不動産鑑定士の論文試験で高得点を狙える重要フレーズ30選
不動産鑑定士の論文式試験で高得点を狙える重要フレーズ30選。鑑定評価の定義、価格の三面性、最有効使用の原則、正常価格の定義など、答案で使用頻度の高いフレーズを出典・使用場面・活用例付きで解説。正確な条文引用力を鍛えます。
論文式試験でフレーズ力が合否を分ける
不動産鑑定士の論文式試験(鑑定理論)では、鑑定評価基準の条文を正確に引用する力が高得点の鍵を握ります。基準の趣旨を理解していても、答案に書き出す際に不正確な表現を使ってしまうと、採点者に「条文を正確に覚えていない」という印象を与えてしまいます。
本記事では、鑑定評価基準の全体像から論文式試験で特に使用頻度の高い重要フレーズを30個厳選しました。各フレーズの出典、使用場面、そして答案での活用例を併せて解説します。
基本概念に関するフレーズ(フレーズ1〜8)
フレーズ1:鑑定評価の定義
不動産の鑑定評価は、その対象である不動産の経済価値を判定し、これを貨幣額をもって表示することである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第1章第3節
使用場面:鑑定評価の本質を述べる際の冒頭フレーズとして最も基本的なもの。「算定」ではなく「判定」であることが最重要ポイント。鑑定評価は単なる計算ではなく、専門家の判断と意見であるという本質を表している。
フレーズ2:価格の三面性
不動産の価格は、(1)その不動産に対してわれわれが認める効用、(2)その不動産の相対的稀少性、(3)その不動産に対する有効需要の三者の相関結合によって生ずる不動産の経済価値を、貨幣額をもって表示したものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第1章第1節
使用場面:不動産の価格の本質を論じる問題で必ず引用すべきフレーズ。効用・相対的稀少性・有効需要の三者を正確に記載する。価格形成要因の解説と併せて理解を深めておくこと。
フレーズ3:最有効使用の原則
不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(最有効使用)を前提として把握される価格を標準として形成される。
― 不動産鑑定評価基準 総論第4章
使用場面:あらゆる論点に登場する最頻出フレーズ。「効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用」という表現を正確に再現することが求められる。最有効使用の原則を参照。
フレーズ4:最有効使用の内容
この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第4章
使用場面:最有効使用の具体的内容を述べる際に必須。「客観的」「良識と通常の使用能力」「合理的かつ合法的」「最高最善」の四つのキーワードを漏れなく書くこと。
フレーズ5:正常価格の定義
正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第3節
使用場面:価格の種類に関する問題で中核となるフレーズ。正常価格と他の価格の違いを正確に対比できるようにしておくこと。
フレーズ6:価格と賃料の関係
不動産の経済価値は、一般に、交換の対価である価格として表示されるとともに、その用益の対価である賃料として表示される。そして、この価格と賃料との間には、いわゆる元本と果実との間に認められる相関関係を認めることができる。
― 不動産鑑定評価基準 総論第1章第2節
使用場面:賃料評価に関する問題の導入部分で使用する。元本(価格)と果実(賃料)の関係は、収益還元法や積算法の理論的根拠となる重要概念である。
フレーズ7:不動産の地域性
不動産は、その自然的条件及び人文的条件の全部又は一部を共通にすることによって、他の不動産とともにある地域を構成し、その地域の構成分子としてその地域との間に、依存、補完等の関係に及びその地域内の他の構成分子である不動産との間に協働、代替、競争等の関係にたつ。
― 不動産鑑定評価基準 総論第1章第2節
使用場面:地域分析の意義や必要性を論じる際の根拠フレーズ。「依存・補完」「協働・代替・競争」の関係は暗記必須。
フレーズ8:今日の価格
今日の価格は、昨日の展開であり、明日を反映するものであって常に変化の過程にあるものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第1章第2節
使用場面:変動の原則や予測の原則に関連して、不動産の価格の動態的性格を表現する際に引用する。印象的なフレーズのため、答案に盛り込むと説得力が増す。
分析・手法に関するフレーズ(フレーズ9〜20)
フレーズ9:地域分析の定義
地域分析とは、その対象不動産がどのような地域に存するか、その地域はどのような特性を有するか、また、対象不動産に係る市場はどのような特性を有するか、及びそれらの特性はその地域内の不動産の利用形態と価格形成について全般的にどのような影響力を持っているかを分析し、判定することをいう。
― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第1節
使用場面:地域分析に関する問題では冒頭で必ず引用する。地域分析と個別分析で体系的に学べる。
フレーズ10:近隣地域の定義
近隣地域とは、対象不動産の属する用途的地域であって、[中略] ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域をいい、対象不動産の価格の形成に関して直接に影響を与えるような特性を持つものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第1節
使用場面:地域分析、取引事例の選択、同一需給圏の判定など、幅広い論点で使用する。
フレーズ11:同一需給圏の定義
同一需給圏とは、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいう。
― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第1節
使用場面:取引事例の選択範囲や類似地域の判定に関する問題で使用する。「代替関係」がキーワード。
フレーズ12:個別分析の定義
個別分析とは、対象不動産の個別的要因が対象不動産の利用形態と価格形成についてどのような影響力を持っているかを分析してその最有効使用を判定することをいう。
― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第2節
使用場面:個別分析の結論として最有効使用の判定が位置づけられていることを述べる際に使用する。
フレーズ13:原価法の定義
原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法である。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
使用場面:原価法の適用手順を論じる際の冒頭で引用する。「再調達原価→減価修正→積算価格」の流れを正確に表現する。
フレーズ14:収益還元法の射程
不動産の価格は、一般に当該不動産の収益性を反映して形成されるものであり、収益は、不動産の経済価値の本質を形成するものである。したがって、この手法は、文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外のものには基本的にすべて適用すべきものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
使用場面:収益還元法の適用範囲を論じる際に必ず引用する重要フレーズ。「基本的にすべて適用すべき」という射程の広さを示す。収益還元法の解説を参照。
フレーズ15:収益還元法の験証機能
市場における不動産の取引価格の上昇が著しいときは、取引価格と収益価格との乖離が増大するものであるので、先走りがちな取引価格に対する有力な験証手段として、この手法が活用されるべきである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
使用場面:バブル期や市場過熱期における収益還元法の重要性を述べる際に使用する。「先走りがちな取引価格に対する有力な験証手段」は印象的な表現。
フレーズ16:還元利回りと割引率の違い
還元利回りは、将来の収益に影響を与える要因の変動予測と予測に伴う不確実性を含むものである。割引率は、還元利回りに含まれる変動予測と予測に伴う不確実性のうち、収益見通しにおいて考慮された連続する複数の期間に発生する純収益や復帰価格の変動予測に係るものを除くものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
使用場面:還元利回りと割引率の本質的な違いを論じる際に使用する。DCF法の出題では頻出。
フレーズ17:試算価格の調整
試算価格又は試算賃料の調整とは、鑑定評価の複数の手法により求められた各試算価格又は試算賃料の再吟味及び各試算価格又は試算賃料が有する説得力に係る判断を行い、鑑定評価における最終判断である鑑定評価額の決定に導く作業をいう。
― 不動産鑑定評価基準 総論第8章第8節
使用場面:調整の意義を述べる際に引用する。「再吟味」と「説得力に係る判断」の二つの要素を正確に書くこと。
フレーズ18:複数の手法の適用
地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべきであり、対象不動産の種類、所在地の実情、資料の信頼性等により複数の鑑定評価の手法の適用が困難な場合においても、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第8章第7節
使用場面:三方式並行適用の原則を論じる際に引用する。三手法の徹底比較を参照。
フレーズ19:継続賃料の総合判断
継続賃料の鑑定評価額は、現行賃料を前提として、契約当事者間で現行賃料を合意しそれを適用した時点(直近合意時点)以降において、[中略] 契約当事者間の公平に留意の上決定するものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節
使用場面:継続賃料の求め方に関する問題の導入で使用する。「直近合意時点」「契約当事者間の公平」は必須キーワード。
フレーズ20:価格形成要因の動態性
不動産の鑑定評価を行うに当たっては、価格形成要因を市場参加者の観点から明確に把握し、かつ、その推移及び動向並びに諸要因間の相互関係を十分に分析して、前記三者に及ぼすその影響を判定することが必要である。
― 不動産鑑定評価基準 総論第3章
使用場面:価格形成要因の分析方法を論じる際に使用する。「市場参加者の観点」が平成26年改正で追加されたポイント。
各論・条件設定に関するフレーズ(フレーズ21〜30)
フレーズ21:対象確定条件の妥当性
対象確定条件を設定するに当たっては、対象不動産に係る諸事項についての調査及び確認を行った上で、依頼目的に照らして、鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点から当該条件設定の妥当性を確認しなければならない。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
使用場面:鑑定条件の設定に関する問題で、条件設定の可否を判断する際の基本基準として引用する。
フレーズ22:想定上の条件の要件
設定する想定上の条件が鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点に加え、特に実現性及び合法性の観点から妥当なものでなければならない。
― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
使用場面:想定上の条件の設定要件を述べる際に使用する。「利用者利益」「実現性」「合法性」の三要件を正確に書くこと。
フレーズ23:標準的使用と最有効使用
近隣地域の特性は、通常、その地域に属する不動産の一般的な標準的使用に具体的に現れるが、この標準的使用は、[中略] その地域に属する不動産のそれぞれについての最有効使用を判定する有力な標準となるものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第1節
使用場面:標準的使用と最有効使用の関係を論じる問題で使用する。地域分析と個別分析をつなぐ架け橋的な概念。
フレーズ24:証券化対象不動産のDCF法
証券化対象不動産の鑑定評価における収益価格を求めるに当たっては、DCF法を適用しなければならない。この場合において、併せて直接還元法を適用することにより検証を行うことが適切である。
― 不動産鑑定評価基準 各論第3章第5節
使用場面:DCF法の計算手順に関する問題で、証券化対象不動産におけるDCF法の位置づけを示す際に使用する。
フレーズ25:借地権者に帰属する経済的利益
借地権者に帰属する経済的利益とは、土地を使用収益することによる広範な諸利益を基礎とするものであるが、特に土地を長期間占有し、独占的に使用収益し得る借地権者の安定的利益、及び賃料差額に基づく経済的利益の現在価値のうち慣行的に取引の対象となっている部分が中心となる。
― 不動産鑑定評価基準 各論第1章第1節(要約)
使用場面:借地権の鑑定評価に関する問題で、借地権の価格の本質を論じる際に引用する。
フレーズ26:建物取壊しの最有効使用判定
建物を取り壊すことが最有効使用と認められる場合における自用の建物及びその敷地の鑑定評価額は、建物の解体による発生材料の価格から取壊し、除去、運搬等に必要な経費を控除した額を、当該敷地の最有効使用に基づく価格に加減して決定するものとする。
― 不動産鑑定評価基準 各論第1章第2節
使用場面:建物及びその敷地の評価における最有効使用の判定を論じる際に使用する。
フレーズ27:鑑定評価報告書の作成指針
鑑定評価報告書は、鑑定評価の基本的事項及び鑑定評価額を表し、鑑定評価額を決定した理由を説明し、その不動産の鑑定評価に関与した不動産鑑定士の責任の所在を示すことを主旨とするものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第9章第1節
使用場面:鑑定評価報告書の記載事項に関する問題で、報告書の意義・目的を述べる際に引用する。
フレーズ28:実質賃料と支払賃料
実質賃料とは、賃料の種類の如何を問わず賃貸人等に支払われる賃料の算定の期間に対応する適正なすべての経済的対価をいい、純賃料及び不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる諸経費等から成り立つものである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節
使用場面:賃料評価の基本概念を論じる際に使用する。実質賃料と支払賃料の関係を正確に説明できるようにしておくこと。
フレーズ29:開発法の適用場面
当該更地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等においては、さらに開発法による価格を比較考量して決定するものとする。
― 不動産鑑定評価基準 各論第1章第1節(要約)
使用場面:開発法の解説に関する問題で、開発法の適用要件を述べる際に引用する。
フレーズ30:鑑定評価額の決定
専門職業家としての良心に従い適正と判断される鑑定評価額を決定すべきである。
― 不動産鑑定評価基準 総論第8章第9節
使用場面:鑑定評価の最終段階を論じる際に使用する。「専門職業家としての良心」という表現は、鑑定評価の本質を象徴するフレーズとして答案の締めくくりにも効果的。
試験での出題ポイント
論文式試験でフレーズを活用するコツ
- 冒頭で定義を引用する:問われた論点に関する基準の定義を冒頭で正確に引用し、その上で論述を展開する
- フレーズを骨格に論述を肉付けする:基準の条文をそのまま暗唱するだけでなく、趣旨や背景の説明を加える
- 複数のフレーズを有機的につなげる:例えば「最有効使用→個別分析→手法の適用」のように、フレーズを論理的に連鎖させる
- 答案構成を先に決める:鑑定評価基準の体系図を頭に入れ、どのフレーズを使うかを先に計画する
暗記の優先順位
上記30フレーズの中でも、特に暗記の優先度が高いものは以下のとおりです。
| 優先度 | フレーズ | 理由 |
|---|---|---|
| 最高 | フレーズ1(鑑定評価の定義) | あらゆる問題の基礎 |
| 最高 | フレーズ3・4(最有効使用) | 最頻出の原則 |
| 最高 | フレーズ5(正常価格) | 価格の種類の問題で必須 |
| 高 | フレーズ9(地域分析) | 地域分析の問題で必須 |
| 高 | フレーズ14(収益還元法の射程) | 手法論の問題で必須 |
| 高 | フレーズ17(試算価格の調整) | 調整の問題で必須 |
まとめ
本記事では、論文式試験で確実に得点するために不可欠な重要フレーズを30個厳選して解説しました。これらのフレーズは、いわば答案の骨格です。正確に覚えて適切に引用することで、論理的で説得力のある答案を構成できます。
フレーズの暗記にあたっては、穴埋め練習問題50選でキーワードの正確性を固め、一問一答100問で誤りパターンへの耐性を高め、本記事のフレーズ集で論述の骨格を身につけるという三段階のアプローチが効果的です。さらに鑑定評価基準の語呂合わせ暗記法や音読暗記法も活用して、確実な暗記を目指してください。