,000
総費用 28,800,000
運営純収益 75,300,000 − 28,800,000 46,500,000
資本的支出 △2,500,000
純収益 44,000,000

検算の勘所: 3つの比率で妥当性を見ます。

  1. 総費用率 = 28,800,000 ÷ 75,300,000 = 38.2%。事務所ビルなら20〜40%程度に収まるのが通例で、ここを大きく外れていたら費用に減価償却費を紛れ込ませていないか疑います。
  2. 保証金月数 = 60,000,000 ÷ (5,000 × 1,000) = 12ヶ月分。問題文の記述と合うか確認。
  3. 空室損失の母数。空室損失は保証金運用益には掛けません(78,000,000 が母数で、79,200,000 ではない)。

よくあるミス:

  • 償却前の純収益を求めるのに減価償却費を計上する。基準は括弧書きで明確に「償却前の純収益を求める場合には、計上しない」としています。これは毎年のように狙われます。
  • 空室等損失を保証金運用益にも掛ける。
  • 月額と年額の混在。すべて年額に揃えてから足すのを型に組み込みます。
  • 資本的支出を運営費用に混ぜる。運営純収益(NOI)と純収益(NCF)は別物です。問題文がどちらを求めているか確認します。

型10 直接還元法で収益価格を求める

式:

$$P = \frac{a}{R}$$

$P$:収益価格、$a$:一期間の純収益、$R$:還元利回り。

計算例(型9の純収益44,000,000円、還元利回り5.0%):

$$P = \frac{44{,}000{,}000}{0.05} = 880{,}000{,}000 \text{円}$$

還元利回り自体を求めさせる出題もあります。基準が例示する4方法のうち、演習で計算させられるのは主に「土地と建物に係る還元利回りから求める方法」です。

この方法は、対象不動産が建物及びその敷地である場合に、その物理的な構成要素(土地及び建物)に係る各還元利回りを各々の価格の構成割合により加重平均して求めるものである。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節

土地の価格構成割合60%・還元利回り4.0%、建物40%・6.5%なら、

$$R = 0.6 \times 4.0\% + 0.4 \times 6.5\% = 2.4\% + 2.6\% = 5.0\%$$

検算の勘所: 求めた $P$ に $R$ を掛けて $a$ に戻るか(880,000,000 × 0.05 = 44,000,000)。この逆算は5秒で終わります。加重平均型の $R$ は、必ず土地の利回りと建物の利回りの間に入る(4.0% ≦ 5.0% ≦ 6.5%)ことも確認してください。

よくあるミス:

  • 還元利回りを%のまま割る(44,000,000 ÷ 5 としてしまう)。必ず小数に直す。
  • 償却後の純収益に償却前の還元利回りを対応させる。基準は「純収益は、永続的なものと非永続的なもの、償却前のものと償却後のもの等、総収益及び総費用の把握の仕方により異なるものであり、それぞれ収益価格を求める方法及び還元利回り又は割引率を求める方法とも密接な関連がある」としています。償却前には償却前、償却後には償却後を対応させる。
  • 加重平均のウェイトに面積比を使う(正しくは価格の構成割合)。

型11 DCF法で各期を割り引く

出題のされ方: 「保有期間5年、各期の純収益は次表のとおり、割引率5.0%、最終還元利回り5.5%」。演習の花形です。

式(基準の基本式をそのまま書けるようにしておく):

$$P = \sum_{k=1}^{n} \frac{a_k}{(1+Y)^k} + \frac{P_R}{(1+Y)^n}$$

$P$:収益価格、$a_k$:毎期の純収益、$Y$:割引率、$n$:保有期間、$P_R$:復帰価格。

手順:

  1. 各期の純収益 $a_k$ を確定する(賃料改定・空室率変動・大規模修繕の発生時期に注意)
  2. 各期の複利現価率 $\frac{1}{(1+Y)^k}$ を小数第6位まで求め、表にする
  3. 各期の純収益 × 複利現価率 = 各期の現在価値
  4. $n+1$ 期の純収益を最終還元利回りで還元して復帰価格を求める
  5. 復帰価格 × 第 $n$ 期の複利現価率
  6. 3の合計 + 5 = 収益価格

計算例(初年度純収益44,000,000円、以後毎年220,000円ずつ定額逓増、保有期間5年、$Y$=5.0%、$R_n$=5.5%):

期 純収益 $a_k$(円) 複利現価率 $1/1.05^k$ 現在価値(円)
1 44,000,000 0.952381 41,904,762
2 44,220,000 0.907029 40,108,844
3 44,440,000 0.863838 38,388,943
4 44,660,000 0.822702 36,741,893
5 44,880,000 0.783526 35,164,654
合計 192,309,095

復帰価格は6期の純収益 45,100,000円 を最終還元利回り5.5%で還元して、

$$P_R = \frac{45{,}100{,}000}{0.055} = 820{,}000{,}000 \text{円}$$

その現在価値は $820{,}000{,}000 \times 0.783526 = 642{,}491{,}457$ 円。

$$P = 192{,}309{,}095 + 642{,}491{,}457 = 834{,}800{,}552 \text{円} \fallingdotseq 834{,}800{,}000 \text{円}$$

検算の勘所(この型は検算が命です):

  1. 概算検算: 純収益がほぼ一定(44,000,000円)とみなし、5年の複利年金現価率 4.329477 を使うと、$44{,}000{,}000 \times 4.329477 + 820{,}000{,}000 \times 0.783526 = 832{,}988{,}430$ 円。正解 834,800,552円との差は0.2%です。桁が合っているかを一発で確認できるので、必ずやってください。
  2. 復帰価格の比重: 642,491,457 ÷ 834,800,552 = 77.0%。保有期間5年のDCFでは、復帰価格が全体の70〜80%を占めるのが普通です。ここが50%を切っていたら復帰価格の計算ミスを疑います。
  3. 直接還元法との比較: 型10の880,000,000円と比べて $\frac{880{,}000{,}000 - 834{,}800{,}552}{880{,}000{,}000} = 5.1\%$ の差。5〜10%程度の差なら「両者は整合的である」と書けます。20%以上開いていたら、割引率と還元利回りの設定関係を見直します。
  4. 複利現価率の検算: 複利現価率は必ず単調減少します(0.952381 > 0.907029 > …)。また $0.952381^2 = 0.907029$、$0.952381 \times 0.907029 = 0.863838$ のように、隣接する率どうしの掛け算で次の率が出るので、表を作った直後に1箇所だけ確認すれば全体の信頼性が担保できます。

よくあるミス:

  • 復帰価格を第5期の複利現価率ではなく第6期の率で割り引く。復帰価格は $n$ 年後(5年後)の価値なので、掛けるのは第5期の複利現価率です。これは最頻出のミスです。
  • 復帰価格の分子に第5期の純収益を使う。基準の式は $P_R = \frac{a_{n+1}}{R_n}$ であり、分子は $n+1$ 期=6期の純収益です。
  • 割引率と最終還元利回りを取り違える。$Y$ は各期の割引に、$R_n$ は復帰価格の算定に使います。
  • 復帰価格から売却費用を控除する指示を読み飛ばす(型12参照)。

なお、DCF法は基準の運用上の留意事項でも詳細が定められており、証券化対象不動産では適用が義務づけられます。適用場面の整理は収益還元法の考え方と収益価格を参照してください。

型12 復帰価格と最終還元利回りを扱う

出題のされ方: 「最終還元利回りは還元利回りに◯%を加算して査定した」「売却に要する費用は売却価格の3%とする」。

式:

$$P_R = \frac{a_{n+1}}{R_n} \times (1 - \text{売却費用率})$$

手順:

  1. $n+1$ 期の純収益を確定
  2. 最終還元利回りを確定(還元利回り+スプレッド)
  3. 還元して売却時点の価格を出す
  4. 売却費用があれば控除
  5. 第 $n$ 期の複利現価率を掛けて現在価値に

計算例($a_6$=45,100,000円、$R_n$=5.5%、売却費用3%):

  • 売却時点の価格 = 45,100,000 ÷ 0.055 = 820,000,000円
  • 売却費用控除後 = 820,000,000 × 0.97 = 795,400,000円

最終還元利回りが還元利回りより高く設定される理由を一行書けるかが理論の勝負どころです。保有期間満了時には建物が5年分老朽化しており、経済的残存耐用年数が短くなっているうえ、遠い将来の予測に伴う不確実性が上乗せされるため、$R_n \geq R$ となるのが通常です。この考え方はターミナルキャップレートの意味で詳しく扱っています。

検算の勘所: 感応度を持っておきます。$R_n$ を5.5%から6.0%に変えると $P_R = 45{,}100{,}000 \div 0.06 = 751{,}666{,}667$ 円となり、8.3%下落します。利回りが0.5ポイント動くだけで復帰価格が1割近く動く、という感覚を持っていれば、桁違いの答えを書いたときに違和感を持てます。

よくあるミス: 売却費用を「売却価格の3%」ではなく「純収益の3%」と読み違える。また、売却費用控除を割引後に行ってしまう(順序が逆でも数値は一致しますが、答案の論理が崩れます。正しくは売却時点で控除してから割り引く)。

型13 土地残余法で更地の収益価格を求める

対象不動産が更地である場合において、当該土地に最有効使用の賃貸用建物等の建築を想定し、収益還元法以外の手法によって想定建物等の価格を求めることができるときは、当該想定建物及びその敷地に基づく純収益から想定建物等に帰属する純収益を控除した残余の純収益を還元利回りで還元する手法(土地残余法という。)を適用することができる。 ― 不動産鑑定評価基準運用上の留意事項 総論第7章

式:

$$P_L = \frac{a - B \cdot R_B}{R_L}$$

$P_L$:土地の収益価格、$a$:建物等及びその敷地の償却前の純収益、$B$:建物等の価格、$R_B$:償却前の純収益に対応する建物等の還元利回り、$R_L$:土地の還元利回り。

手順:

  1. 想定建物の建築を前提に、複合不動産の償却前純収益 $a$ を求める(型9)
  2. 建物等の価格 $B$ を原価法で求める(型1〜型3)
  3. 建物に帰属する純収益 = $B \times R_B$
  4. 土地に帰属する純収益 = $a - B \cdot R_B$
  5. $R_L$ で還元

計算例($a$=38,000,000円、$B$=320,000,000円、$R_B$=6.25%、$R_L$=4.0%):

  • 建物帰属純収益 = 320,000,000 × 6.25% = 20,000,000円
  • 土地帰属純収益 = 38,000,000 − 20,000,000 = 18,000,000円
  • 土地の収益価格 = 18,000,000 ÷ 0.04 = 450,000,000円

検算の勘所: 求めた土地価格と建物価格の合計に対する $a$ の比率を見ます。$38{,}000{,}000 \div (450{,}000{,}000 + 320{,}000{,}000) = 4.94\%$。これが $R_L$(4.0%)と $R_B$(6.25%)の間に入っていれば整合しています。範囲外なら計算ミスです。

よくあるミス:

  • 建物が古い事例に土地残余法を適用してしまう。留意事項は「建物等が古い場合には複合不動産の生み出す純収益から土地に帰属する純収益が的確に求められないことが多いので、建物等は新築か築後間もないものでなければならない」としています。理論問題で狙われます。
  • 償却後の純収益に償却前対応の $R_B$ を使う。
  • 土地帰属純収益がマイナスになったのにそのまま還元する。マイナスなら想定建物の設定か $R_B$ が誤っています。

土地残余法の適用場面のさらに詳しい整理は土地残余法の使いどころにあります。

型14 建物残余法で建物の収益価格を求める

式:

$$P_B = \frac{a - L \cdot R_L}{R_B}$$

$P_B$:建物等の収益価格、$L$:土地の価格、$R_L$:土地の還元利回り、$R_B$:償却前の純収益に対応する建物等の還元利回り。

手順: 型13の土地と建物を入れ替えるだけです。土地の価格を比準価格等で先に確定できる場合に使います。

計算例($a$=38,000,000円、$L$=450,000,000円、$R_L$=4.0%、$R_B$=6.25%):

  • 土地帰属純収益 = 450,000,000 × 4.0% = 18,000,000円
  • 建物帰属純収益 = 38,000,000 − 18,000,000 = 20,000,000円
  • 建物の収益価格 = 20,000,000 ÷ 0.0625 = 320,000,000円

検算の勘所: 型13と型14は互いの逆算になります。型13で $B$=320,000,000円 を入力して $P_L$=450,000,000円 を得たなら、型14に $L$=450,000,000円 を入力すれば $P_B$=320,000,000円 に戻るはずです。総合問題で両方を求めさせる出題は稀ですが、練習段階でこの往復をやっておくと式の構造が体に入ります。

よくあるミス: 建物残余法で求めた $P_B$ を、そのまま建物の鑑定評価額としてしまう。基準は建物の評価について「積算価格を標準とし、配分法に基づく比準価格及び建物残余法による収益価格を比較考量して決定するものとする」としており、標準となるのは積算価格です。

開発法の型 ― 型15

型15 開発法で大規模更地の価格を求める

出題のされ方: 「対象地は近隣地域の標準的な画地に比べて規模が大きく、分割利用が合理的である。区画割り計画は次のとおり」。有効宅地面積率と各費用の支払時点が与えられます。

式(留意事項の基本式):

$$P = \frac{S}{(1+r)^{n_1}} - \frac{B}{(1+r)^{n_2}} - \frac{M}{(1+r)^{n_3}}$$

$P$:開発法による試算価格、$S$:販売総額、$B$:建物の建築費又は土地の造成費、$M$:付帯費用、$r$:投下資本収益率、$n_1$〜$n_3$:価格時点から各時点までの期間。

手順:

  1. 有効宅地面積 = 総地積 × 有効宅地面積率(道路・公園等の潰れ地を除く)
  2. 販売総額 $S$ = 有効宅地面積 × 分譲単価
  3. 造成費 $B$ = 総地積 × 造成単価(有効宅地面積ではない点に注意)
  4. 付帯費用 $M$(販売経費・一般管理費等)
  5. 各費目を、それぞれの発生時点に応じて価格時点まで割り戻す
  6. $S$ の現価から $B$・$M$ の現価を控除

計算例(総地積2,000㎡、有効宅地面積率80%、分譲単価300,000円/㎡、造成費25,000円/㎡(総地積あたり)、付帯費用は販売総額の8%、投下資本収益率10%、販売は2年後、造成費・付帯費用の支払は1年後):

項目 計算 金額(円)
有効宅地面積 2,000 × 80% 1,600㎡
販売総額 $S$ 1,600 × 300,000 480,000,000
造成費 $B$ 2,000 × 25,000 50,000,000
付帯費用 $M$ 480,000,000 × 8% 38,400,000
$S$ の現価 480,000,000 ÷ 1.1² 396,694,215
$(B+M)$ の現価 88,400,000 ÷ 1.1 80,363,636
開発法による価格 差引 316,330,579

有効数字3桁で 316,000,000円、総地積2,000㎡あたりの単価は 158,000円/㎡ です。

検算の勘所:

  1. 粗利率チェック: 割引前の粗利益は 480,000,000 − 88,400,000 = 391,600,000円。求めた土地価格316,000,000円に対して、$\frac{391{,}600{,}000 - 316{,}330{,}579}{391{,}600{,}000} = 19.2\%$ が投下資本収益率分として吸収されています。2年で10%複利なら概ねこの水準で、桁が合っているとわかります。
  2. 単価の比較: 開発法による単価158,000円/㎡ に対し、分譲単価は300,000円/㎡。開発法の結果は必ず分譲単価より小さくなります(造成費と利潤を引くため)。逆転していたら計算ミスです。
  3. 面積の使い分け: 販売総額は有効宅地面積、造成費は総地積、最後の単価計算は総地積。3箇所で違う面積を使うので、電卓に入れる前に紙に「1,600/2,000/2,000」とメモしておきます。

よくあるミス:

  • 造成費を有効宅地面積に掛ける(潰れ地も造成するので総地積が正しい。ただし問題文が有効宅地面積あたりと明示していればそれに従う)。
  • 割戻し期間 $n_1$・$n_2$・$n_3$ をすべて同じにする。費目ごとに支払時点が違うのが開発法の本質です。
  • 開発法が適用される場面を誤る。基準は「当該更地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等」に比較考量する手法として位置づけており、標準的な規模の更地には適用しません。

開発法の趣旨や適用要件は開発法の仕組みと計算で確認してください。

賃料の型 ― 型16〜型19

賃料は「新規賃料か継続賃料か」で使う手法が完全に分かれます。

不動産の賃料を求める鑑定評価の手法は、新規賃料にあっては積算法、賃貸事例比較法、収益分析法等があり、継続賃料にあっては差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法等がある。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

この一文を書けるかどうかで、賃料の問題は最初の分岐が決まります。

型16 積算法で新規賃料を求める

式:

$$\text{積算賃料(実質賃料)} = \text{基礎価格} \times \text{期待利回り} + \text{必要諸経費等}$$
積算法は、対象不動産について、価格時点における基礎価格を求め、これに期待利回りを乗じて得た額に必要諸経費等を加算して対象不動産の試算賃料を求める手法である(この手法による試算賃料を積算賃料という。)。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

手順:

  1. 基礎価格を確定(原価法及び取引事例比較法により求めると基準が明記)
  2. 期待利回りを乗じて純賃料を出す
  3. 必要諸経費等を加算 → 実質賃料(年額)
  4. 一時金の運用益・償却額を控除 → 支払賃料
  5. 12で割って月額に直す

必要諸経費等の項目は基準が列挙しています。減価償却費・維持管理費・公租公課・損害保険料・貸倒れ準備費・空室等による損失相当額の6つです。ただし償却前の純収益に対応する期待利回りを用いる場合は減価償却費を計上しません。

計算例(基礎価格500,000,000円、期待利回り4.5%(償却前対応)、維持管理費5,000,000円・公租公課4,000,000円・損害保険料400,000円・貸倒れ準備費300,000円・空室等損失相当額1,400,000円、預り金的保証金36,000,000円・運用利回り2%):

項目 計算 金額(円)
純賃料 500,000,000 × 4.5% 22,500,000
必要諸経費等 5,000,000+4,000,000+400,000+300,000+1,400,000 11,100,000
実質賃料(年額) 合計 33,600,000
実質賃料(月額) ÷ 12 2,800,000
保証金運用益 36,000,000 × 2% 720,000
支払賃料(年額) 33,600,000 − 720,000 32,880,000
支払賃料(月額) ÷ 12 2,740,000

検算の勘所: 実質賃料に対する必要諸経費等の割合 = 11,100,000 ÷ 33,600,000 = 33.0%。事務所ビルの新規賃料では30〜40%程度が目安で、外れていたら経費項目の拾い間違いを疑います。また、支払賃料は必ず実質賃料より小さくなります(一時金の運用益を引くため)。逆転していたら符号ミスです。

よくあるミス:

  • 償却前対応の期待利回りを使っているのに減価償却費を必要諸経費等に加える(型9の減価償却費と同じ罠)。
  • 実質賃料と支払賃料を取り違える。基準は「実質賃料とは、賃料の種類の如何を問わず賃貸人等に支払われる賃料の算定の期間に対応する適正なすべての経済的対価をいい」「支払賃料とは、各支払時期に支払われる賃料をいい」と定義しています。実質賃料=支払賃料+一時金の運用益及び償却額という関係を押さえてください。
  • 年額のまま答える(宅地・建物及びその敷地は月単位が原則)。

新規賃料の考え方の全体像は積算法による新規賃料の求め方にまとめてあります。

型17 賃貸事例比較法で比準賃料を求める

式: 取引事例比較法とまったく同じ構造です。

$$\text{比準賃料} = \text{事例の実際実質賃料} \times \text{事情補正} \times \text{時点修正} \times \text{地域格差} \times \text{個別格差}$$

手順: 型6と同一。ただし比較の対象は「実際実質賃料」であり、支払賃料ではありません。事例の一時金の運用益を加算して実質賃料に直してから比較します。

計算例(事例の実際実質賃料6,000円/月・㎡、事情補正なし、時点修正+2%、地域要因は近隣100/事例地域102、個別的要因は対象105/事例100、対象の賃貸面積400㎡):

段階 計算 結果
事例賃料 6,000円/月・㎡
時点修正 × 102/100 6,120円/月・㎡
地域要因 × 100/102 6,000円/月・㎡
個別的要因 × 105/100 6,300円/月・㎡
比準賃料(月額) 6,300 × 400 2,520,000円/月

検算の勘所: 時点修正で上げた分を地域要因で下げているので、途中で事例賃料と同額に戻ります。このように格差率どうしが打ち消し合う設計は出題者が仕込む定番なので、途中で元の値に戻ったからといって計算ミスとは限りません。合成率で確認します: $1.02 \times \frac{100}{102} \times 1.05 = 1.05$。

よくあるミス:

  • 事例の支払賃料をそのまま比較する。必ず実際実質賃料に直す。
  • 賃貸借契約の内容(契約期間・更新条件・一時金の額)の類似性を検討せずに事例を採用する。基準は「賃貸借等の契約の内容について類似性を有するものを選択すべきことに留意しなければならない」としています。

型18 差額配分法で継続賃料を求める

出題のされ方: 「現行賃料は月額◯円である。価格時点における適正な実質賃料は◯円と査定された。差額のうち賃貸人に帰属する部分は2分の1とする」。

差額配分法は、対象不動産の経済価値に即応した適正な実質賃料又は支払賃料と実際実質賃料又は実際支払賃料との間に発生している差額について、契約の内容、契約締結の経緯等を総合的に勘案して、当該差額のうち賃貸人等に帰属する部分を適切に判定して得た額を実際実質賃料又は実際支払賃料に加減して試算賃料を求める手法である。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

式:

$$\text{試算賃料} = \text{実際実質賃料} + (\text{適正な実質賃料} - \text{実際実質賃料}) \times \text{賃貸人帰属割合}$$

手順:

  1. 適正な実質賃料(=価格時点で想定される新規賃料)を積算法・賃貸事例比較法等で求める(型16・型17)
  2. 実際実質賃料を確定する(実際支払賃料+一時金の運用益等)
  3. 差額を出す
  4. 賃貸人等に帰属する部分の割合を判定して掛ける
  5. 実際実質賃料に加減する

計算例(適正な実質賃料2,800,000円/月(型16)、実際実質賃料2,200,000円/月、賃貸人帰属割合2分の1):

  • 差額 = 2,800,000 − 2,200,000 = 600,000円/月
  • 賃貸人帰属分 = 600,000 × 1/2 = 300,000円/月
  • 試算賃料 = 2,200,000 + 300,000 = 2,500,000円/月

検算の勘所: 求めた試算賃料は必ず実際実質賃料と適正な実質賃料の間に入ります(2,200,000 ≦ 2,500,000 ≦ 2,800,000)。範囲外なら帰属割合の掛け方を間違えています。

よくあるミス:

  • 「適正な実質賃料」を継続賃料の一種と誤解する。基準が明記するとおり、これは価格時点において想定される新規賃料です。
  • 実質賃料ベースと支払賃料ベースを混在させる。どちらか一方に揃える。
  • 帰属割合の根拠を書かない。契約の内容・契約締結の経緯・賃料改定の経緯に触れる一行が配点対象です。

差額配分法の計算の細部は差額配分法の計算手順でも扱っています。

型19 利回り法とスライド法で継続賃料を求める

継続賃料はこの2つが加わって3手法+賃貸事例比較法の4本立てになります。

利回り法の式:

$$\text{試算賃料} = \text{基礎価格} \times \text{継続賃料利回り} + \text{必要諸経費等}$$

スライド法の式:

$$\text{試算賃料} = \text{直近合意時点の純賃料} \times \text{変動率} + \text{価格時点の必要諸経費等}$$

手順(利回り法):

  1. 基礎価格を求める(積算法に準ずる)
  2. 継続賃料利回りを判定する(直近合意時点における基礎価格に対する純賃料の割合を踏まえる)
  3. 乗じて純賃料を出す
  4. 価格時点の必要諸経費等を加算

計算例(利回り法)(基礎価格500,000,000円、継続賃料利回り3.6%、必要諸経費等 年額11,100,000円):

  • 純賃料 = 500,000,000 × 3.6% = 18,000,000円/年 = 1,500,000円/月
  • 必要諸経費等 = 11,100,000 ÷ 12 = 925,000円/月
  • 試算賃料 = 1,500,000 + 925,000 = 2,425,000円/月

手順(スライド法):

  1. 直近合意時点の純賃料を出す(直近合意時点の実際実質賃料 − 直近合意時点の必要諸経費等)
  2. 変動率を乗じる
  3. 価格時点の必要諸経費等を加算

計算例(スライド法)(直近合意時点の実際実質賃料2,200,000円/月、直近合意時点の必要諸経費等850,000円/月、変動率1.06、価格時点の必要諸経費等925,000円/月):

  • 直近合意時点の純賃料 = 2,200,000 − 850,000 = 1,350,000円/月
  • 変動率適用後 = 1,350,000 × 1.06 = 1,431,000円/月
  • 試算賃料 = 1,431,000 + 925,000 = 2,356,000円/月

検算の勘所: 3手法の結果を並べます。差額配分法2,500,000円、利回り法2,425,000円、スライド法2,356,000円。継続賃料の3手法は、実際実質賃料(2,200,000円)と新規賃料(2,800,000円)の間に収まるのが通常です。この範囲を外れた試算賃料が出たら、必要諸経費等の時点や変動率の適用対象を疑ってください。

よくあるミス(この2手法は「どの時点のどの数値を使うか」が全ての勝負です):

  • スライド法で、価格時点の必要諸経費等ではなく直近合意時点の必要諸経費等を加算する。基準は「直近合意時点における純賃料に変動率を乗じて得た額に価格時点における必要諸経費等を加算して試算賃料を求める手法である」と明記しています。
  • スライド法で、実際実質賃料そのものに変動率を掛ける。原則は純賃料に掛けます(ただし基準は「直近合意時点における実際実質賃料又は実際支払賃料に即応する適切な変動率が求められる場合には、当該変動率を乗じて得た額を試算賃料として直接求めることができる」とも定めており、問題文の指示が優先します)。
  • 利回り法で期待利回りを使う。継続賃料利回りであって期待利回りではありません。

試算価格の調整の型 ― 型20

型20 説得力に応じて重み付けし鑑定評価額を決定する

出題のされ方: 「上記により求めた各試算価格を調整し、鑑定評価額を決定せよ。その理由も述べよ」。配点が高いのに白紙になりやすい部分です。

手順:

  1. 各試算価格を一覧にする(単価と総額の両方)
  2. 再吟味: 基準が掲げる6項目に沿って各手法をチェックする
  3. 説得力の判断: 地域分析・個別分析の結果との適合性、採用資料の相対的信頼性を述べる
  4. 説得力に応じたウェイトを置いて加重平均する
  5. 単価と総額の関連を確認して丸め、鑑定評価額を決定する

再吟味の6項目は答案の骨格になるのでそのまま覚えます。

再吟味の項目 答案での書き方の例
資料の選択、検討及び活用の適否 事例はいずれも近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存し適切である
諸原則の当該案件に即応した活用の適否 最有効使用の判定は代替の原則等に照らし妥当である
一般的要因の分析並びに地域分析及び個別分析の適否 標準的使用と対象の個別性の把握に齟齬はない
各手法の適用において行った各種補正、修正等に係る判断の適否 事情補正率は事例の状況に照らし適切である
各手法に共通する価格形成要因に係る判断の整合性 収益価格の想定賃料と比準価格の前提が整合している
単価と総額との関連の適否 単価水準は近隣の取引水準と整合し、総額も市場規模に照らし妥当である

計算例(対象は賃貸用の建物及びその敷地。積算価格593,750,000円(型5)、比準価格610,000,000円、収益価格620,000,000円):

対象不動産は賃貸用不動産であり、市場参加者は収益性を最重視する。したがって収益価格に最も高い説得力を認め、比準価格を次位、積算価格は再調達原価の把握に一定の幅があるため補助的に扱う。ウェイトを収益0.5・比準0.3・積算0.2とすると、

試算価格 金額(円) ウェイト 寄与額(円)
収益価格 620,000,000 0.5 310,000,000
比準価格 610,000,000 0.3 183,000,000
積算価格 593,750,000 0.2 118,750,000
合計 1.0 611,750,000

鑑定評価額 = 612,000,000円(百万円未満を四捨五入)。

検算の勘所:

  1. ウェイトの合計が1.0であること。
  2. 結果が最小値と最大値の間にあること(593,750,000 ≦ 611,750,000 ≦ 620,000,000)。
  3. 各試算価格のばらつきを確認。最大と最小の差は $\frac{620{,}000{,}000 - 593{,}750{,}000}{593{,}750{,}000} = 4.4\%$。10%以内に収まっていれば「各試算価格は接近しており相互に検証されている」と書けます。20%以上開いていたら、開いた理由(資料の限界、想定の相違)を必ず言及します。

よくあるミス:

  • 単純平均する。基準は「説得力の違いを適切に反映する」ことを求めており、単純平均は説得力の判断を放棄したのと同じです。
  • ウェイトを置いた理由を書かない。数値より理由の一行のほうが配点が大きいことすらあります。
  • 丸めた後に単価を出し忘れる。単価と総額の関連の適否は再吟味の項目そのものです。

電卓ミスを防ぐ7つの手順

型を知っていても、電卓を打ち間違えれば0点です。演習の失点の大半は理解不足ではなく操作ミスです。以下は、失点をゼロに近づけるための実務的な手順です。

  1. 問題を読む前に、答案の骨格(6ステップ)を余白に書く。何を求めるのかを固定してから数値を読むと、拾う数値が絞られます。
  2. すべての金額を「千円単位」か「円単位」のどちらかに揃えてから電卓に入れる。混在が最大の事故要因です。揃えた単位を答案冒頭に宣言します。
  3. 格差率は分数のまま連続して掛ける。$\times 100 \div 105 \times 102.5 \div 100 \div 105 \times 103 \div 100$ と、電卓上で一気に流します。途中で = を押して書き取らないことで、転記ミスと丸め誤差を同時に消せます。
  4. 複利現価率は表にしてから使う。DCF法では、まず $\frac{1}{1.05}$ から順に5個の率を書き出し、単調減少と隣接率の積を1箇所だけ確認します。率が正しければ、あとは掛け算だけの作業になります。
  5. メモリー(M+)で合計する。各期の現在価値を M+ で足していけば、途中の数字を紙に書き写す必要がなくなります。書き写しは事故の温床です。
  6. 1つの型が終わるたびに検算する。次の型に進む前に、逆算($P \times R = a$)か、範囲チェック(最小値と最大値の間か)か、比率チェック(費用率・粗利率)のいずれか1つを必ず行います。後でまとめて検算するのは不可能です。時間切れになります。
  7. 端数処理は宣言した方針どおりに、手法ごとに一度だけ。途中の値は丸めず、電卓のメモリーか答案の余白に全桁で控えます。

さらに、電卓操作そのものの速度を上げる訓練(ブラインドタッチ、GT機能、定数計算)は演習の計算スピードを上げる方法に譲ります。本記事の型を正確に回せるようになってから速度に取り組むのが順序です。精度のない速度は失点を量産するだけです。

時間配分と部分点の取り方

演習は2時間で1問。時間切れで最後まで到達できない答案が非常に多い科目です。

標準的な時間配分

段階 目安時間 やること
問題文の通読と対象不動産カードの作成 10分 価格時点・類型・地積・延床を転記
答案の骨格(見出し)を書く 5分 6ステップの見出しを先に書いてしまう
各手法の計算 70分 型を1つずつ、検算しながら回す
試算価格の調整・鑑定評価額の決定 20分 ウェイトと理由を書く
見直し 15分 単位・端数・転記の確認

部分点を取り切る3つの原則

  1. 見出しを先に全部書く。「Ⅰ 対象不動産の確定」「Ⅱ 適用手法」「Ⅲ 原価法による積算価格」…と骨格だけ先に書いておけば、途中で時間切れになっても採点者にどこまで到達したかが伝わり、書けた部分が確実に拾われます。
  2. 計算過程を必ず残す。答えだけ書いて間違っていれば0点ですが、過程が書いてあれば途中まで点が入ります。特に純収益の算定(型9)は項目ごとに配点があるので、表形式で全項目を書き出すのが有利です。
  3. 詰まったら数値を仮置きして先に進む。ある手法で数値が出せなくても、「仮に積算価格を◯円とすると」として調整の段階まで書き切ります。調整のパートは理論の記述が中心なので、計算ができなくても点が取れます。ここを白紙にするのが最大の損です。

20型の総まくりチェックリスト

直前期は、以下を見て型の名前から式と手順を口頭で再現できるか確認してください。式が出てこない型が、あなたの弱点です。

# 型 一言で 最頻出のミス
1 再調達原価(直接法) 直接+間接+一般管理費=標準的建設費、+付帯費用 一般管理費を直接工事費のみに乗じる
2 再調達原価(間接法) 事例単価 × 時点 × 格差 × 対象面積 建設費総額の定義の読み違い
3 減価修正(定額法) 経過÷(経過+経済的残存) 法定耐用年数を使う
4 減価修正(定率法・観察減価) $(1-d)^n$ を掛ける 再調達原価に対する定率と誤解
5 建物及びその敷地の積算価格 合計額に一体減価 減価要因の二重控除
6 比準価格の基本 事情→時点→地域→個別の順 事情補正の分母分子が逆
7 配分法 控除法と割合法で土地部分を抽出 延床面積で割る
8 複数事例の比較考量 信頼度でウェイト 単純平均
9 純収益の算定 総収益 − 総費用 償却前なのに減価償却費を計上
10 直接還元法 $P = a / R$ %のまま割る/償却前後の不整合
11 DCF法 各期割引+復帰価格の現価 復帰価格を $n+1$ 期の率で割り引く
12 復帰価格・最終還元利回り $P_R = a_{n+1} / R_n$ 分子に $n$ 期の純収益を使う
13 土地残余法 $(a - B R_B) / R_L$ 古い建物に適用する
14 建物残余法 $(a - L R_L) / R_B$ 積算価格を標準とすることを忘れる
15 開発法 販売総額の現価 − 費用の現価 面積の使い分け/割戻し期間を統一
16 積算法 基礎価格 × 期待利回り + 必要諸経費等 実質賃料と支払賃料の混同
17 賃貸事例比較法 実際実質賃料を比較 支払賃料のまま比較
18 差額配分法 差額 × 帰属割合を加減 適正な実質賃料=新規賃料を忘れる
19 利回り法・スライド法 継続賃料利回り/変動率 必要諸経費等の時点を誤る
20 試算価格の調整 再吟味6項目+説得力でウェイト 単純平均、理由の不記載

この表を印刷し、直前期に毎日1回、式を見ずに手順を再現できるかを試してください。20型のうち再現できない型が3つ以下になれば、総合問題は最後まで解き切れます。

今日から演習で仕上げる

鑑定士試験ブートラボでは、短答式の過去問を1問単位で解ける肢別演習、鑑定評価基準のビューア、論証カードによる暗記・想起、分野別の正答率にもとづく弱点の可視化を提供しています。本記事の20型は、各手法の意義・適用要件を正確に押さえていることが前提です。型の途中で根拠が曖昧になった箇所を、まず基準の該当箇所と肢別演習で潰してください。

まとめ

演習は「知らない手法が出るから解けない科目」ではありません。知っている手法を、決まった順序で、電卓ミスなく回し切れるかどうかだけを問う科目です。だからこそ、型のストックがそのまま得点になります。

本記事で押さえた要点を整理します。

  • 総合問題は対象不動産の確定 → 類型の判定 → 手法の選択 → 各手法の計算 → 試算価格の調整 → 鑑定評価額の決定の6ステップに必ず分解できる。答案の見出しを先に書いてしまう。
  • 計算の中身は20の型に分解できる。原価法5型、取引事例比較法3型、収益還元法6型、開発法1型、賃料4型、調整1型。
  • 端数処理は最後に一度。格差率は分数のまま連続して掛ける。単位(円/㎡か、円/月か)は答案冒頭で宣言する。
  • 型が1つ終わるたびに検算する。逆算・範囲チェック・比率チェックのどれか1つでよい。まとめて検算する時間は本番にはない。
  • 最頻出のミスは、①償却前なのに減価償却費を計上する、②事情補正の分母分子が逆、③復帰価格を誤った期の複利現価率で割り引く、④スライド法で必要諸経費等の時点を誤る、の4つ。この4つを潰すだけで大きく変わります。
  • 計算が詰まっても、試算価格の調整のパートは理論記述で点が取れる。白紙にしない。

科目全体の学習計画から立て直したい場合は鑑定理論(演習)の攻略法、どんな計算ジャンルが出るかを俯瞰したい場合は演習でよく出る頻出計算パターン、型は入っているのに時間が足りない場合は演習の計算スピードを上げる方法へ進んでください。20型を自分の手で再現できるようになったとき、演習は「時間との勝負」から「作業」に変わります。

#DCF法 #原価法 #収益還元法 #取引事例比較法 #演習 #継続賃料 #計算問題 #論文式試験 #開発法

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