不動産鑑定評価書の読み方と12の必須記載事項
鑑定評価報告書に記載すべき12の必須事項を一覧で整理。鑑定評価額・条件・対象不動産の情報・実地調査結果・手法の適用過程など各項目の内容と、依頼者が確認すべき読み方のポイント、調査報告書との違いまで実務目線で解説します。
鑑定評価書とは
鑑定評価書(正式には「鑑定評価報告書」)とは、不動産鑑定士が鑑定評価の結果を記載して依頼者に交付する書面のことです。鑑定評価基準は、鑑定評価報告書に記載すべき事項を詳細に規定しており、不動産鑑定士にはこれらの事項を適正に記載する義務があります。
鑑定評価報告書は、不動産鑑定士が自己の専門的学識と応用能力を活用し、鑑定評価の過程において形成された各種の判断を、依頼者その他第三者に対して表示するための文書であり、不動産鑑定士が作成する文書の中で最も重要なものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第8章
鑑定評価報告書の12の必須記載事項
鑑定評価基準は、鑑定評価報告書に記載しなければならない事項として12項目を規定しています。
1. 鑑定評価額及びその決定の理由の要旨
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 鑑定評価額 | 最終的に決定した価格又は賃料 |
| 決定の理由の要旨 | 試算価格の調整の過程を含む |
2. 鑑定評価の条件
鑑定評価の条件として設定した事項を記載します。対象確定条件、想定上の条件等が該当します。
3. 対象不動産の所在、地番、地目、家屋番号、構造等及び対象不動産に係る権利の種類
対象不動産の確認の結果として、物的確認と権利の態様の確認に基づく情報を記載します。
4. 対象不動産の実地調査の結果
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 実地調査を行った年月日 | いつ調査したか |
| 実地調査を行った不動産鑑定士の氏名 | 誰が調査したか |
| 立会人の氏名及び職業 | 調査に立ち会った者 |
| 実地調査を行った範囲 | 内覧の実施の有無を含む |
| 一部を実施できなかった場合の理由 | 調査の制約 |
5. 鑑定評価の手法の適用の過程
三手法(原価法、取引事例比較法、収益還元法)の適用過程を記載します。
6. 鑑定評価額の決定の理由
試算価格の調整の過程と、鑑定評価額の決定に至った理由を記載します。
7. 鑑定評価上の不明事項に係る取扱い及び関連当事者との利害関係等
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 不明事項 | 確認できなかった事項とその取扱い |
| 利害関係 | 関連当事者との利害関係の有無 |
8. 対象不動産の確認において用いた資料の内容及び範囲
物的確認・権利の確認に用いた資料を記載します。
9. 鑑定評価を行った年月日
鑑定評価を完了した年月日です。
10. 鑑定評価を行った不動産鑑定士の氏名
鑑定評価を行った不動産鑑定士を記載し、署名又は記名押印します。
11. 関与不動産鑑定士又は関与不動産鑑定業者に係る利害関係等
不動産鑑定業者及び関与した不動産鑑定士の利害関係を記載します。
12. 鑑定評価の依頼目的及び利用者の範囲
依頼目的と利用者の範囲を記載します。
鑑定評価書の読み方のポイント
依頼者・利用者が確認すべき事項
鑑定評価書を受け取った際に、特に確認すべきポイントは以下のとおりです。
| 確認事項 | チェックポイント |
|---|---|
| 鑑定評価額 | 金額と価格の種類(正常価格、限定価格等) |
| 価格時点 | いつ時点の価格か |
| 対象不動産 | 評価対象が正しいか |
| 鑑定評価の条件 | どのような条件の下での評価か |
| 手法の適用 | どの手法が適用され、どのように決定されたか |
手法の適用結果の見方
鑑定評価書には、各手法で求めた試算価格と、それらを調整して最終的な鑑定評価額を決定した過程が記載されています。
鑑定評価書の有効期限
有効期限はあるか
鑑定評価書に法定の有効期限はありません。しかし、不動産の価格は価格時点においてのみ妥当するものであるため、価格時点から時間が経過するほど鑑定評価額と実際の市場価格との乖離が生じうることに留意が必要です。
| 場面 | 一般的な有効性の目安 |
|---|---|
| 金融機関の担保評価 | 概ね1年以内 |
| 裁判での証拠 | 価格時点との関係で個別に判断 |
| 税務申告 | 申告時期に近接する価格時点であること |
鑑定評価書と調査報告書の違い
| 比較項目 | 鑑定評価書 | 調査報告書(価格等調査書) |
|---|---|---|
| 根拠 | 鑑定評価基準に基づく | 価格等調査ガイドラインに基づく |
| 記載事項 | 12の必須記載事項 | より簡略化された記載 |
| 評価手法 | 三手法の適用が原則 | 手法の省略が認められる場合がある |
| 責任 | 不動産鑑定士としての最高水準の責任 | 条件に応じた責任 |
| 費用 | 相対的に高い | 相対的に低い |
詳しくは鑑定評価書と調査報告書の違いを参照してください。
試験での出題ポイント
短答式試験
| 出題パターン | 正しい理解 |
|---|---|
| 必須記載事項の数 | 12項目 |
| 実地調査の記載事項 | 年月日、鑑定士氏名、立会人、調査範囲(内覧の有無)、未実施の理由 |
| 鑑定評価書の性格 | 不動産鑑定士が作成する文書の中で最も重要 |
| 署名 | 鑑定評価を行った不動産鑑定士が署名又は記名押印 |
論文式試験
論点1:鑑定評価報告書の意義と必須記載事項。 12の記載事項の内容を論述する問題です。
論点2:実地調査の記載事項。 実地調査に関する記載事項と、内覧省略の場合の取扱いを論じる問題です。
まとめ
鑑定評価報告書は、不動産鑑定士が作成する最も重要な文書であり、12の必須記載事項が定められています。鑑定評価額、鑑定評価の条件、手法の適用過程、決定の理由等が記載され、評価の透明性と信頼性を担保する役割を果たしています。
鑑定評価書と調査報告書の違い、対象不動産の確認、試算価格の調整と併せて理解してください。