運用上の留意事項の頻出30箇所ドリル|基準本文との対応で覚える
不動産鑑定評価基準運用上の留意事項の頻出30箇所を、対応する基準本文とセットで並べた穴埋めドリル。条件設定・調査範囲等条件・価格の種類・地域分析・手法・証券化まで、逐語で潰して短答の誤り肢に備えます。
不動産鑑定評価基準の「運用上の留意事項」は、基準本文を読んでいるだけでは絶対に出てこない定義・要件・例示のかたまりです。「実現性とは何か」「相当の期間とは何か」「調査範囲等条件を設定できる価格形成要因は何か」——これらはすべて基準本文には書かれておらず、留意事項にだけ書かれています。そして短答式試験の誤り肢は、まさにこの留意事項の一語をすり替えて作られます。
にもかかわらず、留意事項は多くの受験生にとって「後回しの資料」のままです。理由ははっきりしていて、留意事項だけを単独で読んでも意味が取れないからです。留意事項は独立した文書ではなく、基準本文のどこかを名指しして補足する注釈の集合体です。だから、基準本文とセットで並べないと記憶に定着しません。
本記事は、その「セットで並べる」作業を30箇所分、こちらで済ませたものです。各項目は〈基準本文の該当箇所〉→〈留意事項の該当箇所〉→〈何を補っているのか〉→〈穴埋め〉→〈短答でどう化けるか〉の順に並んでいます。上から順に解いていけば、留意事項の頻出領域をひととおり潰せる構成にしてあります。
なお、留意事項そのものの位置づけ・法的性格・章立て・学習スケジュールといった「概要」については、親記事にあたる運用上の留意事項とは?構成・基準本文との関係と学習法で扱っています。本記事はその続編で、概要ではなく中身を1箇所ずつ潰すためのドリルです。まず全体像を掴みたい方は親記事から、すでに構成を把握していて手を動かしたい方は本記事から入ってください。
留意事項は「基準本文の補足説明」である
留意事項の正式名称は「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」です。国土交通省が基準とセットで示しているもので、基準本文の各章について「この規定はこう読む」「この用語はこう定義する」「この場合を例示するとこうなる」を後付けで書いています。
構造的に重要なのは、留意事項が次の3つの仕事しかしていないという点です。
| 留意事項の仕事 | 典型的な書き出し | 試験での狙われ方 |
|---|---|---|
| 用語の定義を与える | 「〜とは、〜をいう。」 | 定義文の一語をすり替えて誤り肢にする |
| 該当する場合を例示する | 「〜を例示すれば、次のとおりである。」 | 例示に含まれないものを混ぜる/数を変える |
| 手続上の注意を加える | 「〜に留意する必要がある。」「〜しなければならない。」 | 「〜できる」と「〜しなければならない」を入れ替える |
この3類型を意識すると、留意事項の読み方が一気に楽になります。定義文は逐語で覚える、例示は個数と項目名で覚える、手続注意は義務か裁量かで覚える——それだけです。
そして最も大事なのは、留意事項の記述は必ず基準本文のどこかにぶら下がっているということ。基準本文を先に思い出し、そこにぶら下がる注釈として留意事項を引き出す。この順番でないと、本試験の緊張下では出てきません。だから本記事のドリルは、必ず基準本文の引用から始まります。
留意事項の全体構成と基準本文との対応関係
留意事項は、基準本文の章立てに沿ってⅠからⅩまでの節に分かれています。ここが最初の落とし穴で、基準本文の章番号と留意事項の節番号は一致しません。留意事項には総論第1章(不動産の鑑定評価に関する基本的考察)と総論第4章(不動産の価格に関する諸原則)に対応する節が存在せず、その分だけ番号がずれるからです。
| 留意事項の節 | 対応する基準本文 | 基準ビューアURL | 留意事項ビューアURL | 主な内容 |
|---|---|---|---|---|
| Ⅰ | 総論第2章 不動産の種別及び類型 | /viewer/kizyun/2 | /viewer/kizyun/ryuiziko/1 | 住宅地域4分類、商業地域5分類(高度商業地域の3細分類を含む) |
| Ⅱ | 総論第3章 不動産の価格を形成する要因 | /viewer/kizyun/3 | /viewer/kizyun/ryuiziko/2 | 埋蔵文化財・土壌汚染、建物の個別的要因、賃借人の状況 |
| Ⅲ | 総論第5章 鑑定評価の基本的事項 | /viewer/kizyun/5 | /viewer/kizyun/ryuiziko/3 | 条件設定、調査範囲等条件、価格時点、価格の種類 |
| Ⅳ | 総論第6章 地域分析及び個別分析 | /viewer/kizyun/6 | /viewer/kizyun/ryuiziko/4 | 近隣地域の範囲の判定、市場の特性、最有効使用 |
| Ⅴ | 総論第7章 鑑定評価の方式 | /viewer/kizyun/7 | /viewer/kizyun/ryuiziko/5 | 事例選択、事情補正、減価修正、還元利回り、DCF法、事業用不動産 |
| Ⅵ | 総論第8章 鑑定評価の手順 | /viewer/kizyun/8 | /viewer/kizyun/ryuiziko/6 | 利害関係等の確認、処理計画、内覧、合理的推定 |
| Ⅶ | 総論第9章 鑑定評価報告書 | /viewer/kizyun/9 | /viewer/kizyun/ryuiziko/7 | 確認方法の記載、内覧省略時の記載 |
| Ⅷ | 各論第1章 価格に関する鑑定評価 | /viewer/kizyun/10 | /viewer/kizyun/ryuiziko/8 | 開発法、割合法・控除法、借地権の一時金、区分地上権、土壌汚染 |
| Ⅸ | 各論第2章 賃料に関する鑑定評価 | /viewer/kizyun/11 | /viewer/kizyun/ryuiziko/9 | 基礎価格、期待利回り、賃貸事業分析法、スケルトン貸し |
| Ⅹ | 各論第3章 証券化対象不動産 | /viewer/kizyun/12 | /viewer/kizyun/ryuiziko/10 | 処理計画の記録、ER の活用、DCF法の収益費用項目 |
分量の偏りも押さえておいてください。Ⅴ(総論第7章=手法)が圧倒的に長く、次いでⅢ(基本的事項)、Ⅷ(各論第1章)、Ⅵ(手順)と続きます。ⅠとⅨは数ページしかありません。学習時間の配分は、この分量比にほぼ比例させるのが合理的です。
留意事項の内部で「本留意事項Ⅵ3.(1)に定めるところにより」といった相互参照が出てくるのも、この節番号です。ⅢとⅥとⅧは特に相互参照が多く、条件設定(Ⅲ)→ 資料の検討(Ⅵ)→ 土壌汚染の評価(Ⅷ)が一本の線でつながっています。この線を意識できると、論文で条件設定を書くときの筋が通ります。
なお、節ごとの通し解説は総論部分の条文解説と各論部分の条文解説に、重要ポイントの体系整理は運用上の留意事項の重要ポイントに、改正の経緯は運用上の留意事項の最新改正ポイントにあります。本記事はそれらと役割を分け、解説せずに解かせることに徹します。
ドリルの使い方
各問は次の順に並んでいます。
- 基準本文 — その留意事項がぶら下がっている親の規定。まずここを思い出す
- 留意事項 — 基準本文に対する補足。逐語で覚える対象
- 何を補っているか — 1〜2文の要約。理解の確認用
- 穴埋め — 〔 〕を埋める。目で追わず、口か手を動かす
- 短答での化け方 — その箇所が誤り肢になるときの典型パターン
1周目は答えを見ながらで構いません。2周目から〔 〕を隠してください。3周目は「短答での化け方」だけを読んで、元の正しい記述を復元できるかを試すと定着します。
領域A 条件設定と調査範囲等条件(8問)
条件設定は留意事項Ⅲの中心であり、短答・論文の両方で最頻出です。基準本文が枠組みだけを示し、定義と例示を全部留意事項に投げているため、留意事項を知らないと手も足も出ません。
Q1 条件設定の意義──「妥当する範囲」と「責任の範囲」
基準本文
対象不動産の確定に当たって必要となる鑑定評価の条件を対象確定条件という。対象確定条件は、鑑定評価の対象とする不動産の所在、範囲等の物的事項及び所有権、賃借権等の対象不動産の権利の態様に関する事項を確定するために必要な条件であり、依頼目的に応じて次のような条件がある。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
留意事項
条件の設定は、依頼目的に応じて対象不動産の内容を確定し(対象確定条件)、設定する地域要因若しくは個別的要因についての想定上の条件を明確にし、又は不動産鑑定士の通常の調査では事実の確認が困難な特定の価格形成要因について調査の範囲を明確にするもの(調査範囲等条件)である。したがって、条件設定は、鑑定評価の妥当する範囲及び鑑定評価を行った不動産鑑定士の責任の範囲を示すという意義を持つものである。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
何を補っているか:基準本文は3種類の条件を別々の項(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)に分けて置くだけですが、留意事項はそれらを一文でまとめ、条件設定という行為全体が何のためにあるのかという趣旨——評価が妥当する範囲と鑑定士の責任範囲の画定——を示しています。
穴埋め
条件設定は、鑑定評価の〔①〕範囲及び鑑定評価を行った不動産鑑定士の〔②〕範囲を示すという意義を持つものである。
解答:①妥当する ②責任の
短答での化け方:「条件設定は、鑑定評価の妥当する範囲及び依頼者の責任の範囲を示す」のように、責任の主体を依頼者にすり替える肢。責任を負うのは不動産鑑定士です。また「条件設定の意義は依頼者の便宜を図ることにある」といった目的のすり替えも定番です。条件の3類型そのものは対象確定条件とはで整理しています。
Q2 条件設定の手順──「受付を通じた間接的確認」では足りない
基準本文
条件設定をする場合、依頼者との間で当該条件設定に係る鑑定評価依頼契約上の合意がなくてはならない。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
留意事項
鑑定評価の条件は、依頼内容に応じて設定するもので、不動産鑑定士は不動産鑑定業者の受付という行為を通じてこれを間接的に確認することとなる。しかし、同一不動産であっても設定された条件の如何によっては鑑定評価額に差異が生ずるものであるから、不動産鑑定士は直接、依頼内容の確認を行うべきである。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
何を補っているか:基準本文は「契約上の合意」という結果だけを要求しますが、留意事項はその前段の実務手順に踏み込み、業者の受付を経由した間接確認では不十分で、不動産鑑定士自身が直接確認すべきだと述べます。理由づけ(条件次第で評価額が変わる)まで書かれている点が重要です。
穴埋め
同一不動産であっても設定された条件の如何によっては鑑定評価額に〔①〕が生ずるものであるから、不動産鑑定士は〔②〕、依頼内容の確認を行うべきである。
解答:①差異 ②直接
短答での化け方:「不動産鑑定士は、不動産鑑定業者の受付を通じて間接的に確認すれば足りる」とする肢。留意事項はまさにこれを否定するために置かれた規定なので、「足りる」「差し支えない」といった緩和表現が出たら疑ってください。
Q3 未竣工建物等鑑定評価──価格時点で「使用収益が可能な状態」
基準本文
造成に関する工事が完了していない土地又は建築に係る工事(建物を新築するもののほか、増改築等を含む。)が完了していない建物について、当該工事の完了を前提として鑑定評価の対象とすること(この場合の鑑定評価を未竣工建物等鑑定評価という。) ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
留意事項
未竣工建物等鑑定評価は、価格時点において、当該建物等の工事が完了し、その使用収益が可能な状態であることを前提として鑑定評価を行うものであることに留意する。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
何を補っているか:基準本文は「工事の完了を前提として」としか書いていません。留意事項はこれを一段深め、工事完了だけでなく使用収益が可能な状態までを前提とすること、そしてその判定基準日が価格時点であることを明示します。竣工しても検査済証が下りず使用できない状態は、この前提を満たしません。
なお基準本文は、未竣工建物等鑑定評価を行う場合に、竣工後の物的確認のための設計図書等と権利の態様確認のための請負契約書等の収集を求め、さらに法令上必要な許認可等が取得され、発注者の資金調達能力等の観点から工事完了の実現性が高いと判断されなければならないとしています。留意事項と併せて一つの塊で覚えてください。
穴埋め
未竣工建物等鑑定評価は、〔①〕において、当該建物等の工事が完了し、その〔②〕が可能な状態であることを前提として鑑定評価を行うものである。
解答:①価格時点 ②使用収益
短答での化け方:「工事が完了していることを前提とすれば足り、使用収益の可否は問わない」とする肢。あるいは「鑑定評価を行う時点において工事が完了していること」と、価格時点を鑑定評価を行った年月日にすり替える肢。前提の基準日は常に価格時点です。
Q4 「鑑定評価書の利用者」の範囲と「利益を害するおそれ」の判定
基準本文
対象確定条件を設定するに当たっては、対象不動産に係る諸事項についての調査及び確認を行った上で、依頼目的に照らして、鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点から当該条件設定の妥当性を確認しなければならない。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
留意事項
「鑑定評価書の利用者」とは、依頼者及び提出先等(総論第8章第2節で規定されるものをいう。)のほか、法令等に基づく不動産鑑定士による鑑定評価を踏まえ販売される金融商品の購入者等をいう。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
対象確定条件を設定する場合において、鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがある場合とは、鑑定評価の対象とする不動産の現実の利用状況と異なる対象確定条件を設定した場合に、現実の利用状況との相違が対象不動産の価格に与える影響の程度等について、鑑定評価書の利用者が自ら判断することが困難であると判断される場合をいう。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
何を補っているか:基準本文が使う「鑑定評価書の利用者」「利益を害するおそれ」という2つのキーワードは、いずれも基準本文中に定義がありません。留意事項が両方の定義を与えています。利用者は依頼者・提出先等にとどまらず、金融商品の購入者等まで及びます。そして「利益を害するおそれ」の判定基準は、利用者が自ら判断できるかどうかという一点に集約されます。
穴埋め
「鑑定評価書の利用者」とは、依頼者及び〔①〕のほか、法令等に基づく不動産鑑定士による鑑定評価を踏まえ販売される〔②〕の購入者等をいう。
利益を害するおそれがある場合とは、現実の利用状況との相違が対象不動産の価格に与える影響の程度等について、鑑定評価書の利用者が〔③〕判断することが困難であると判断される場合をいう。
解答:①提出先等 ②金融商品 ③自ら
短答での化け方:「鑑定評価書の利用者とは依頼者及び提出先等をいう」と範囲を狭める肢が最頻出です。「〜のほか」以降を落とすタイプの誤り肢は留意事項全体で多用されるので、定義文は必ず末尾まで音読してください。
Q5 想定上の条件の「実現性」と「合法性」
基準本文
対象不動産について、依頼目的に応じ対象不動産に係る価格形成要因のうち地域要因又は個別的要因について想定上の条件を設定する場合がある。この場合には、設定する想定上の条件が鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないかどうかの観点に加え、特に実現性及び合法性の観点から妥当なものでなければならない。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
留意事項
実現性とは、設定された想定上の条件を実現するための行為を行う者の事業遂行能力等を勘案した上で当該条件が実現する確実性が認められることをいう。なお、地域要因についての想定上の条件を設定する場合には、その実現に係る権能を持つ公的機関の担当部局から当該条件が実現する確実性について直接確認すべきことに留意すべきである。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
合法性とは、公法上及び私法上の諸規制に反しないことをいう。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
何を補っているか:基準本文は「実現性及び合法性」という2つの要件名を挙げるだけです。留意事項が両方の定義を与え、さらに地域要因の想定上の条件については公的機関の担当部局への直接確認という手続まで要求しています。基準本文には「一般に、地域要因について想定上の条件を設定することが妥当と認められる場合は、計画及び諸規制の変更、改廃に権能を持つ公的機関の設定する事項に主として限られる」とあり、これと対応させて読みます。
穴埋め
実現性とは、設定された想定上の条件を実現するための行為を行う者の〔①〕等を勘案した上で当該条件が実現する〔②〕が認められることをいう。
合法性とは、〔③〕上及び〔④〕上の諸規制に反しないことをいう。
解答:①事業遂行能力 ②確実性 ③公法 ④私法
短答での化け方:合法性を「公法上の諸規制に反しないこと」と片方だけにする肢が定番です。私法上の規制も含みます。実現性については「実現の蓋然性が高いこと」と、最有効使用の判定基準(後述Q18)の表現を混ぜてくる肢に注意してください。
Q6 調査範囲等条件を設定できる価格形成要因(4例示)
基準本文
不動産鑑定士の通常の調査の範囲では、対象不動産の価格への影響の程度を判断するための事実の確認が困難な特定の価格形成要因が存する場合、当該価格形成要因について調査の範囲に係る条件(以下「調査範囲等条件」という。)を設定することができる。ただし、調査範囲等条件を設定することができるのは、調査範囲等条件を設定しても鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないと判断される場合に限る。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
留意事項
不動産鑑定士の通常の調査の範囲では、対象不動産の価格への影響の程度を判断するための事実の確認が困難な特定の価格形成要因を例示すれば、次のとおりである。
ア 土壌汚染の有無及びその状態
イ 建物に関する有害な物質の使用の有無及びその状態
ウ 埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態
エ 隣接不動産との境界が不分明な部分が存する場合における対象不動産の範囲
― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
何を補っているか:基準本文は「特定の価格形成要因」としか書きません。具体的に何が該当するのかを示すのが、この4つの例示です。土地の汚染(ア)・建物の有害物質(イ)・地中の埋蔵物(ウ)・地表の境界(エ)という並びで覚えると落としにくくなります。
穴埋め
ア 〔①〕の有無及びその状態
イ 建物に関する〔②〕の使用の有無及びその状態
ウ 〔③〕及び〔④〕の有無並びにその状態
エ 隣接不動産との〔⑤〕が不分明な部分が存する場合における対象不動産の範囲
解答:①土壌汚染 ②有害な物質 ③埋蔵文化財 ④地下埋設物 ⑤境界
短答での化け方:「地震リスク」「耐震性」「近隣の嫌悪施設」など、証券化対象不動産のエンジニアリング・レポートの調査項目を混ぜてくる肢が典型です。ER の項目(公法上及び私法上の規制、修繕計画、再調達価格、有害な物質に係る建物環境、土壌汚染、地震リスク、耐震性、地下埋設物)とは別物なので、混同しないでください。4要因の詳細は調査範囲等条件の4要因で個別に扱っています。
Q7 利益を害するおそれがないと判断される場合(5例示)
基準本文
ただし、調査範囲等条件を設定することができるのは、調査範囲等条件を設定しても鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないと判断される場合に限る。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
留意事項
特定の価格形成要因について調査範囲等条件を設定しても鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないと判断される場合を例示すれば、次のとおりである。
(ア)依頼者等による当該価格形成要因に係る調査、査定又は考慮した結果に基づき、鑑定評価書の利用者が不動産の価格形成に係る影響の判断を自ら行う場合
(イ)不動産の売買契約等において、当該価格形成要因に係る契約当事者間での取扱いが約定される場合
(ウ)担保権者が当該価格形成要因が存する場合における取扱いについての指針を有し、その判断に資するための調査が実施される場合
(エ)当該価格形成要因が存する場合における損失等が保険等で担保される場合
― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
(オ)財務諸表の作成のための鑑定評価において、当該価格形成要因が存する場合における引当金が計上される場合、財務諸表に当該要因の存否や財務会計上の取扱いに係る注記がなされる場合その他財務会計上、当該価格形成要因に係る影響の程度について別途考慮される場合 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
何を補っているか:基準本文のただし書きは抽象的な要件しか置きません。留意事項の5例示は、その要件が満たされる典型場面を「別のルートで利用者が判断できる/損失が手当てされる」という共通の理屈で並べています。(ア)は依頼者の調査結果、(イ)は契約上の約定、(ウ)は担保権者の指針、(エ)は保険、(オ)は財務会計上の処理。手当ての担い手が5者それぞれ異なる、と整理すると覚えやすくなります。
穴埋め
(ア)〔①〕等による当該価格形成要因に係る調査、査定又は考慮した結果に基づき、鑑定評価書の利用者が不動産の価格形成に係る影響の判断を〔②〕行う場合
(ウ)〔③〕が当該価格形成要因が存する場合における取扱いについての〔④〕を有し、その判断に資するための調査が実施される場合
(エ)当該価格形成要因が存する場合における損失等が〔⑤〕等で担保される場合
解答:①依頼者 ②自ら ③担保権者 ④指針 ⑤保険
短答での化け方:「当該価格形成要因が存する可能性が低いと判断される場合」のような、留意事項に存在しない場面を混ぜる肢。存否の可能性の高低は判断基準ではありません。5場面の解説は調査範囲等条件を設定できる5場面にまとめてあります。
Q8 調査範囲等条件の取扱明確化と、条件設定が制限される場面
基準本文
証券化対象不動産(各論第3章第1節において規定するものをいう。)の鑑定評価及び会社法上の現物出資の目的となる不動産の鑑定評価等、鑑定評価が鑑定評価書の利用者の利益に重大な影響を及ぼす可能性がある場合には、原則として、鑑定評価の対象とする不動産の現実の利用状況と異なる対象確定条件、地域要因又は個別的要因についての想定上の条件及び調査範囲等条件の設定をしてはならない。ただし、証券化対象不動産の鑑定評価で、各論第3章第2節に定める要件を満たす場合には未竣工建物等鑑定評価を行うことができるものとする。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節
留意事項
調査範囲等条件を設定する価格形成要因については、当該価格形成要因の取扱いを明確にする必要がある。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
何を補っているか:条件を設定して終わりではなく、その要因を評価上どう扱ったのかを明確にせよという後始末の要求です。これは総論第9章第2節Ⅱが求める「条件の内容及び評価における取扱いが妥当なものであると判断した根拠」の記載につながります。基準本文側の条件設定の制限(証券化・現物出資)とセットで押さえると、条件設定の全体像が閉じます。
穴埋め
鑑定評価が鑑定評価書の利用者の利益に重大な影響を及ぼす可能性がある場合には、〔①〕として条件の設定をしてはならない。ただし、証券化対象不動産の鑑定評価で各論第3章第2節に定める要件を満たす場合には〔②〕鑑定評価を行うことができる。
解答:①原則 ②未竣工建物等
短答での化け方:「証券化対象不動産については、いかなる場合も条件設定をしてはならない」と例外を消す肢。未竣工建物等鑑定評価の例外があります。逆に「証券化対象不動産でも調査範囲等条件を設定できる」と例外を広げる肢も誤りです。証券化における制限は証券化対象不動産と調査範囲等条件の制限で詳述しています。条件設定全体の入口は調査範囲等条件とはへ。
領域B 価格時点と価格の種類(5問)
留意事項Ⅲの後半です。定義文が短い割に、一語すり替えの誤り肢が作りやすい領域で、短答での出題効率が非常に高いところです。
Q9 継続賃料の価格時点は「賃料改定の基準日」
基準本文
価格形成要因は、時の経過により変動するものであるから、不動産の価格はその判定の基準となった日においてのみ妥当するものである。したがって、不動産の鑑定評価を行うに当たっては、不動産の価格の判定の基準日を確定する必要があり、この日を価格時点という。また、賃料の価格時点は、賃料の算定の期間の収益性を反映するものとしてその期間の期首となる。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第2節
留意事項
借地借家法第11条第1項又は第32条第1項に基づき賃料の増減が請求される場合における価格時点は、賃料増減請求に係る賃料改定の基準日となることに留意する必要がある。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
何を補っているか:基準本文の原則は「賃料算定期間の期首」です。留意事項は、賃料増減請求のケースでは賃料改定の基準日が価格時点になると特則を置いています。借地借家法第11条第1項が地代等増減請求、第32条第1項が借賃増減請求です。
穴埋め
借地借家法第〔①〕条第1項又は第〔②〕条第1項に基づき賃料の増減が請求される場合における価格時点は、賃料増減請求に係る〔③〕の基準日となる。
解答:①11 ②32 ③賃料改定
短答での化け方:「賃料増減請求の場合であっても、価格時点は賃料の算定の期間の期首となる」と原則で押し切る肢。あるいは「訴訟提起の日」「調停申立ての日」といった、条文にない日をあてる肢。
Q10 過去時点の鑑定評価の要件と、将来時点の原則禁止
基準本文
価格時点は、鑑定評価を行った年月日を基準として現在の場合(現在時点)、過去の場合(過去時点)及び将来の場合(将来時点)に分けられる。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第2節
留意事項
過去時点の鑑定評価は、対象不動産の確認等が可能であり、かつ、鑑定評価に必要な要因資料及び事例資料の収集が可能な場合に限り行うことができる。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
将来時点の鑑定評価は、対象不動産の確定、価格形成要因の把握、分析及び最有効使用の判定についてすべて想定し、又は予測することとなり、また、収集する資料についても鑑定評価を行う時点までのものに限られ、不確実にならざるを得ないので、原則として、このような鑑定評価は行うべきではない。ただし、特に必要がある場合において、鑑定評価上妥当性を欠くことがないと認められるときは将来の価格時点を設定することができるものとする。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
何を補っているか:基準本文は3種類の価格時点を列挙するだけで、可否を何も述べません。留意事項が過去時点には2要件(確認等が可能・資料収集が可能)を課し、将来時点には原則禁止+例外許容という扱いを定めています。過去時点については、事情変更がある場合に価格時点に近い時点の確認資料等をできる限り収集し、それを基礎に判断すべきことも書かれています。
穴埋め
過去時点の鑑定評価は、対象不動産の〔①〕が可能であり、かつ、鑑定評価に必要な〔②〕及び〔③〕の収集が可能な場合に限り行うことができる。
将来時点の鑑定評価は、〔④〕として、行うべきではない。ただし、特に必要がある場合において、鑑定評価上〔⑤〕を欠くことがないと認められるときは将来の価格時点を設定することができる。
解答:①確認等 ②要因資料 ③事例資料 ④原則 ⑤妥当性
短答での化け方:「将来時点の鑑定評価は行うことができない」と例外を消す肢が最頻出です。原則禁止であって絶対禁止ではありません。逆に「将来時点の鑑定評価も、依頼者の同意があれば自由に行うことができる」と要件を緩める肢も誤りです。
Q11 正常価格の「通常の資金調達能力」
基準本文
なお、ここでいう市場参加者は、自己の利益を最大化するため次のような要件を満たすとともに、慎重かつ賢明に予測し、行動するものとする。…⑤ 買主が通常の資金調達能力を有していること。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第3節
留意事項
通常の資金調達能力とは、買主が対象不動産の取得に当たって、市場における標準的な借入条件(借入比率、金利、借入期間等)の下での借り入れと自己資金とによって資金調達を行うことができる能力をいう。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
何を補っているか:基準本文が正常価格の成立条件として掲げる「通常の資金調達能力」の定義です。ポイントは、借入れと自己資金の両方を要素とすること、そして借入条件が「標準的」であること(借入比率・金利・借入期間等)。全額自己資金を想定するわけでも、有利な借入条件を想定するわけでもありません。
穴埋め
通常の資金調達能力とは、買主が対象不動産の取得に当たって、市場における〔①〕借入条件(〔②〕、金利、借入期間等)の下での借り入れと〔③〕とによって資金調達を行うことができる能力をいう。
解答:①標準的な ②借入比率 ③自己資金
短答での化け方:「自己資金のみによって取得できる能力」とする肢、あるいは「当該買主にとって最も有利な借入条件の下での」と標準性を外す肢。価格の種類そのものの体系は正常価格・限定価格・特定価格・特殊価格で整理しています。
Q12 「相当の期間」と「公開されていること」の時制
基準本文
対象不動産が相当の期間市場に公開されていること。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第3節
留意事項
相当の期間とは、対象不動産の取得に際し必要となる情報が公開され、需要者層に十分浸透するまでの期間をいう。なお、相当の期間とは、価格時点における不動産市場の需給動向、対象不動産の種類、性格等によって異なることに留意すべきである。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
また、公開されていることとは、価格時点において既に市場で公開されていた状況を想定することをいう(価格時点以降売買成立時まで公開されることではないことに留意すべきである。)。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
何を補っているか:留意事項の中でも屈指の出題頻度を誇る箇所です。「相当の期間」は需要者層に十分浸透するまでの期間であり、固定的な日数ではありません。そして「公開されていること」は価格時点より前の状況を想定するもので、価格時点以降の話ではないと、わざわざ括弧書きで否定形まで書いてあります。ここまで親切に書かれているのは、実務でも受験でも間違えやすいからです。
穴埋め
相当の期間とは、対象不動産の取得に際し必要となる情報が公開され、〔①〕に十分〔②〕するまでの期間をいう。
公開されていることとは、価格時点において〔③〕市場で公開されていた状況を想定することをいい、価格時点〔④〕売買成立時まで公開されることではない。
解答:①需要者層 ②浸透 ③既に ④以降
短答での化け方:「価格時点から売買が成立するまでの間、市場に公開されることをいう」という肢がそのまま作れます。時制が逆です。また「相当の期間とは、おおむね3か月から6か月をいう」といった具体的期間を持ち出す肢も誤りで、需給動向・種類・性格によって異なります。
Q13 特定価格の「法令等」と3つの類型
基準本文
特定価格とは、市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする鑑定評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第5章第3節
留意事項
法令等とは、法律、政令、内閣府令、省令、その他国の行政機関の規則、告示、訓令、通達等のほか、最高裁判所規則、条例、地方公共団体の規則、不動産鑑定士等の団体が定める指針(不動産の鑑定評価に関する法律第48条の規定により国土交通大臣に届出をした社団又は財団が定める指針であって国土交通省との協議を経て当該団体において合意形成がなされたものをいう。以下同じ。)、企業会計の基準、監査基準をいう。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
投資対象資産としての不動産の取得時又は保有期間中の価格を求める鑑定評価については、上記鑑定評価目的の下で、資産流動化計画等により投資家に開示される対象不動産の運用方法を所与とするが、その運用方法による使用が対象不動産の最有効使用と異なることとなる場合には特定価格として求めなければならない。なお、投資法人等が投資対象資産を譲渡するときに依頼される鑑定評価で求める価格は正常価格として求めることに留意する必要がある。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
鑑定評価に際しては、通常の市場公開期間より短い期間で売却されることを前提とするものであるため、早期売却による減価が生じないと判断される特段の事情がない限り特定価格として求めなければならない。 ― 運用上の留意事項Ⅲ(総論第5章について)
何を補っているか:3点あります。第一に、基準本文の「法令等」には企業会計の基準・監査基準まで含まれるという広い定義。第二に、証券化目的でも取得時・保有期間中は特定価格、譲渡時は正常価格という使い分け。第三に、証券化・民事再生法(早期売却)・会社更生法等(事業継続)のいずれについても、最有効使用と異なる/減価が生じないと判断される特段の事情がない限りという条件付きで特定価格になるという構造です。無条件に特定価格になるわけではありません。
穴埋め
投資法人等が投資対象資産を〔①〕ときに依頼される鑑定評価で求める価格は〔②〕として求める。
民事再生法に基づき早期売却を前提とした価格を求める場合は、早期売却による〔③〕が生じないと判断される特段の事情がない限り〔④〕として求めなければならない。
解答:①譲渡する ②正常価格 ③減価 ④特定価格
短答での化け方:「証券化対象不動産に係る鑑定評価目的の下で求める価格は、常に特定価格である」とする肢。譲渡時は正常価格です。また「法令等には企業会計の基準は含まれない」と範囲を狭める肢。特定価格の適用場面は特定価格を求めるべき場合にまとめています。
領域C 地域分析・個別分析の実務(5問)
留意事項Ⅳは、基準本文が抽象的に述べる地域分析・個別分析を、実務の手順に落とし込んだ節です。論文式で書き負けないための材料が集中しています。
Q14 近隣地域の明確化と特性の把握──「外延的」「くり返し」「広域的」
基準本文
地域分析とは、その対象不動産がどのような地域に存するか、その地域はどのような特性を有するか、また、対象不動産に係る市場はどのような特性を有するか、及びそれらの特性はその地域内の不動産の利用形態と価格形成について全般的にどのような影響力を持っているかを分析し、判定することをいう。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第1節
留意事項
この対象不動産の存する近隣地域の明確化及びその近隣地域の特性の把握に当たっては、対象不動産を中心に外延的に広がる地域について、対象不動産に係る市場の特性を踏まえて地域要因をくり返し調査分析し、その異同を明らかにしなければならない。
これはまた、地域の構成分子である不動産について、最終的に地域要因を共通にする地域を抽出することとなるため、近隣地域となる地域及びその周辺の他の地域を併せて広域的に分析することが必要である。 ― 運用上の留意事項Ⅳ(総論第6章について)
何を補っているか:基準本文は地域分析の定義を置くだけで、どう作業するかは書きません。留意事項は作業手順を3語で示します——外延的に広がる地域を、くり返し調査分析し、周辺地域を併せて広域的に分析する。近隣地域だけを見ればよいのではなく、周辺の他の地域まで併せて見て初めて近隣地域の範囲が確定する、という点が要点です。
穴埋め
対象不動産を中心に〔①〕に広がる地域について、対象不動産に係る市場の特性を踏まえて地域要因を〔②〕調査分析し、その〔③〕を明らかにしなければならない。近隣地域となる地域及びその周辺の他の地域を併せて〔④〕に分析することが必要である。
解答:①外延的 ②くり返し ③異同 ④広域的
短答での化け方:「近隣地域の分析に当たっては、近隣地域の内部の地域要因のみを分析すれば足りる」とする肢。周辺の他の地域を併せた広域的分析が必要です。地域分析と個別分析の全体像は地域分析と個別分析へ。
Q15 近隣地域の範囲の判定──自然的状態と人文的状態
基準本文
近隣地域とは、対象不動産の属する用途的地域であって、より大きな規模と内容とを持つ地域である都市あるいは農村等の内部にあって、居住、商業活動、工業生産活動等人の生活と活動とに関して、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域をいい、対象不動産の価格の形成に関して直接に影響を与えるような特性を持つものである。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第1節
留意事項
近隣地域の範囲の判定に当たっては、基本的な土地利用形態や土地利用上の利便性等に影響を及ぼす次に掲げるような事項に留意することが必要である。 ― 運用上の留意事項Ⅳ(総論第6章について)
留意事項が掲げる事項は、次の2区分・7項目です。
| 区分 | 項目 | 留意事項が述べる作用 |
|---|---|---|
| ① 自然的状態に係るもの | ア 河川 | 川幅が広い河川等は、土地、建物等の連たん性及び地域の一体性を分断する場合がある |
| イ 山岳及び丘陵 | 河川と同様、連たん性及び一体性を分断するほか、日照、通風、乾湿等に影響を及ぼす場合がある | |
| ウ 地勢、地質、地盤等 | 日照、通風、乾湿等に影響を及ぼすとともに、居住、商業活動等の土地利用形態に影響を及ぼす | |
| ② 人文的状態に係るもの | ア 行政区域 | 公共施設・公益的施設の整備水準並びに公租公課等の負担の差異が土地利用上の利便性等に影響を及ぼす |
| イ 公法上の規制等 | 都市計画法等による土地利用の規制内容が土地利用形態に影響を及ぼす | |
| ウ 鉄道、公園等 | 土地、建物等の連たん性及び地域の一体性を分断する場合がある | |
| エ 道路 | 広幅員の道路等は、土地、建物等の連たん性及び地域の一体性を分断する場合がある |
何を補っているか:基準本文の「地域的にまとまりを示している地域」を、実際にどこで線を引くかという判定要素に翻訳したものです。自然的3項目・人文的4項目という個数で覚えます。それぞれの作用は「分断するもの(河川・山岳丘陵・鉄道公園・広幅員の道路)」と「利便性等に影響するもの(地勢地質地盤・行政区域・公法上の規制等)」に大別できます。
行政区域について留意事項が挙げるのは「行政区域の違いによる道路、水道その他の公共施設及び学校その他の公益的施設の整備水準並びに公租公課等の負担の差異が土地利用上の利便性等に影響を及ぼすこと」、道路について挙げるのは「広幅員の道路等は、土地、建物等の連たん性及び地域の一体性を分断する場合があること」です。
穴埋め
① 自然的状態に係るもの:〔①〕、山岳及び丘陵、地勢・地質・〔②〕等
② 人文的状態に係るもの:〔③〕、公法上の規制等、鉄道・公園等、〔④〕
川幅が広い河川等は、土地、建物等の〔⑤〕及び地域の〔⑥〕を分断する場合がある。
解答:①河川 ②地盤 ③行政区域 ④道路 ⑤連たん性 ⑥一体性
短答での化け方:「道路は、その幅員の如何を問わず地域の一体性を分断する」とする肢。分断するのは「広幅員の道路等」です。また自然的状態に「気象条件」を、人文的状態に「地域の名声」を混ぜ込む肢も見かけます。
Q16 対象不動産に係る市場の特性──把握の観点と資料
基準本文
地域分析における対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、同一需給圏における市場参加者がどのような属性を有しており、どのような観点から不動産の利用形態を選択し、価格形成要因についての判断を行っているかを的確に把握することが重要である。あわせて同一需給圏における市場の需給動向を的確に把握する必要がある。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第1節
留意事項
(ア)市場参加者の属性については、業務用不動産の場合、主たる需要者層及び供給者層の業種、業態、法人か個人かの別並びに需要者の存する地域的な範囲。
また、居住用不動産の場合、主たる需要者層及び供給者層の年齢、家族構成、所得水準並びに需要者の存する地域的な範囲。 ― 運用上の留意事項Ⅳ(総論第6章について)
対象不動産に係る市場の特性の把握に当たっては、平素から、不動産業者、建設業者及び金融機関等からの聴聞等によって取引等の情報(取引件数、取引価格、売り希望価格、買い希望価格等)を収集しておく必要がある。 ― 運用上の留意事項Ⅳ(総論第6章について)
何を補っているか:基準本文の「属性」が具体的に何を指すのかを、業務用と居住用で書き分けているのが留意事項の仕事です。業務用は業種・業態・法人か個人かの別、居住用は年齢・家族構成・所得水準。どちらにも共通して「需要者の存する地域的な範囲」が入ります。さらに需給動向については、同一需給圏内に存し用途・規模・品等等が対象不動産と類似する不動産に係る需給の推移及び動向を把握するとされています。
穴埋め
業務用不動産の場合、主たる需要者層及び供給者層の〔①〕、〔②〕、法人か個人かの別並びに需要者の存する〔③〕。
居住用不動産の場合、主たる需要者層及び供給者層の〔④〕、〔⑤〕、〔⑥〕並びに需要者の存する〔③〕。
解答:①業種 ②業態 ③地域的な範囲 ④年齢 ⑤家族構成 ⑥所得水準
短答での化け方:業務用と居住用の属性項目を入れ替える肢。「居住用不動産の場合、主たる需要者層の業種、業態……」とやられると、慌てて読み飛ばします。また「取引等の情報は、鑑定評価の依頼を受けた後に収集する」とする肢も誤りで、留意事項は「平素から」収集しておくことを求めています。
Q17 個別的要因の分析上の留意点(3項目)
基準本文
個別的要因は、対象不動産の市場価値を個別的に形成しているものであるため、個別的要因の分析においては、対象不動産に係る典型的な需要者がどのような個別的要因に着目して行動し、対象不動産と代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度をどのように評価しているかを的確に把握することが重要である。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第2節
留意事項
対象不動産と代替、競争等の関係にある不動産と比べた優劣及び競争力の程度を把握するに当たっては、次の点に留意することが必要である。
① 同一用途の不動産の需要の中心となっている価格帯及び主たる需要者の属性
② 対象不動産の立地、規模、機能、周辺環境等に係る需要者の選好
③ 対象不動産に係る引き合いの多寡
― 運用上の留意事項Ⅳ(総論第6章について)
何を補っているか:基準本文の「優劣及び競争力の程度」を、把握可能な3つの手がかりに分解しています。価格帯と需要者属性(市場のどこにいるか)→ 需要者の選好(何が評価されるか)→ 引き合いの多寡(実際に売れているか)という順で、抽象から具体へ降りていく構成です。論文で個別分析を書くときの骨組みにそのまま使えます。
穴埋め
① 同一用途の不動産の需要の中心となっている〔①〕及び主たる需要者の〔②〕
② 対象不動産の立地、規模、機能、周辺環境等に係る需要者の〔③〕
③ 対象不動産に係る〔④〕の多寡
解答:①価格帯 ②属性 ③選好 ④引き合い
短答での化け方:「対象不動産の再調達原価の水準」「近隣地域の標準的使用」など、個別分析の留意点ではない項目を混ぜる肢。3項目はいずれも市場での競争力に直結するものだけで構成されています。
Q18 最有効使用の判定──変動予測の蓋然性と、取壊し・用途変更の比較考量
基準本文
価格形成要因は常に変動の過程にあることを踏まえ、特に価格形成に影響を与える地域要因の変動が客観的に予測される場合には、当該変動に伴い対象不動産の使用方法が変化する可能性があることを勘案して最有効使用を判定すること。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第2節
現実の建物の用途等を継続する場合の経済価値と建物の取壊しや用途変更等を行う場合のそれらに要する費用等を適切に勘案した経済価値を十分比較考量すること。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第6章第2節
留意事項
地域要因の変動の予測に当たっては、予測の限界を踏まえ、鑑定評価を行う時点で一般的に収集可能かつ信頼できる情報に基づき、当該変動の時期及び具体的内容についての実現の蓋然性が高いことが認められなければならない。 ― 運用上の留意事項Ⅳ(総論第6章について)
ア 物理的、法的にみた当該建物の取壊し、用途変更等の実現可能性
イ 建物の取壊し、用途変更等を行った後における対象不動産の競争力の程度等を踏まえた収益の変動予測の不確実性及び取壊し、用途変更に要する期間中の逸失利益の程度 ― 運用上の留意事項Ⅳ(総論第6章について)
何を補っているか:基準本文が「客観的に予測される場合」とだけ書くところに、留意事項が歯止めの3要素を入れています。すなわち①予測の限界を踏まえること、②鑑定評価を行う時点で一般的に収集可能かつ信頼できる情報に基づくこと、③変動の時期及び具体的内容についての実現の蓋然性が高いこと。また比較考量については、実現可能性(物理的・法的)と、期間中の逸失利益という見落としがちな項目まで指定しています。
穴埋め
地域要因の変動の予測に当たっては、〔①〕の限界を踏まえ、〔②〕を行う時点で一般的に〔③〕かつ信頼できる情報に基づき、当該変動の時期及び具体的内容についての実現の〔④〕が高いことが認められなければならない。
取壊し、用途変更等に要する〔⑤〕中の〔⑥〕の程度に留意する。
解答:①予測 ②鑑定評価 ③収集可能 ④蓋然性 ⑤期間 ⑥逸失利益
短答での化け方:「実現の可能性があると認められれば足りる」と要件を緩める肢。求められているのは「蓋然性が高いこと」です。また「価格時点で収集可能な情報に基づき」と、基準日を価格時点にすり替える肢——ここは鑑定評価を行う時点です。最有効使用の判定基準そのものは最有効使用の判定で扱っています。
領域D 鑑定評価の手法(8問)
留意事項Ⅴは全10節中で最も長く、試験でも配点が集中します。事例選択・事情補正・減価修正・収益還元法の各論点は、基準本文だけでは絶対に解けない設問が作られます。
Q19 「必要やむを得ない場合」の定義
基準本文
取引事例は、原則として近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産に係るもののうちから選択するものとし、必要やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域に存する不動産に係るもののうちから、対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等には、同一需給圏内の代替競争不動産に係るもののうちから選択するものとする ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
留意事項
この場合における必要やむを得ない場合とは、近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産について収集した取引事例等の大部分が特殊な事情による影響を著しく受けていることその他の特別な事情により当該取引事例等のみによっては鑑定評価を適切に行うことができないと認められる場合をいう。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
何を補っているか:基準本文の「必要やむを得ない場合」という曖昧な表現に、判定基準を与えています。ハードルは高く、大部分が特殊な事情の影響を著しく受けている等の特別な事情が必要です。「事例が少ないから周辺地域から採る」という程度では足りません。
穴埋め
必要やむを得ない場合とは、近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産について収集した取引事例等の〔①〕が〔②〕な事情による影響を〔③〕受けていることその他の特別な事情により、当該取引事例等のみによっては鑑定評価を適切に行うことができないと認められる場合をいう。
解答:①大部分 ②特殊 ③著しく
短答での化け方:「近隣地域及び同一需給圏内の類似地域に取引事例が存在しない場合をいう」と、要件を「事例の不存在」に置き換える肢。事例があっても大部分が特殊事情の影響を著しく受けていれば該当します。事例選択の要件は取引事例の選択に整理があります。
Q20 同一需給圏内の代替競争不動産──4例示と2要件
基準本文
対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等において同一需給圏内に存し対象不動産と代替、競争等の関係が成立していると認められる不動産(以下「同一需給圏内の代替競争不動産」という。) ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
留意事項
この場合における「対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合等」とは、次のような場合として例示される対象不動産の個別性のために近隣地域の制約の程度が著しく小さいと認められるものをいう。
(ア)戸建住宅地域において、近辺で大規模なマンションの開発がみられるとともに、立地に優れ高度利用が可能なことから、マンション適地と認められる大規模な画地が存する場合
(イ)中高層事務所として用途が純化された地域において、交通利便性に優れ広域的な集客力を有するホテルが存する場合
(ウ)住宅地域において、幹線道路に近接して、広域的な商圏を持つ郊外型の大規模小売店舗が存する場合
(エ)中小規模の事務所ビルが集積する地域において、敷地の集約化により完成した卓越した競争力を有する大規模事務所ビルが存する場合 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
(ア)対象不動産との間に用途、規模、品等等からみた類似性が明確に認められること。
(イ)対象不動産の価格形成に関して直接に影響を与えていることが明確に認められること。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
取引事例等として同一需給圏内の代替競争不動産に係るものを選択する場合において、価格形成要因に係る対象不動産との比較を行う際には、個別的要因の比較だけでなく市場の特性に影響を与えている地域要因の比較もあわせて行うべきことに留意すべきである。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
何を補っているか:3層構造です。第一に、どういう場面を指すのかの4例示。共通するのは「対象不動産の個別性のために近隣地域の制約の程度が著しく小さい」という理屈です。第二に、選択する事例が満たすべき2要件(類似性と直接影響、いずれも「明確に認められること」)。第三に、比較の際は個別的要因だけでなく地域要因の比較も併せて行うという手続注意。
穴埋め
対象不動産の個別性のために〔①〕の制約の程度が〔②〕と認められるものをいう。
(ア)対象不動産との間に用途、規模、〔③〕からみた〔④〕が明確に認められること。
(イ)対象不動産の〔⑤〕に関して〔⑥〕に影響を与えていることが明確に認められること。
比較を行う際には、個別的要因の比較だけでなく〔⑦〕の比較もあわせて行う。
解答:①近隣地域 ②著しく小さい ③品等等 ④類似性 ⑤価格形成 ⑥直接 ⑦地域要因
短答での化け方:「代替競争不動産に係る事例を用いる場合、当該事例は近隣地域外に存するため、個別的要因の比較のみを行えば足りる」とする肢。地域要因の比較も併せて必要です。これは基準本文の総論第7章第1節Ⅰ5とも整合します。
Q21 事情補正──減額・増額・双方向の3分類
基準本文
取引事例等に係る取引等が特殊な事情を含み、これが当該取引事例等に係る価格等に影響を及ぼしているときは適切に補正しなければならない。…特殊な事情とは、正常価格を求める場合には、正常価格の前提となる現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる諸条件を欠くに至らしめる事情のことである。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
留意事項
ア 補正に当たり減額すべき特殊な事情
(ア)営業上の場所的限定等特殊な使用方法を前提として取引が行われたとき。
(イ)極端な供給不足、先行きに対する過度に楽観的な見通し等特異な市場条件の下に取引が行われたとき。
(ウ)業者又は系列会社間における中間利益の取得を目的として取引が行われたとき。
(エ)買手が不動産に関し明らかに知識や情報が不足している状態において過大な額で取引が行われたとき。
(オ)取引価格に売買代金の割賦払いによる金利相当額、立退料、離作料等の土地の対価以外のものが含まれて取引が行われたとき。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
イ 補正に当たり増額すべき特殊な事情
(ア)売主が不動産に関し明らかに知識や情報が不足している状態において、過少な額で取引が行われたとき。
(イ)相続、転勤等により売り急いで取引が行われたとき。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
ウ 補正に当たり減額又は増額すべき特殊な事情
(ア)金融逼迫、倒産時における法人間の恩恵的な取引又は知人、親族間等人間関係による恩恵的な取引が行われたとき。
(イ)不相応な造成費、修繕費等を考慮して取引が行われたとき。
(ウ)調停、清算、競売、公売等において価格が成立したとき。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
何を補っているか:基準本文は「特殊な事情」の定義を与えるだけで、具体例をひとつも挙げません。留意事項が減額5・増額2・双方向3の計10事情を列挙します。この個数と振り分けが、そのまま短答の素材になります。
構造を掴むコツは、知識・情報の不足はどちらが不足しているかで方向が決まるという点です。買手が不足していれば過大な額で取引されるので減額、売主が不足していれば過少な額なので増額。売り急ぎ(相続・転勤)は増額です。恩恵的取引・不相応な造成費修繕費・調停競売等は、どちらに振れるか一義的に決まらないので双方向に置かれています。
穴埋め
減額すべき事情:〔①〕が不動産に関し明らかに知識や情報が不足している状態において〔②〕な額で取引が行われたとき。
増額すべき事情:〔③〕が不動産に関し明らかに知識や情報が不足している状態において〔④〕な額で取引が行われたとき。/相続、〔⑤〕等により〔⑥〕で取引が行われたとき。
減額又は増額すべき事情:調停、清算、〔⑦〕、〔⑧〕等において価格が成立したとき。
解答:①買手 ②過大 ③売主 ④過少 ⑤転勤 ⑥売り急い ⑦競売 ⑧公売
短答での化け方:「相続により売り急いで取引が行われたときは、減額補正を行う」という肢。売り急ぎは安く売られているので増額です。また「競売により価格が成立したときは、減額補正を行う」も誤りで、これは双方向(減額又は増額)に分類されています。方向を1つに固定してくる肢は、まず双方向グループを疑ってください。
Q22 原価法──再調達原価の2費目と、減価修正の重複禁止
基準本文
これらの場合における通常の付帯費用には、建物引渡しまでに発注者が負担する通常の資金調達費用や標準的な開発リスク相当額等が含まれる場合があることに留意する必要がある。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
減価修正の目的は、減価の要因に基づき発生した減価額を対象不動産の再調達原価から控除して価格時点における対象不動産の適正な積算価格を求めることである。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
留意事項
イ 資金調達費用とは、建築費及び発注者が負担すべき費用に相当する資金について、建物引渡しまでの期間に対応する調達費用をいう。
ウ 開発リスク相当額とは、開発を伴う不動産について、当該開発に係る工事が終了し、不動産の効用が十分に発揮されるに至るまでの不確実性に関し、事業者(発注者)が通常負担する危険負担率を金額で表示したものである。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
ア 対象不動産が建物及びその敷地である場合において、土地及び建物の再調達原価についてそれぞれ減価修正を行った上で、さらにそれらを加算した額について減価修正を行う場合があるが、それらの減価修正の過程を通じて同一の減価の要因について重複して考慮することのないよう留意するべきである。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
イ 耐用年数に基づく方法及び観察減価法を適用する場合においては、対象不動産が有する市場性を踏まえ、特に、建物の増改築・修繕・模様替等の実施が耐用年数及び減価の要因に与える影響の程度について留意しなければならない。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
何を補っているか:基準本文が名前だけ挙げた「資金調達費用」「開発リスク相当額」の定義を与えます。資金調達費用の対象期間は建物引渡しまで、開発リスク相当額の対象期間は効用が十分に発揮されるに至るまでと、期間の終期が異なる点が重要です。減価修正については、複合不動産で二段階の減価修正を行う実務を前提に、同一の減価の要因を重複して考慮するなという警告を置いています。
穴埋め
資金調達費用とは、建築費及び発注者が負担すべき費用に相当する資金について、〔①〕までの期間に対応する調達費用をいう。
開発リスク相当額とは、当該開発に係る工事が終了し、不動産の〔②〕が十分に発揮されるに至るまでの〔③〕に関し、事業者(発注者)が通常負担する〔④〕を金額で表示したものである。
減価修正の過程を通じて同一の〔⑤〕について〔⑥〕して考慮することのないよう留意する。
解答:①建物引渡し ②効用 ③不確実性 ④危険負担率 ⑤減価の要因 ⑥重複
短答での化け方:「開発リスク相当額とは、工事が終了するまでの不確実性に関し……」と期間の終期を工事終了に縮める肢。効用が十分に発揮されるに至るまでです。減価修正の詳細は減価修正の2つの方法へ。
Q23 直接還元法──償却前・償却後の整合と換算式
基準本文
純収益は、永続的なものと非永続的なもの、償却前のものと償却後のもの等、総収益及び総費用の把握の仕方により異なるものであり、それぞれ収益価格を求める方法及び還元利回り又は割引率を求める方法とも密接な関連があることに留意する必要がある。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
留意事項
直接還元法の適用において還元対象となる一期間の純収益と、それに対応して採用される還元利回りは、その把握の仕方において整合がとれたものでなければならない。
すなわち、還元対象となる一期間の純収益として、ある一定期間の標準化されたものを採用する場合には、還元利回りもそれに対応したものを採用することが必要である。
また、建物その他の償却資産(以下「建物等」という。)を含む不動産の純収益の算定においては、基本的に減価償却費を控除しない償却前の純収益を用いるべきであり、それに対応した還元利回りで還元する必要がある。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
何を補っているか:基準本文は「密接な関連がある」と述べるにとどまりますが、留意事項は整合の要求を明文の義務にしています。原則は償却前純収益と償却前の還元利回りの組み合わせ。償却後を用いる場合は、還元利回りも償却後に対応させます。
留意事項は、償却前の還元利回り $R$ から償却後の還元利回り $R'$ を求める式も示しています。
ここで $a'$ は償却後の純収益、$d$ は減価償却費です。なお留意事項は、減価償却費の算定方法には定額法、償還基金率を用いる方法等があり、適切に用いることが必要であるとしています。
穴埋め
建物等を含む不動産の純収益の算定においては、基本的に〔①〕を控除しない〔②〕の純収益を用いるべきであり、それに対応した〔③〕で還元する必要がある。
減価償却費の算定方法には〔④〕、〔⑤〕を用いる方法等がある。
解答:①減価償却費 ②償却前 ③還元利回り ④定額法 ⑤償還基金率
短答での化け方:「建物等を含む不動産の純収益は、減価償却費を控除した償却後の純収益を用いなければならない」とする肢。原則は償却前です。また償却後を用いること自体を「できない」とする肢も誤りで、還元利回りを対応させれば可能です。還元利回りの求め方は還元利回りの求め方へ。
Q24 土地残余法と建物残余法──適用要件の違い
基準本文
収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を収益価格という。)。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
留意事項
対象不動産が更地である場合において、当該土地に最有効使用の賃貸用建物等の建築を想定し、収益還元法以外の手法によって想定建物等の価格を求めることができるときは、当該想定建物及びその敷地に基づく純収益から想定建物等に帰属する純収益を控除した残余の純収益を還元利回りで還元する手法(土地残余法という。)を適用することができる。
また、不動産が敷地と建物等との結合によって構成されている場合においても、収益還元法以外の手法によって建物等の価格を求めることができるときは、土地残余法を適用することができるが、建物等が古い場合には複合不動産の生み出す純収益から土地に帰属する純収益が的確に求められないことが多いので、建物等は新築か築後間もないものでなければならない。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
不動産が敷地と建物等との結合によって構成されている場合において、収益還元法以外の手法によって敷地の価格を求めることができるときは、当該不動産に基づく純収益から敷地に帰属する純収益を控除した残余の純収益を還元利回りで還元する手法(建物残余法という。)を適用することができる。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
何を補っているか:土地残余法・建物残余法は基準本文に定義がなく、留意事項にしか書かれていません。ここは典型的な「留意事項を読んでいないと解けない」箇所です。式は次のとおりです。
覚えるべき差異は2点。①土地残余法は更地でも複合不動産でも適用できるが、建物残余法は敷地と建物等の結合により構成されている場合の手法である。②複合不動産に土地残余法を適用する場合、建物等は新築か築後間もないものでなければならない。この築年要件は土地残余法にだけ付いています。
なお留意事項は、両手法とも「土地と建物等から構成される複合不動産が生み出す純収益を土地及び建物等に適正に配分することができる場合に有効である」としています。
穴埋め
複合不動産に土地残余法を適用する場合、建物等が古い場合には複合不動産の生み出す純収益から〔①〕に帰属する純収益が的確に求められないことが多いので、建物等は〔②〕か〔③〕のものでなければならない。
解答:①土地 ②新築 ③築後間もないもの
短答での化け方:築年要件を建物残余法に付け替える肢。あるいは「土地残余法は、対象不動産が更地である場合にのみ適用できる」と適用場面を狭める肢。複合不動産にも適用できます。
Q25 DCF法──保有期間・復帰価格・最終還元利回り
基準本文
還元利回りは、直接還元法の収益価格及びDCF法の復帰価格の算定において、一期間の純収益から対象不動産の価格を直接求める際に使用される率であり、将来の収益に影響を与える要因の変動予測と予測に伴う不確実性を含むものである。割引率は、DCF法において、ある将来時点の収益を現在時点の価値に割り戻す際に使用される率であり、還元利回りに含まれる変動予測と予測に伴う不確実性のうち、収益見通しにおいて考慮された連続する複数の期間に発生する純収益や復帰価格の変動予測に係るものを除くものである。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
留意事項
保有期間は、毎期の純収益及び復帰価格について精度の高い予測が可能な期間として決定する必要があり、不動産投資における典型的な投資家が保有する期間を標準とし、典型的な投資家が一般に想定しないような長期にわたる期間を設定してはならない。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
保有期間満了時点において売却を想定する場合には、売却に要する費用を控除することが必要である。
復帰価格を求める際に、n+1期の純収益を最終還元利回りで還元して求める場合においては、n+1期以降の純収益の変動予測及び予測に伴う不確実性をn+1期の純収益及び最終還元利回りに的確に反映させることが必要である。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
最終還元利回りは、価格時点の還元利回りをもとに、保有期間満了時点における市場動向並びにそれ以降の収益の変動予測及び予測に伴う不確実性を反映させて求めることが必要である。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
何を補っているか:基準本文は還元利回りと割引率の概念的な区別を述べるだけで、DCF法の実務パラメータには踏み込みません。留意事項が3点を補います。①保有期間は典型的投資家基準で、長期にわたる期間の設定は禁止。②復帰価格からは売却費用を控除する。③最終還元利回りは価格時点の還元利回りを出発点として、保有期間満了時点以降の事情を反映させる。
留意事項はさらに、割引率について「一般に1年を単位として求める」こと、「収益見通しにおいて考慮されなかった収益予測の不確実性の程度に応じて異なる」ことを述べ、保有期間満了時点以降に取壊しや用途変更が計画されている場合や建物の老朽化により取壊し等が見込まれる場合には、それらに要する費用を考慮して復帰価格を求める必要があるとしています。
穴埋め
保有期間は、毎期の純収益及び復帰価格について〔①〕予測が可能な期間として決定する必要があり、不動産投資における〔②〕が保有する期間を標準とし、〔②〕が一般に想定しないような〔③〕にわたる期間を設定してはならない。
保有期間満了時点において売却を想定する場合には、〔④〕を控除することが必要である。
最終還元利回りは、〔⑤〕の還元利回りをもとに、保有期間満了時点における市場動向並びにそれ以降の収益の変動予測及び予測に伴う不確実性を反映させて求める。
解答:①精度の高い ②典型的な投資家 ③長期 ④売却に要する費用 ⑤価格時点
短答での化け方:「最終還元利回りは、保有期間満了時点における還元利回りをもとに求める」とする肢。出発点は価格時点の還元利回りです。また「復帰価格は、n+1期の純収益を最終還元利回りで還元して求めるものであり、売却費用は控除しない」とする肢。売却を想定する場合は控除が必要です。DCF法の構造はDCF法の仕組みへ。
Q26 事業用不動産──4例示と超過収益の帰属
基準本文
賃貸用不動産のうち賃借人により賃貸以外の事業に供されている不動産の総収益の算定及び賃貸以外の事業の用に供する不動産の総収益の算定に当たっては、当該不動産が供されている事業について、その現状と動向に十分留意しなければならない。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節
留意事項
賃貸用不動産又は賃貸以外の事業の用に供する不動産のうち、その収益性が当該事業(賃貸用不動産にあっては賃借人による事業)の経営の動向に強く影響を受けるもの(以下「事業用不動産」という。)を例示すれば、次のとおりである。
(ア)ホテル等の宿泊施設
(イ)ゴルフ場等のレジャー施設
(ウ)病院、有料老人ホーム等の医療・福祉施設
(エ)百貨店や多数の店舗により構成されるショッピングセンター等の商業施設 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
なお、運営事業者が通常よりも優れた能力を有することによって生じる超過収益は、本来、運営事業者の経営等に帰属するものであるが、賃貸借契約において当該超過収益の一部が不動産の所有者に安定的に帰属することについて合意があるときには、当該超過収益の一部が当該事業用不動産に帰属する場合があることに留意すべきである。 ― 運用上の留意事項Ⅴ(総論第7章について)
何を補っているか:事業用不動産という概念そのものが留意事項で定義されています。定義の核は「収益性が当該事業の経営の動向に強く影響を受けるもの」。4例示は宿泊・レジャー・医療福祉・商業です。
超過収益の帰属は、論文で書けると差がつく論点です。原則は運営事業者の経営等に帰属、例外的に賃貸借契約上の合意があるときに一部が不動産に帰属します。留意事項はまた、依頼者等から提出された事業実績や事業計画等について「当該資料のみに依拠するのではなく、当該事業の運営主体として通常想定される事業者(以下「運営事業者」という。)の視点から、当該実績・計画等の持続性・実現性について十分に検討しなければならない」としています。
穴埋め
運営事業者が通常よりも優れた能力を有することによって生じる〔①〕は、本来、〔②〕の経営等に帰属するものであるが、賃貸借契約において当該〔①〕の一部が不動産の〔③〕に安定的に帰属することについて〔④〕があるときには、その一部が当該事業用不動産に帰属する場合がある。
解答:①超過収益 ②運営事業者 ③所有者 ④合意
短答での化け方:「運営事業者の優れた能力によって生じる超過収益は、当該不動産に帰属する」と原則を逆にする肢。原則は運営事業者への帰属です。また「依頼者から提出された事業計画に基づいて純収益を査定しなければならない」と、資料への依拠を義務化する肢も誤りです。事業用不動産の評価は事業用不動産の鑑定評価へ。
領域E 手順・報告書・証券化対象不動産(4問)
留意事項Ⅵ・Ⅶ・Ⅹは分量こそ多くないものの、実務直結の規定が並び、短答で細部を突いてくる領域です。
Q27 実地調査と内覧省略の要件、そして報告書への記載
基準本文
対象不動産の物的確認に当たっては、土地についてはその所在、地番、数量等を、建物についてはこれらのほか家屋番号、建物の構造、用途等を、それぞれ実地に確認することを通じて、第1節により確定された対象不動産の存否及びその内容を、確認資料(第5節Ⅰ参照)を用いて照合しなければならない。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第8章第4節
留意事項
対象不動産の確認に当たっては、原則として内覧の実施を含めた実地調査を行うものとする。
なお、同一の不動産の再評価を行う場合において、過去に自ら内覧の実施を含めた実地調査を行ったことがあり、かつ、当該不動産の個別的要因について、直近に行った鑑定評価の価格時点と比較して重要な変化がないと客観的に認められる場合は、内覧の全部又は一部の実施について省略することができる。 ― 運用上の留意事項Ⅵ(総論第8章について)
同一の不動産の再評価を行う場合において内覧の全部又は一部の実施を省略した場合には、当該不動産の個別的要因に重要な変化がないと判断した根拠について記載する。 ― 運用上の留意事項Ⅶ(総論第9章について)
何を補っているか:基準本文は「実地に確認する」としか書かず、内覧という語すら出てきません。留意事項が内覧を含む実地調査を原則とし、その省略要件を3つ課しています。①同一の不動産の再評価であること、②過去に自ら内覧を含む実地調査を行ったことがあること、③直近の鑑定評価の価格時点と比較して個別的要因に重要な変化がないと客観的に認められること。そして省略した場合は、判断の根拠を鑑定評価報告書に記載します。
穴埋め
同一の不動産の〔①〕を行う場合において、過去に〔②〕内覧の実施を含めた実地調査を行ったことがあり、かつ、当該不動産の〔③〕について、直近に行った鑑定評価の価格時点と比較して重要な変化がないと〔④〕に認められる場合は、内覧の〔⑤〕の実施について省略することができる。
省略した場合には、重要な変化がないと判断した〔⑥〕について鑑定評価報告書に記載する。
解答:①再評価 ②自ら ③個別的要因 ④客観的 ⑤全部又は一部 ⑥根拠
短答での化け方:「他の不動産鑑定士が過去に内覧を行っていれば省略できる」とする肢。「自ら」行ったことが要件です。また「省略できるのは内覧の全部に限られる」「一部に限られる」と幅を狭める肢も誤りで、全部又は一部です。報告書の記載事項は鑑定評価報告書の記載事項へ。
Q28 処理計画の追加確認事項と、権利の態様の確認7項目
基準本文
処理計画の策定に当たっては、第1節により確定された鑑定評価の基本的事項に基づき、実施すべき作業の性質及び量、処理能力等に即応して、対象不動産の確認、資料の収集及び整理、資料の検討及び価格形成要因の分析、鑑定評価の手法の適用、試算価格又は試算賃料の調整、鑑定評価額の決定等鑑定評価の作業に係る処理計画を秩序的に策定しなければならない。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第8章第3節
留意事項
処理計画の策定に当たっては、総論第8章第1節及び第2節に定める事項のほか、依頼者に対し、次の事項を明瞭に確認しなければならない。
(1)対象不動産の実地調査の範囲(内覧の実施の有無を含む。)
(2)他の専門家による調査結果等の活用の要否
(3)その他処理計画の策定のために必要な事項 ― 運用上の留意事項Ⅵ(総論第8章について)
賃貸借契約等に係る権利の態様の確認に当たっては、原則として次に掲げる事項を確認しなければならない。
① 契約の目的 ② 契約当事者 ③ 契約期間 ④ 契約数量 ⑤ 月額支払賃料 ⑥ 一時金の有無とその内容 ⑦ 賃貸条件等に係る特約 ― 運用上の留意事項Ⅵ(総論第8章について)
何を補っているか:基準本文の処理計画は作業工程の列挙にとどまりますが、留意事項は依頼者に明瞭に確認すべき3事項を追加しています。しかも「この際に確認された事項については、処理計画に反映するとともに、当該事項に変更があった場合にあっては、処理計画を変更するものとする」と、変更時の対応まで指示しています。権利の態様の確認7項目も基準本文にはなく、留意事項のみの規定です。
穴埋め
処理計画の策定に当たり依頼者に確認すべき事項:対象不動産の〔①〕の範囲(〔②〕の実施の有無を含む。)/〔③〕による調査結果等の活用の要否/その他必要な事項
権利の態様の確認7項目:契約の目的、契約〔④〕、契約〔⑤〕、契約〔⑥〕、〔⑦〕支払賃料、〔⑧〕の有無とその内容、賃貸条件等に係る〔⑨〕
解答:①実地調査 ②内覧 ③他の専門家 ④当事者 ⑤期間 ⑥数量 ⑦月額 ⑧一時金 ⑨特約
短答での化け方:「年額支払賃料」と単位を変える肢(正しくは月額)。また処理計画の確認事項に「鑑定評価額の見込額」「報酬額」を混ぜる肢。留意事項の3項目に金銭に関する事項は入っていません。
Q29 合理的な推定ができる場合と、価格形成要因から除外できる場合
基準本文
ただし、依頼目的や依頼者の事情による制約がある場合には、依頼者の同意を得て、想定上の条件を設定して鑑定評価を行うこと若しくは調査範囲等条件を設定して鑑定評価を行うこと、又は自己の調査分析能力の範囲内で当該要因に係る価格形成上の影響の程度を推定して鑑定評価を行うことができる。この場合、想定上の条件又は調査範囲等条件を設定するためには条件設定に係る一定の要件を満たすことが必要であり、また、推定を行うためには客観的な推定ができると認められることが必要である。 ― 不動産鑑定評価基準 総論第8章第6節
留意事項
不動産鑑定士の調査分析能力の範囲内で合理的な推定を行うことができる場合とは、ある要因について対象不動産と比較可能な類似の事例が存在し、かつ当該要因が存することによる減価の程度等を客観的に予測することにより鑑定評価額への反映が可能であると認められる場合をいう。 ― 運用上の留意事項Ⅵ(総論第8章について)
価格形成に影響があるであろうといわれている事項について、一般的な社会通念や科学的知見に照らし原因や因果関係が明確でない場合又は不動産鑑定士の通常の調査において当該事項の存否の端緒すら確認できない場合において、当該事項が対象不動産の価格形成に大きな影響を与えることがないと判断されるときには、価格形成要因から除外して鑑定評価を行うことができるものとする。
また、調査範囲等条件を設定して鑑定評価を行う場合は、当該条件を設定した価格形成要因を除外して鑑定評価を行うことができる。 ― 運用上の留意事項Ⅵ(総論第8章について)
何を補っているか:基準本文の「客観的な推定ができると認められること」に、2つの要件(類似事例の存在+減価の程度等の客観的予測による反映可能性)を与えます。さらに基準本文にまったく登場しない「価格形成要因から除外する」という第4の選択肢を、留意事項が独自に用意しています。除外の要件は、①原因や因果関係が明確でない、又は存否の端緒すら確認できない、かつ②価格形成に大きな影響を与えないと判断されること。
条件設定(Q1〜Q8)と併せて、対応の選択肢が「想定上の条件を設定する/調査範囲等条件を設定する/推定する/除外する」の4本立てであることを整理しておくと、論文で強くなります。
穴埋め
合理的な推定を行うことができる場合とは、ある要因について対象不動産と〔①〕な類似の事例が存在し、かつ当該要因が存することによる〔②〕の程度等を〔③〕に予測することにより鑑定評価額への反映が可能であると認められる場合をいう。
一般的な社会通念や〔④〕に照らし原因や〔⑤〕が明確でない場合又は通常の調査において当該事項の存否の〔⑥〕すら確認できない場合において、当該事項が価格形成に大きな影響を与えることがないと判断されるときには、価格形成要因から〔⑦〕して鑑定評価を行うことができる。
解答:①比較可能 ②減価 ③客観的 ④科学的知見 ⑤因果関係 ⑥端緒 ⑦除外
短答での化け方:「価格形成に影響があるといわれている事項については、いかなる場合も価格形成要因として考慮しなければならない」と除外を否定する肢。また「調査範囲等条件を設定した場合であっても、当該価格形成要因を除外することはできない」とする肢も誤りです。土壌汚染の場面での使い分けは土壌汚染と調査範囲等条件にまとめています。
Q30 証券化対象不動産──ERの主体的判断とDCF法の収益費用項目
基準本文
証券化対象不動産の鑑定評価に当たっては、不動産鑑定士は、依頼者に対し当該鑑定評価に際し必要なエンジニアリング・レポートの提出を求め、その内容を分析・判断した上で、鑑定評価に活用しなければならない。ただし、エンジニアリング・レポートの提出がない場合又はその記載された内容が鑑定評価に活用する資料として不十分であると認められる場合には、エンジニアリング・レポートに代わるものとして不動産鑑定士が調査を行うなど鑑定評価を適切に行うため対応するものとし、対応した内容及びそれが適切であると判断した理由について、鑑定評価報告書に記載しなければならない。 ― 不動産鑑定評価基準 各論第3章第4節
留意事項
エンジニアリング・レポートの活用に当たっては、不動産鑑定士が主体的に責任を持ってその活用の有無について判断を行うものであることに留意する必要がある。また、エンジニアリング・レポートの内容の適切さや正確さ等の判断に当たっては、必要に応じて、建築士等他の専門家の意見も踏まえつつ検証するよう努めなければならないことに留意する必要がある。 ― 運用上の留意事項Ⅹ(各論第3章について)
収益費用項目においては、信託報酬、特別目的会社・投資法人・ファンド等に係る事務費用、アセットマネジメントフィー(個別の不動産に関する費用は除く)等の証券化関連費用は含まないこと。「純収益」は償却前のものとして求めることとしていることから減価償却費は計上しないことに留意する必要がある。また、各論第3章第5節Ⅱ(1)の表に定める「運営純収益」と証券化対象不動産に係る一般の開示書類等で見られるいわゆる「NOI(ネット・オペレーティング・インカム)」はその内訳が異なる場合があることに留意する必要がある。 ― 運用上の留意事項Ⅹ(各論第3章について)
何を補っているか:ERについては、基準本文が「分析・判断した上で活用しなければならない」とするところに、留意事項が主体的な責任の所在を明示します。ERは外注の調査結果であっても、活用の有無の判断責任は不動産鑑定士にあります。留意事項はさらに「既存のエンジニアリング・レポートの活用で対応できる場合がある一方、エンジニアリング・レポートが形式的に項目を満たしていても、鑑定評価にとって不十分で不動産鑑定士の調査が必要となる場合もある」とし、形式的充足では足りないことを述べています。
DCF法の収益費用項目については3点。①証券化関連費用は含まない(信託報酬、SPC・投資法人・ファンド等の事務費用、アセットマネジメントフィー)。②純収益は償却前なので減価償却費は計上しない。③基準の「運営純収益」と実務の「NOI」は内訳が異なる場合がある。さらに留意事項は、収益費用項目についてはDCF法の検証として適用する直接還元法においても同様に用いる必要があるとしています。
穴埋め
エンジニアリング・レポートの活用に当たっては、不動産鑑定士が〔①〕に責任を持ってその活用の〔②〕について判断を行う。
収益費用項目においては、信託報酬、特別目的会社・投資法人・ファンド等に係る事務費用、〔③〕等の〔④〕費用は含まない。
「純収益」は〔⑤〕のものとして求めることとしていることから〔⑥〕は計上しない。
「運営純収益」といわゆる「〔⑦〕」はその〔⑧〕が異なる場合がある。
解答:①主体的 ②有無 ③アセットマネジメントフィー ④証券化関連 ⑤償却前 ⑥減価償却費 ⑦NOI ⑧内訳
短答での化け方:「運営純収益はNOIと同義である」とする肢。内訳が異なる場合があります。また「アセットマネジメントフィーは費用に計上する」とする肢——ただし「個別の不動産に関する費用は除く」という括弧書きがあるため、括弧書きごと覚えてください。ERの活用は証券化対象不動産のER活用、DCF法の適用は証券化対象不動産へのDCF法の適用で詳しく扱っています。
基準本文と留意事項をセットで回す学習手順
ドリルを解いたあと、記憶を保持するための回し方を示します。ポイントは、留意事項を単独で復習しないことです。
手順1 基準本文の章立てを先に固める
留意事項は基準本文の注釈なので、親が立っていないと子は覚えられません。総論第5章・第6章・第7章・第8章については、節と項の見出しを暗唱できる状態を先に作ってください。この段階では留意事項に手を出さないほうが効率的です。基準本文の暗記対象の絞り込みは基準の暗記36箇所と基準の頻出ランキングを使うと早く進みます。
手順2 「定義・例示・手続注意」でタグ付けする
留意事項の各記述に、冒頭で示した3類型のタグを付けます。
| タグ | 復習の方法 | 目標 |
|---|---|---|
| 定義 | 逐語で音読・書写 | 一語も欠けずに再現できる |
| 例示 | 個数を先に言ってから項目を挙げる | 個数と項目名を落とさない |
| 手続注意 | 「〜できる/〜しなければならない」を言い切る | 義務と裁量を取り違えない |
このタグ付けを済ませると、復習時間が半分以下になります。定義は逐語、例示は個数、手続注意は語尾——見るべき箇所が固定されるからです。
手順3 基準本文→留意事項の一方向で想起する
復習は必ず「基準本文の見出しを見る→そこにぶら下がる留意事項を挙げる」の方向で行ってください。逆方向(留意事項を見て基準本文を思い出す)は、本試験で使う筋肉と違います。短答の肢も論文の設問も、基準本文の論点から入ってくるからです。
具体的には、本記事の各問の「基準本文」ブロックだけを見て、留意事項ブロックの内容を口頭で再現します。詰まった箇所が、その日の学習対象です。
手順4 誤り肢の作り方を自分で試す
最後の仕上げは、自分で誤り肢を作ることです。各問の「短答での化け方」を参考に、正しい記述から誤り肢を1本ずつ作ってみてください。作れるようになると、本番で「どこがすり替えられているか」を反射的に見つけられるようになります。
すり替えの型は多くありません。①主体のすり替え(鑑定士↔依頼者)、②時点のすり替え(価格時点↔鑑定評価を行う時点)、③範囲の縮小(「〜のほか」以降の削除)、④義務と裁量の入替え(できる↔しなければならない)、⑤例示の個数変更、⑥原則と例外の消去。この6型を頭に入れて肢を読むと、精度が目に見えて上がります。
今日から演習で仕上げる
鑑定士試験ブートラボでは、短答式の過去問を1問単位で解ける肢別演習、基準と運用上の留意事項をそのまま読める基準ビューア、基準の重要箇所を伏せて解く穴埋めドリルを提供しています。本記事の30問で当たりを付けたあと、演習で当てにいく順番がいちばん効率的です。
まとめ
運用上の留意事項は、量としては基準本文より少ないにもかかわらず、短答式では基準本文と同等以上の密度で出題されます。理由は明快で、留意事項には定義・例示・手続注意という、誤り肢を作りやすい素材ばかりが詰まっているからです。
本記事の30問を通じて確認したかったのは、次の3点です。
- 留意事項は基準本文にぶら下がる注釈である。単独で読まず、必ず親の規定とセットで想起する。留意事項の節番号Ⅰ〜Ⅹと基準本文の章番号は一致しないので、対応表を先に頭に入れる
- 狙われるのは定義文の一語、例示の個数、語尾の義務性。「〜のほか」以降の削除、主体のすり替え、原則と例外の消去が3大パターン
- 条件設定(Ⅲ)・手法(Ⅴ)・手順(Ⅵ)が量的にも質的にも中心。特に調査範囲等条件の4要因と5場面、事情補正の10事情、DCF法のパラメータは、そのまま出題される
30問すべてを一度に完璧にする必要はありません。1周目で「知らなかった箇所」に印を付け、2周目でそこだけを潰す。この2周が済めば、留意事項が原因で落とす肢はかなり減ります。
さらに深めるには、留意事項の全体像と学習法をまとめた運用上の留意事項とは?構成・基準本文との関係と学習法、節ごとの通し解説である総論部分の条文解説と各論部分の条文解説、そして本記事で扱いきれなかった調査範囲等条件の詳細を追った調査範囲等条件とはを併せてご覧ください。
アプリで学習
基準ビューワー × 穴埋めドリルで効率的に学ぶ
鑑定評価基準の原文をスマホで閲覧しながら、穴埋めドリルや論証トレーニングで知識を定着。 短答式・論文式どちらの対策にも対応しています。
年額プランなら1日わずか27円